第8章
赤影が気づいた時にはベッドの上だった。どこのベッドかは分からないが、病院じゃなく、そこら辺の民家のようだ。目を開けるとベッドの横に青星がいた。
「あ・・おぼ・し・・・?」
「あ、気づいた?アンタ毒で倒れたから、もう一時そこから動けないわね。」
「ここは・・・?」
「一応あたしの家。とは言っても仮住まいだけどね。」
「・・・フレアは?」
「元気よ。今はたぶんティアラと遊んでるんじゃない?」
「そうか・・・。君がここまで運んでくれたのか?」
「女のあたしが男のアンタを担げると思う?」
「じゃあどうやって・・・?」
「よ。」
赤影が向いていた逆の方向からぬぅっと男が顔を出した。
「うぁぁ!」
赤影は驚きで心臓が止まりそうになった。
「だれだよ!お前は!!!」
「あぁ、俺?俺は白夜皓色(こうしき)。俺もシキだ。属性は『冷気』。ま、名字で呼んでくれ。」
「君もシキ?何でここに?」
「白夜にお礼言いなさいよ、赤影。アンタを運んだのこの人なんだから。」
赤影は白夜の方を向いた。白夜はいつのまにか一人、携帯でメールをしている。
「ありがとう。」
「あぁ。」
白夜は顔も向けずにそれだけ答えた。
「さてと、体の方はどう?赤影。まだ痛む?」
「少しはな。ところで白夜。お前何で俺たちのいるところが?」
白夜はメールを打つ指を止め、携帯のボタンをいくつか押すと、赤影の方へ向き直った。
「こいつのおかげだな。」
そう言うと、白夜は携帯の画面を赤影の方へ向けた。青星もそれを見た。そこにはなにやら点がめちゃくちゃたくさんポイントされている。また白夜が二三ボタンを押すと、点が三つ固まっている画面が表示された。
「これは俺が独自でプログラミングしたもので、『シーフ』を巻いたものの位置を示すよう出来ている。」
「『シーフ』って何だよ、白夜。」
「あたし達が巻いている布のことだって。さっきあたしも知ったわ。」
赤影の問いに青星が答えた。
「このプログラムを作るのに俺の『シーフ』を少し使っちったから、戦闘能力は少しお前らより劣ると思うが、それなりにやれるんじゃねぇの。特にこっちを使う仕事はな。」
白夜は頭を指さした。青星が微笑した。
「じゃあ、それを使えば残りのシキもすぐ集まるんだな。」
「いや・・・、実は一つ前の画面で示したとおり、点がいっぱいあったろ?『シーフ』の力を源にしてるから、ブラックも表示しちまうんだ。ブラックの巻いている布も『シーフ』だからな。複製しているから、威力はどうということもないが・・・。お前らに会えたのは運が良かっただけ。二人いたからちょっと会いに行くかどうか悩んだけどな。今まで52人のブラックに会ってきたからな・・・。」
「じゃあ、あと四人をその中から一つ一つ捜すってわけかよ?」
「そうなるわね。」
青星がため息混じりに言った。
「でも今までよりはましよ。白夜がいなかったら、運だけで仲間を集めなけりゃならなかったんだし。あたしとアンタも、ほとんど運だけで出会ったようなもんだし。小説みたいにね。」
白夜が携帯を折りたたむと、青星に向けて言った。
「これからどうする気だ。」
「そうね・・・。ま、まずは主人公の回復を待ちましょ。」
青星は赤影の方をっちらっと見て苦笑した。