第9章
赤影が倒れ、白夜と出会ってから5日が経った。
「あ〜いた、よく寝た。ん?なんかいいにおいがするな・・・。」
赤影がベッドから起き出して飯を食いに階下へ降りてきた。白夜は相変わらずメール中だ。青星が一人で朝食の準備をしていた。いつも取っつきにくそうな感じだが、こういうところはさすがに女性である。
「ったく、アンタ回復だけは早いわね。驚異的な回復力よ。ブラックの毒を受けて、5日で回復したやつなんて初めてだわ。あたしの時は動けるまで1ヶ月かかったのに・・・。」
「ところで今日の朝は何?」
「パンと目玉焼き、あと好みでコーヒー。嫌いだったら自分で作ってね。」
青星の笑顔の裏には、いつも何か恐怖の感があった。
『いっつもご飯にみそ汁だったからなぁ・・・。』
赤影は頭をかきながら、久々に見たパンに少々戸惑った。
「白夜ー。ご飯できたわよー!」
「あぁ。」
白夜が携帯を持ったまま食卓へやってきた。
「いただきます。」
3人そろっての初めてのまともな朝食だ。赤影は初めて食べた目玉焼きに舌鼓を打っていた。白夜は黙々と食べている。
「青星料理上手じゃん。」
赤影が言うと、
「少なくともアンタよりはね。」
相変わらず毒のある言い方だ。
すると、今まで黙っていた食事をしていた白夜が食事が済んだのか、口を開いた。
「赤影、青星。とりあえずこれから三人で行動していくわけだが、とりあえずリーダーを青星に決める。俺の見る中で一番冷静で、状況をよく見れている。いいか、赤影。」
「あぁ。いいけど青星にも聞かないと。」
「いや、青星にはもう話していた。な。」
「えぇ。」
青星が白夜を見てうなずいた。赤影は自分のいないところで話が進んでいて、どことなくいい気分ではなかった。
「これからやることは3つ。優先順位を決めて話すと、1つ目はまず赤影の修行。俺が担当する。」
「ちょっと待てよ、白夜。」
赤影ももう食事を済ませており、白夜の言葉に口をはさんだ。さっきの気分を引きずっていたので、あまり穏やかな雰囲気ではなかった。
「勝手に決めてんじゃねーよ。なんで俺の修行から始めるんだよ。」
「これを見な。お前の寝てる間にプログラムした。」
白夜の持っていた携帯には、円グラフがあり、1/3弱ほどが黒く塗りつぶされていた。
「これがどうしたってんだよ。」
「まぁそうつっかかるな。悪い意味で言ったんじゃないんだ。これは、塗りつぶされている部分がお前の今の強さを表している。余っている部分はこれからのばすことができるであろう強さだ。あくまで予測値だが。敵の強さもこれで測ることが出来るようになった。」
さすが頭脳派だ。これだけのプログラムを3日で組むとは。
「このプログラムには、お前らの倒してくれたブラックたちの残した『シーフ』を使った。考えてみりゃ俺の『シーフ』も前のプログラムに使う必要なかったんだな。そう分かったから、これからは残った『シーフ』も、回収してくれ。無理はしなくていいが出来るだけな。」
「OK。」
二人が声をそろえていった。
「ところで、この塗りつぶされている部分が、赤影29%、青星72%、俺94%だ。つまり、お前の能力はすぐにでも伸びる部分が多いって事になる。しかも全体の強さはお前が一番強い。だからまずお前を鍛える。これからお前を主力にしていきたいからな。」
「そういうことかよ。分かったよ。」
「頑張ってね赤影。」
そういうと、青星はみんなの食器を片付け始めた。青星の能力は洗い物でも力を発揮した。あっという間に洗い物がすんだ。
「2つ目は修行がある程度終わりしだい仲間探しに再出発すること。3つ目は・・・・・・」
「なによ白夜。言ってみなさいよ。」
「いや・・・」
「いいから言えよ。」
「実は・・・、俺のサブが今ちょっと・・・、わからないんだ。お前らを見つけた時にちょっと舞い上がってて、『クレバス』のこと忘れちまっててよ・・・。」
「『クレバス』ってサブの名前?」
「あぁ・・・。」
「白夜、それが一番最初だろ!お前のサブは一匹しかいないんだぞ!」
白夜は黙っていた。
「・・・。じゃあ、あたしがリーダーとして指示を出すわ。三人で『クレバス』を探す。それからのことは終わってから決める。赤影が心配だけど、まぁ何とかなるでしょ。」
やけに青星は赤影に突っかかるが、赤影はあんまり悪い気分ではなかった。
「なんか気にさわるけど、それが一番だな。」
言葉だけはそう言ってみた。
「すまない・・・。だが、『クレバス』を捕まえるのはちょっと辛いと思う。何せあいつにはかなり戦闘術を教え込んだからなぁ・・・。見つけたら合図をくれよ。ここに。」
白夜は携帯を指さした。そして赤影と青星に新しく携帯を2個渡した。
「二人のだ。全て同じ設定にしてある。あとは何に使おうが勝手だ。メニュー→9→9→9と押せば一斉呼び出しになる。」
「ありがと、じゃあ行きましょ。」
「おう。」
三人は5日ぶりにそろって外へ出た。