「あの……そんなに見ないでください」
赤くなったディズィーが消えそうな声で呟いて、硬直していたテスタメントの意識が現実へ引き戻された。
「この、下着……? は、一体」
「全身タイツですけど……」
いや、そういう話ではなくて。
「着てると体がすっきりして見えるって、今ジェリーフィッシュで流行ってるんです。メイが普段着てるような感じの……これは袖がついてるし白いんですけど、テスタメント白い下着好きだから」
テスタメントはディズィーの体を抱いたまま枕に顔を埋めた。
――どうしよう。
腹の底から、笑いたい。
確かにどこかの暗殺組織の首領はぴちぴちの黒い全身タイツで戦いに臨んでいたが、誰が文字通り『勝負下着』にされるなど想像できるだろうか。
しかし笑って傷つけてしまうのは可哀想だし、かと言ってこのまま平常心で彼女を抱くのは不可能だ。
「テスタメント?」
がばと身を起こし、脱がせたばかりの服をハンガーにかけディズィーに背を向ける。
「ちゃんとしておかないと、せっかく新しい服なのに皺がついてしまうだろう」
――落ち着け。
何度か深呼吸した後、ベッドに戻ったテスタメントはディズィーのヘッドドレスを外して目を覆ってしまう。
「あっ?」
彼女は少し驚いたようだが、特に嫌がりもせずそのままにしている。
「………………」
テスタメントは両手で顔を覆う。
今にも吹き出してしまいそうなのを悟られないようにしたつもりだったのだが、余計に珍妙になってしまった。こうなったらさっさと全身タイツも剥いだ方がよいのだが、それではあまりにも風情がない。
いや、全身タイツ相手に風情も何もない。
テスタメントの懊悩をよそに、ディズィーは何をされるのか不安と期待に胸を高鳴らせていた。テスタメントのスカートの裾を引っ張り、続きを促す。
意を決したテスタメントの手が、呼吸に合わせて上下する豊かな胸を包み込むようにして触れる。優しく揉みしだき、腰を抱きながらのしかかるとディズィーが甘えるように鼻を鳴らした。
硬くなり始めた乳首を布越しに唇で挟み、舌で転がす。もどかしげに身を捩じらせるのを無視して、太腿を撫でてから体を反転させる。首の後ろにホックがついていたが、普通に外したのでは面白くない。
「……っ! そこは……っ」
ディズィーはとっさに逃れようとするが、狭いベッドの中ではそれもできない。
「ダメです、ネクロ達が出てきちゃいます……っ」
普段は翼――ディズィーの分身であるネクロとウンディーネ――の生えている箇所に、何度も口づけを繰り返す。いつも黒い尾の生えているお尻の上を、長い指が丁寧になぞった。
「や……ん、ダメですってば、ぁ……」
布越しに焦らされて、ネクロ達を抑えるだけの余裕がなくなってくる。体の奥から溢れ始めた熱がタイツに滲み出す。
「ああ…っ!」
色違いの翼が大きく広がって、上半身を覆っているタイツをびりびりに裂いた。同時に黒い尾が生えてお尻の周辺の布地を破き、早く触って欲しくてひくひくしているディズィーの恥ずかしい部分をさらけ出してしまう。
恥ずかしがって枕に突っ伏したディズィーの姿を見ながら、テスタメントは一人納得したように頷いた。
やはりこのくらいしなくては風情というものがないだろう。