そうこうしている間に、昼休み。待ちかねたようにカイトのことを知る男子生徒が旧校舎へと姿を見せる。
坊主頭の小柄な少年が今日、カイトを抱く順番だった。坊主頭なのは以前カイトの手で髪に大量の接着剤をぶちまけられた後遺症である。
「カイト君。君は僕にひどいことをした罰を受けなくちゃ駄目なんだ!」
「うわ、よせ、近づくな! 今日は絶対駄目なんだ!」
鼻面をカイトに叩かれて少年はたじたじと下がった。
カイトは焦っていた。いま下を脱がされるのだけは嫌だった。
「まあ待てよ。カイトちゃん、今日はやけに抵抗するなァ」
浩司は意味ありげにチラリと黒板を見た。「祝! 初潮まであと1日」の張り紙がそこにはある
「そういやあ、今日が予定日じゃん? もしかして……あの日? カイトちゃん?」
「死ね、この色ボケ野郎!」
「おやぁ図星だった? 言っとくけどオレを色ボケにさせてんのはカイトちゃん、あんたのそのお色気満点のカラダなんだぜ」
「見るなよ! テメェ、オレの舎弟だったくせに……」
「フゥ。やっぱまだまだ男の心が強いんだなぁ。もうちょっとしおらしくなってならないといいセックス人形になれないぜ?」
浩司がパチリと指を鳴らすと、二人の少年がカイトを取り押さえ、例のレールのところに運んで胸のチェーンをそこに繋いだ。
四つん這いの格好でカイトの腰が少年達の眼前に突き出される。カイトの力ではそれをどうしようもない。
誰かの手がカイトの尻を撫で回した。
「尻もいい形してるよな。おまけにピッタリしたブルマ穿いて、女子高生モノのAVだよ、まるで」
「おまえそんなAV借りてんの?」
「いや、最近は借りてないよ。カイトちゃんが性欲の捌け口になってくれるから」
「そりゃそうだよな。カイトがいりゃオレたち、AVいらずじゃん。ハハハハ……」
ひとしきりカイトの尻を撫でたり揉んだりした後、彼らは本来の作業に取りかかった。
「やめろォ! 脱がすな! 脱がさないでくれ!」
カイトは青くなって懇願する。
あまりにも一方的な立場に立たされ、虚勢を張るだけの余裕もなかった。
「ご開帳〜♪」
浩司は言うなり、ブルマに手をかけた。
「やめろってば!」
繋がれたままどこにも逃げられず身悶えするカイト。
ゆっくりとブルマがずり下げられていく……
やがて……
一斉に少年達が感嘆のため息をもらした。カイトは真っ赤になって顔を床に埋めた。
カイトのつけていたナプキンは白日のもとにさらされ、剥き出しの股間と一緒に少年達に凝視されていた。
「「せーの。女の子の日おめでとう、カイトちゃん!!」」
事前に打ち合わせをしていたのだろう。彼らは声を揃えて偽りの祝いの言葉を口にした。それを耳にしたカイトが屈辱に身を切り刻まれるのを十分に知った上で。
耳を塞ごうとすると、腕を掴まれ、耳元で囁かれた。
「おめでとさん。これであんたさ、ガキを産めるカラダになったわけだね。よっ、オトナの女!」
「このゲス野郎どもぉ……」
「アハハハハ。カイトのやつ、涙目になってやんの! やっぱ女の子になると涙腺ゆるくなっちゃうの?」
つつぅ……
新たな生理の血がひとすじ、内腿を伝い落ちていった。
「おおスゲー。ほんとに血が出てる! オレ、女の生理って初めて見たよ」
「ナプキンで拭いてみろよ」
「おっ吸収した吸収した。でもCMと違って血糊みたいなのは表面に残るんだな……」
「うわあんま人の顔に近づけんなよ。グロいじゃねーか!」
カイトの生理は完全に玩具にされていた。
カイトは泣き声にならないよう腹に力を入れて口を開いた。
「もういいだろ……元に戻せよ」
「は?」
と浩司はとぼけた。
「パンツとソレ、元に戻せよ!」
「ソレって、何?」
ニヤニヤと意地悪く言葉尻をとらえる浩司。カイトは渋々「……ナプキン」と口にした。
「そうだよな。カイトは生理期間中の女の子だもんな。ムラタ先生にも優しくしてやれって言われてるよ」
「余計なことはいい。早く!」
「で・も・さ」
ぴしゃん、と浩司は裸の尻を叩く。
「くっ!」
ぴしゃぴしゃと叩いてヒップが揺れる様を楽しんでるのだ。
「このまま使い古しのナプキンをあてがうのも気持ち悪いだろ?」
浩司はカイトの使っていたナプキンをぽいと屑籠に投げ込んでしまった。
「誰かカイトをレールから外してやって」
浩司の指示でカイトは床に這いつくばった姿勢からは解放された。もっとも首輪に紐をつけられているので大して変わらない。
「まず、このナプキン1ダースは没収だ」
ガサッ! 浩司はナプキンの大袋を廊下のほうに向かって蹴り出した。
「なにしやがる!」
「おっと。オンナノコがいつまでもオマンコおっぴろげてるもんじゃないぜ」
「う……」
女としての本能が、その部分は男の視線から隠さないと危険だと告げてくる。カイトは思わず内股になって秘部を手で隠していた。
パンティを穿きたいのだが、そうすると生理で汚れてしまう。
「浩司! ナ……ナプキン返せよ……」
「没収だって言ったろ。代わりにアレがあるじゃん」
「アレって……あっ! あ、あれは……」
「嫌ならそのままパンティ穿いちゃえばぁ? オレは別にどっちでもいいよ。ヘヘ」
アレというのは、ナプキンと一緒に差し入れられてたタンポンのことだ。
ナプキンが手元にない以上、タンポンを使うほかない。
恐る恐るタンポンを手にしたカイトに声がかかる。
「オレらの前でそいつを装着してみろよ。生きた性教育ってヤツだ」
一斉に注目を浴びてカイトはがくがくと震えた。
下半身に服を身につけるためには、見世物にされてると分かっていてもタンポンを使うほかない状況だ。
しかたなく包みを破って殻入りのナプキンを取りだした。ネコジャラシの穂ほどのサイズだ。
「あんなんでオマンコの穴埋められんの?」
と素朴な質問が飛び出す。
(バカタレ……中の綿みたいなヤツが水分吸って膣内で膨らむんだよ!)
心の中で罵倒するカイト。タンポンなど実物を見るのも触るのも初めてだが、とりあえずの使用法は頭に入っている。
覚悟を決めると、カイトは左手を自分の秘所に添えた。
そうっと陰唇を指で左右に開き、膣の穴を露出させる。
少年たちが異様に目をぎらつかせて詰め寄ってきた。カイト自身の目線からは殆ど見えないが、いま少女の性器が彼らの前に丸見えになっている。
外野は見ないようにして、右手でタンポンの先端を膣に合わせた。
殻(アプリケータ)の先端を挿入したいのだが、初めての作業で勝手が分からない。角度を間違って挿入しようとすると乾いた膣壁にひっかかって妙に痛い。
カイトが手間取っているとブーイングが飛んできた。
「なにやってんだよ! いつもみたいにズボッと挿れろよズボッと! バイブ突っ込む要領だよ!」
と外野は適当なことを言っている。
ちょうどそのとき午後の授業開始の予鈴が鳴った。
「!」
チャイムの音声をトリガーとする調教を受けていたカイトの体は、自然と愛液の分泌を開始した。
多少なりとも入り口が潤ったおかげで、何度目かの挑戦でヌルリとアプリケータの先が呑み込まれた。子宮へと向かう膣の形に合わせて正しく挿入が行われたという「実感」があった。
あとは作業としては簡単だった。
アプリケータの中に入っているタンポンの本体をところてんのように押し出すだけである。
ほとんど感覚もないが、注意を凝らすと膣の中にタンポンらしき物体が収まった感触がある。アプリケータを抜き取ってしまえば作業は終了だった。
ナプキンと違ってタンポンだと、半日から一日程度は交換の必要がない。
「いやあ、いい見物だったよ、うん。女って大変なんだね」
浩司は横からカイトを抱き寄せると、カイトの股の付け根からちょろりとのぞいているタンポンの紐を指でつついた。
「きゃっ……余計なことするなァ!」
「この紐カワイイよなぁ、プラプラしてて」
「汚い手で触んなァ! 雑菌が入ったら……」
「膣炎になっちまうってか?」
「う、く………………」
「ハハハハ。分かったよ。オンナノコの『そこ』はデリケートだもんな」
浩司の手が離れた隙にカイトは手早くパンティを引っ張り上げた。その上からブルマを穿いても露出度では大して変わらない。ただただ愛玩される少女としての姿格好だ。
もう一度浩司の腕がカイトを抱いた。
「ほんと。カワイイよ、あんた」
衝動に突き動かされるように浩司はカイトの首筋に顔を埋めた。
「はぁぁン……」
感じやすくなってる場所にキスをされてたまらずカイトは甘ったるい嬌声を出してしまった。
浩司の顔が離れたかと思うと、今度は唇をむさぼられた。
唇同士の接触だったのが、やがて舌までがカイトの中に入ってきた。
(やだ……やだ……男にキスされるなんて…………)
カイトの中で男としての意識が悲鳴をあげた。男相手に力でかなわず強引にキスされてそれを拒めなかったという無力感と汚辱感。
こりまで男性器官に舌で奉仕することを強要されることは毎日のようにあったが、処女のように抱きすくめられて唇を許してしまったことはなかった。
浩司に騙されて抱かれてしまったときですら、こんな形でキスを許したりはしなかった。
浩司を突き飛ばそうとしたが、力が入らない。
キスが深まるにつれ、ゆったりとしたリズムで胸を揉まれた。
胸を回すように揉まれ、ときおり乳房の下側をくすぐられる。
(生理中で乳腺張ってて……胸痛いから、やめれぇっ)
そう言いたくともあいにくと唇は塞がっている。
そして、恐ろしいことに痛い筈の刺激が徐々に快美感に塗り替えられていく。
固くしこった乳首の先端を服の上からボタンを押すように指の腹でいじられると、気が遠くなりそうな甘い疼きがそこから生まれた。
「くふぅぅん……」
思わず鼻から甘えたような吐息が漏れ出てしまう。
男にキスをされてるというのに全力で抵抗できていない自分が信じられなかった。
……認めたくない。認めたくないけれどもカイトは、唇を吸われて「うっとりと」していた。
まるで恋を初めて知った乙女のようにキスに酔っている。
そのせいで抵抗できない。
(男の力強い腕……荒々しいキス…………身を任せると、心地いい…………)
男としての自意識が屈辱に震える一方で、心の別な部分は浩司の青臭い愛撫に堕ちようとしていた。
唇の快感が、全身をとろかすような波紋の源になっている。
(強い男に所有されるのも……悪くない……)
酔いが回るように、抵抗しようという気力が消えていく。
二人の唇が離れたとき、カイトの腕は無意識のうちに浩司を放すまいとして動いていた。寸前で理性が戻って、カイトはあわてて手を引っ込めた。
「……なにしやがる。男にキスして嬉しいかよ」
湿った唇をぬぐい、いまさらのようにカイトは吠えた。
「……別に。つい、出来心」
「出来心ォ?」
「ちっ。シャレでキスしてやっただけだよ」
なぜか怒ったようにいうと、浩司はプイとカイトから離れていった。
普段なら昼休みの間にフェラチオ奉仕で少年たちの間をたらい回しにされるのだが、もう午後の授業が迫っているので、それは免除された。
代わりにディルド・ギャグが用意されていた。
リアルなペニスの形をしているそれは、少年たちの平均サイズに比べると、一回りおとなしいサイズに見えた。
「こいつは、カイトさんの元のカラダから型取りして作った代物だってさ。ムラタ先生もマメだよなぁ」
(ちゃんと測ったのかッ!?)
疑問を口にする前にディルド・ギャグをかまされ、言葉を封じられてしまった。
「どう? 自分のペニスくわえてる気分は。気分が落ち着くんじゃないか? アハハハハ!」
「うぅぅぅぅぅ!」
抗議しようとして口の端からみっともなく涎が垂れてしまった。
「しばらくそいつをしゃぶって、フェラテクの自習しときな」
カチリとギャグの錠が首の後ろで締まり、ギャグから伸びたチェーンが逃亡防止のため床の金具に繋がれた。
繋がれた場所より遠くへ行こうととすると、自分自身のペニスの形をしたディルドが喉の奥にまで侵入してきてカイトを責めるようにできてる。
「んぅぅぅ……」
カイトは浩司や他の面々、そして何より彼らの背後にいるムラタを呪った。
その晩、ディルド・ギャグで口を塞がれたカイトの前に初潮を祝う赤飯の皿が運ばれてきた。
頭にきたカイトは皿を蹴飛ばしてひっくり返した。こぼれた中身を怒りにまかせて踏みつけようとしたカイトだったか゛、それ以上暴れると生理中の下っ腹に響くため、断念せざるをえなかった。
望まなかった生理。
望まなかった女としての体の反応。
初めての生理の第一日目は、戸惑いと形のない憤懣の中に過ぎていった。