さすがに、心のようにいつまでも泣いているということはなく、龍鬼の涙はすぐにおさまった。
心の胸から移動して太ももに頭を預けたまま、龍鬼は黙って撫でられ続けている。
ややあって、彼はそっと身を起こした。
「ありがとう……ごめんね――それじゃあ、続きを終わらせてしまおう。ちょっとだけ確かめさせてね」
さらりと言いつつ、にっこり笑う。
まだ、確認とやらを続けるつもりらしい。
「あ……。…いたずら、しないで」
不意をつかれて、心は少し呆気に取られてしまったようだ。
抵抗も、抗議することさえ忘れて、ただ情けない『お願い』をするばかり。
「もちろんだよ」
龍鬼は、心の太ももを開かせて、股間に顔を近づける。
「ん。匂いはしないね。一応、綺麗になってるみたい……」
くんくんと、わざとらしいくらい大げさに、龍鬼は心の匂いを嗅ぐ。
{いつも通り、いい香りだ}
心の『お花』からは、あいかわらず、甘ったるいミルクのような独特の体臭が漂ってくる。
匂いを嗅ぎながら、龍鬼はどんどん顔を近づけていき、ひたりと鼻先が股間に触れた。
「や、ん、あん」
いつの間にか廻されていた龍鬼の手が、心の両太ももを下から掴んで支えるように下半身を持ち上げ、確認しやすい体勢をつくる。
鼻の頭がちょうどぴったりクリトリスに当って、擦れる。
「…匂い、だけだと、ちゃんと分からない…よね?」
すでに龍鬼の唇は『お花』に触れていて、彼が言葉を発するたびに表面が擦れ、吐息がかかる。
「あん! や、やぁ…だめぇ」
舌先が、膣口から尿道口までを一気に舐め上げた。
「――ん、うん。おしっこの味は、しないみたいだね。でも、もっときちんとみないと」
何度も何度もくりかえし、割れ目をなぞり上げるように舌が這っていく。
「う、あぅ…んぁ、あ…やだ、やだぁ」
ぬるりと、舌先が膣口にかるく潜りこんで、胎内のごく浅い部分で蠢いている。
入り口の粘膜を押しひろげるように、肉の壁をなぞっていく。
しばらく胎内を味わった後、舌を引き抜いた。
今度は、尿道口の方に舌を当てて、円を描くようにしつこく舐めまわす。
穴のまわりの肉が、ほんの少し膨らんでいる。それを捏ねくるように、舌を押し付けて動かす。
尿道口をかるく拡げるように、舌を強めに押し付けて味わう。
「――うん。綺麗になってるみたいだ。けど、水が入ってしまったみたいだね」
「……お水?」
「そうだよ、お水。さっきの水がね、心の大切なところに入ってしまったみたいなんだ」
「どこ?」
「おしっこの穴と、それからね、心の大切な『お花』のところの――穴だよ」
「ないもん。そんなの、ない…ないもん。『お花』……穴、ないもん」
「――あるよ。心の『お花』には、ここに小っちゃな穴があるんだよ」
龍鬼の唇が、すばやく膣口に当てられた。
舌先をかるく侵入させ、心に『穴』の存在を強く意識させようとする。
「ああん、いやぁ! うそ、たつき、うそつきぃ……ないもん、ないのぉ…」
そこに穴が存在していることくらいは、いくら幼く『戻って』いようが自分の身体のことなのだから、心とて分かってはいる。だが認めてしまうと、龍鬼に悪戯されそうな気がして――だから、認めたくないのだ。
「分かる? ここ…だよ。ここに、あるんだよ?」
舌でちょんちょん突きながら、心に示してみせる。
「……うん。はい、わかり、ました…だから、もう…やめて」
「さあ、お水をとってあげようね」
心のお願いを無視して、龍鬼は唇を膣口にぐっと押し付けると、強く吸い付ける。
じゅる じゅるじゅる じゅり じゅるる じゅるぅ じゅるるぅう
「いやぁ、いや、いや…きたないよぉ……飲んじゃだめ、やだぁ」
心の胎内に入り込んでいた水を、わざわざ大きな音を立てて啜り、飲み下していく。
水はもともと大した量ではないから、あっという間に無くなってしまったのだが、すぐには口を離そうとせず、龍鬼はしつこく音を立て続けた。
急に強めの刺激を受けたせいで、少しづつ、心の『お花』全体に血が集まり始めている。
「さあ、次はおしっこの穴だよ」
「だめぇ! もう、だめ……なんでぇ? なんで、こんなことするのぉ? いたずらしないって、いったのにぃ……たつきの、うそつき……いじわるぅ!」
「悪戯? 違うよ。これは意地悪なんかじゃないよ……お願いだから、きれいにさせてね」
「うぅ……ん、んん、あ……や、いや、ん…あぁ」
クリトリスごと口に含むようにして、尿道口のあたりにかぶり付くと、今度は静かに吸う。
ちゅう ちゅるちゅる ちゅちゅ ちゅ ちゅう ちゅるる ちゅちゅう
膣に比べればずっと少ない量の水は、すぐに無くなった。
かぶり付いたまま、舌でクリトリスを突く。
敏感な蕾は、すでに充血して膨らみ、包皮からわずかに顔をのぞかせている。
龍鬼の舌には、感触でそのことが伝わっていた。
ぷっくりと膨らんで少し固くなっているクリトリスを、舌で包み込むようにして愛撫する。
「ふ……ん、んあ…あ、あぁ…や、やめ……いやっ! いやぁ…ん」
心は腰をくねらせて逃れようとするが、もちろん逃げられるわけもない。
まわりの肉を押し退けるようにして、クリトリスの根本に舌を這わせていく。
もしも汚れがついているとしたら、龍鬼はそれをこそげ取ろうとでもしているかのようだ。
むろん、心の『お花』は汚れてなどいない。
心の身体は、『お花』はおろかそのいたるところ全てが、恋と愛の二人によって手入れがいきとどいており、いつどこでどのように、然るべき相手と『そういう行為』に及んだとしても決して恥をかくことがないように、文字通り完璧に磨き上げられているのだから。
「はぁ…う…うぅん、あ、ああ、あはぁ…ん、んぃ、い……あ」
口をすぼめるようにしゃぶり付いて、女の子の身体に存在する快感を感じる神経の集中した部分のうちで、もっとも敏感なその一点のみを、龍鬼は執拗に責め立てつづける。
「いぃ、あ……ふ、ふぁ…んぅ、んふ、んふ、んぅう……あ、あぅ…んん」
心は頬を真っ赤に染め上げ、震えながら声を押し殺す。
小さなこぶしを握り締めて歯を食い縛り、身体を奔る甘い感覚に飲まれまいと懸命に耐えている。
「ひいっ! …ふぁあ、ひぃ…う、うぁ、ひ…ひぁ、い、んはぁ!」
我慢しきれなくなった心の口から、悲鳴にも似た吐息が漏れる。
柔らかな身体が強張りかけた刹那――龍鬼の『攻撃』がピタリと止んだ。
「――うん、これで良いね。すっかり綺麗になったよ、心」
「……あ、あ?」
あと少しで、心は軽くイってしまう――そんな絶妙のタイミングで、龍鬼は愛撫を終わらせた。
『焦らす』という点において、これほど完璧な仕事はまずありえないと言えるだろう。
「どう…してぇ?」
「ん? 何かな?」
さまざまな意味が籠められた「どうして?」だったというのに、そして、籠められた意味のいくつかはたぶん『分かって』いるのだろうに、龍鬼は何食わぬ顔で切り返してくる。
龍鬼は、「どうして?」自分に、つまり女の子の『心』に優しくしてくれるのか?
優しくしてくれるのに、龍鬼は「どうして?」こんな風に、たびたび悪戯もしてくるのか?
そしてなによりも、「どうして?」龍鬼に関する『女の子としての記憶』は『思い出す』ことができないのか?
女の子になって以来、ことある毎に思い出してきた、女の子の『心』としての『記憶』たち――それらは、何らかの刺激を受けると、ときおり心の脳裡に浮かんできて、一つを思い出せば今度はそれがきっかけとなり、次から次へと新たに『記憶』を呼び起こしていく。
恋や愛と過ごす日常生活。
幼馴染であり、恋人でもある環との接触。
親しい友達たち――早苗に佳奈美、忍――との、他愛の無い会話。
本当に何気ないことがきっかけとなって、『記憶』は順調に増えてきている。
もうすでに、心の中には、女として生まれて歩んできたこれまでの『人生』が、きちんと順をおって、組み上がりはじめているのだ。
しかしながら、それはまだまだ完全と呼ぶには程遠い。
いくつもの大きな『穴』が、まるで虫食い跡のように、そこには存在している。
たとえば、I学園の高等部に入学した直後から、女の子として『目覚めた』二週間ほど前までの間、ちょうど周りからは「入院していた」とされている期間のことは、まったく思い出せない。
龍鬼のことも似たような感じだ。
彼の言葉を信じるかぎり、そして彼自身の態度や、彼と触れあったときの感じから判断するかぎり、龍鬼は女の子の『心』にとって、とても身近で親しい人物であることがほぼ間違いないように思える。
他の親しい友人たちとは、かるく接触しただけで、その相手に関する『記憶』を『思い出す』ことができた。
それなのに、龍鬼とは、あれほどまでに『濃密な』接触を何度もくりかえしているというのに、彼に関する『記憶』をまるで『思い出す』ことがない。
龍鬼にたいして感じるものを、「この感覚は知っている」と思うことはあっても、彼自身に関する『記憶』は、いまだ何一つ思い出せずにいるのが心の現状なのだ。
何か不都合なことが――そう、龍鬼のことを思い出すと、何らかの困ったことが生じてしまうから、思い出さないように、『記憶』に蓋でもしているみたいだ。