わたしの黒騎士様

エピソード3

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 【1】

 わたしは読書が好きだ。
 知識を与えてくれる専門書なども読むけど、大衆向けの娯楽小説も好き。
 特に大好きなのは恋愛小説。
 その中でも二年前にデビューして以来、最も売れている女性作家ヴァイオレット=キャンベルの大ファンだ。
 彼女は騎士と乙女を題材にした物語を書いている。
 ロマンスももちろんだけど、戦闘描写が秀逸で迫力があり、甘いだけの恋愛小説とは一味違う面白さが人気の秘密だ。
 だけど、騎士団に入ってからは読んでいない。
 なぜかというと、ヴァイオレット=キャンベルの作品は若い女性向けなのだ。
 宣伝用の帯に『全世界の乙女が愛する、素敵な騎士様とのドキドキ☆ラブロマンス』等の恥ずかしい煽り文句の飛び交う本を、男の身なりで買う勇気は無い。
 ああ、読みたいなぁ。
 実家に手紙を書いて、シェリーに頼んで送ってもらおうかな。
 シェリーからは時々手紙が来る。
 手紙にはわたしの身を案じる言葉が綴られ、最後はいつも、寂しい、帰ってきて欲しいという訴えで結ばれていた。
 何か言葉を返したいと思いながら、一度も返事を出していない。
 家出同然に飛び出してきたから、お父様が怒って手紙を捨ててしまうかもしれないと考えて、二の足を踏んでしまう。
 期待を裏切ってばかりの娘のことなんか、もう忘れることにしただろうか。
 覚悟して出てきたつもりだったけど、そうだったらと思うと悲しい。
 認めてはもらえなくても、幼い頃は確かに愛してくれていた両親のことを、わたしは嫌いになれなかった。

 そんなわけで、シェリーに頼ることはできない。
 読めないとなると、ますます読みたい気持ちが強くなっていき、副団長のグレン様の私室に本がたくさんあることを思い出した。
 人から譲り受けた物や自分で購入した物など、七年の間に集めた蔵書は種類も豊富で、借りにくる人も大勢いるらしい。
 女性向けのロマンス小説をグレン様が好むとは思えないけど、ダメで元々、訪ねることにした。

 期待していなかったのに、グレン様の本棚にはしっかりヴァイオレット=キャンベルの著書が並んでいた。しかも、デビュー作から最新刊まで全巻揃っている。
 嬉しいけど、疑問が湧く。
 この本をグレン様が……?
 ロマンス小説を好む男性がいてもおかしくはないんだけど、イメージが合わないな。

「この本をお借りしてもいいですか?」

 最新刊を取りだして、許可を求める。
 グレン様は笑顔で「いいよ」と言ってくれた。

「でも、意外。グレン様もヴァイオレット=キャンベルのファンなんですか?」

 わたしの問いに、グレン様の笑顔が引きつった。
 え? 違ったの?

「ファン……というわけではないんだ。君はこの著者が本の売り上げで得た利益の多くを寄付しているのは知っているかな。私も寄付代わりに購入しているだけだ。欲しければ、全部あげるよ」

 グレン様は取り繕うようにそう言った。
 そ、そうか、仮にファンでも、男の人なら隠しておきたいよね。
 わたしってば、気が利かない。

「いえ、そういうつもりじゃ……。とにかく、ありがとうございました。読んだらすぐに返しにきます」

 頭を下げて、急いで部屋を出た。
 ふぅ、焦った。
 何はともあれ、借りることができたし、さっそく読もう。
 今回はどんなお話なのかな。

 部屋に戻ったわたしは、久しぶりに甘いロマンスの世界にどっぷりと浸り、ヒロインと共に手に汗握る恋と冒険の物語を楽しんだのだった。




 空では太陽が、雲に邪魔されることなく照っていた。
 修練をするには、ちょうどいい天気。
 強い日差しの下、わたし達は汗を流して走っている。
 身に着けているのは、運動に適した布の服。色は黒なので、余計に熱を集めている。こんな時だけは、白騎士団の人達が羨ましい。
 手足には、布に鉛を縫い込んだ重りをつけていた。
 普通の競争なら負けないのに、ついていくのがやっとだ。
 掛け声を出し、騎馬のごとき重い足音を立てて走る仲間達の背中を見つめながら、歯を食いしばって足を動かした。

 騎士団の敷地内に作られた野外の修練場は、街の広場に負けないぐらい広い。
 むき出しの土は平らに踏み固められていて、頻繁に草むしりを行っている成果か、隅々に到るまで生い茂る雑草はない。
 その中で、わたし達は円を描いて何週も走っていた。
 これは鎧を着て動くための基礎体力作りの一つ。
 このあとに腕立て伏せや腹筋等の筋力トレーニング、剣を使っての模擬戦闘など、休む暇も無く修練は続く。

「よし、最後の一周だ、張り切っていけ!」
「おおっ!」

 今日の修練の監督役を務めているのは、二級騎士のパトリック=レアードさん。
 大声を出して、従騎士達に気合を入れている。
 従騎士達も声を張り上げ、ラストスパート。
 ここまできたら、もう少し。
 わたしも一緒に気勢を上げながら、遅れることなく走りきった。
 息を整えていると、間を置くことなくパトリックさんから指示が出される。

「足は良く解しておけよ。それが終わったら、次は腹筋……」

 パトリックさんの声が途中で途切れた。
 不思議に思って彼の視線の先を追うと、年の若い貴婦人が、こちらに向かって歩いてくるのが見えた。
 エミリア姫だ。
 我ら騎士が忠誠を誓う、王家の姫君。

「え? 姫様?」
「嘘だろ? 来られるなんて聞いてないぞ!?」

 従騎士達に戸惑いが広がる。
 困惑するわたし達に、エミリア姫はにっこり微笑みかけた。
 土埃と男達の汗が飛び交うむさ苦しい場所に、一輪の華麗な花が投げ込まれた。
 印象としてはそんな感じ。
 姫はピンクを基調にした品の良いドレスを身に纏い、長く豊かな金の髪は巻き毛でボリュームと華やかさを際立たせている。エメラルドの瞳は強い輝きを秘めていて、正面から向き合えば、自然に襟を正してしまう。
 年はわたしと同じ。
 十六才とは思えぬ貫禄と威厳を備えた姫の背後には、一人の騎士が控えていた。

 無表情も手伝って冷たい印象を受ける瞳、真一文字に結ばれた唇、頑強で大きな体躯。
 はっきり言って、怖い。
 彼が着ているのは黒でも白でもない緑の制服で、四つ星の階級章をつけている。
 緑を象徴の色とするのは、王族の警護をするために選ばれた近衛騎士だ。
 近衛騎士は全員が一級騎士であり、元は黒か白、いずれかの騎士団に所属していた。

「あの人、マーカス=ウイルソン様だよ。元は黒騎士団にいて、レオン様達とは同期なんだって」

 姫付きの近衛騎士について、トニーが情報をくれた。
 黒騎士団の先輩か。
 レオンなら、どういう人か知っているはずだ。
 後で聞いてみよう。

「全員、整列!」

 パトリックさんの号令で、慌ただしく並んだ。
 足を揃えて立ち、姫に対して敬礼する。
 エミリア姫はわたし達の顔を見比べるように、視線を順繰りに動かした。
 まるで、誰かを探しているみたい。

「今日は急な訪問であるゆえ、わらわに構う必要はない。大事な修練の邪魔をする気はないので、用件が済めばすぐに立ち去る。こちらにキャロル=フランクリンと申す従騎士がおると聞いてきたのだが、どの者じゃ?」

 予期せぬことに、姫が名指ししたのはわたしだった。
 みんなの視線が一斉に注がれる。
 思わず逃げ出したくなったけど、そういうわけにもいかないから、前に進み出た。

「わたしです」

 顔を上げて、再度敬礼する。
 エミリア姫は観察でもしているのか、わたしの全身を上から下まで何度も眺めた。
 やがて、ふむと怪訝そうな呟きが聞こえた。

「やはり、見た目だけではわからんな。マーカス、そなたの剣で見極めよ」
「御意」

 初めてマーカス様が口を開いた。
 声は低く、さらに怖さが増した。

「お待ちください、姫様。これは何事ですか? この者が何かご不審を抱かせるようなことでもしましたか?」

 口を挟んだのはパトリックさんだ。
 この場を任された責任者でもあるからか、彼はわたしを庇うように立ち、姫に事情の説明を求めた。

「そうではない。面白い噂を耳にしたので、少し興味を持っただけだ。あのレオン=ラングフォードがついに選んだ恋人が同性の従騎士と聞いては、忠誠を捧げられた我ら王族とて無関心ではおれぬであろう?」

 くすくすと笑い声をこぼしたかと思うと、姫は急に真剣な表情になった。

「あの者に限って私情を挟むことはなかろうが、騎士団は実力主義の世界。色仕掛けや金品の譲渡などの不正を用いて上級騎士に媚へつらい、昇進を目論む輩がいては、騎士団の腐敗に繋がる。騎士団は我が国を守る剣と盾、いわば守護神じゃ。不穏な芽は早めに摘むべきだと思ってな」

 姫の発言に、周囲がざわめく。
 それって、わたしが色仕掛けでレオンに取り入ってるってこと?
 違う。
 入団試験だって、レオンは関わっていなかった。
 与えられた仕事も修練も、みんなと同じように受けて耐えてきた。
 特別扱いなんてされていない。
 わたしは自分の努力で、今この場に立っているんだ。

 反論したいけど、従騎士の立場で主君の言葉に歯向かうことは許されない。
 拳を強く握り締めて、爆発しそうな感情を抑えた。
 だけど、パトリックさんは違った。
 姫を毅然と見返して、口を開く。

「姫様、無礼を承知で申し上げます。この黒騎士団にそのような者は……」

 反論を口にしかけたパトリックさんの口元に、姫が扇の先を突きつけた。

「そなたの言い分はわかっている。わらわとて、本気で疑っているわけではない。ただ、宮中には無駄口を叩く輩も多くてな。暇人なのか、他人の粗探しばかりしておる。特に黒騎士団は市井(しせい)の出の者が多い。数々の御前試合で周辺諸国にまで名を轟かせ、陛下が目をかけておられるレオンへの風当たりは、そなたらの想像以上に強いのだ」

 扇を静かに手元に戻すと、エミリア姫はわたしに向き直った。

「わらわが直々に見極めたと申せば、うるさい連中も口を閉じるであろう。どうだ、キャロル。そなたが真にレオンを想うのであれば、全力を出してこのマーカスと戦え。勝敗は問題ではない。そなたの戦いぶりで、己とレオンの潔白を証明してみせよ」

 エミリア姫の真意がわかった。
 この人は、レオンを守るために、わたしに戦えと言っている。
 わたしはレオンの足枷になりたくない。
 十分戦う意味がある。

「わかりました。姫様が納得されるまで戦います」

 レオンの側に居続けるためにも、わたしは逃げない。




 修練用の軽鎧を身に着けて準備を始める。
 他の従騎士がマーカス様にも装備をと、鎧を運んできたが、彼は受け取らなかった。

「無用だ」

 威圧感のある声と迫力に、側に近寄った従騎士達が後ずさる。
 離れていても、近寄りがたい空気があった。
 だけど、怯んでいる場合じゃない。

 マーカス様は剣だけで防御もこなすつもりなんだ。
 わたしに毛筋ほどの傷すらもつけさせない自信があるからこその態度。
 眠っていた闘争心に火がつく。
 認めさせてみせる。
 レオンが与えてくれた道を、こんなところで諦めるわけにはいかない。

「キャロル、頑張れ!」
「オレ達がついてるぞ!」

 トニーやノエルを筆頭に、従騎士仲間から声援が飛んできた。
 みんなの声が力をくれた。
 緊張感で身が引き締まる。
 剣を握り、体の前で構える。
 マーカス様も剣を抜いたけど、切っ先は下へと向けて、顔と体だけをこちらに向けた。
 どういうこと?
 戦意がまったく感じられない。
 それなのに、エミリア姫は意に介していない。
 マーカス様は構えていないのに、パトリックさんに合図を出すよう指示を出した。

「キャロルの用意はできたようじゃな。パトリック、号令を頼むぞ」
「はい、……それでは、始め!」

 開始の合図がなされたけど、マーカス様は動かない。
 先ほどから、同じ姿勢を取ったまま、動く気配がまるでない。
 こちらも動かず、気配を探ってみたけど、埒が明かないと判断した。
 仕掛けるのはわたしだ。
 対等に打ち合えるなんて思ってはだめだ。
 これはわたしの全力を見るための、いわば試験。
 エミリア姫の厳しい視線を感じる。
 あの人は単なるお飾りの姫ではない。
 わたしは試されているんだ。
 この国の騎士に相応しい器かどうかを。

「はっ!」

 小さな気合の声を上げて、大地を蹴る。
 身につけている軽鎧は、先ほどの手足の重りよりも三倍は軽い。
 一気に軽くなったから、背中に羽根が生えたみたいにスピードが出た。
 間合いを詰めて、背後にまわりこもうと、左回りに飛んだ。

 マーカス様の背中が視界に入り、迷わず剣を振る。
 刃を交える音が甲高く響く。
 わたしの剣が彼の体に触れる前に、急に現れた刀身が攻撃を阻んでいた。

 マーカス様の足は一歩も動いていなかった。
 前を向いた状態で、背後からの攻撃を止めたんだ。
 剣先が逆になるよう持ち替え、大きく背後に振って、わたしの剣を受け止めた。
 敵の気配を的確に把握する鋭敏さと、身につけた反射力で、この人は四方からの攻撃に瞬時に対応できる。

 でも、これで隙ができた。
 無理な体勢からの防御、切り崩すのは容易い。

 素早く剣を引き、今度は突く。
 反応する時間を与えないはずだった。

 一撃、二撃、そして三撃目。
 剣を振るった回数だけ、銀の閃光が壁となって立ち塞がった。
 マーカス様は前を向いたまま。
 月並みな表現だけど、後ろにも目があるようだ。
 そして、どんな体勢からでも攻撃を跳ね返す筋力に、畏怖と尊敬の念を抱いた。

「隙を突くなら脚を使え、死角を狙うだけではオレの防御は崩せん」

 至近距離から聞こえた声に、ぎくりと固まる。
 今の、マーカス様……だよね?
 無口だけど、対戦相手に関心がないわけじゃないんだ。

 飛び離れて間合いを取った。
 マーカス様が振り向き、再び正面から向き合う。
 背後を取れても普通に打ちかかっただけでは正面からの攻撃と同じってことか。
 それなら……。

 筋力でも剣技でも劣るわたしが唯一勝てるものは足だ。
 幾度も繰り返された実戦形式の稽古の中で考え出した。
 わたしに合った戦い方を。

 勢いをつけて、地面を蹴りつける。
 マーカス様は右手に剣を持っているから、彼から見て左側から接近する。
 剣を突き出すが、受け止められることは予想済み。
 想像通りに攻撃は阻まれ、剣を引いて右へ動き、彼の後ろへと飛ぶ。
 マーカス様の意識も、わたしの動きを追っているはず。
 着地した瞬間に膝をバネにして、左へと向きを変えて再び飛んだ。
 剣は突きの体勢で、狙いは脇の辺り。
 宙を移動する間に攻撃の形を作り終えた。

 突き出した剣の先には何もなかった。
 大柄な体はするりと剣先から逃れ、横からヌッと現れた手が、剣を持つわたしの手首を掴んだ。

「うわあっ!」

 ふわりと体が持ち上がった。
 天と地が逆さまになる感覚。
 投げられた!
 頭が理解するのと一緒に体が動き、受身を取って着地した。
 剣はまだ、わたしの手の中にある。
 下がっている方の足に力を込めて、地を蹴ろうとしたが、背後から頭の横にマーカス様の剣が突き出されて硬直した。
 後ろを取られていたなんて、まるで気がつかなかった。

「ここまでだ」

 マーカス様は感情の読めない声音でわたしに告げると、剣を鞘に収め、エミリア姫の前に跪いた。

「マーカス、ご苦労じゃった。キャロルもな」

 エミリア姫はわたし達に労いの言葉をかけてくれたけど、結果はどうだったの?
 時間にしても、僅かだった。
 もしかして、実力を測るまでもないと判断されたの?

「そう不安そうな顔をするな、合格じゃ」

 エミリア姫は人の悪い笑みを浮かべて結果を告げた。
 気が抜けて、肩に入っていた力も抜けた。

「ほ、本当ですか? でも、少しも攻撃が決まらなかったのに……」
「従騎士に遅れを取っていては一級騎士は務まらぬ。始めに言うたであろう、勝敗は問題ではないとな。そなたの心構えと技量はしかと見せてもらった。これ以降も努力を怠らねば、一級騎士の称号を授かることも夢ではない。その日が来れば、わらわの近衛騎士に配属されるよう推薦してやっても良いぞ。そなたなら目の保養にもなるしな」
「あ、ありがとうございます。身に余る光栄です」

 最後の言葉がひっかかったけど、認めてもらえて嬉しい。
 安堵と歓喜で胸が一杯になった。

 エミリア姫が扇を振る。
 それが合図だったのか、マーカス様が立ち上がった。

「団長や一級騎士達が認めたのだ、ここにいるどの者にも素質はある。みな、これからも修練に励むが良い」
「はいっ」

 姫の言葉に、全員が大声で答えた。
 この人になら忠誠を捧げてもいい。
 そう思わせてしまうほど、エミリア姫からは温かく深い包容力を感じた。

 立ち去る二人を見送ろうと整列し直すと、執務室のある建物の方角から、グレン様がわたしを呼ぶ声が聞こえた。
 わたしの姿を見つけた彼が、こちらへと近づいてきた。

「キャロル、団長がお呼びだ。修練中ではあるが、大事な話があるので、すぐ来るように」

 エミリア姫の足が止まった。
 彼女は振り向くと、ニヤリと笑った。
 エメラルドの瞳が興味津々といった感じに爛々と輝いている。
 あの……? 先ほどまでの威厳はどこに……?

「ウォーレスの呼び出しとな? どうせ、先日のレオンの発言についてじゃろう。あの無粋な石頭め、指導者の使命だなんだと大義名分を並べ立てて、若い恋人同士の仲を引き裂く気だな。そうはさせんぞ、わらわは悲恋は好まぬ。勇敢な騎士と乙女の恋物語はハッピーエンドと決まっておる。それを邪魔する悪漢は騎士に打ち倒されて滅びるのじゃ!」

 いきなり燃え出した姫に、グレン様を始め、みんなあ然としている。
 ただ一人、マーカス様だけが無表情で立っていた。

 団長、悪者にされてますよ。
 それに乙女じゃなくて、従騎士です。
 まさか、エミリア姫はわたしが女だってことに気づいているの?
 それはないと思うんだけど……。

「わらわも行くぞ! グレン、案内せい!」
「は、はいっ!」

 グレン様もエミリア姫の得体のしれない迫力に押されていた。
 先導するグレン様、その後を歩くエミリア姫、姫の背後に影のように付き従うマーカス様、そして当事者なのにおまけのごとく付いていくわたし。
 縦一列で歩いていくわたし達に、仲間達の同情の視線が集まる。

「何だかわからないけど、ファイトだ、キャロル!」
「後で何があったか聞かせてねー」

 どんな場面でも応援してくれるノエルと、暢気に好奇心をむき出しにしているトニーの声に送られて、わたしは団長の執務室に向かった。

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