わたしの黒騎士様

エピソード6・オスカー編

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 【4】

 執務室に戻ると、団長が来ていた。
 団長は窓際に立っていて、オレが部屋に入ると底の見えない笑みを浮かべた。
 机の上に新たな書類が置いてあったが、それに手を触れる前に団長が口を開いた。

「色々と噂が立っているみたいだね。それもかなり尾ひれのついた」
「全て事実無根だ。まさか、あんたまで本気にしたわけでもないだろう」
「本気にはしてないよ。頑固者のウォーレスの反対にもめげずに純愛を貫いた黒騎士団唯一のカップルが、あっさりと別れるとは思えないからね」

 団長は笑って、机の上の書類を指差した。

「ダリク=バクターの周辺で大きな動きがあった。君の睨んだ通りだね、調べれば調べるほど資産の動きは不自然だし、怪しい人物が次々浮かび上がってくる。今までよく隠れていたものだ。ナタリーさんの男運は悪いとしか言いようがないね。どうしてこんな男ばかり引き寄せてしまうんだか」
「それには同意する。あいつは面倒臭い女だ」

 わざわざ自分から不幸の中に飛び込もうとする。
 家族が幸せなら、自分はどうなってもいいなんて、バカとしか言いようがない。

「でもね、それでも君は彼女のことが好きなんだろう? キャロル=フランクリンが君に付きまとっているのも、ナタリーさんとの橋渡しをしているからだ。敷地内であれだけの大声を出されたら、会話は嫌でも耳に入ってくる」

 団長の問いかけに、オレは無言で睨み返す。
 全てを見透かすような目で、団長はオレを見ていた。
 この人の前にいると、自分がひどくガキに思えて癪に障る。

「今の君は意地を張っている子供にしか見えないよ。言わなきゃ伝わらないことはたくさんある。オスカーは一度でも、彼女に愛していると言ったことはあるのかい?」
「ねぇよ。今さら改まって言えるかよ。薄っぺらい告白なんぞより、オレは十分気持ちを行動にしてきた」

 言葉より、行動で示してきた。
 オレ以上に、ナタリーを大事にしてきたヤツなんていない。

「気持ちなんて、言葉にしないとわからないものだよ。ナタリーさんは控えめ過ぎる人だからね。もしかすると、君が迎えに来てくれるのを待っているのかもしれないよ」

 ケイも言っていた。
 ナタリーが結婚を言い出したのは、オレが迎えに来ないからだと。
 言葉の意味がわからず聞き流していたが、あれはこのことだったのか?

「さて、世話焼きはこのぐらいにして、仕事の話に入ろうか」

 団長はきりっと表情を引き締めた。
 ここまで切り替えが完璧だと、逆に尊敬する。

「バクターの奥方が、今日の早朝の開門と同時に王都を出たそうだ。旅行にしては大荷物の上、人目を忍ぶように周囲を警戒していたので、隣街で拘束し、取り調べた所、荷物のなかから麻薬が出てきたそうだ。王都で出回っていたものとも一致した。これで尻尾と本体が繋がった」
「連れ合いを逃がしたってことは、親玉もこっちの動きには気づいてんだろうな。バクターに見張りはつけてんのか?」
「ああ、屋敷の中にいることは確認済みだ。今から逮捕のための包囲網を作る、これが配置図だ。黒騎士団と協力して事に当たってくれ。私とウォーレスはこちらに残って指示を出す、現場の指揮はオスカーとグレンに任せた」
「了解」

 配置の指示が書かれた地図を引っつかんで廊下に出る。
 忙しなく廊下を走る音が、あちこちで聞こえた。

 部屋に戻って鎧を着込み、剣を装備する。
 従騎士に用意させておいた馬に乗り、街へと駆け出した。

 移動の途中でケイの招待状のことを思い出した。
 今夜だな。
 いつものオレなら少しでも顔を出すところだが、足を向ける気にはなれなかった。




 王都の要所に騎士団員を配備して、バクターの屋敷に踏み込むと、中はもぬけの殻だった。

「こっちに抜け穴があったぞ!」

 捜索の末に見つけたのは、地下へと続く抜け穴。
 穴は数軒隣の空き家の庭に続いていて、馬車の車輪の跡が庭から道へと続いていた。
 グレンが車輪の跡を調べて、まだ新しいと呟いた。

「やられたな、目撃者の証言では、馬車は布で荷台を隠した大型のものだったらしい。王都の門はすでに閉めてあるし、連中はどこから逃げるつもりなんだ?」
「貧民街を通って北に出れば、幾つか抜け道がある。大昔の闇組織の連中が、検問を逃れるために王都を囲む壁の下をくぐる穴を掘ったんだ。手は打ってあるが、組織の連中も全て把握しているわけじゃない。一味に通じているヤツらが確保している抜け道もあるかもしれねぇ。バクターはオレが追う、グレンはアジトに踏み込んで下っ端どもを捕まえろ」

 オレの指示に、グレンは異を唱えることなく頷いた。

「わかった。バクターは殺し屋を用心棒に雇って傍に置いている。念のため、レオンとメイスンはオスカーと一緒に行ってくれ」

 グレンがその場にいた騎士を二手に振り分け、オレ達は散開した。
 街はすでに闇に覆われ、通りからは人の姿が消えている。
 騎士団員が持つ松明の火が、王都中に散らばって、街を照らしていた。

 しかし、妙だ。
 バクターはなぜ大型の馬車を使って逃げた。
 こちらの動きを察知しての緊急の逃亡であるなら、できる限り身軽にするはず。
 それは荷物を運ぶためだ。
 欲深な男は、最後まで、金になるものを運び出そうとしている。
 ヤツの資金源は麻薬と人身売買。
 麻薬ならそれほど大型の荷台は必要ない。
 それなら……。

 ヤツの向かった先がわかった。
 売り物にできる人間が大勢いる場所。
 庇護者のない子供は、絶好の獲物だろうよ。

 馬を止めて、馬首をめぐらせ、方向を変えた。
 後に続いていたヤツらも、慌てて馬を止めた。
 オレは振り返って後ろのヤツにまで聞こえるように大声を出した。

「連中の行き先がわかった。教会だ! あいつら逃げるついでに孤児院のガキ共を攫って行く気だ!」

 オレがそう言った途端、レオンの顔色が変わった。

「なんだと! 孤児院にはキャロルがいるんだぞ!」
「あ、レオン!」

 アーサーが呼び止めるが、すでにレオンは馬の腹を蹴って駆け出していた。
 なんだろうな、あいつ。
 すました顔して、内面は熱いヤツと思っていたが、恋人が絡むと表の冷静さもぶっ飛ぶらしい。
 恋は人を変えるってのをあれほど体現しているヤツも珍しい。

「オレ達も行くぞ、急げ!」

 レオンに遅れることなく、オレ達もほどなく教会に着いた。
 読み通りに馬車は教会の前に止まっていて、バクターの野郎と手下の連中がガキ共を攫おうとしている所だった。
 オレ達が間に合ったのは、キャロが抵抗したからだろう。
 あいつは腕を鎖に絡め取られて、地面に這いつくばっていた。
 ナタリーの頬も打たれたためか赤く腫れている。

 人間ってのは、怒りも過ぎると冷静になっちまうようだ。
 剣で一刀両断といきたいところだが、連中は生かしたまま捕らえて裁く必要がある。
 レオンもそれをわかっているのか、剣は使わずにキャロを捕らえていた男を倒した。

 一人が倒れると、残る三人も歯向かってきた。
 相手になり、拳を叩き込み、蹴りを食らわせて叩きのめす。
 オレ達が用心棒を全員倒してしまうと、バクターはナタリーを人質に取り、彼女にナイフを突きつけた。

「馬車にガキ共を乗せて離れろ。さもなきゃ、今この場でこいつの喉を掻き切ってやるぜ」

 ナタリーを人質に取られ、オレ達が動けない中、ガキ共が馬車へと向かう。
 それを見てナタリーが叫んだ。

「行ってはだめ! その必要はないわ、あなた達の家はここなのよ!」
「何言ってやがる! 命が惜しくないのか!」

 バクターに怒声を浴びせられても、ナタリーは怯まなかった。
 ヤツを睨み、ナイフを持つ手をしっかりと掴んだ。

「殺せばいい! ここにいる子供達は誰一人として役立たずなんかじゃない、私の命より大事な宝物よ! あの子達のためなら、この身がどうなろうと構わない! あなたの思い通りにはさせない!」

 ナタリーの言葉は予想していたものであり、彼女が彼女である証でもあった。
 そしてオレは、命がけでガキ共を守ろうとする、このバカでお人よしの女がどうしようもなく好きなんだ。

「だったら殺してやる! どうせ破滅するなら、お前も道連れにしてやる!」

 バクターがナイフを振り上げる。
 オレの目にはその動作がひどく緩慢な動きとして映った。
 ヤツの意識が完全にナタリーに向いた瞬間、地を蹴って走る。

「ナタリー、動くな!」

 叫ぶと同時にナイフを持つバクターの腕を捕らえた。
 もう片方の腕を振り上げ、拳を固く握り締める。

「地獄には、てめぇ一人で逝け!」

 腹に渾身の一撃を叩き込む。
 殴りつけた勢いで、体ごと地面に打ち付けた。
 バクターが血を吐いて悶絶する。
 やっちまったかと思ったが、構うものか。
 こいつだけはどうしても許せねぇ。
 オレの大事なものを傷つけ奪おうとした報いだ。
 息があるだけ、感謝するんだな。




 バクターと手下の連中を捕らえ、ひとまず事件は解決した。
 グレンの方も、残りの手下を抜かりなく捕らえただろう。
 連中を護送して戻ろうとしたオレは、レオン達に残れと促され、事後処理を任せて孤児院にいる。
 あれだけの騒ぎの後だ。
 ガキ共とナタリーを安心させるためだと、あいつらは言った。

 途中だったケイの誕生日祝いをやり直して、ガキ共は先ほど寝床に追い立てた。
 緊張が解れ、疲れが一気に出たのか、全員すぐに眠ってしまった。
 ナタリーは順番にヤツらの寝顔を見て歩き、掛け布を直してやっていた。
 無邪気に寝ているガキ共を見て微笑を浮かべる横顔は、絵画や彫像で表現される聖母の姿に似ていて、何者にも穢されることのない輝きを感じた。
 ナタリーは金のために身を売った自分のことを穢れていると思い込んでいるようだが、それは違う。心まで汚したわけじゃない。
 オレにとって彼女は、昔と変わらずこの世で一番綺麗に輝く光だった。

 ガキ共が寝静まり、オレ達は隣の部屋に移った。
 隣はオレの部屋だ。
 書棚と机、ベッドしか置いていない簡素な部屋は、帰って来た時に使っている。
 ナタリーと何度も逢瀬を重ねた部屋でもあり、室内で二人になれば抱き合うのが常だった。

 部屋に入るなり、ナタリーを引き寄せて抱きしめた。
 背も体もオレの方がずっと大きくなった。
 昔は逆だったのに。
 今のオレは守られるだけの子供じゃない。
 あんたが抱えるもの、全部まとめて守ってやれるぐらいには、力も権力も手に入れた。

 唇を重ねて、腰に手を這わせると、ナタリーが「待って」とオレを止めた。

「オスカー。本当に私でいいの? 後悔しない?」

 何がそんなに不安なのか、ナタリーは何度も念を押してくる。
 今にも泣きそうな目をして、オレの胸に顔を伏せる。

「もしもこの先、あなたに好きな人ができたら、私のことは気にしないでね。私には子供達がいるから大丈夫よ」

 ああ、くそ!
 なんて面倒な女だ。
 この期に及んで、まだそんなことを言うのか。

「あのなぁ、オレは他の女なんか眼中にねぇんだよ。オレが欲しいのはあんただけだ。何度も言う気はねぇからよく聞けよ」

 はっきりと聞こえるように、ナタリーの耳に囁いた。

「愛している。出会った時からずっと、オレはあんたのことしか見てやしねぇ。この先も気持ちは変わらない」

 オレの一世一代の告白に、ナタリーは目を見開いた。
 じわじわ瞳に涙が溜まり始めて、ぽろっと一筋、滴が伝い落ちていく。

「だって、私はもう若くないし、あなたに相応しいとは思えない。あなたはもう素性の知れない孤児じゃない。爵位を持つ、一級騎士よ。望めば貴族の女性でも妻にすることができる。私なんかより身も心も綺麗で素敵な人は大勢いるわ。お願いだから、もっと世の中に目を向けて」
「世の中の女なんぞ、十分見てきたつもりだ。それでもオレはあんたがいいんだよ。騎士団に入ったのも、地下闘技場で戦うよりは、あんたが安心すると思ったからだ、出世のためじゃねぇ。それに年は問題じゃねぇだろ。人間嫌でも最後はジジイとババアになるんだよ。そうなっても、オレはあんたと添い遂げたいと思ってんだ。わかったか?」

 一息に言い切って反論を封じる。
 ナタリーは泣き顔のまま、怖々と右手を上げて、オレの頬に触れた。

「ナタリーはどうなんだよ。あんただって、一度も本音を言ったことがねぇよな」

 ぴくりとナタリーは手を止めた。
 涙の乾ききらない濡れた瞳にオレの顔が映っている。

「男として愛せないのなら、そう言え。オレはもう言ったからな、後はあんたの気持ち次第だ。オレのことを他のガキ共と同列にしか思っていないなら、今ここで終わらせようぜ」
「終わらせる?」
「ああ、オレは二度とあんたの前には現れない。騎士団も辞めて、この国から出て行くつもりだ」

 ナタリーの顔から血の気が失せた。
 激しい動揺を見せて、彼女はオレにしがみついた。

「嫌よ、嫌! 行かないで! 私から離れないで! わ……私だってずっとあなただけが好きだった!」

 オレに抱きつく手に力を込めて、彼女は好きだと繰り返した。

「言ってもいいの? 好きだって……、愛しているって。あなたに他の女性がいると誤解していた時、いつ捨てられるのかと怖かった。だって、私が選ばれるはずがないもの。こんな汚れた私が……」
「あんたはどうしてそう自分を貶める。オレはあんたがどんな気持ちで男達に身を任せたのか知っている。汚れているなんて一度も思ったことねぇよ」

 ナタリーの腰を抱き寄せて、頬に唇を押し付ける。
 うっすらと熱を持った肌に舌を這わせて、ゆっくりと首筋に沿って舐めた。

「……んっ、はぁ……」

 甘さを含んだ吐息に情欲を煽られた。

「どこもかしこも綺麗なままだ。汚れてるなら洗えばいい。気になるところがあるなら言えよ。オレが丁寧に舐めとってやるからさ」

 ベッドに連れていき、横たえて覆い被さる。
 彼女の長い髪が、花を散らしたかのごとく寝台の上に広がった。
 襟元からボタンを外し、露わになっていく裸身に口づけ、手の平で肌を撫でた。

 こぼれ出た乳房を掬い上げるように掴んでゆっくりと指を埋める。
 手の中で弾ませて、先端の尖りを指先で弄った。

「あっ……、あぁ……」

 彼女が気持ちよさげに喘いでいるのを確認して、胸を交互に口に含む。
 硬くなった乳首を舌で突いて舐め上げると、彼女の体が小さく震えた。

「やぁ……、ああっ」

 軽くイッた証拠に、足の間が湿っていた。
 指でそこに軽く触れると、ナタリーは横を向いて頬を染めた。

 残りの衣服も全て取り去り、裸にする。
 オレも服を脱ぎ、着衣を床に投げ捨てた。

 肌を重ねて横になると、ナタリーはオレの首に抱き付き、キスをねだった。
 拒む理由はなく、喜んで応えた。

「オスカー、愛してる。あなたは私のものなのね」
「そうだ。これであんたはオレのもんだ。一生放す気はねぇから覚悟しろよ」

 首の付け根のよく見える場所に口づけて、所有の印しをつけた。
 夜は長いんだ。他にもたくさんつけてやる。

「そういや、あいつにもやらせたのかよ」

 嫌なことを思い出して、イラついた。
 今の今まで忘れていたが、ナタリーはバクターの野郎と愛人契約を結んでいたんだ。

 ナタリーはオレが不機嫌になった理由を知って微笑んだ。

「あの人とはまだ何もなかったの。礼拝堂に通ってきていたあの人に話を持ちかけられた時、最初は断っていたのよ。話を受けたのも、ごく最近なの。それも、あなたとお別れしてからと思っていたから、お金ももらっていないし、唇も許していないわ」

 まっすぐオレの目を見て話すナタリーの言葉に嘘はなかった。
 心のつかえが取れて満足すると、オレはまたナタリーの体を貪りにかかった。

 指で彼女の足の間にある秘部を撫でる。
 まだ十分準備のできていないそこに顔を埋め、割れ目をじっくり舐めた。

「やぁ、だ、だめよ、そんなこと。恥ずかしい……」

 足を閉じることのできない体勢を恥ずかしがって、ナタリーは抗議の声を上げた。

「あっ、ああんっ。ぁあ……」

 ぴちゃぴちゃと、わざと音を立てて攻めた。
 舌を使って中を突いたり、突起を撫でたりすると、面白いように腰が跳ね、愛液が溢れてくる。

「いやぁ、遊ばないでぇ……。あっ、あっ、んぅ……ああっ!」

 達してぐったりと力の抜けた体をうつ伏せにして膝をつかせた。
 彼女の背後にまわり、尻を上げさせて、高まったオレ自身を愛液の滴るそこに埋めていく。

「あんっ、はあっ……ぅんっ……」

 シーツを掴み、ナタリーは声を抑えて、顔を伏せた。
 彼女の白い肌に玉の汗が浮き出て流れ落ちていく。

「……くぅ…はぁ、……今日は中で出すからな、いいだろ?」
「……ぅん……ぁあ……どうし……て?」

 荒い息の下で、怪訝そうにナタリーが問いかけてきた。

「オレもそろそろ自分のガキが欲しいんだよ。血の繋がりなんぞどうでもいいと思っていたが、やっぱな……」

 一度抜いて、仰向けになったナタリーと向かい合った。
 彼女は優しい目をして微笑んでいた。
 オレの口元もつられて笑みを形作る。
 セックスの最中にこれだけ穏やかな気持ちになれたのは初めてかもしれねぇな。

「籍も入れるか。この先、そうした方が都合がいい」
「ええ、あなたのしたいようにして。こんなに望まれて、私は幸せよ」

 再び彼女と繋がる。
 正常位で交わり、唇を重ねた。

 手の平で彼女の肌を撫で擦り、唇と舌で味わうと同時に、ナタリーの中にいる自分が熱く膨れ上がっていく。
 瞬く間に余裕が吹き飛び、腰を動かして喘いだ。

「うっ……、くぅ……、ぁああっ」
「ぁあっ、……はぁ……、オスカー……あっ、あああっ!」

 精を吐き出した瞬間、視界が真っ白になった。
 達して、出し切った後も、繋がったまま抱き合った。
 そうした方が子種が奥まで届くような気がしたからだ。




 名残惜しみながら体を離すと、ナタリーに抱きつかれた。
 抱いた体が震えていることに気づき苦笑する。

「ごめんなさい、怖いの。これが夢だったらどうしようって……。やっぱりまだ信じられない」
「しょうがねぇな、寝付くまで腕枕してやるよ。明日はガキ共の前で結婚の報告するぞ。証人が大勢いれば、少しは安心できるんじゃねぇか?」

 ナタリーを抱えて、背中を撫でた。
 オレの腕の中で、彼女は安堵の表情で眠り始める。

 自分の幸せは後回しで、家族を守ることばかり考えて生きてきたんだ。
 せめてオレの前でだけは、弱さを曝け出していい。

 ナタリーを守ることだけが、オレの望みであり、生きる理由だ。
 あんたがオレの傍で笑っていてくれるなら、他には何も欲しいとは思わない。
 そのためなら面倒臭い騎士団の仕事だって、真面目に精出してやるさ。

 明日から周囲の冷やかしで騒がしくなるな。
 多少の鬱陶しさを覚えながらも、それさえも帳消しにしてしまえるほど、今のオレは幸せだった。


 END

副団長のバカップル観察記録

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