償い

傷心・3 -渡の独り言-

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 鳩音ちゃんは動揺しているのか、身動きせず、オレの手に身を委ねていた。
 ブラウスのボタンを外しながら、露わになっていく肌にキスを落としていく。
 柔らかくて弾力のある肌の感触が心地良い。
 手の平で撫でながら、ブラウスの前を開いて下着を拝む。

 純白のレースのブラジャーは、鳩音ちゃんによく似合っていた。
 細身かと思っていたら、意外に出るところは出ている。
 オレはどちらかというと、肉付きのいい女が好みなので嬉しくなった。

「鳩音ちゃんて着やせするタイプ? 結構、胸あるね」

 下着に包まれた豊満な胸に手を乗せる。
 布越しに力を込めずに揉んだ。
 鳩音ちゃんの吐く息に色気のある声が混じり始め、同時に体も強張っていく。

 やっぱり初めてなのかな。
 半年も付き合った彼氏がいれば、とっくに初体験を済ませているのだと思っていたが、予想に反して健全なお付き合いで終わっていたようだ。
 仮にしていたとしても一回か二回。
 経験を積むには至らないほどだったに違いない。

 処女のような初々しい反応を見て確信する。
 鳩音ちゃんはこんな場面で演技ができるほど器用な子じゃない。
 まずは前戯をじっくりやって様子を見よう。
 性急に求めたら、嫌な思いをさせるだけで気持ち良くなれないからな。

 鳩音ちゃんを気持ちよくさせてあげることが第一だが、オレも楽しみたい。
 まずは胸の方から味見をさせていただこう。

 ブラジャーの布地の横から手を差し込む。
 膨らみに直に触れて揉み、指で乳首を探り当てた。
 指の腹で押したり転がしたりしていると、硬くなっていくのがわかった。

「やぁ、あん、ぅあん……」

 彼女が色気の滲む声で喘ぎ、身悶えた。
 目を閉じて耐えている。
 頬は羞恥心で赤く染まり、強く握られた手の平から緊張ぶりが窺えた。

 それでも嫌だと言わない彼女が愛おしくなる。
 オレを求めてくれるその姿に、大切にしたいと温かい感情が湧いてくる。

「目を開けてごらん。恥ずかしいことなんて一つもない。それが当然の反応なんだよ。かわいくて、えっちな鳩音ちゃんがもっと見たい」

 鳩音ちゃんの手をとって、指を開くように解していく。
 緊張から解き放つために、耳元でこれで普通なんだと囁いた。

 鳩音ちゃんの人さし指を口に含み、舐めていく。
 どこに触れても気持ち良くなる。
 一つに解け合ってしまいたいほど、オレはこの子が好きになっていた。




 夢中になって指を舐めて、ハッと我に返る。
 これはちょっと変態臭かったか。
 だが、鳩音ちゃんは恍惚とした表情でこちらを見ていた。
 ホッとして指から口を離し、手を胸の方に戻す。
 そろそろ生で拝ませてもらおう。

 彼女の背中に手を伸ばし、ブラジャーのホックを外す。
 肩紐を腕から抜いて取ってしまうと、ぽろんと大振りの乳房がこぼれ出た。
 しかし、すぐに鳩音ちゃんに腕で胸を隠されてしまった。
 まだ恥ずかしいんだな。
 彼女の反応がかわいくてたまらない。
 だけど、これからもっと恥ずかしいことになるんだよ。

 浮かんでくる笑みを噛み殺して、下腹部を覆う下着に狙いを変える。

「着替えもないことだし、下も脱いでもらうよ」

 ショーツに手をかけて引き下ろす。
 秘密の場所は黒い茂みで隠されていて、悩ましい眺めを醸し出している。
 脱がせたショーツを他の衣服の上に投げ落とし、生まれたままの姿になった彼女をベッドの上で組み敷いた。

「あの……、わたしだけ裸って不公平です」

 赤くなった頬を少し膨らませて、鳩音ちゃんが文句を口にした。
 オレのパジャマを引っ張る仕草が、半端じゃなくかわいらしい。
 でも、自分で何を言ってるのか、わかってないんだろうな。

「脱いでもいいの?」

 わざと耳に息を吹きかけて囁く。
 鳩音ちゃんは感じて身をよじり、切なく喘いだ。
 彼女から言い出してくれたんだから、ここは応えないといけないよな。

 パジャマの上着を脱いで、上半身裸になった。
 下も脱いでしまおうかと思ったが、下半身のアレが硬くなり始めているのに気づいてやめておいた。
 入れるにしても、自分で処理して抜くにしても、鳩音ちゃんに見せるのはまだ早い。

「下はやめとくよ。初めての子に見せるには刺激が強すぎる」

 オレがそう言うと、鳩音ちゃんは安堵の表情を浮かべた。
 キスをして、指を彼女の秘所へと伸ばす。
 曝け出されたその場所を、優しく撫でていく。
 入り口は少しだけ湿り気を帯びているが十分とは言えず、まだ受け入れ準備が終わっていない。
 もうちょっと刺激が必要か。
 愛撫の指を動かして、クリトリスに触れてみた。

「んんっ、はぁんっ」

 鳩音ちゃんはびっくりしたように体を跳ねさせて喘いだ。
 快感よりも驚きが勝ったようで、オレの体にしがみついてきた。

「やぁん、わ…渡さん。そんなとこ……、触らないで……」

 泣き声に似た弱々しい声でされた鳩音ちゃんのお願い。
 触れ合うことで知ることができた彼女の新たな一面が、さらにオレを惹きつける。
 無意識に笑みが浮かんで、頬にキスをしていた。

「わかったよ。じゃあね、これはどう?」

 胸へと愛撫の手を戻す。
 ぷるぷる弾ませて量感を楽しみながら、先端の赤い果実にしゃぶりつく。
 舌で乳首をつつき、吸ってみたりして反応を確かめた。

「ああっ……! んぅ、あぁっ…」

 感度の良い彼女の体は、胸への刺激で昇天寸前だった。
 このままイかせてあげて、もう一度始めから体を高めよう。
 君の体に性の悦びを覚えさせてあげる。
 自分から求めたくなるぐらい、気持ちよくしてあげるからね。

 鳩音ちゃんの膝を持ち、足を広げさせた。

「足を広げて、オレに見せて。鳩音ちゃんの大事なところを全部だよ」

 言葉にして囁くのは、羞恥心を煽るため。
 何をされているのかわかった彼女は顔を覆って恥ずかしがった。

「や、やだぁ。見ないで。恥ずかしい……っ!」

 見ないでって言われても、無理だ。
 愛しくて大事にしたいのに、恥ずかしがって泣きそうな彼女に欲情している。

「わ、渡さん、離して! やだ、見ないで、お願い!」

 鳩音ちゃんの懇願に少しだけ腕の力が緩む。
 だけど、欲望の方が勝ち、足は捕らえたままだ。
 オレの目の前で鳩音ちゃんの体が達していく。

「あっ、はぁ……、ぅああんっ!」

 秘裂から甘い蜜がさらに湧き出してくる。
 彼女が絶頂を迎えた証拠だ。
 満足して、押さえていた足を解放した。

 鳩音ちゃんは両腕で自分の体を抱きしめると、オレに背中を向けてしまった。
 一瞬焦ったが、上からこっそり覗き込むと、赤くなっている横顔がちらりと見えた。
 泣いているわけではないと知り、胸を撫で下ろした。

「ひ、ひどい。やめてって言ったのに……」

 怒っているのと羞恥心で、彼女の声は震えていた。
 調子に乗りすぎたな。
 静かに寄り添い、努めて優しく声をかける。

「ごめんね、鳩音ちゃん。だけど、かわいかったよ」

 彼女はぴくりとも動かない。
 まずいな。
 マジで怒らせてしまったか?

「オレのこと嫌いになっちゃった? だとしたら、悲しいな」

 これは本心からの言葉だ。
 体を重ねるほど、オレは彼女が好きになった。
 自業自得だとはいえ、せっかく両思いになれたのに、こんな形で終わらせるのは悲しい。

 そこでようやく鳩音ちゃんが動いた。
 オレの方を向き、怒っていた顔を苦笑へと変えていく。

「好きです。嫌いになんてなれない」

 不安になりかけていたところに嬉しい返事を聞かされ、衝動的に唇を重ねていた。
 鳩音ちゃんの腕がオレの体に絡められて、距離が近づく。

「鳩音ちゃんの声、もっと聞かせてね。そしてオレの頭の中を君でいっぱいにして」

 囁きを落として、蜜で溢れた花弁の中に指を入れていく。
 傷つけないように注意して、ゆっくりとした動きで探り始めた。
 鳩音ちゃんの感じる場所を探す。
 色気を感じさせる吐息や喘ぎが彼女の唇の隙間から何度も吐き出された。

「やぁん、あぁん、イク……。だめ、やぁ……、渡さぁんっ!」

 理性を飛ばして、鳩音ちゃんがオレの名前を呼ぶ。
 秘裂に潜り込ませた指がぎゅうっと締め付けられて、正直な体の反応を教えてくれる。
 ここにオレ自身を突き入れたい。

 膨らんでいく欲求とは逆に、理性から冷静になれと警告が発せられてくる。
 こんな展開は予想外だった。
 今日、鳩音ちゃんが来ることも、こうしてベッドに誘うことも、突発的に起こったことだ。
 ましてや彼女の処女をもらうには、雰囲気がなさすぎるかもしれない。
 土壇場で迷うオレもどうかと思うが、気になってしまったものは仕方ない。
 今日は諦めて、次のデートで仕切りなおした方がいい。
 初めては思い出に残るものにしてあげたい。
 入れていた指を抜き、キスで終わらせようと動いた。

「渡さん……」

 口付ける前に、鳩音ちゃんから手を伸ばされた。
 声から彼女の不安を感じ取る。
 安心させてあげたくて、抱きかかえて頭を撫でた。

「ど…して? わたしのこと、抱きたくないの?」

 彼女の不安の理由を知って、頬が緩む。
 覚悟を決めてくれていたお礼代わりに、額にキスを落とした。

「抱きたいけど、鳩音ちゃんは初めてだからじっくりしたいんだ。焦らなくても機会はたくさんあるんだ。入れるのはまた今度にして、今日は鳩音ちゃんをえっち大好きな子に調教しちゃおうかと目論んでいたりするんだ」

 鳩音ちゃんに逃げ道を与えて、年上の余裕を見せようとする。
 実は結構キツイ。
 下半身はやる気満々なわけで、ここで終わらせるなら、すぐにトイレか風呂場に逃げ込むしかない。
 できるだけスマートに移動しなければ。
 鳩音ちゃんに気取られてはいけない。

 頭の中でいかにして気づかれずに昂った体を鎮めるかを考えていると、鳩音ちゃんが口を開いた。

「平気だから、怖くないから……。わたしは、渡さんとしたい」

 思いがけないOKの返事にびっくりした。
 冷静になって言われた言葉が理解できると、嬉しくなってきた。

「そういうこと言われると、押さえられないよ。後悔しないでね?」
「しないよ。あなたが好きって気持ちは本物だと信じてるから」

 オレ達の気持ちは最高潮に高まっている。
 鳩音ちゃんにも怯えや躊躇う気配はない。
 よし。

 その気になり、ベッドから下りてズボンと下着を脱ぐ。
 おっと、忘れるところだった。
 タンスの引き出しをかきまわして目的の箱を見つけ、その中身――コンドームを取り出して装着する。
 ピルは飲んでないだろうし、オレが気をつけてあげないとな。
 いざとなったら責任を取る気はあるが、できちゃった結婚はなるべく避けたい。

 鳩音ちゃんはベッドに横たわり、身を硬くして、オレを待っていた。
 いよいよと覚悟して、緊張しているんだろう。
 彼女の上に跨り、事を起こす前にもう一度唇を重ねた。
 こちらが微笑むと、鳩音ちゃんの表情も安堵で緩んだ。
 何も心配しなくていい。
 オレがリードしてあげる。

「目を閉じて、力はできるだけ抜いて」

 彼女の首筋から胸にかけて、肌を唇で愛でる。
 指を秘裂へと這わせて、入り口の具合を確認した。
 愛液で濡れたその場所は、先ほどとは違い、解れて迎えの準備を終えていた。

「濡れ具合はいいみたいだし、入れるよ」

 オレ自身をゆっくりと挿入していく。
 う、さすがに狭いな。
 侵入を拒もうとするかのごとく強く圧迫されて、刺激が絶えず与えられる。

「ぅん……、ふぅ……、うぅん……」

 鳩音ちゃんは声を殺しながら、挿入の感覚に耐えていた。
 痛みはそれほど感じていないようだ。
 破瓜の痛みは人それぞれだと聞くし、彼女が痛くないならその方がいい。

 奥へ行く手前で、行く手を阻まれる。
 処女膜の辺りまで来たらしい。
 肌へキスの愛撫を続けつつ、一気に腰を進めた。

 鳩音ちゃんの体が、一瞬だけ引きつったように動いた。
 やっぱり痛いんだ。
 ごめんね、もうちょっと我慢して。

「ああっ、ぅん、あんっ」

 しがみついてきた鳩音ちゃんが声を上げた。
 オレの息子は彼女の中にしっかりと納まっている。
 とりあえず、うまくいった。
 安堵から、息を吐く。

「……はぁ。目を開けてもいいよ、ちゃんと入った。オレと鳩音ちゃんは、今繋がってるんだよ」

 そう言って囁くと、鳩音ちゃんは目を開けた。
 彼女はうっとりした目でオレを見つめ、いきなりハッと慌てだした。

「渡さん、あの、その……」

 何か気になることがあるのかと問い質すべきなんだろうが、オレの理性も限界だ。
 とりあえず、一回させてもらってから話を聞こう。

「動くよ。最初は気持ちよくないかもしれないけど、我慢してね」

 いきなり激しく腰を使うわけにはいかず、緩慢な動きから始めて様子を見る。
 手は胸に添えて、まわすように揉む。
 手の平で捏ねている丸く盛り上がった丘の先端に咲く蕾を口に含み、舌で弄んだ。
 彼女の体が達する度に、オレ自身への締め付けが強くなる。
 気持ちいい。
 もう、イきそう……。

「鳩音ちゃん、君の中ってすごくいい。柔らかくて、温かくて、離したくない」

 体の相性もばっちりかも。
 鳩音ちゃんは、オレの理想の女の子かもしれない。
 肌を重ねる時間が長くなるほど、彼女に深く溺れていく。

「渡さん、わたしも……」

 瞳に涙を滲ませながら、鳩音ちゃんが呟く。
 先を聞かなくてもわかる。
 彼女もオレを心から欲しがってくれていることが。

 耳に聞こえてくるのは呼吸と喘ぎだけになり、夢中になって彼女の中を出入りし、突き上げる。
 その度に、鳩音ちゃんの汗に濡れた体が艶めかしく弾む。

「ああんっ、……ふぁ……、ぁああっ!」
「くはぁ……、うぁ……っ!」

 彼女がイクと同時に、オレも達する。
 瞬間的に天国の扉を垣間見て、現実に戻ってきた。
 うはぁ、もう最高。
 久しぶりってこともあるが、こんなに新鮮で充実した交わりは初めてだ。
 悦に入って満足しているオレとは対照的に、鳩音ちゃんはぐったりと寝具の上でうずくまって息をしていた。
 すぐに動くのはつらいだろうし、しばらく休んでもらおう。

 身を起こして避妊具を外し、始末する。
 体を繋げたばかりとはいえ、全裸は何かとまずい気がしたので、下着とパジャマのズボンを身につけてベッドに戻る。
 鳩音ちゃんはうずくまったままこっちを見ていた。
 ダンボールに入れられた捨て猫を連想させる頼りなさそうな顔をしている。

 ああ、オレが逃げるかもしれないと不安になったのか。
 大丈夫だよ、オレはどこにも行かない。
 ヤリ逃げなんか絶対にしないから。

 もちろん問われてもいないことを話す必要はない。
 何食わぬ顔で彼女のところに戻った。

「鳩音ちゃん、体は平気?」

 問うと、鳩音ちゃんは恥ずかしそうに目を伏せて頷いた。

「はい、その、何とか……」
「無理しなくていいよ。落ち着くまで休もう」

 ご飯も後でいいや。
 それより、今はこの子の温もりを感じていたい。
 鳩音ちゃんを抱き寄せて、背中を撫でる。

「渡さん、大好き」

 鳩音ちゃんはオレの胸に顔を寄せて、甘えてくれた。
 ん、いいな、こういうの。
 オレは甘えてもらう方が好きなようだ。
 自分の懐に入れたものは、人でも物でも何をしてでも守りたいと思う。

 今までの彼女達のように、鳩音ちゃんもいつかオレに愛想を尽かして離れていくかもしれない。
 それでも、今胸に宿ったこの気持ちはオレの本心からものなんだ。
 別れても出会ったことを後悔せずに済むように、彼女がオレを裏切らないことを心の底から願う。

END


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