欲張りな彼女

秀の独り言

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 素直じゃないオレは、好きな子に意地悪をする典型的なガキだった。
 気を引きたくて、ちょっかいをかけるものの、彼女はいつもオレの片割れに泣きついていく。

「優ちゃーん、秀ちゃんが意地悪する!」
「またか、知恵こっちにおいで」

 そうなってしまうと、オレは謝ることも邪魔をすることもできずに、その場を離れるしかない。
 優に慰められて機嫌が良くなった知恵は、しばらくしてオレが戻ると、けろっとして普通に接してくる。
 オレは優に対する敗北感を常に感じていた。
 だから、知恵が他のヤツらにちょっかいをかけられると、真っ先に飛んでいった。
 体を張ってあいつを守ることで、オレは自分の気持ちを示してきた。
 知恵もオレに対する好意を確かに向けてくれていた。
 あの夏の日に、優と知恵がキスをしているところを見るまでは、オレにも勝機はあると希望を持っていたんだ。




 どっちか一人しか選ばれない。
 オレと優は、その固定観念に縛られて焦り、二年も遠回りしてしまった。
 欲張りだから、どっちも欲しい。
 知恵はそう言って、オレ達二人を望んでくれた。
 言葉通り、あいつの愛情は平等で、不満を覚えることはない。
 彼女を独占したい気持ちはオレにも優にもある。
 それでも、この状態が幸せな気がしてくるから不思議だ。
 オレは優も好きなんだ。
 あいつはオレの半身で、最も頼れる相棒。
 惚れた相手も同じだなんて、一人になるはずの人間が不本意にも分かれて生まれてしまったんだって思えるほど、オレ達は求めるものが同じだった。
 知恵は幸せ者だ。
 こんないい男を二人も独占しているんだからな。
 欲張りの代償に、一人でオレ達を満たすのは大変だぞ。
 二人分の欲望をその身に受け止め、疲れてヘトヘトになって眠る彼女の姿を思い浮かべて苦笑した。


 END


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