その6
「…ひどく‥‥ねえ。その言葉、責任持てよ?」
大袈裟な吐息の後、オルガが企むような笑みを浮かべた。
彼は鷹耶のズボンを下着ごと剥ぎ取ると、もたげかけてた証をぎゅっと握り
絞めた。急な刺激にビクンと身体を反らせる鷹耶。小さく喉を鳴らすと、自
身を捕えている男を窺うよう視線を絡ませた。オルガは僅かに口角を上げる
と、彼自身を追い上げるよう扱き始めた。
声を殺し息を弾ませて行く鷹耶。朱に染まった頬が、発熱によるモノでなく、
彼自身の昂ぶりから来てる事を物語るよう、質量を増す。だが…
強い開放感を迎える前に、根元を何かで絞めつけられてしまった。
「‥‥何を‥?」
不安気に窺い見る鷹耶。
「ただのリボンさ。ルーが使ってるのを拾ったままだったんでね。」
自分が着ているズボンのポケットを示しながら、オルガが愉しげに話した。
彼は向けられる訝しげな視線を肩を竦ませかわすと、鷹耶をうつ伏せに返し
た。膝で立つよう腰を浮かされ、彼の両膝を開くと、オルガは身体を割り込
ませた
「…あ。なに‥‥ん‥っ。」
冷んやりとした液体が双丘の谷間を流れる感触に、鷹耶が身震いをさせる。
「ココ‥昨晩のおさらいしよーな。」
言いながら。オルガが指を蕾に沈めさせた。
「ん…。ふ‥‥あ…ヤだ‥‥‥んっ。」
忍び込む異物感は、苦しさと共に奇妙な疼きを呼び覚まされるようで。鷹耶
は身退避いだ。オルガは腰が逃げないようしっかり抑えながら、指を更に増
やし挿れる。蠢きながら奥へと指先が生き物のように進む。
「…あっ。く‥‥ん‥っや‥嘘‥だろう‥‥‥?」
不意に込み上げて来た感覚に、途惑うような声が零れた。
「何が…?」
承知っていながら、オルガが惚けてみせる。
「…ん。こ‥んな‥‥。んっ…ふ‥‥‥」
「こっちはちゃんと覚えてるじゃねーか。身体の方が記憶力いいな。」
「な‥? く…ぅ‥‥んっ‥‥‥」
揶揄するように笑う彼への文句は、ダイレクトに前に響く快楽の波に飲まれ
てしまった。
「オ‥ルガ…。‥‥前…外せ‥よ‥‥‥」
「辛いか‥? …望み通りだろ‥?」
ニヤリ‥と苦しげな鷹耶に笑んで返すオルガ。
「ち‥違げー‥よ…。俺が‥言った‥のは‥こんなんじゃ‥ねー‥‥」
「…自分の身体を傷めつけて、逃れたかったんだよな?
お前を苛む悪夢からさ。だから誘いかけたんだろ‥?」
小さな吐息の後、オルガは指を引き抜いた。彼は低く静かに言い切ると、彼
を仰向けに返し、肩口を抑え圧し掛かった。
「…オルガ‥。」
「‥けどな。俺はお前を傷めつけるだけなら、抱かねーよ。
昨晩みたいに甘えてみろよ? 寂しいのは嫌だ‥ってな。」
困惑顔を浮かべていた鷹耶の表情が動揺の色に変わった。
「温もりが欲しいなら、いくらだって甘やかしてやる。
だが…自棄に付き合わされるのはごめんだね。他を当たってくれ。」
突き放すように言うと、オルガが身体を起こした。
「オルガ…!」
ベッドから出て行こうとする彼の腕を鷹耶が掴む。
「‥‥ごめん。…でも‥‥俺だって解らないんだよ。
ただ…苦しくて。何かで紛らしたかったんだ‥‥‥。」
逃さないよう掴んだ腕に力を込める鷹耶が、ぽつりと漏らした。
「…それを悪いとは言わねーさ。だがな、どうせ紛らすなら、もっとポジ
ティブになれよ。人生楽しんだもん勝ち‥ってね。」
オルガは彼の方に身体を向けると、自由な左手をそっと彼の頬に伸ばした。
「でも…俺は‥‥‥‥」
「お前が何を抱え込んでいるのかは知らねー。
けどな。それが重く辛いモノなら尚更、切り替える事覚えろよ。」
「切り替える…?」
「重い荷物背負ったままじゃ、簡単にバテちまうだろ?
だからさ。時々下ろして解放されるのも必要だろうって事さ。
んで。そーゆう時はとことん楽しむ…くらいの気概を持てってね。
解ったかな? 坊主?」
柔らかな口調の最後はからかい混じりで、鷹耶の額を弾くオルガ。
「…なんか。子供扱いされてる気がするんだけど‥‥?」
「…17歳だっけ? ガキだろ。どうみてもさ。」
「俺歳しゃべったっけ?」
「昨晩な。」
にっこりとオルガが笑んだ。
「あっそ…。んで。俺をガキ扱いするあんたは幾つなんだ?」
「26歳。一応人生の先輩な訳だ。
優しい先輩のアドバイスには、耳傾けた方がなにかと得だぞ?」
「…優しい‥ねえ。」
「ん…? 納得行かねーか? なんだったら、実地で教えてやるぜ?
お前もちゃんと愉しむ気が出てきてるなら…だけどな。」
彼の顔を覗き込むよう近付けたオルガが誘いかける。
「…どうする鷹耶?」
「‥‥努力‥してみるじゃ…駄目か?」
まだ少し躊躇いを残す鷹耶が素直に訊ねた。
「…ま。いいだろう。…たっぷり溺れさせてやるよ。」
人の悪い笑みを浮かべると、オルガは彼に口づけた。
「ん…。ふ‥‥‥」
口づけの深さを増しながら、片手を胸の突起へと滑らせてゆく。
尖った部分を捉えると、身体がぴくん‥と跳ねた。
「…あ。‥‥そこ…やめ‥ろ‥よ。…んっ‥」
「こっちは‥嫌がってねーみたいだぜ?」
ソコから広がる疼きと深い口づけに、触発されてしまった屹立した部分を
オルガが弾いた。
「んっ…。それ…もう外して‥くれよ‥‥。」
未だ戒められたままのソレの解放を懇願する鷹耶。
一時萎えてたはずのソレは、彼から与えられる熱に応えるよう、すっかり元
気を取り戻していた。それは先程までの達せられないもどかしさも呼び戻し、
更なる熱気となって渦巻き始める。
「…後悔するなって、言ったろ‥?」
愉しげにオルガが笑う。彼は鷹耶の足を開くと、蕾に指を這わせた。
「あ‥っ。…ん‥っく‥‥‥」
まだ十分滑りを残した入口は、侵入者をあっさりと受け入れた。
あっという間に増やされた指が内壁を蠢きまわる。
「あっ‥‥ふぅ…っ。ん…オル‥ガぁ…。マジ‥キツ‥ぃって…」
解放を求めて熱く渦巻くソレを持て余した鷹耶が焦れた。
内壁からも込み上げてくる疼きが、彼の声に艶を孕ませる。
「なあ…達かせて‥くれよ…。頼‥む…から‥‥‥」
腕を伸ばしオルガの髪を掻き抱くよう懇願する鷹耶。涙目で切なげに訴える
様子は、昨晩熱に浮かされながら取り縋って来た彼を思い出させた。
「…仕方ねーな。‥俺って優しいからなあ‥‥」
独りごちるように吐くと、オルガは枕元のタオルに手を伸ばした。
鷹耶の戒めをゆっくりと解いてやる。
彼の手に促され、待ち兼ねたように鷹耶がようやく昇り詰めた。
「はあ…はあ‥‥。はー‥」
胸で呼吸を繰り返しながら、達した余韻に浸る。
「流石元気だな。こいつはさ。」
オルガは彼を受け止めたタオルをほおると、彼自身に触れた。
「昨晩も随分搾ったんだけどな。」
「な‥。…ん‥‥あっ…」
ツツ‥と彼自身に指を這わせると、それは秘所まで辿り着いた。迷わずその
場所に指が沈み込んでくる。
「そろそろさ‥俺もここへ入りたいんだけど。…いいか?」
低く艶を帯びた声音が耳元に響く。
鷹耶は一瞬顔の赤みを増したものの、すぐに挑戦的な瞳を彼に向けた。
「…ああ。いいぜ。」
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