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「はあ…はあ‥。…もしかして。なにか飲ませた?」
肩で息をしながら、解放されたソロが嫌な予感を膨らませる。
「媚薬をな。」
「な…」
「毒を盛った代償にしては、軽かろう?」
口の端を上げ、ピサロが薄く嘲笑った。小さく身震いしたソロが、自分を抱きしめるよう
両腕を掴む。身の内に熱く渦巻いてゆく感覚が、徐徐にはっきりしてくると、ソロは上目
遣いにピサロを睨んだ。
「なんで…いまさら、薬なんか‥‥‥」
「貴様が不快で、私が愉しめるのであれば、十分代償になろう。」
「そんな‥事。…んっ‥」
彼から逃れようと、退けるよう伸ばした手をぐいっと引かれ、彼の胸の中に倒れ込むカタ
チとなったソロ。そのまま強引に顎を上向かされると、深い接吻が降りてきた。
身内に溜まった熱をより煽ってゆく接吻。角度を変え、口腔を我が物顔で蹂躙する熱い舌
に翻弄されながら、ソロは急速に熱を帯びてく昂ぶりを思った。
「‥あっ…ん‥‥‥」
ピサロが下肢に残っていたソロの服を剥ぐと、露になった屹立が夜の冷気に晒され、ビク
ンと躯が悸えた。彼の躯を反転させ組み敷くピサロの身体が、ソロの背を覆う。
背中越しに回された腕がささやかな突起を捉え、つまみ上げ、こね廻された。
耳朶を甘噛みされ、耳の中を湿った舌が舐る。悪戯な唇は首筋を下りてくと、背中の窪地
にきつく吸い付いた。
「あっ…はあ‥っ。あ‥ん‥‥やっ‥‥‥」
次々と襲ってくる熱いうねりに、ソロの躯が跳ね上がる。
ソロは艶めいた嬌声をこぼしながら、いつもより手荒く思える愛撫に応えた。
「あっ‥ああっ‥‥。」
所有の証を躯中に散らすと、先走りを掬う仕草で彼の屹立に触れたピサロの手が、差し出
されたよう揺れる双丘の蕾を暴き始めた。1本2本と増やされてゆく指を呑み込まされ、
ソロが短い吐息を繰り返す。
「あ…や‥。もっ‥‥」
内壁を蠢く指が、渦巻く熱流を出口へと誘うのだが、決定的な刺激までに至らず、ソロが
苦しそうに焦れた。
不意にピサロがソロの躯を放す。
支える腕を失ったソロの躯がくたりとシーツの海に沈んだ。
「…ピ‥サロ‥?」
ゆっくりと躯を返したソロが、ピサロの様子を窺うよう視線を向けた。
脱ぎ捨てられた黒の上着がぱさりと落ちる。帯を解き、ゆったりくつろがれてゆく姿を見
つめていたソロは、彼の昂ぶりを目にすると、コクリと喉を鳴らした。
「ソロ。」
瞳を潤ませ、上気した顔で見つめるソロに満足したピサロは、薄く嘲うと、彼を招くよう
腕を伸ばした。
ゆっくり上体を起こしたソロの手を屹立した自身へ導く。
「欲しいか‥?」
訊ねたピサロに、ソロは小さく頷いて答えた。
「ならば‥」
判るだろう?…囁いて、ピサロは身体を開いた。
ソロは誘われるまま彼の昂ぶりに唇を寄せると、脈打つ熱塊に口づけた。
しっとりと汗ばむ茎に舌を這わせ、鈴口を添えた指の腹で撫で摩る。
滴る白露を塗り込めるよう指先を滑らせた後、ソロは質量の増した塊を口に含んだ。
「ん…ふ‥‥‥」
精一杯含ませたソロが、息苦しさを思いながらも賢明に奉仕する。
熱く脈動するソレは、彼自身の昂ぶりとも連動し、更なる昂揚感をもたらしていた。
「‥もういい。」
「あっ…」
夢中になってたソロは、急に行為を切り上げられ、不服そうな声をもらした。
ピサロは満足気に嘲うと、顔を上げたソロの両脇に手を入れ、彼の躯を抱き上げた。
膝の上に落とされたソロとピサロの目線が絡みあい、ソロの目元が朱に染まる。
「ピ‥サロ。あんたが…欲しい。きて‥くれよ…」
焦らされてるのだと確信したソロが、解放の言葉を口にした。
「もう降参か‥?」
揶揄するよう微笑うピサロに、ソロが躯を委ねさせ頷く。
「ね‥お願い。」
彼の頬に手を添え、ソロが懇願した後口づけた。
躯が熱くて堪らないのに、今一歩のところではぐらかされて、とっくに限界を迎えていた
のだ。瞳を潤ませ、濡れた吐息を弾ませながら、熱の解放を求めてソロが啼いた。
熱い楔が、待ち侘びていた秘所をゆっくり穿ってゆく。
「ふ…ああっ‥!」
自身の重みが貪欲に楔を呑み込んでゆく感触に、ソロが躯を戦慄かせた。
「あ…熱‥い‥‥‥。んっ‥ぁ‥‥‥」
ソロはピサロに取り縋り、サラサラした彼の銀糸を掻き抱いた。
「あっ…ああ‥‥‥」
すべてを収めたピサロが、肩口に顔を埋めるソロの髪を梳き、唇を重ねさせた。
しっとり重なった唇は、すぐに深いものへと変わると、湿った音が静かに空間を満たした。
深い接吻に合わせながら動き始めた結合からも、くぐもった音がこぼれ出す。
ソロは内壁の敏感な場所を2・3度擦られると、呆気なく昇り詰めた。
「は…あ‥ああっ‥!」
達った瞬間無意識に締め付けたのか、ピサロも大きな抽挿を繰り出し、ソロの中に欲望を
叩きつけた。ドクン‥と内奥に感じる飛沫に、ぐったりしていたソロの躯が跳ねる。
「…っく。はあ‥は…あ‥。」
肩を微かに上下させるピサロの首筋に、ソロが小さな口づけを落とした。
ピサロと瞳を交わすと、両腕を首に絡め、唇を重ねる。
強求るよう差し込んだ舌で彼の歯列をなぞり奥まった場所を目指すと、熱い舌が絡んで
きた。
「ふ…ぁ。あ‥ん‥‥っ。あっ…」
しばらくソロに付き合っていたピサロだったが、物足りなくなったのか、淡く色づく果実
に悪戯な彼の手が伸びた。
固くしこった尖端を指で挟みきゅむきゅむと転がしてくる。ソロは色めいた声をこぼれさ
せ、接吻を解いた。
白い喉を反らせたソロから、短い嬌声が次々こぼれ落ちる。
ピサロはソロの肩口をベッドに押し付けると、脚の裏に手を置きぐいっと開かせた。
「あっ‥ん‥っ。はぁ‥‥」
急に体勢を変えられて、ソロが内壁にもたらされた刺激に身動いだ。
組み敷かれる形となったソロは、抽挿を再開したピサロに翻弄されながら、ぎゅっとシー
ツを握り込んだ。熱い楔がもたらす悦楽の波に飲まれぬように。
張り詰めていた彼の屹立に、ピサロの手が絡む。
「あっ‥‥」
熱流を阻む為添えられたのかと、ソロが瞬間緊張した。
「あ‥ん…。はっ‥ふ‥ぁ。あ‥‥‥」
予想に反して、絡まってきた指先は、快楽を深めるよう上下される。
「ピ‥サロ。あっ‥はあ…は‥ぁ‥ああっ――!」
内と外の刺激に追い上げられ、ソロは渦巻く熱流を解放させた。
「はあ‥はあ‥‥」
脱力したソロが、肩で大きく息を継ぐ。だが、解放後の余韻に浸る間もなく、内壁に収ま
る楔が大きく打ち付けられた。
「あっ‥ん‥‥」
ギリギリまで引き抜かれ、大きく穿ってくる屹立に、ソロの躯が跳ねる。
滑りがよくなっている内奥を侵略者が好き勝手に貪ってくるので、ソロ自身も硬度を瞬く
間に取り戻した。
熱い疼きが最奥から次々溢れ、止まらない。
深く浅く打ち付けてくる楔がその律動を速めてくると、最奥に迸りが放たれた。
その感触に促され、ソロも弾けさせる。ズルっと彼が出て行く感覚にすら身震いした後、
ソロはくったりと身を投げ出した。
ピサロも隣に横たわり、深い息を吐く。彼はソロを招くよう腕を伸ばした。
気怠げに移動したソロが、彼の二の腕を枕に寄り添う。
「ピサロ…ね、もっと――」
まだ身の内に残る熱を燻らせ、ソロが甘え強求った。艶を孕んだ瞳が、彼の牡を刺激する。
ピサロはひっそり微笑うと、彼の髪を優しく梳いた。
「…ならば、自分でやってみろ。」
面白そうに言い付け、ソロを促すピサロ。彼は渋々と身体を起こした。
既にスタンバイ状態にある屹立に、コクリとソロが喉を鳴らす。
あまり力の入らない躯をどうにか移動させ、ソロはピサロの身体を跨いだ。だが…
「ピサロ‥。出来‥ないよ‥‥」
膝を立てようと数度試みたが、足が笑って上手くいかず、ソロが眉を下げた。
そのままぽすんと彼の腹に座り込むと、潤んだ瞳からぽろぽろ涙がこぼれてゆく。
媚薬の作用なのか、しゃくり上げ泣くソロの姿に、ピサロが苦く笑い身体を起こした。
「ピサロぉ‥」
「可笑しな奴だな、お前は…」
ソロを膝に抱きながら、その表情を覗き込むと、彼は不満そうに眉根を寄せた。
「ピサロが‥変な薬飲ませるからだろっ。‥もう使わないって言ったのに‥!」
「記憶にないな‥。」
「言ったもん。」
膨れっ面のソロからも、止まらぬ涙が溢れこぼれる。
「忙しい奴だな。泣くか怒るかどちらかにせぬか?」
「だって‥止まらないんだもん‥っ。」
ソロ自身制御出来てない事象だけに、困ったようにしゃくり上げた。
ピサロは肩を竦めると、彼の背に腕を回し引き寄せ、口づけた。
「ん‥‥ふ‥っ。ふ‥ぁ‥‥‥」
それは最初彼を宥めるような緩やかなものだったが。
やがて。息ごと奪うような接吻に変わると、ソロの眉がきつく寄せられた。
じたばたと常にない様子でソロが彼から逃れる。
訝しく思いながらも解放したピサロは、ソロの様子を窺った。
「ぷはあ‥っ。はあ‥はあ‥。く‥苦しかった…」
ぜいぜいと肩で息をしながら、ソロが深い呼吸を繰り返す。
「どうしたのだ?」
「…息‥出来なかった。」
問いかけに、ぽつん‥とソロが答えた。
「は‥?」
一瞬何のことか掴めず、ピサロが怪訝そうに返した。が‥ソロが仕草で鼻を示すと、呼吸
困難に陥った訳に思い至る。
「くっくっく‥。はははははは‥‥‥!」
しばらく肩を震わせ声を押し殺すよう笑っていたかと思うと、ピサロは豪快に笑い始めた。
「な‥なんだよう‥?」
「あはははは‥。成る程な。どっちも塞がれてしまっては、息苦しくもなるな。」
ピサロは彼を膝から降ろすと、ベッド脇に置かれたサイドテーブル上の桜紙を、無造作に
掴んだ。きょとんとした瞳でその様子を見守っていたソロが、ついと差し出されたそれを
不思議そうに受け取る。
「…ありがと。」
条件反射的に礼を述べると、ソロは静かに鼻を噛んだ。
一息ついたソロが、ずるずるお尻で移動し、ピサロの側へ移る。
「‥落ち着いたようだな。」
「‥うん。でも‥‥」
ソロはピサロの腕に自分の手を絡めた。まだ情に濡れた瞳が臥せられ、目元が染まる。
「続き‥しよ?」
顔を上げピサロと視線を交わしたソロが強請った。
「ん…ふ‥‥はあ‥っ‥‥‥」
ピサロはソロを組み敷くと、軽く口づけを落とし、その唇を頬から首筋へと移動させて
いった。肩口から胸へ滑った器用な指先が、赤く熟した果実を摘まみあげる。ソロは吐く
息に熱を孕ませながら、彼の愛撫に応えていった。
「はあっ‥は‥‥。ふ‥‥‥」
焦躁ったく辿る手先が脚の付け根へ到着すると、期待に躯が悸える。
「あっん‥っ‥ん…ふぁ‥‥‥ああっ!」
とろとろと蜜を滴らせるソロの欲望をピサロが口に含むと、十分に熟していたソレは、
一気に昇りつめた。迸りを受け止めた彼はそれを嚥下し、さらに絞り取るよう唇を使う。
「あ‥ああっ‥ん…はぁ‥‥‥」
腰いっぱいに広がるとろける感覚に包まれたソロが躯を弛緩させた。
「‥気がすんだか?」
四肢を投げ出したソロに覆いかぶさり、試すような口ぶりでピサロが問いかけた。
ソロの顔を覗き込みながら意地悪く言うピサロに、彼が苦い顔を浮かべる。
「わかってるクセに‥」
言いながら、ソロはピサロの頭を抱き寄せた。そっと彼の耳朶を食み、小さく告げる。
「‥‥‥欲しい…」
甘さを含んだ囁きに、ピサロの紅の瞳が細められた。
「ん‥ふ‥‥」
柔らかく重なった唇から差し出された舌が絡み合う。
水音を響かせる睦み合いが解かれると、ソロの奥まった場所にピサロが侵入を始めた。
膝の裏を掴み大きく割られた彼の中に、昂ぶりが納められてゆく。
「あ‥‥ピ‥サロ‥。ふ‥ぁ。あ…ん‥‥‥」
ようやく得られた充足感に、ソロが艶やかに啼いた。
内壁を埋め尽くす圧迫感は、不思議な安堵をもたらし、満たしてくれる。
ソロは縋りながら伸ばした手を、彼の広い肩へ回した。
押し寄せる快楽の深さの物語るよう、ピサロの肩を掴むソロの指先に力がこもる。
ゆっくりと開始された抽挿に合わせて、ソロが嬌声をぽろぽろ落としていった。
「あっ…あ‥ピサロっ。ピサロ‥‥‥」
身体を折るピサロにしがみつき、彼の名を重ねてゆくソロ。
言葉には出来ないけれど。想いを込めて、ひたすら重ねさせる。
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