「‥‥なんかいつもと抱き心地違うな…」
しばらくして。鷹耶がふとそんな言葉を吐き出した。
「…この胸、どうしてんだ?」
不思議そうに言う鷹耶が、無遠慮にささやかな膨らみを掴んだ。
「‥鷹耶さん。なにしてるんです?」
呆れ混じりにクリフトが嘆息する。そんな彼に構わず、弄る手先はスカートへ伸びて…
「たっ‥鷹耶さん!?」
スカートの裾をたくしあげていく鷹耶に、頬を赤く染め上げたクリフトが身動いだ。
「下着はいつものなんだな‥」
「あ‥当たり前です! ‥って、ちょっと何してるんですか?」
たくしあげた裾を潜らせた手先が、さわさわと太股を這い上がり、中心へと向ってゆく。
意図的に蠢く指先に、続く熱を連想させ、クリフトが退避いだ。
「泣かせちゃったお詫びに、イイ思いさせてあげようと思って…」
「い‥いえっ。そんな‥別に、もう‥‥‥うわっ‥!?」
鷹耶に抱き上げられたクリフトは、ベッドへと投げ出された。
そのまま彼を組み伏せるよう圧し掛かってくる鷹耶。
「‥鷹耶さん…」
「…なんか。すげー倒錯的だよな。イケナイ事してる気分‥」
乱れたスカートから覗く白い脚、薄く化粧された顔をほんのり染め上げ、不安に揺れる濡
れた睫毛。胸元の膨らみが更に女性らしさを強調させている。
「どうせ、道化みたいですから‥。」
クリフトがいたたまれないよう顔を背けた。
「‥きれいだよ。想像以上に似合ってる‥」
「そんな事、言われたって嬉しくな‥‥っぅ‥ん…」
驚く程優しい囁きに、朱に染まった頬の赤みを増したクリフトが不服を申し立てようと
正面を向くと、接吻が降りてきた。
先程と違って、緩やかに情動を煽ってゆくような接吻。
下しきれない蜜が口の端を伝う頃、静かに離れた唇は、そのまま頬や額を滑った。
胸元のリボンを解き、ボタンを外すと白い喉と胸元が露になる。胸の膨らみを築いていた
パッドを目にすると、面白そうに鷹耶がその目を細めさせた。
「へえ‥こーなってたんだ。巧く考えたもんだな。」
短いタンクトップに胸のパッドを仕込ませたソレを確認しながら鷹耶が話す。
「あ…っん‥。た‥かや、さん…」
タンクトップをたくしあげ、露になったささやかな果実を舐め含まれたクリフトが、艶め
いた声をこぼす。
その反応に気をよくした鷹耶が、反対の果実を指の腹で転がした。
「あ…。や‥ダメ‥です‥ってば。」
「…こっちは、そうは言ってないみたいだけど?」
下着の上からそっと中心を掠めさせ、鷹耶が人の悪い笑みを浮かべた。
もたげかけた自身を指摘され、クリフトが恥じ入るよう目元を染める。
「スカートって無防備だよな‥。簡単にここへ辿り着ける。」
足の付け根を滑らせた指が中心で止まった。軽く小突くと、ビクンと彼の躯が戦慄いた。
「鷹耶‥さん。本当に…後生ですから、やめて下さい。」
今にも泣きそうな悲痛な面持ちで、クリフトが鷹耶を見つめた。
「こんな…こんな格好じゃ‥。‥‥女性代わりにされてるみたいで‥僕は‥‥!」
「‥‥‥!?」
苦しげに眉を寄せ、瞳を伏せるクリフトに、鷹耶が上体を起こす。
「クリフト…。馬鹿だな。俺はお前を女の代わりに思ったコトなんてねーよ。
…でも、お前が気になるなら、先にシャワー浴びるか? 部屋に付いてるみてーだし。」
ふわりと柔らかな空色の髪を梳きながら、鷹耶が静かに語りかけた。
そんな彼に、クリフトが小さく頷いて返す。
「‥んじゃ、一緒に入ろうなv」
嬉しそうに目を細める鷹耶。クリフトはそれも辞退したかったのだが、これ以上は譲れな
い‥といった気迫をひしひしと感じ、渋々それを了承した。
借りた服を皺にしないように‥と、脱いだ服をハンガーにかけてるクリフトを残し、一足
先に鷹耶がバスルームへと向かう。湯船に湯を張り、脱衣所で服を脱ぎ去ると、クリフト
に一声かけ、意外にもゆったりとした浴室へ戻った。
シャワーまで備え付けられたそこは、湯船へ注がれてゆくお湯の白い煙りがふんわり広が
り、心地よい清涼感を漂わせている。
鷹耶はシャワーのコックを捻ると、降り注ぐ湯を頭から被った。
全身の汚れをしっかり落とせた頃には、湯船も丁度いいくらいに湯を湛えていた。
湯船に注がれる水音が止まると、賑やかだった室内が、途端に静まり返る。
鷹耶が湯船に身を沈めるのを見計らったように、クリフトがバスルームへ姿を現した。
「遅かったな。」
「すみません‥。スカートをかけるのに手間取ってしまって‥」
「…それと、化粧落としに‥か。」
「え‥ええ。女の人って、面倒に思わないのでしょうかね?」
湯船の縁に腕を乗せ、柔らかな眼差しで話しかける鷹耶に答えると、クリフトがシャワー
を浴び始めた。
ざっと汚れを落とし、シャンプーの後、石鹸で顔をゴシゴシと洗い流す。
「はあ‥。ようやくすっきりした。」
顔を洗い終えたクリフトが、ぽつりと零した。
手桶に溜めた湯をスポンジに含ませ、石鹸で泡立てる。ソレで身体を洗い始めると、それ
まで黙って彼の様子を眺めていた鷹耶が声をかけた。
「背中‥俺が流してやろうか?」
「え‥? い‥いいですよ。自分で洗えますから‥。」
「遠慮するなって。ソレだと洗いにくいだろ?」
鷹耶はそう言うと、湯船から上がり、小さな椅子に腰掛ける彼の後ろに膝をつけた。
「ほら‥ソレ貸して。」
「‥‥はあ。」
愉しげに急かす彼に、クリフトは仕方なく従う。
しばらくは真面目に背中を洗っていた鷹耶だったが…
緊張に強ばらせていたクリフトの身体が弛緩した途端、本性を現した。
「‥こっちも、しっかり洗わないとな。」
徐に伸ばされた手が、彼の中心を捉えた。
「たっ‥鷹耶さん!?」
ビクッと躯が跳ねたクリフトが、困惑顔で振り返る。
「スポンジより、こっちの方が優しく丁寧だろ?」
「も‥もう。なに言ってるんですか?! あ…ダメ‥です…って。」
やわやわと握り込んだ手を上下され、クリフトが吐息混じりに拒否を示した。
「…本当に‥?」
ぴったりと背を抱いた鷹耶が、もう一方の手も彼の前方に回し、色づく突起を摘まみ上げ
た。同時に下方で握り込んでる指先に力を込める。
「あっ‥。ん…やぁ‥っ‥‥‥」
刹那、艶めいた声が浴室に響いた。
弓なりに反った彼のツンと尖った先を捏ね回し、軽く指の腹で押し潰す。
上下され、すっかり天を向いた中心から、透明な蜜がこぼれ出すと、クリフトから甘い
吐息が次々上がった。
「あ‥はぁ…っ。あ‥ん‥んっ‥‥‥」
「このまま昇りつめていいぜ。」
耳朶を甘噛みしながら、鷹耶が色めいた囁きで促す。クリフトはビクン‥と躯を悸わせ、
彼に身を委ねるようその背に寄りかかった。
それを合図に、鷹耶の手淫がより深まってゆく。躯の内に熱を籠もらせてゆくその動きに、
クリフトは呆気なく欲望を解放させた。
「はあ…はあ…。」
身体を弛緩させ荒く呼吸をするクリフト。鷹耶は彼の身体を反転させると、向かい合わせ
にし、唇を重ねさせた。
「ん…鷹耶‥さ…。ふ‥ぁ。んっ‥‥‥」
薄く開いた入り口から差し込まれた舌が、熱っぽく絡まる。
彼の首に回した両腕が鷹耶の緑の髪を、もどかしげに掻き抱いた。
「ふあ…ん‥‥。っあ‥‥」
接吻を交わしながらも、鷹耶の悪戯な手が彼を弄っていた。双丘の谷間を滑った指先が秘
所を辿ると、ゆっくりと入り口を解し、じわじわと指が沈んでゆく。
「‥ふ。あ‥‥はぁ‥っ。」
丹念に入り口ばかり探春する指先に焦れたように、彼に縋るクリフトが腰を揺らめかせた。
「鷹‥耶さん…。もう…」
「もっと奥まで欲しい‥?」
耳元でひっそりと訊ねる鷹耶に、微かに逡巡したクリフトが頷く。
鷹耶は2本の指を慎重に奥まで沈ませた。たっぷりと潤せた秘所は、吸い付くように侵入
者を受け入れた。ゆっくりと内部を巡らせると、最も敏感な箇所をしっかりと擦ってゆく。
「ああっ‥!」
躯を跳ねさせたクリフトが腰を浮かすと、更に指が増やされた。
内壁を蠢く指先が、彼の熱を煽る。甘やかな吐息がぽろぽろとこぼれていった。
静かにクリフトを床へ横たえさせると、鷹耶は彼のひざ裏を掴み、ぐいっと脚を開かせた。
暴かれた秘所に猛る塊が押し当てられる。
「ふ‥ああっ…!」
じっくりと解された蕾だったが、指とは質量の違う楔に穿たれる圧迫感に、自然と眉が顰
められた。
「すげ…お前の中、熱いな…」
「そ‥な…。」
熱っぽく声をかけられ、クリフトが頬を染める。決して慣れたとは言えない行為なのに、
彼の楔の熱に、不思議な昂揚感を覚えている自分を感じる。
ゆっくりと沈んでくる鷹耶を感じながら、クリフトは充足感を思っていた。
生理的にこぼれた涙で潤んだ瞳が、他では見た事のない情欲を滲ませた彼の表情を映す。
クリフトがそっと汗で顔に張り付いた彼の髪をすくい上げた。
「クリフト…」
愛しげに名を呼ぶと、上体を曲げ唇を重ねさせる。啄むような口づけが軽い音を立てた。
「…動くぞ。」
自身を埋め込んだ鷹耶が、彼にそう断ると、緩やかに律動を開始した。
彼の大きさに馴染んでくる頃には、湿った音が内部から漏れ出し、クリフトの羞恥がより
煽られてしまう。次々上がる嬌声すら、自身の声と認めたくなくて…
溢れてくる情動に不安を覚えたクリフトは、彼の背に腕を回し縋った。
「…鷹‥耶さん…!」
「…っく。クリフト…!」
鷹耶は欲望を彼の最奥に叩きつけると、彼の肩に腕を回し引き寄せた。
「はあ…はあ…。」
満足そうな笑みを浮かべ、鷹耶が彼に体重を預ける。
彼とほぼ同時に達していたクリフトも、荒い呼吸を整えながら、彼へ視線を向けた。
「‥‥‥‥」
ぼんやりと彼の様子を見守りながら、クリフトは自分が極まってしまった瞬間を思い出し、
頬を染める。
――躯の奥で受け止めた、熱い飛沫。その迸りを感じて、自分は極めてしまった。
なんとなく始まってしまった深い関係だけど。
彼を感じる事に、しっかりと悦びを見出し始めている―――
「鷹耶さん…」
クリフトがひっそりと声をかけると、彼が微笑んだ。
しっとりと重ねられた唇から広がる余韻は、甘く彼を満たすようだった。
後始末を終えると、鷹耶が強引に、クリフトも一緒に湯船へ入る事を求めた。
男2人が入るには適してない‥というごく当たり前の意見すら、馬耳東風である。
結局ここでも折れたクリフトが、鷹耶に抱えられるよう身体を温める事となった。
「…鷹耶さん、やっぱり窮屈ですよ?」
まるきり身動き出来ないクリフトが不平を漏らす。
「そうか? 俺はすごく心地いいけど‥」
そう返した鷹耶が、甘えるように彼の肩口に顎を乗せた。
「少しは慣れた‥?」
クリフトの前髪を掻き上げながら、気遣うよう鷹耶が訊ねる。
最初の頃より負担がなく思えた彼は、小さく頷いた。
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