ピサロとソロ3

その1



トンネルを越えると、エンドールはすぐだった。

城下町はブランカとは比べものにならない程大きくて。

オレは圧倒されるように、その入り口でしばらく放心してしまった。

「はあー。エンドールって大きな国だったんだあ…。…人捜しなんて出来るのかなあ?」

きれいに舗装された石畳の道を行き交う人の多さに、知らず知らず嘆息がこぼれる。

大きな建物。整った町並み。でもなにより驚かされたのは、この人の多さ。

オレの村とは比べものにならないや…。



けれど。幸運にも捜し人はすぐに見つかった。…とゆーより、見つけてくれた?

ぼんやり教会を目指して歩いてたら、声をかけられて。

その人物こそが、オレが訪ねるつもりだった姉妹の片割れだったのだ。

ミネアと名乗った女性は、占い師を生業にしてるとかで、どこか神秘的な雰囲気のある

物静かな笑みを浮かべ、オレをずっと捜していたと告げた。

それから[カジノ]とかゆー、やたらと煩い場所に案内され、彼女の姉マーニャという、

やけに派手な雰囲気の陽気な女性を紹介して貰った。



父親の仇を討つため旅をしている‥という姉妹は、その仇を倒せる力を持つ者[勇者]を

捜していたのだと語った。

そして。その[勇者]がオレなんだ…とも。

――結局。オレは彼女達と共に旅をする事となった。

一人旅に限界を感じてたから、一緒に旅をする仲間が出来た事はありがたかった。が…



「ええ? この部屋にオレも泊まるの?」

共に旅立つ事が決まった所で。オレ達は所持金を確かめ合った。

その結果。[倹約]‥という答えが出され、オレは姉妹が泊まる部屋にそのまま世話に

なる羽目になってしまった。

「オレ‥一応男なんだけど?」

「ええ‥一応ね。解ってるわよ。大丈夫、襲ったりしないからv」

マーニャがにっこりと笑った。…襲うって。それじゃ立場が逆なんじゃ‥‥

「あら…襲って欲しかった?」

愉しそうに言葉を重ねるマーニャに、オレはブンブンと首を振って答える。

「姉さんたら。あんまりからかっては気の毒よ。まだ子供なのに。」

え…? あれ‥‥?

「…あの。オレこれでも17歳なんだけど?」

「「ええ!?」」

うう…何もそんなに驚かなくても。

「15歳くらいかと思ってたわ…。」

「本当。15〜6歳ってとこかな…って。ふ〜ん。‥それは愉しみかもv」

マーニャが意味ありげに微笑んだ。…う。‥なんかちょっと、怖い‥かも…?

「姉さん。怯えさせないでくれる? 駄目よ、手出したりしちゃ。」

「出さないわよ、失礼しちゃうわね。…まあ。教えてくれ‥と言われたら善処するけど。」

‥‥‥なにを?

うう〜ん。年の近い女の人って、シンシアくらいしか知らなかったけど。

なんかすごい…パワフルかも知れない。



姉妹のやり取りに若干気圧されながらも、久しぶりの布団の感触に、仲間を得られた安心

感が手伝って、その晩はぐっすり眠りに就いたのだった。



翌日。姉妹が既に街の人から聞き込んでる情報から、旅に関わりありそうだと言う情報に

絞り込んで、更に詳しく話を聞くため、オレ達はあちこち訪ね歩いていた。

その中で…

エンドールで開かれたという有名な武術大会とかに出場した謎の男についての話があった

んだけど‥‥

「デス‥ピサロ?」

思いがけず飛び出した名に、一気に動揺してしまった。

デスピサロだって? …あいつ。この国にも現れていたのか?! 何のために…?

「どうしたの、ソロ?」

顔を曇らせたオレを案じるようにマーニャが声をかけてくる。

「‥‥なんでもない。…ちょっと、疲れちゃっただけ。オレ田舎者だからさ。」

半分本当の事を交ぜながら答える。姉妹は顔を見合わせた。

「そうね。今日はあちこち連れ回してしまったもの。そろそろ戻りましょうか。」

ミネアはそう言うと、話を聞かせてくれていた城の女中さん達に礼を述べ立ち上がった。



予定していた装備品等の買い物は、明日の午前中に済ませる事となり、出立は午後に延ば

された。あれから宿に戻って汗を流した後、少し早めの夕食を取り、オレは早々に部屋へ

と引き上げさせて貰った。

一人部屋に戻ると、昨晩使ったベッドに倒れ込み深い息を吐き出す。

――武術大会に現れたというデスピサロ。

全身鎧を纏ってたらしいが。その強さからかなり注目を浴びてたようで。流れる銀髪が見

事だった‥と、控えの間からこっそり姿を目撃したという女性がうっとり語っていた。

――銀色の髪。

…やっぱり。奴…なんだろうな。オレの髪の色も珍しいらしいけど、銀髪もとても珍しい

ものなんだそうだ。…あの紅の瞳も、珍しいのかもな。今日は随分いろんな人を見たけど、

あんなに鮮やかな紅…誰も‥‥‥



オレは考え事しながらすっかり寝入ってしまった。

…が。凍てつくような殺気のこもったプレッシャーに、オレははっと目を覚ました。

――このピリピリとしたプレッシャー。…まさか。

オレはがばっと起き上がると、ベッドから飛び出した。

「…ん? どうしたの、ソロ?」

隣のベッドで寝て居たマーニャが、眠そうな声を寄越す。

「…ちょっと。ちょっと出て来るだけ…。気にしないで寝てて。」

オレはそれだけ言うと部屋を出て、プレッシャーの発生源とみられる屋上へと足を運んだ。



宿の屋上には。やはり…あの男が待っていた。

「…デス‥ピサロ。」

訝るように呟く。

「早かったな。気配を読むのことは出来るのだな。」

…あれだけプレッシャー与えられたら、誰だって気づくと思うぞ!

低い声音を響かせる奴を思い切り睨みつける。

「…あんた。なんでオレの居場所が解るんだ? 何しに来るんだよ?」

「目的は1つだと思うが‥?」

揶揄するような目線が送られ、距離を詰められる。

頬に伸ばされる手。紅の双眸に射貫かれた身体は、強ばったまま動けずにいた。

「…女の匂いがするな。」

「…え?」

頬に伸びた手が髪を漉くと、頭を寄せたピサロが不快そうに眉を寄せた。

「…あ。昨日から、仲間になった姉妹と一緒だったけど。…匂い?」

思わず自分の匂いを確かめるよう鼻を利かせてみる。…う〜ん、よく解らないや。

「来い。」

ピサロはそう言うと、オレを抱き寄せ移動呪文を唱えた。



ふわりと巻き起こった風が止むと、どこだか知らぬ神殿跡らしい場所にやって来ていた。

「え…ここどこ? 一体何のつもりで…」

「その匂いをさっさと落として貰おう。」

オレをドンと突き放した先には、神殿跡の窪んだ場所に溜まって出来た水場があった。

まるで…湖みたい。…匂いを落とせって…

「あの…まさか、この水場に入れ‥って言ってる?」

ピサロは肯定するよう僅かに首を動かした。

‥‥今日はもう風呂入ってるのに。この水溜まりに入るのか?

「何をぐずぐずしている?」

「…だって。風呂入ったばかりなのに、水浴びなんて‥‥」

「可笑しな事を言う。先だっては自ら泉に浸かっていたではないか?」

躊躇うオレに侮笑うよう、ピサロが訝った。

「あの時は。汚れを落とす方を優先させたんだよ!

 好きこのんで冷たい水を浴びてた訳じゃないさ。」

「冷たくなければいいのだな?」

ピサロはそう言うと、手先に魔力を集め水場へと放った。

「な‥何を‥‥?」

ドン‥という衝撃と共に波立った水面に視線を向ける。ふわりと暖かな風が頬を撫ぜた。

そっと近づき、手を浸す。…さっきのって、やっぱ高熱呪文かなんかだったんだ。

…このでっかい水溜まりを一瞬で沸かしちまうなんて。はあ‥‥‥

「これなら文句あるまい。これ以上モタモタするなら、そのまま突き落とすぞ。」

苛立ち交じりの低い声が届く。

…仕方ないか。

結局、オレは言われるまま服を脱いで、どでかい風呂と化した水溜まりに浸かった。

「はあ…。」

…一体オレは何してるんだ? そう思いながらも、湯に浸かると幾分緊張も緩んだのか、

深い吐息が漏れた。

空にはまあるいお月さまが浮かんでる。落ち着いて周囲を見渡すと、神殿らしさが残る円

筒の柱も、何かが乗ってたらしい台座も、この水溜まりを作ってる石畳も、真っ白な石で

造られていて、月光を浴びて輝く姿はとても幻想的だった。水も案外澄んでるし‥

…これであいつが居なければ、いい所なんだけど。

倒れた柱に腰を降ろしてこちらを窺うピサロに、チラリと目線だけ向ける。

目的…って。やっぱりアレ‥なんだよなあ?

だけど。なんでこんなに頻繁に来るんだ?

「‥この間ヤったばかりなのに。」

ぽつりとこぼした言葉が聴こえたのか、ピサロは立ち上がるとツカツカとこちらへやって

来た。

「いつまで浸かっている? さっさと出て来い。」

水溜まりの縁に立ち、命令口調で奴が促す。…ったく。入れっつったり、出ろ言ったり。

――勝手な奴。



水から上がると促されるまま奴の前に立った。

「どうやら不愉快な匂いは落とせたようだな。」

「…あんた、女嫌いなんだ?」

満足そうに言う奴に、さっきの言葉を思い出したオレは、つい訊ねてしまった。

「‥興味はないな。」

「ふ〜ん‥」

ピサロはオレの顎を捉えると、上向かせ唇を重ねさせる。

まだしたたかに濡れている躯の背を指が這い、腰を捉えると、接吻の深さが増した。

「ん…ふ‥‥‥」

歯列を撫ぞり滑り込んで来た舌が、口腔を味わうよう蠢いてくる。

絡まる舌先が湿った音を立て始めると、下しきれない蜜が口の端からこぼれていった。

「あ…はぁ‥‥んっ‥‥」

唇が解放されると、首筋から鎖骨へと奴の舌が這い、きつく吸いつかれた。顎を捉えてい

た手は胸へと滑り、小さな突起を弾いてくる。途端、まるでスイッチが入ったみたいに、

甘い吐息を漏らしてしまった。

「ココが悦いようだな。」

揶揄するような声音が耳元をくすぐる。

「うっ‥く…ふ‥ぁ。あ…んっ‥‥」

爪弾いたり摘まんだりしてくるから、否定が甘い喘ぎにすり替わってしまった。

奴が触れてくる先端から、甘い疼きが躯にこもってゆくようで。身体から力が抜けて行く。

「あっ…はぁ‥っ。ん‥‥」

落ちそうな身体を支えながら、ピサロが弄くっていた突起を口に含んだ。ねっとりと尖端

に舌が絡みついてくると、背中がぞくりと粟立った。



「や…あっ‥ん‥‥はぁ‥‥‥」

集中的に敏感な場所を責め立てられると、躯がビクビク反応を返す。

満足気にピサロは口角を上げると、既に支えなしでは立っていられない様子のソロを、

静かに組み敷いた。

既に屹立していた中心から滴る蜜を指先に絡めとる。

大きく開かせた脚の間に己の身体を滑り込ませると、ピサロは秘所へと指を辿らせた。

「あっ…ん‥駄目‥‥」

湿った指先は緩々と弧を描いた後、つぷり‥と差し込まれた。

ソロは快楽の深みへ訪う箇所への潜入から逃れようと、身を捩るが、脚の付け根をしっか

り押さえ込まれていた為、なんの抗いにもならなかった。

「や…そこ‥はっ‥ん…。はあ‥‥」

解しながら奥へと進む指先が、リズミカルな抽挿を開始する。

一度触れられただけでほおって置かれたままの欲望を溜め込む場所が、もどかしさを訴え

始めると、自然と腰が揺れる。ピサロは口唇を中心に寄せると、意地悪く囁いた。

「…達きたいか?」

張り詰めたモノに息が掛かる。それだけでも煽られてしまったソロは、期待するよう躯を

震わせた。

…コクリと小さく頷いて答えるが。ピサロはそれで満足しない。紅の瞳に見据えられて、

観念したように言葉に紡ぎ出した。

「…達かせて。…お願い‥‥」

情欲に潤んだ瞳で、羞恥に頬を染めながら懇願すると、ピサロは得心した様子で口にそれ

を含んだ。

「あっ…ん――――!!」

尖端をぞろりと舌が這った後、口唇が縊れを捉える。

手と口で一気に煽られると、あっと言う間に高みに昇り詰めてしまった。

「あっああ――――!!」

達した後の解放感に、全身を弛緩させるソロ。

ピサロは白露を嚥下すると、仄かに口元を緩めた。

「早いな…」

さらりと失礼な事を呟かれたが、当の本人は聞こえてない。いや、例え聴こえていたとし

ても、失礼な発言…とは気づかないだろう。

そんな事をふと思いながら、ピサロはもう一度密かに笑んだ。

ピサロは中断していた秘所への探春を再開する。

「あ…やっ。もう…ぅん‥‥」

燻る躯に再び熱を灯され、ソロの身体がびくんとしなった。

「嫌…? こっちはそう言ってないようだがな。」

揶揄するようピサロが嘲笑う。内壁を煽るよう擦り上げると、艶めいた吐息が溢れた。

「ふ‥ぁん‥。あ‥はっ…ん‥‥‥」

ほんの少し前まで。何も知らなかった無垢な躯。

色事とは無縁だった躯が、着実に快楽を覚え込んでいる。

白い喉を晒しながら仰け反る躯。桜色に染まった躯がそれを雄弁に語っていた。

「ピ‥サロ…?」

いつまで経っても指先だけの探春しかして来ない彼に焦れたように、ソロが顔を上げる。

上気した潤んだ瞳が彼を捉えると、ピサロは瞳を眇めた。

「物足りぬか…?」

揶揄かい混じりに問いかけられ、ソロはかあっと羞恥に頬を染める。

けれど。内壁の敏感な部分を微妙に外しながら、緩々と擦られると、焦躁ったさばかりが

こもり、ソロは甘い吐息をこぼすしか出来なくなってしまった。

「あ…んっ。や‥はぁ‥‥ん…ピ‥サロぉ‥‥‥」

強求るような甘ったるい声に、ピサロの動きが止まる。

「…私が欲しいか?」

身体を曲げソロの耳元でしっとりと囁きかける。長い銀糸がさらりと頬を撫ぜた。

ソロは広い肩に両腕を回しながら、コクコクと頷く。

「…欲しいよ‥‥来て…。」

彼の耳に唇を寄せ、ひっそりと乞う。甘やかな囁きがピサロの耳朶をくすぐった。





              

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