『‥‥その勇者なら、デスピサロ様が既に殺したと‥‥‥』
キングレオの今はの際の言葉は、オレに忘れかけてた現実を突き付けてくれた。
デスピサロ様――そう、確かにそう言っていた。あの時オレの村を襲った魔物達も‥!
あいつは…一体何者なんだ?
『…導かれし者達が出逢ったいま、必ずや邪悪な暗闇を打ち砕くことが出来るでしょう。
あなた方が倒すべき相手は、地獄から蘇りし帝王エス‥‥‥‥』
岬のお告げ所で神託を伝えてくれた巫女。彼女が伝えようとした地獄の帝王、あいつは‥
その帝王に近い場所に居るんじゃないのか?
だとしたら‥‥‥
「こんな所に居たんですか、ソロ。」
「…クリフト。」
岩場に腰を下ろし夜の海を見つめていたオレに、少し困った様子のクリフトが声をかけて
来た。
ハバリアを発ってサントハイムに向かう途中。立ち寄った海辺の小さな村。
昼過ぎ頃到着したこの村に、今夜は泊まるコトとなった。夕食後、そっと宿を出たオレを
クリフトは探しに来てくれたらしい。
「夜風は身体に毒ですよ? まだ本調子じゃないのですから‥。」
「…うん。心配かけて‥ごめん。」
気遣うように話すクリフトに、オレは小さく微笑んだ。
キングレオ戦の時大怪我を負ったオレは、回復魔法で傷を完治させたにも関わらず、高熱
を出ししばらく寝込んでしまった。熱が下がるのを待ってから、船を出港させたんだけど、
夜になると大抵熱がぶり返してたもんだから、同室のクリフトには本当世話になりっぱな
しだった。
「今日は‥大丈夫みたいですね。」
岩から降りて彼の前に立ったオレの額に、クリフトが手を当てながら息を吐いた。
「今日は戦闘しなかったからね。頼もしい仲間が増えてくれたおかげで。」
「そうですね。ライアンさんが姫様と共に、積極的に見張りに立って下さいますからね。
せめてサントハイムに着くまでは、ソロは養生第一に過ごして下さい。
‥先は長いのですから。」
「…うん。ありがと。」
「‥戻りましょうか?」
「うん‥‥‥‥――!!」
促され、宿への道を歩き出そうと足を踏み出した時、暗い森の方から、いつもの威圧感が
オレを捉えた。
「‥‥? どうしました、ソロ?」
固まってしまったオレを、クリフトが不審そうに覗う。
「…ごめん。先に宿に戻っててくれる? …少し‥独りにさせて?」
「ソロ‥。…あまり遅くならないようにして下さいね?」
クリフトは小さく嘆息した後、そう言い残し、先に宿へと帰って行った。
オレは彼の姿が見えなくなるまで見送ると、気配がする暗い森へ視線を移した。
―――あいつが来ている。
最近は、会える時を心待ちしてる部分もあったけど‥
今は‥‥どんな顔して会えばいいのか判らないよ。
しばらくぼんやり森を見つめていたオレは、苛立つ気配に促されるよう、歩きだした。
「‥‥ピサロ。」
村の向こうに広がる鬱蒼とした森の入り口。大きな樹木に背を預けた黒衣の男に、オレは
小さく声をかけた。
「…随分と待たせてくれたな。‥先程の男と居る方が大事‥という訳か?」
地を這うような低い声音が耳元に届く。…すっごく機嫌悪いらしい。今日に限って‥
「‥クリフトは共に旅する仲間だ。そういう意味では大事だよ。」
オレは彼の足元に視線を留めたまま、それだけ答えた。…本当は、別のコト訊きたいのに。
「ほう‥。仲間‥な。随分と増えたそうではないか。その大事な仲間とやらが。
だが…気に入らぬな。」
ピサロはそう言うと、オレの顎を捉え上向かせた。
「この私の呼び出しが軽んじられてるとはな。」
「…別に。そんなつもりは‥‥」
顎を掴まれてるので、目線だけ外しながら口を濁す。
「‥キングレオ同様に、仲間で力を合わせれば、私を倒せるとでも驕ったか?」
「…え?」
オレは今夜初めて、まともに奴と目線を交わした。緋の瞳が険しく細められてる。
「ならば‥仲間を呼んでみるがいい。」
ピサロは怒気を孕ませた声音で言うや否や、身体を入れ替え、オレの両手を樹木に縫い留
め、ズボンを下穿きごと引きずり降ろしてしまった。
「や‥っ。何‥すんだよ‥!?」
「何‥とは今更だな。」
背中越しに奴を睨みつけると、皮肉そうな冷笑を浮かべ、夜風にさらされる双丘に手を滑
らせてくる。
「…ま‥まさか、ここでヤるつもりじゃ‥」
村の外‥っていっても、ここは森の入り口じゃないか! 誰かがオレを探しに来たら‥‥
「や‥嫌だ‥。ここじゃ‥嫌だよぉ‥‥」
「可笑しな事を言う。仲間を呼びたいのだろう?」
苛立だしげなピサロに、オレはブンブンと首を振った。
「何‥言ってんのか解んないよ、ピサロ。どうしてオレが… ――!!
あ――っん‥‥んん‥やぁ‥‥‥」
強引に指を蕾に挿入させてくるピサロ。身を捩って抗おうにも、足で動きを封じられてて
ロクに身動き出来ない。
「ピ‥サロ…どう‥して‥‥‥」
こんな風に乱暴にされるのって、初めの頃だけだったのに…。
やっぱり‥自分の部下を倒された事に腹を立てて…? それを怒ってる――?
オレが村を滅ぼしたこいつに抱いた憎しみを、今度は奴がオレに抱いてる…から‥‥?
‥‥そ、だよな。元々こいつにとって[勇者]は「殺すべき存在」なんだ。
オレは‥‥どうして―――
「ふ…ああっ――!!」
乱暴に広げた入り口に猛った塊が宛てがわれ、強引に挿入り込んできた。
「あ…や‥。も‥嫌だよ‥ぉ‥‥」
イヤイヤするように首を振りながら、オレは情けないくらいぽろぽろ涙をこぼしていた。
なんだかすごく哀しくて。…苦しい。
「あっ‥。はあ‥んっ‥‥‥」
穿つ塊が馴染んでくると、知った快楽が最奥から込み上げてくる。…こんなの嫌なのに。
「ふあ‥‥」
反応していた前を握られ、更に艶を孕んだ声が漏れてしまった。
「…その声。お前を探しに来た仲間にも聞かせてやるか?」
ひっそりと低く囁かれ、オレは全身から血が下がるのを感じた。
「え‥? 嘘‥だろ…。誰か‥来てる‥?」
「先刻貴様が居た岩場にな。声を上げれば届くのではないか?」
意地悪く囁きながら、奴がオレを突き上げてきた。
「ん‥んんっ。はっ‥‥ん―――!」
声を立ててしまわないよう、必死で唇を噛み締めてるのに。容赦ない律動が、オレを翻弄
してくる。
「どうした? 呼ばぬのか‥?」
オレはコクコクと首だけで返答した。…見られたいはず、ないじゃないか!!
「ふ‥ぁ―――ん…」
最奥に熱い飛沫を叩きつけられたのを感じながら、オレも欲望を吐き出した。
不意にこぼれた声に、バクバクと心臓が逸る。…聴こえてないよな?
耳を澄まし周囲の気配を探ってゆく。
「残念ながら‥聴こえなかったようだな。」
「ほー。よかっ‥た‥‥‥」
ピサロの言葉にそれまでの緊張が一気に解けたオレは、そのまま意識まで遠退かせて
しまっていた。
突然がくんと力が抜けたソロ。繋がりが解けると、そのままずるりと地面に崩れ落ちた。
ピサロが膝を折り様子を確認する。気を失ってる彼の顔にかかった髪を梳き上げると、
その額が随分熱くなってるのに気づいた。
(熱―――!?)
『まだ本調子じゃないのですから‥。』
そう仲間に言われていた事を、ピサロは思い出した。
「チ‥。」
涙の跡をくっきり残すソロに、小さく舌打ちすると、ピサロは彼を抱え移動呪文を唱えた。
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