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「本当に強情ね‥!」
ムッと顔を尖らせて、エリスはぎゅむっと彼の胸の飾りを抓った。
「いたっ…!」
「ルーク!? ‥おい、貴様ら。いい加減にしろよ!」
「あらあら。元気な王子様ねえ。」
「…あんたら、一体何が目的なんだ?」
先程から女達が[王子]と呼んでいる事実にやっと気づいたアルフレートが、訝しげに眉
を顰めた。
「ふふふ‥言ったでしょう? 妹は彼と交わりたいのよ。」
「…何の為に?」
子供でも設けて利用しようとでもしているのかと、怪訝顔で訊ねる。
「うふふ。気に入ったから‥ではいけないかしら?」
身動きを封じられたアルフレートの前に立ったラウラが、彼の頬を手の甲で撫ぜた。
「私とあなたが愉しんだように。あの子達も愉しんで欲しいだけ。」
「‥ルークの意志は無視してか?」
さっと頬に朱を走らせて、一瞬目を背けたアルフレートが、堅い表情で問いかけた。
「そこが問題なのよね…」
ほう‥と溜め息を零して、女が困ったものだと眉を下げる。
「どうしたら、いいと思う? ‥いっそ、彼の前で私達が手本見せてあげる?」
すっと伸ばされた手が彼の頬を滑り、唇が寄せられた。重なった唇はすぐ解かれると、
クスクス忍び笑い混じりに女が誘いをかけて来る。
「ア‥ルフ…?」
「あらあら。お姉様ったら、なんだかんだとあの子も気に入ってるのね。」
「…だ。‥ダメだ。やめさせて‥っ、く…ああっ‥」
「ふう‥ん。あんなにガード固めてたのに。彼の方が心配?
面白いわね。」
身動ぐルークに手を伸ばしたエリスが、びくんと躰を跳ねさせた彼の反応に興味を示す。
「ふ‥ああっ、あ…っく‥‥‥」
すう‥と指の腹を胸から鳩尾へ滑らせて、濡れそぼり苦しげに震える屹立を握り込んだ。
「ねえ。どうかしら? 私だって、ただ断られてしまっては女として恥ずかしいばかりだけど。
‥あなたが彼を望むと言うなら。嗜好の相違だったと、私も納得するわ。
姉様だって、頑固なまでに私を拒んだあなたの求める相手が彼だと知ったら、進んで協
力してくれると思うの。王子様の切ない恋の縁結びなんて、面白そうだもの。」
「なっ‥。別に僕はそんなんじゃ‥っく、はあ‥っ…はあ‥」
「じゃあ‥私と交わってくれる?」
クスクスと樹液の滴る幹を摩り上げて、エリスが艶めいた声音で強求る。
「くっ…ああっ‥、やめ‥‥‥」
切羽詰まった高ぶりは、欲望を吐き出せずにいるもどかしさが痛みに変わる程張り詰めて、
軽い刺激すら苦痛を齎すまでになっていた。
「ハッ…ルーク?」
ラウラの色気に吸い込まれそうになっていたアルフレートが、ハッと我に返った。
「あら‥そんなにお友達が心配?」
彼女を撥ね除ける勢いで、ルークの様子を窺う彼に、ラウラが揶揄うよう嘲って、
ベッドの方へと足を向けた。
「まあ‥なんだか随分柔らかくなったわねえ。」
ローレシア王子が部屋に来るまでしっかり閉ざされていたガードが緩んでいるのに気づい
た女が、不思議そうにサマルトリア王子を眺めた。
「ふふ‥そうなの。姉様が彼にちょっかい出したら、急に崩れ始めたみたいでね。」
「一度崩れたガードの再構築なんて、この状況じゃ無理でしょうしね‥」
クスクス興が乗った様子で嘲笑う女が、熱に潤んだグリーンの瞳をまっすぐ見つめる。
「今なら、どうにでもなるんじゃなくて?」
「そうかも知れないけど。でも、それじゃあ私の気が済まないわ、もう。」
「あらあら。それじゃ、どうするの?」
プンとむくれる妹に姉が優しく問いかけた。
「ルーク王子の望み通り、彼と結ばせてあげようかな‥って。彼なら適任でしょう?」
スッと目線だけを背後のアルフレートに向けて、エリスが小悪魔チックに微笑んだ。
「へえ‥そう。それは‥なんだか愉しそうね。」
「姉様も協力してくれる?」
「ええ、勿論。」
ひそひそクスクス‥女達の秘め事が交わされた後。
スクッと立ち上がったエリスが、スタスタアルフレートの元へとやって来た。
天井から降りるロープに繋がれた王子は、初めて逢った時とまるで印象の異なる女を前に
緊張を走らせた。
「ルーク王子には、契りを交わしたい方がいらっしゃったようです…」
憂い帯びた表情でしんみりと、エリスは彼に静かに告げた。
「私は‥彼の想いが遂げられるなら、諦めても良いと思うのですが…いかがでしょう?」
「‥あいつと交わるのを諦めてくれるのか?
それは良かった。
では‥もう俺達を解放してくれないか?」
「あなたは‥その戒めを解かれれば自由になるでしょうけれど。
彼は…あのままでは、ツライばかりでしょうから、後をあなたに託して良いかしら?」
「後を‥託す?」
「彼の望みを叶えてやって下さいますか?」
「ルークの望み‥?」
意味を測り兼ねて、アルフレートは眉を顰めた。
「ええ‥是非叶えて差し上げて下さい…」
そう話すと、彼女はアルフレートの戒めを解き始めた。
身体の自由を取り戻した彼が、まっすぐベッドに横たわったままのルークの元へと向かう。
「ルーク‥!」
「あ‥ルフ…?」
「大丈夫か!?」
既に彼を拘束していた戒めは解かれているようだったが。ぐったりベッドに横たわる彼を
案じるように、駆けつけたアルフレートが膝を折った。
「彼の身を軽くする唯一の方法はね、契りを交わす事だけよ。」
ベッドサイドに居たラウラがひっそりとアルフレートに耳打ちする。
「えっ?」
「妹と交わればそれで済んだのに。彼は拒んでしまった。けれど‥溜め込んだ欲望を解放
する術は、それしかないの。だから‥あなたがしてあげなさい。」
「え‥なっ?!」
その意味をやっと理解して、アルフレートが頓狂な顔を浮かべ、ルークをまじまじ眺めた。
「ア‥ルフ。」
「ルーク…」
強い酒が全身に回ったかのように赤く染まった躰。白い肌が紅色に染まって、じっとり
汗ばみ、いきり立った欲望からはドクドク蜜を滴らせる。切羽詰まった状況にあるのは、
一目瞭然だった。
「アルフ…ね、お願い‥‥‥」
悸える躰を嗜めながらゆっくり伸びてくる手が、そっと彼の頬に触れた。
「ルー‥ク…」
潤んだグリーンの瞳。朱の差した頬。噛み締めた後なのか、赤い血の残る唇は少し腫れ上
がっているのもあって、紅を差したように赤くふっくらし、誘うような半開きをしている。
その艶めかしい姿態に、アルフレートはごくりと息を飲んだ。
「…僕を‥抱いて‥‥イカ‥せて‥‥っ‥はあっ…」
縋るように伸ばされた手が彼の首に絡みつく。ふるふる眉を震わせたルークは、熱い吐息
をこぼし、躰を巡っているだろう熱情に身を悸わせた。
「ルーク…本当に‥いいのか‥‥‥?」
男を抱いた事はなかったが。まるっきり知識がない訳でもない王子が、最終確認とばかり
に問いかけた。
「あ‥っ…うん…いい‥よ。…このままじゃ…本当に‥変に‥な‥ちゃ‥‥う‥ん…」
ルークの猫っ毛に手を入れて彼を引き寄せたアルフレートが、唇を重ねさせた。
「んっ…ん…ふ‥ぁ‥‥ん‥‥‥」
すぐに深まった口接けは、ルークには未知の経験だったのだが、昂ぶっている躰のせいか、
酷く心地よく、陶酔感にうっとり浸ってしまう。
「…はあっ。はあ‥はあ‥‥‥」
「‥っく。言っとくけど。もう、止まらねえぞ、俺…」
唇を解放したアルフレートが、ルークの躰をベッドに縫い止めて、情欲に染まった瞳を注
ぎ宣言した。
「ん‥いいよ。僕も‥早く欲し…っあ? ひゃ‥あん‥‥」
スス‥と肌を滑っていた手が止まったと思うと、ぎゅっと掴んだ足を少々乱雑に割り開か
れた。欲望の証しとなる中心の奥まった部分が彼の目に晒されてしまって、恥じらいが生
じるのと同時に、奇妙な期待が心に膨らむ。男どころか女とだって経験のない躰なのに。
酷く明確に、ルークは躰が求めるものを自覚していた。
「あっ‥ああっ…」
そっと押し当てられた指先は真っすぐ蕾へと降り、慎重に押し入ってきた。
「すげえ‥な。トロトロじゃん、もう…」
「んっ‥あ…は‥ふぅ‥ん…っく‥ああっ…」
第1関節を沈めた後、綻ぶ内部を確認したアルフレートが、指を2本添え突き立てた。
女性の蜜壷を思わせる程柔らかく解れる内奥に、アルフレートが興を乗らせた顔で笑う。
彼は指を引き抜くと、物足りない目でこちらを覗うルークに笑んで、着ている服をバサバ
サ脱ぎ捨てた。
程よい筋肉のついた躰にルークの目が染まる。そのまま下穿きから飛び出した彼の中心が、
既にいきり立っているのを目の当たりにすると、更に瞳を情欲に潤ませた。
どくん‥どくん‥
心臓がはちきれそうな程大きく脈打つ度に込み上げて来る想いが、身内を渦巻く灼熱と雑
ざり合い、混迷へと誘う。
「あっ‥はあっ…!」
大きく開かれた脚を持ち直したアルフレートが、ぐいっと腰を寄せ窄まりに熱杭を押し当
てた。指とは違う質量のソレを思いの外易々と呑み込んで、ルークが艶増した喘ぎをこぼ
す。綻ぶ内壁に熱杭をすっかり彼の身内へ納めきって、アルフレートも満足そうな吐息を
落とした。
「すごいぜ…お前の中‥」
「ふあ…あっ‥ああ‥‥‥」
甘い喘ぎをぽろぽろ落として、しっとり汗ばんだ肌を突っ張らせる。
「ああっ…アルフ‥、僕‥もう‥‥‥っ‥」
「くっ‥そんな締め付けたら、ヤバイ‥って…」
絡みつくような内壁に、アルフレートが顔を顰めさせた。
「い‥いい、からっ…。‥ぉ‥願い、中に出して…」
今にも張り裂けそうな程昂ぶる屹立の解放を求め、切実に訴える。
躰の戒めを解いた女は、欲望の奔流を塞き止めている戒めを外す際に彼に暗示をかけて
いた。
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