『船上のアイドル☆』  前編

その1


 「はい。済みましたよ。」

 回復呪文を終えたクリフトが、にっこりと船員に微笑んだ。



 船での旅もすっかり馴染み、普段は殆ど顔を合わせる事のない船員達とも、最近は親し

くなったな…そんな事を感じながら、クリフトは親しみのある笑顔を振り撒いた。

彼の治療を見る為に俄に集まっていた船員達から、溜め息にも似たどよめきが生まれる。

「あ‥ありがとうございました! クリフトさん!」

怪我の治療を受けていた船員キースが、頬を紅潮させながら感謝を伝えた。

「傷が浅くてよかったです。キースは少しそそっかしい所があるようですから、注意し

  なくてはいけませんね。」

「…はい。面倒かけて‥すみません。」

「面倒などではありませんよ? ‥ただ、怪我を負えば痛い思いするのはあなたなんです

  から、自身を労って下さいね?」

シュンと落ち込むキースに、クリフトが柔らかく微笑んだ。





「はあ…。やっぱりクリフトさんの笑顔は癒されるなあ‥。」

「本当、本当。優しいのは元からだけど、最近のクリフトさんて華があるんだよな。」

「ああ〜っ。お前ってばイイコトゆうじゃん? そうなんだよな!

こう…にっこり笑った時の顔なんかもう、女神みたいでさ!」

 クリフトが去った後、すっかりドリーム入りまくりな表情で、船員達が語らっていた。

 実は現在。彼らの間で密かにブームとなっているのだ。

 クリフトの治療を受ける事が。

 

 元々パーティだけでなく、船の操舵やメンテナンス等を補ってくれてる船員達でも、船

内で怪我を負った時は、回復魔法の出来るメンバーが、その治療に携わっていた。

 そのせいもあって、最初彼らの中でブームとなったのは、ミネアだった。

 その後。アリーナ派やマーニャ派等も出来て行ったのだが…

 今一番‥密やかに流行ってるのが、クリフトだった。

 ミネアも鷹耶も丁寧に治療してくれるし、そこに何の不満も起きてはなかったのだが、

クリフトにはいつもオプションが有ったから。

 [にっこり笑顔]と[優しい気遣い]という嬉しいオマケが。

 しかも最近は、その笑顔に[色気]まで加わって来たのだから。潤いの少ない船旅での

オアシスとして、ブームは過熱する一方だった。





 さてさて。そんな事は当然気づいてないクリフト。

 最近船員からやたらと頼りにされてるのが、少し嬉しくて。自室に戻ってからも、つい

口元を緩めてしまっていた。

「‥なんだかご機嫌だな、クリフト。」

 クリフトの部屋のベッドに腰掛けて、彼を待っていた様子の鷹耶が怪訝そうに言った。

「あ‥鷹耶さん。いらしてたんですか? 今日の当番は…」

「もう終わり。今日は戦闘が多かったからな。ライアンに交替して貰ったんだ。」

「怪我‥なさってるんですか? もしかして?」

心配そうにクリフトが近寄った。

「ああ‥これか? 大丈夫、戦闘ん時ちょっとやっちまっただけだから。

  もう治してあるよ。」

服に付いた汚れを凝視している彼に、鷹耶が安心するよう笑いかけた。

「はあ…。よかった‥。じゃあ、どこにも怪我はないんですね?」

「ああ大丈夫だ。それよりお前、どこに行ってたんだ?」

「え‥ああ。キースが怪我をしたと聞きまして‥。治療に行ってたんです。」

「またあいつか‥。よく怪我するなあ。あいつにコックは向かねーんじゃないの?」

料理中に怪我を負ったのだろうと察した鷹耶が苦笑する。

「今日は大分揺れましたから、それもあったと思います。

  それに…前に少しだけ戴いた事ありますけど、彼の料理、美味しかったですよ?」

「…ふ〜ん。奴の料理をねえ‥。いつのまに、そんな親密になってたんだ?」

鷹耶の声が少し低くなった。

「あ‥あの。手当のお礼に‥って、出来上がったばかりのシチューを御馳走になっただ

  けですよ?」

鷹耶の心の狭さを身に染みて理解しているクリフトが、慌てて説明した。

 鷹耶と深い関係になってから数カ月。身に覚えのない妬きもちから情事に至られるケー

スが、何度あった事か…。

「俺だってあいつの怪我治してやった事何度もあるけど、んな礼なんてなかったぜ?

絶対下心があると見た。」

「ははは‥。そんな訳ありませんて。大体男同士じゃないですか。」

「俺達も男同士だぜ?」

「そ‥それは…。だって…。‥た‥鷹耶さんには、関係ないんでしょうけど。

  普通は…。私だって‥鷹耶さん以外の男の人とは…そんな事‥‥‥」

クリフトは、かあっと頬に朱を走らせ俯いてしまう。

「俺以外とは‥こんな事、出来ない?」

両腕を掴んで引き寄せた鷹耶が、そっと口づけた。

「‥当たり前です…。…だって‥想像出来ません。鷹耶さんだけ‥ですから…」

優しい声音に安堵したように微笑んだクリフトが、そのまま彼を抱きしめた。

人肌の温もりも、肌を重ねる心地よさも、鷹耶から教わった。アリーナへの想いは変わ

らずにあるのに。それとは別に、委ねてしまう感情がある。

 熱っぽい視線が絡み合うと、そのまま2人は唇を重ねた。

「…なんか。このまま止まらなくなりそうだ‥。」

「…僕も‥ですけど。…夕食の時間が‥」

クリフトが残念そうに微笑った。

「‥‥‥! そうだった‥。やばい。

  さっさと湯を使っとかないと、順番待ちになっちまう!」

鷹耶が思い出したように言うと、慌てて立ち上がった。

「…すっごく名残惜しいけど。続きは今晩な。じゃ、後で。」

 軽く口づけた後、鷹耶は彼の部屋を後にした。





皆揃っての夕食の後。軽いミーティングを済ませ、解散となった。

 その後。早々に部屋に戻ろうとした鷹耶達は、ミネアに呼び止められ、回復魔法につい

ての相談事を受けたり、ブライの長話に付き合わされたりと、結局食堂を出たのは一番最

後となってしまった。

「‥はあ。すっかり遅くなっちまったな。」

「そうですね。」

 部屋に戻る通路を並んで歩きながら、鷹耶とクリフトは話し始めた。

「だけど‥ミネアさん、大丈夫でしょうか?」

「ああ。魔力の回復が大分鈍ってるみたいだな。お前はどうなんだ?」

「私は‥特に感じてませんけど。」

「う〜ん。マーニャも時々魔力に波があるから、そっちかなあ、やっぱ。」

「ああ‥そういえば、そうみたいですね。」

「まあ。船旅が続いてるから、その消耗もあるんだろうけど。多分、原因はその辺だろ。

ほら。アリーナも時々戦闘から外れてるだろ?」

「…はあ。そうだったんですか‥。」

アリーナの例えで、ようやく理由が掴めたクリフトが、頬を染めた。

「‥やっぱり。彼女の例えだと、判り易いみたいだな。」

「あ…。それは、あの‥。」

 言い淀むクリフトに鷹耶は小さく笑んだ後、足を止めた。

「‥なあ。さっきの続き‥俺の部屋でしようぜ?」

 到着したクリフトの部屋の前で、鷹耶がそっと耳打ちした。

「‥わ‥解りました。…じゃ、後で伺いますから。」

彼はなんとか答えると、耳まで真っ赤にしながら、そそくさと自室へと消えて行った。

 残された鷹耶が、その様子を見て顔をにやけさせる。



 自室に入ったクリフトは、火照る頬に手を当てた後、大きく吐息をついた。  吐息→いき

鷹耶の部屋で…それの意味する所に、最近ようやく気づいたのだ。

 普段2人はクリフトの部屋で夜を過ごす事の方が多いのだが、時々鷹耶は自室へと誘い

かける。そんな時は、決まって長い夜が待っていた。

 クリフトの部屋は通路を挟んだ斜め向かいにブライの部屋があり、漏れ伝わる声がどう

しても気にかかってしまうのだ。そんな彼の気持ちを察してか、鷹耶もこの部屋では手加

減してくれてるようで…。

 それは、鷹耶の部屋に泊まった翌日の自身の疲労度が、容易に物語ってくれていた。

 クリフトはもう一度深く息を落とすと、着替えに取り掛かろうとして、ふと手を止めた。

(…まあ、いいか。)

どうせすぐ脱がされるんだし‥と、考え至って真っ赤になった。

(…うわ。なんか‥すっかり馴染んでるな…)



 クリフトはしばし逡巡した後、結局着替えを手に持って部屋を出た。

トントン‥かちゃり。

「…鷹耶‥さん?」

 小さなノックの後、静かに部屋へと入ったクリフトは、ベッドサイドに置かれた小さな

明かりの中に見当たらない彼の姿を探すよう視線を巡らせた。

「クリフト。遅かったな‥。」

 ふいに後ろから抱きしめられる。クリフトは小さく笑うと、振り返った。

「そこまでお待たせした覚えはありませんけど…?」

「‥十分待たされてるよ‥。」

随分長いおあずけ食らっちまったからな‥。そう囁くと唇を重ねた。

「ん‥んんっ…は‥‥‥」

 角度を変えながら、深く口づけを交わし合う。薄明かりの中、絡み合う舌が湿った音を

響かせてゆく。

「ん…鷹耶‥さん。もう…」

潤んだ瞳で鷹耶を見つめると、クリフトが彼にもたれかかった。

「なんだ…。もう火が点火ちまったのか?」              点火て→ついて

「…だって‥‥‥」

苦笑しながら言う鷹耶に恥じらうように、クリフトが俯いた。       誘られ→そそられ

そんな彼にますます興を誘られながら、鷹耶は手早く彼のベルトを外すと、慣れた手つ

きで上着のボタンを外して行く。そのまま神官服を椅子へかけると、ベッドへとなだれ込

んだ。

 啄むような口づけが、頬から耳元‥そして首筋へと降りて行く。

 Tシャツの下方から入り込んだ手が、敏感な突起を撫で上げた。

「あっ‥。」

色を含んだ短い声が上がる。

そんな反応に気を良くしながら、鷹耶はTシャツをたくしあげると、その周辺を弄り始

めた。一番敏感な部分を避けながら、唇が花びらを落として行く。

「こっちもキツそうだな‥。」

言いながら。鷹耶はズボンを下着ごと剥ぎ取ってしまう。

 露になった部分が冷んやりとした夜の空気を感じたのもつかの間、熱くねっとりとした

感触に包まれた。

「んあっ‥。あ‥っ。ああ…。」

口に含まれた自身から湧き起こるうねりを感じた刹那、散々焦らされていた突起をキュッ

と摘ままれた。全身粟立つような感覚に、クリフトの身体が大きく退け反った。

初めて口淫を受けた時、そのショッキングな行いに泣きじゃくった事もあった。けれど。

齎されるその甘美な感覚は、手淫のそれとは違って、瞬く間に熱を籠もらせ魅わせる。

「ん…」                                      魅わせ→まどわせ

 その先に在るものを予感させ、クリフトは小さく喉を鳴らした。

根元をしっかり押さえながら、先端を転がすように舐めまわす。既に滴らせていたその

先は、彼の唾液と交じり合い、湿った音を立てていた。

「あ‥は…。た‥かやさ‥っ、も…達‥っちゃ…ふ‥‥ぅ」

急速に煽り立てられた彼が、鷹耶の頭を掻き抱くように手を伸ばした。その頭を引き剥が

したいのか、引き寄せたいのか判らぬまま…

「いいよ。先に達っちゃって‥。」

ぺろんと舐め上げた後、一旦顔を上げた鷹耶が、クリフトを促した。熱い息がかかると、

ゾクリと脈打つのを感じ、身体が微かに震えた。

ぱくん‥と深く咥え込むと、根元から先端に微妙な強弱を混ぜながら、扱きあげる。何

度か追い上げられると、彼の導くままクリフトは弾けさせてしまった。

「ああ‥! はあ…はあ…。」

熱く忙しい息が上がる。胸を大きく上下させながら、クリフトが視線を下方へ向けると、

彼が放ったものを飲み込む鷹耶の姿が映った。

「…鷹耶‥さん。」

クリフトが苦い顔を見せる。この瞬間だけは、どうしても馴染めずにいた。



          

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