うさみみ隊、トリオ誕生‥? ‥の巻
「ポシェットりん♪」
3つ目のハートをパクンと食べたポシェットが、突如言葉を発した。
肩に斜め掛けしていたソロが、びっくりと小さな体を震わせ、スライム型のポシェット
を見つめた。
肩に乗っているミニうさぎ姿の彼を、奇妙なうさぎ変装をした魔王――うさみみ仮面が
眺める。
「ふー。なんだかセコセコしたハートばかりじゃな…」
ゲプ‥と吐いた後、ポシェットが腐した。
「な‥な、ななな‥‥しゃべった??」
あわわわ‥と短な腕をブンブン振り回して、ソロが魔王の首に縋りついた。
「おう。スライムがしゃべったら変しいか? ポシェットがしゃべったら変しいか?」
―――後半は、明らかに変しいだろう。 変しい→おかしい
「ぴ‥ピサロぉ。」
腰元のポシェットに凄まれて、困った様子のソロが魔王を仰いだ。
「‥それも呪いのアイテムか。」
うんざりした面持ちで、魔王が吐いた。
「失礼な奴じゃな〜!
わしはこう見えても由緒正しきスライム族の長‥の曾々々‥‥孫なんじゃぞ!」
「‥‥‥」
あまりに曾がつき過ぎて。なんだかよく理解出来ないソロだ。
「‥で? 貴様がこのふざけた呪いの元凶か?
ならば‥とっととこのふざけた格好から解放しろ!」
ソロの肩から下がっているポシェットの紐を引っ張って、うさみみ魔王が凄んだ。
‥まあ。
黄色いサングラスに白いマスクで口元覆った姿では、やや迫力には欠けてるが…
「わしだって知らんわ! ハートをたらふく食ったら、念願が叶うと聞いて、協力して
いるだけじゃからな!」
「協力‥だと?」
「おうさ。もぉずっと昔の話になるが…聞きたいか?」
「どれくらい昔なの?」
ソロがう〜んと首を捻って訊ねた。
「うむ‥かれこれ千年は経つかのう?」
「千年!?」
「まあな。900年程石になっとったから、イマイチ現世は判らぬがなぁ。」
「‥で。このふざけた格好からは、いつになったら解放されるのだ?」
元凶を殴りに向かうのを諦めた魔王が、一番の問題を問うた。
「わしがたらふく食ったら‥だな。まあしかし‥とりあえず、後2コ程食えたら、一時
だが戻れるぞ?」
コホンと咳払いを交えて、大仰に宣った。
「一時的? とりあえずとはどういう事だ?」
「うむ。わしが腹一杯になるまで、時間かかりそうじゃからな。小腹が膨らめば、変身
を解く魔法も使える‥とゆー事じゃ。便利じゃろう? かっかっか‥!」
偉そうにふんぞり返って(多分)、ポシェットが高笑いをした。
「よかったね、ピサロ!」
―――いや。ちっとも良くないだろう。
だが‥ソロには甘い魔王なので。反論は胸の中だけに留めた。
ふざけた事態だが、付き合うと了承したのも確かだ。
「後2つ‥だな。」
一時的でも良い。この茶番に付き合うにしても、こちらにだって準備があるのだ。
魔王は前向きに考える事にした。
「おう。まあ励めや、若者。」
「‥貴様、口の聞き方には気をつけた方が良いぞ?
呪いから解放された途端、生を終わらせたくなかろう?」
それはそれは低〜い声音で、魔王が凄んだ。
「お‥お前っ、本物の正義の味方じゃないな!?」
「何を今更。私が好き好んで、やっている筈なかろう!」
怯んだポシェットに、呆れ口調で魔王が吐いた。
「う〜ん、オレがね、お願いしたんだ。だから‥ピサロの趣味じゃないよ、うん。」
ポリポリと頭を掻きながら、ソロが返答した。
「む‥!‥では、もしやこのちび助がリーダーなのか?!」
「ちびじゃないやい。姿は小さくても、子供じゃないぞ!」
そこんとこははっきりさせたいと、ソロが胸を反らして主張した。
「オレはピサ‥じゃない、うさみみ仮面の相棒なんだ!」
「ほぉ‥相棒な。あまり役に立ってなさそうだなぁ…」
冷ややかに言うポシェットに、ソロがムウ‥と膨れる。
「だが‥こ奴が居なければ、私も付き合って居らぬぞ?」
小さい吐息の後、うさみみ魔王が緑のうさみみ頭巾を小突いた。
「ピサロぉ‥。」
スリスリと、ミニうさソロが大きな手に身を寄せる。
なんだかとても親しげな様子に、ポシェットがひっそり思った。
やはり、リーダーはこのちび助じゃな。
任務遂行の鍵を握るのは、人畜無害な癒しキャラだと認識するポシェットだ。
―――という訳で。(強引?)
奇妙なトリオが結成されて。彼らの世直し旅は、まだ続きます‥‥
2008/3/13
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