※この物語は「SRMT」さん発行のピサ勇アンソロジー『銀緑の翼』に寄稿したお話の続編です。



夜も賑やかな街エンドール。

その大通りを外れた路地にひっそりとあるバーへ、翠髪の華奢な青年と空色の髪をした

青年が連れ立って訪れた。

二人は店の奥まった場所になるカウンター席へ並んで座った。

「‥ごめんね、いきなり付き合わせちゃってさ。」

「いえ‥構いませんよ。それより珍しいですね、ユーリルからお酒に誘われるなんて。」

それぞれカクテルを注文すると、申し訳なさそうに、隣の青年へユーリルが声をかけた。

青年はふわりと微笑んで、そんな彼へ応える。ユーリルは、その笑顔にほっと胸を撫で

下ろして、微苦笑を浮かべた。

「‥そう言えば。クリフトと飲みに来たのは初めてだったね。」

「そうですよ。時々マーニャさんが誘っても、ユーリルは大抵断ってたでしょう?

 ですから、アルコールは苦手なのかと思ってました。」

「あ‥うん。あんまり得意でもないかなあ‥。確かに…」

少し考えるようにして、ユーリルはぽつっと返した。ちょうど目の前へ差し出されたカクテル

をじっと眺めて、グラスを手に取る。淡いピンクに小さな泡がぷつぷつ揺れる液体を、

ユーリルはコクコク飲み干した。

「すみません、今度はアレお願いします。」

一気に空にしたグラスをカウンター奥へ差し出して、ユーリルはマスターが作ったばかりの

テーブル席の客へ出すカクテルを指した。

「ユーリル、ピッチ早いと酔いますよ?」

飲む気満々の勇者を気遣って、クリフトが声をかけた。

「ん〜、いいんだ。クリフトも飲んでよ。じゃないと‥相談出来ないから。」

ユーリルはクリフトの前に置かれたグラスをずい‥と寄せて、彼にも酒を勧める。

「…はあ。」

ここの所、少し様子がおかしかったユーリルだったので。相談事の予想はしていたクリフト

が、コクンと琥珀の液体に口をつけた。

「それで…相談というのは?」

グラスを置いて、クリフトが隣に座るユーリルをそっと覗う。

「う‥うん…。」

ユーリルは口を開きかけては閉じて、天井へ目線をやった後、俯いたまま大きく嘆息した。

ほお杖ついて、言葉を探していると、先程頼んだ2杯目が目の前に置かれた。それを早速

手にとって、コクコクと煽る。グラスいっぱいに注がれた鮮やかなグリーンの液体を何口か

飲んで、ユーリルはようやく口を開いた。

「…えっとね。クリフトはさ、いろいろ物知りじゃない。でさ…えっと‥‥‥あの…」

グラスを置いてぽつぽつ話し始めたユーリルが、言葉を切って、きょろきょろ周囲を覗う。

真っ赤に染まった頬は、アルコールのせいだけじゃないだろう。耳まで赤く染め上げて、

ユーリルはこそっとクリフトに耳打ちした。

「…男同士でも、えっち出来るって‥知ってた?」

「は‥? え…?」

一瞬、何を言われたのか理解出来なくて、クリフトが頓狂な顔を浮かべて、そのすぐ後に

思いきり首を傾げた。

「…知らない?」

シュン‥と項垂れるように、ユーリルがガッカリ呟く。

「あ‥いえ。知らなくはないですけど…えっと、ユーリル? 何の話ですか?」

「知ってる? クリフトも経験あるの?」

俯いてた横顔が弾かれたようにこちらに向けられ、ユーリルが期待に満ちた眼差しを注ぐ。

キラキラした瞳で見つめられ、クリフトは居心地悪そうに視線を逸らして、嘆息した。

「‥えっと。ご期待に添えず申し訳ありませんが、経験はありません。」

とりあえず、一番肝心な訂正だけはしっかりしておく。続く言葉を考えながら、クリフトは

眉根を寄せた。

『クリフトも』‥そうユーリルは口にした。『も』?

「‥あの。つかぬ事をお訊きしますが。ユーリルは…あるんですか?」

じっとユーリルを覗うと、真っ赤な顔が更に朱に染まり、疑固地なく頷いた。

照れをごまかすかのように、グラスを煽るユーリルを眺めていたクリフトが、自身の衝撃を

隠すようにグラスを手に取り、コクコク液体を煽る。

いつの間に? 誰と? どこで? …疑問が様々浮かぶが、ここは冷静に‥と努めるクリフト

が、こほんと咳払いした後、訊ねた。

「…それで。ユーリルの悩み事って?」

「う‥うん。え‥っと、あの‥ね。男同士でそういうのって‥どうなのかなって…」

「どう‥とは?」

「うん…えっと、つまり…そういうのって、普通好きな人同士がするもんだと思ってて‥。

でも‥そうじゃないのに、その‥えっちしちゃったらあの‥気になるってゆーか。

 え〜っと…」

「え‥そうじゃないのに‥って。それは無理矢理とかって事ですか?」

ハッと顔色を変えたクリフトが声に緊張を孕ませた。

「あ‥違う違う。事故みたいなものだよ。」

「事故?」

「うんそう。それでね、それまでは全然そんな事思わなかったのに。なんかさ‥変に意識 

しちゃうってゆーか。ドキドキするとゆーか。忘れよう思ってたのに、いつの間にか思い

出してばかりで…オレ、わかんなくてさ。」

両肘ついて手を組むと、前方の酒が並んだ棚をぼんやり見つめ、ユーリルが嘆息した。

追加で頼んだ水割りが届くと、残るサワーを飲み干して、グラスを空ける。クリフトも同様に

グラスを空けると、一緒に届いたお代わりを手に取った。

「‥あの。間違ってたらすみません。その相手って‥ピサロさん‥ですか?」

ほんの少し逡巡しながら、クリフトはふと浮かんだ顔を口に上らせた。

ここ最近何やら疑固地ない2人に、メンバーは喧嘩でもあったのかと案じていたのだ。

「…うん。」

ユーリルは彼に抱かれた経緯をぽつぽつ説明した。

洞窟で浴びた花粉の毒が原因で火照った躰を鎮める為に、ピサロに抱かれた事を‥

「‥はあ。そんな事が。それはその…災難でしたね。」

「うん。まあ‥最初はびっくりしたし。恥ずかしかったけど。でも‥さ。あの‥厭じゃ‥

 なかったよ?」

「そうなんですか‥?」

「うん‥。ただ‥さ。…忘れられないのは、あいつなのか。それとも‥あの熱なのか。

 オレ…分からなくて。クリフト‥どう思う?」

潤んだ瞳で、ユーリルが熱っぽく見つめた。妙に色っぽいその表情に、思わずクリフトが

ごくんと傾けていたグラスの琥珀を飲み干した。

「別の人とえっちしたら‥はっきり分かるかなあ‥?」

カウンターに突っ伏して、ほとんど空になったグラスを揺らすと、カランと氷が音をたてた。

求めるのはピサロなのか、はっきり知った性欲なのか‥後者ならばそう問題じゃないの

に‥とユーリルは心の奥でぽそりと思う。

「ね‥クリフト。オレとさ、えっち‥しない?」

むっくり躰を起こして、気怠い様子で片肘ついたユーリルが、クリフトを覗き込んだ。

「…は?」

思わず思考回路を停止させ、クリフトが彼をまじまじと眺める。

「実験に付き合ってよ。」

続くユーリルの言葉が、更に困惑を誘って、クリフトは返す言葉に迷った。

「‥えっと。ユーリル? すみませんが、もう一度…」

「だからあ、オレと、えっちしてみない‥って、言ってるの。」

クリフトの手を両手で包むように握って、ユーリルがずいっと顔を間近に寄せた。

「な‥なななっ‥ええっ!?」

クラクラクラ‥と一気に酔いが回ったような目眩を覚え、クリフトが青ざめた。

「実験‥付き合ってよ。ね?」

「ち‥ち‥ちょっ‥、落ち着いて下さい、ユーリル?」

「落ち着いてないのはクリフトだよ?」

「ああ‥いえ、そうではなくて…えっと‥あ。」

迫るユーリルに動揺したクリフトがあたふた周囲へ目を向けると、知った顔が視界に

止まった。それはツカツカ自分の横を通り過ぎ、ユーリルの後ろへ仁王立ちする。

「帰るぞ。」

ユーリルの首根っこを引っ張って、低い声音が背後から落とされる。

「う‥にゃ? なんだよお? オレは猫の子じゃないぞっ。」

動物を捕まえるように襟首を掴んだのは、噂の主・銀髪美丈夫の元魔王さま。ピサロは

そのまま彼を席から立たせると、荷物のように担ぎ上げた。

「オレは今忙しいの! クリフトと大事な話してるんだから!」

名指しされたクリフトが、魔王の視線に晒される。威圧的な眼差しに、クリフトがぷるぷる

首を振った。

「お前の言う実験には乗れないそうだぞ?」

担いだユーリルに通訳するピサロに、クリフトはコクコク頷いた。

「面倒かけたな。この馬鹿は私が預かる。いいな。」

ニッと口角を上げたピサロが、クリフトに声をかけた。

「‥はあ。では‥私はブライさん達の部屋に移りましょうか。」

今夜ピサロと同室だったクリフトが、部屋替えを申し出る。

「ええっ!? ちょっと‥クリフト、何言うのさ?」

懸命に躰を捻って、ユーリルが不服を申し立てた。

「ユーリル。どうせ確かめるなら、先にもう1つの可能性に当たった方が良いですよ?

 変な実験に頼るよりも‥ね?」

穏やかに諭されて、ユーリルは膨れっ面を浮かべて、がじがじとピサロの外套に齧り付

いた。その様子が動物めいててクリフトがクスクス笑う。ユーリルは自覚してないようだが。

すっかり魔王に打ち解けてるのが伝わって来て、微笑ましく映った。


もう少し飲んでから帰るというクリフトと別れ、ユーリルを担いだピサロはまっすぐ宿へと

戻った。

今夜の寝所である2人部屋へ戻ると、荷物を降ろすように、どさっと彼をベッドへ放る。

「うわ‥っ、なんだよお。乱暴だなあ‥」

「そうか‥? 貴様程ではないと思うが‥?」

文句をと躰を起こしかけたユーリルだったが、外套を外したピサロがベッドに乗り上げ、

頭の両脇に手をつき、顔を近づけた。

「な‥なんだよお…?」

不機嫌全開の顔が寄せられて、ユーリルは退避ぐようにか細く紡いだ。

「私を避けているだけならいざ知らず。何故己を安売りするような真似をする?」

「や‥安売りなんて。…してないもん。」

ぷい‥と顔を横向けて、ユーリルが唇を尖らせた。

「実験だなどと称して、あの者を誘っていただろう?」

「‥いいだろ、別に。あんたに関係ないもん。」

厳しい双眸に見据えられて、ユーリルはむっすり答えた。

「成る程。では‥邪魔した詫びに、その実験とやら、私が引き継ぐとしよう。」

「は‥? 何言っ…ぅん‥ち、ちょっ‥‥!」

思わぬ台詞に前を向いたユーリルは、首筋に降りた唇が滑るように移動し、耳朶を

食んで来たのに退避いだ。なんとか逃れようとするが、がっしりホールドされた躰は

びくともしない。乱雑に運ばれて酔いが回ったのか、力も入らないのが更に口惜しい。

「んっ…や、駄目っ…あ…ん‥」

左耳のピアスを手のひらに納めたピサロが弄ぶ振動と、耳の奥へ差し込まれた舌が

奏でる水音が、ゾクンと肌を粟立たせ、思わず艶めいた声が上がってしまう。

「あっ‥」

上着の裾から入り込んだ手が、脇腹をなぞり胸の飾りを掠らせた。ビクンと撓る躰を

満足そうに眺めたピサロが、その小さな尖りを指の腹でゆっくり撫ぜ上げる。

「あっ‥ん、それ‥やだぁ…」

「厭‥? ああ‥そうか。」

クス‥と笑みを浮かべて、ピサロはユーリルの服の裾を掴むと、ぐいっと胸の上まで

たくし上げた。

「え‥? わ‥っ、ち‥ちょっと…あっ‥ん。あっ‥ああ…」

服を捲られたと思うと、濡れた唇がさっきと反対の胸の尖りに降りて、口に含まれる。

ざらりとした舌が全体を舐め回すのにゾクンと感じて、艶めいた声が上がる。

もう片方の尖りにも、再び指が添えられて、執拗に胸を責めたてられ、ユーリルは

甘い吐息をぽろぽろこぼした。

「ピ‥サロ…オレ、もう‥‥‥」

窮屈を訴える下肢を解放したくて、ユーリルは覆い被さるピサロに目で訴えた。

「ああ…すまなかったな。」

もぞもぞ脚を動かすユーリルに、躰を起こしたピサロが苦笑し、前立てをくつろがせた。

そのまま下穿きごと下げて、一気に躰から取り去ってしまう。すっかり主張する中心が

彼の前に晒されて、ユーリルは気恥ずかしげに膝を寄せた。

ピサロは自分も上着を脱いで、閉じたユーリルの脚の間に躰を入れて、彼を組み敷く

と唇を耳元へ寄せ囁いた。

「どちらに欲しいか選べ、ユーリル。」

「え‥?」

艶を孕んだ唆すような響きは、早鐘を加速させる。熱に潤んだ瞳を見開くユーリルが、

目だけで彼の表情を覗う。

「こちらか‥こちら…。どちらだ‥?」

そんなユーリルにフッと口元で笑んで、ピサロは指先でツンと胸と屹立を弾いた。

「あっ‥やん…。‥‥‥意地悪だ、ピサロは…」

躰を起こし答えを待つピサロに、ユーリルが熱っぽい顔を顰めこぼす。

「これはお前の[実験]だからな。意に添うようにしてやるぞ?」

実験‥という趣旨からは最初から逸れてるだろうに…ユーリルはこっそり思った。

それに拘っている風に見えるのはどうしてだろうとも。

「…ピサロ、怒ってる?」

この前の時は。毒のせいで切羽詰まってたのもあったのか、もっと性急な行為

だったと思う。それが‥変に煽られたままほおって置かれると、切ない思いが

膨らんで焦躁ったい。

「‥さあな。答えがないなら、好きにするぞ。」

そう宣言して、ピサロは彼の腰を抱くと屹立に唇を這わせた。

「あっ‥! はあっ‥ふ…うぅ‥、っ‥くう‥‥ふ…ああっ‥」

蜜を滴らせる幹を滑った唇は、先端の窪みを舌でつつくと、口内へ導いた。

温かな粘膜に包まれた屹立は、その感触に戦慄いた。ドロドロした熱が

下肢に収束するのを思って、肌が震える。

「あっ‥あ、ピ‥サロ。も…出ちゃ‥う、から…」

彼の両肩に手を置いて、ユーリルが引き剥がそうとするが、より愛撫が

深められ、息が弾けた。

「あっ‥ああ、はあっ…! …はあ‥はあ‥」

ドクン‥と中心から放たれた欲望を、ピサロが受け止める。気不味さが頭を

掠めたユーリルだったが、達した解放感の方が勝って、ユーリルは荒い呼吸を

整えるよう躰をベッドに委ねさせた。

「ふ‥ぁ? ああ‥ん…そこ‥んっ…ん‥‥」

そのまま余韻に浸っていたかったユーリルは、蟻の戸渡りを滑った指が後ろの

窄まりをつついたのに驚き、目を開いた。蜜を絡めた指は、ゆっくり縁をなぞって、

慎重に押し入って来る。

「んっ‥あ。はあっ…ん、く…ぁ‥ん‥‥‥」

「‥流石にキツいな。」

第1関節まで沈めた指を一旦引き抜くと、ピサロはズボンのポケットを探って、

スポイトのような形状をした容器を取り出した。片手で蓋を器用に開けて、蕾みの

上で逆さに向ける。ユーリルからは見えないが、毒々しい色をしたゼリー状の液体

がぽとぽと蕾みに落ちた。

「あ‥なに?」

冷たい感触にビクンとユーリルが躰を震わせる。ピサロはそれには答えず、淡々と

作業を進めた。

「んっ…く、ああっ…ふあ‥‥」

重ねた指が2本一辺に侵入して来て、その苦しさに息を詰める。ゼリーが潤滑を

果たしたせいか、思った程痛みは生じなかったが、圧迫感はまた別だ。

「くっ‥あ、や‥ダメ…苦し‥‥」

「悪いが、今夜はゆっくり馴染ませてやれそうになくてな。少し我慢しろ。」

そう告げて、ピサロは深く沈めさせた指を開きながら旋回させた。

「あっ…くう‥。そん‥な…無理…あっ‥ああ‥‥」

まだ慣れない感覚に途惑うユーリルが、内壁を蠢く異物の動きについて行けず、

眉根を寄せる。じんわり滲む汗が、目尻に浮かんだ涙に交わり頬を伝い落ちた。

内壁をこじ開けるように蠢く指が更に増やされ、引き攣れたような感覚が身内に起こる。

「あ‥う、ふ‥ぁ…あっ‥ん…」

更なる圧迫感に息を詰まらせるユーリルは、苦しさとは違うゾクゾクした熱を覚えて、

身を震わせた。先程達した中心も、硬度を取り戻してゆく。だが、沸き上がる熱を

追いかけようと、意識がそちらへ向かった途端侵入者があっさり引き上げてしまった。

「あっ…」

もの侘しさに声を上げてしまったユーリルが、次の瞬間恥じらうように朱を走らせた。

そんな彼に口元で微笑んで、ピサロが前をくつろがせる。

「あ…」

すっかりいきり立ったそれを目の当たりにして、ユーリルが更に顔を湯立たせた。

ドクン‥と跳ねた鼓動が、じんわりした熱を波紋のように広げてゆく。

ピサロはユーリルの太股に手を添えると、脚を大きく開き窄まりへ怒張した自身を

押し当てた。

「ふ‥ぁ、ああっ‥! くっ…ふ‥あ‥‥‥っ、ああ‥‥‥」

「っく…力を抜け、ユーリル…」

「そ‥な、判‥んない‥よ。ああっ…」

流石に桁違いの圧迫感に苛まれ、ユーリルが苦しげに声を上げる。ギチギチと軋む

音が聞こえそうな引き攣れた痛みは、更に躰を強ばらせた。

「‥く。仕方ない…」

そう呟くと、ピサロは萎えかけた彼の中心に手を伸ばし、握り込むと上下させた。

樹液を滴らせる幹を擦り、根元の円みをやんわり揉みしだく。苦しげな吐息に艶が

混じるのを聴いたピサロは、手筒とそれを繰り返した。

「ふ‥あ、ああっ…うん‥‥」

気がそっちへ向いた隙を縫うように、ピサロが深く穿って来て、ユーリルは苦しさに

眉を寄せた。圧迫感は相変わらずだが、下肢に甘く疼く熱が相殺するのか、痛みが

和らいだ気がする。

「くっ‥ああ‥‥‥」

「ユーリル…全部入ったぞ‥」

覆い被さるように躰を曲げたピサロが、間近でそっと告げる。艶を孕んだ声音に、

ユーリルはゾクンと肌を粟立たせた。

「ピサロ…ん‥ふ‥‥」

寄せられた唇を受け止めて、ユーリルは瞳を閉ざす。柔らかく降りた口接けは、

啄むように触れた後、深く合わさった。

「ん‥んっ…ふ‥ぁ…ん‥‥‥」

くちゅり‥と濡れた音を響かせて、差し入れられた舌が口内を巡る。疑固地なく

それに応えて、ユーリルはうっとり身を任せた。腕をピサロの首に回し、甘い口接け

を享受する。

「…あ。はあっ…あ‥ん‥‥‥」

口接けを解いたピサロが、唇を首筋から鎖骨へと滑らせた。ゾクゾクと肌を震わせて、

甘い嬌声が上がる。ピサロは彼の腰を抱くと、抽挿を開始した。

「あっ‥ああ…。はあっ…あ‥ん‥っく‥‥ああ…」

「フ…やはり、悪くないな‥」

「え‥? あ…、あん…はあ‥っ、は‥‥」

くつ‥と笑うピサロの台詞を聞き逃したユーリルが聞き返そうとしたが、穿つ熱杭の

齎す刺激にすぐ気が持って行かれてしまう。苦しさはまだ残るが、あの晩のように、

満たされた思いが広がって、不思議な安堵感を覚える。

「ピ‥サロ。熱いよ‥‥」

「ああ‥私もだ…」

吐息混じりに囁くピサロに、ユーリルが微笑む。肩から落ちた長い銀髪に手を伸ばす

と、そっと一房掴み梳った。愛しむような仕草にピサロも柔らかな顔を浮かべる。

伸び上がって軽くキスを落とすと、ピサロは抽挿を再開した。

「あっ‥ああ。はあっ…あ‥ん‥‥」

敏感な箇所を掠めてく抽挿に、艶めいた嬌声がぽろぽろこぼれてゆく。じんじんと張り

詰めていく熱を思って、躰がぶるりと震えた。

「あ‥あっ…も、もう…オレ‥‥‥ふっ…ああっ‥」

「くっ…」

ビクビクと反応するユーリルの内奥を大きく穿って、ピサロは欲望を叩きつけた。

ほぼ同時にユーリルも白濁を弾けさせ、大きな息を繰り返す。

「はあ‥はあ‥。あっ…」

ずる‥と出て行く熱塊に、腰がぶるりと震えた。躰を退いたピサロが、脱力し横たわる

ユーリルの隣に横になる。

「…無理させたか?」

翠髪を梳りながら、ピサロがそっと声をかけた。

「…ううん。‥ピサロ。」

労りを感じたユーリルがふわりと微笑み、彼の手に自らの手を重ねさせる。

「今夜は‥どうして、あそこに現れたの?」

「…さあな。」

静かに訊ねるユーリルに、ピサロは小さく微笑んだ。

「‥そう。‥また実験したくなったら?」

彼の微笑に誘われるようにユーリルも顔を綻ばせると、悪戯っぽい瞳を向けた。

「私が相手してやる。」

「…うん。」

ユーリルは答えに満足したようにっこり笑むと、うつらうつら瞳を閉ざした。そのまますう

‥と寝入ったようで、静かな寝息が繰り返される。

ピサロはそんな彼をしばらく見守ってから、眠りについた。



 
           











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