◇ 2 ◇








 今にも暴発してしまいそうな勢いで昇り詰め、俺は片手で大泉に縋り付いたまま何度か小さく身体を震わせていた。
俺のよりも大きい掌と指が、手慣れた動作で俺をするすると限界まで誘っていく。
昔ガタメで掌を合わせて大きさを比べたことがあったが、俺の手が小さいわけではないのに関節ひとつ位はゆうに違っていて、結構ショックだった事がある。
あの長い指先が俺のモノにまとわりついていやらしい動きをしているのかと思うと、いても立っても居られない恥ずかしさと悦びとがない交ぜになって俺を掻き乱していた。
「………大…泉…………俺………もう…っ…………」
とにかくもうイきたくて、耳元でそう呟いた途端……今まで執拗な絡み付いて動いていた指先が離れる。
「………え………?………おま……っ………ちょ…っ……………」
混乱しながらしがみついていた背中に軽く爪を立てるが、大泉は更に密着していた上半身も離して立ち上がり、シャワーの湯を止めてから俺の顔を見つめてきた。
「――――――せっかく久し振りのえっちなんだから……まだ許してやらん。」
多分愕然としていたであろう俺をそのままひょいと抱え上げる。またもや女みたいに抱きかかえられて浴室を出、そのまま向かいにある寝室に連れ込まれた。
「ちょっ…待て大泉! 俺らびしょ濡れ……!!」
濡れた身体を拭くこともなくシーツの上に抱え降ろされて慌てた俺の上に、大泉は笑顔でのし掛かると優しく唇を噛んでからこう言った。
「暑いからいいべや……どうせすぐ乾くって。」
寝乱れてぐしゃぐしゃのシーツに横たえられ、シャワーで火照った身体に再び唇と指先でねっとりとした愛撫が降り注ぐ。
「………ん…っ……………おおいず…っ…………」
湿った身体が冷えるよりも先に身体が熱くなる。触れられた部分が火のように燃えているような感じだ。
波が引くかのように一旦収まっていた射精感が強まり、再び頭の中がその事で一杯になる。
焦れったい感覚から一刻も早く解放されたくて、固く目を閉じたまま何度も身を捩らせた。
 突然ぬるりと温かいものに包まれる感覚に慌てて目を開ける。
俺の両脚を大きく開かせたまま抱え込んで、大泉がその中心に顔を埋めていた。何と言ったらいいのか……むしゃぶりつくという言葉しか思いつかない。
嬉々として俺のモノを舐めては口に銜えている姿が、開けっ放しのままの扉の奥から差し込む弱い光に晒されてぼんやりと浮かび上がっていた。
このまま一気にイかせて貰えると漠然と思っていたその時、またもや大泉の動きが止まった。
あと少しのところで達することが出来ずに放置されてしまう辛さに思わず涙が滲みそうになる。焦らされて焦らされて、おかしくなってしまいそうだ。
「…………もうやだ……俺もう限界…だっつの…………」
我ながらなんて情けない言葉と声だろう。でも今はそんな事より目の前から遠ざかりそうになっている感覚の方がよっぽど重大な問題だった。
大泉は完全に愛撫を止め、密着させていた顔も下半身から離れている。薄暗がりの中で、目だけをらんらんと光らせながら意味深な表情をしている大泉が心底憎たらしかった。
「…………しげ。」
口許にほんの少し笑みを浮かべて俺の名を呼びながら、大泉が再び俺の上にのし掛かった。だが今度はどうもいつもと違う感じがする。
そう思った時、大泉は器用に体の向きを入れ替えて俺の顔の上に跨った。声を出す間もなく、俺の鼻先に硬くいきり勃った大泉の雄が突き付けられている。
大泉は無言で俺のモノに唇を這わせてから、ぺろりと舌で舐め上げてきた。
唾液で湿った舌がぬめぬめと形をなぞるように蠢いては時折その温かい口中に含まれる。その度にねっとりと湿った粘膜が俺のモノに絡み付いて、泣きたい程に気持ちが良い。
かと思えば再び外の世界に出されては、生き物のように蠢く舌先や指の爪先で鈴のように割れている先端をやんわりと弄くり回される。
そしてその度に俺は堪えきれずに生々しい喘ぎ声を口から漏らしてしまうのだった。
恍惚に酔いしれながら、俺は目の前ではち切れそうに赤黒く膨らんでいるモノにそっと指を宛った。
途端に大泉の下腹部がぴくっと小さく震える。
今まで自分がされてきたように、ソレに舌を伸ばして舐めた。唾液をたっぷりと絡ませて。
心臓が早鐘のように高鳴る。こんな事は正直、滅多にしない。
たまにフェラチオしてやることがあるけどそれもそう多いわけじゃないし、ましてや女とやってるわけじゃあるまいし……なんて思ってて69なんて数えるほどしかやったことがなかった。
こんな風に自分から奉仕するなんて、とてもじゃないけど恥ずかし過ぎて殆どしたことは無かったのに……今日は何だか自然にこの行為を受け入れることが出来た。
…………久し振りにこうして身体を重ねることが出来た充足感で興奮しているんだと思う、俺。
 慣れていないまでも懸命に大泉のモノを唇や舌を使って丁寧に愛撫してやる。
ぴちゃぴちゃとイヤらしい水音だけがお互いの股間から響いてきて、もの凄く背徳的な行為に及んでいるのだという思いがより一層俺を掻き立てていた。
みたび揺り起こされた射精感が、下半身から沸き上がってきていた。ともすれば銜えている大泉のモノをおろそかにしてしまいそうになり、必死に意識のバランスを保とうとしてどうにも自分のことだけで手一杯になってしまう。
それをちゃんと解っているのか大泉は俺への愛撫を時折焦らすように動きを止めては、腰を使って俺の口の中を硬くなったモノで犯してくる。
その度に喉の奥まで掻き回される感覚に、咽せそうになるのを必死で堪えた。
唾液と大泉の先走りの液が混ざり合うもの凄く卑猥な音が徐々に耳から脳までを冒し始めたのか、なけなしの理性がかき消え、その代わりに獣のような貪欲で再現のない快楽への渇望が頭を擡げてきていた。
もう何が何だか解らない。
ただ俺は狂ったように口で大泉の欲望を受け止めながらその腰に両手で縋り付き、焦れて自ら腰を動かした。
目の前に現れては消えそうになる絶頂の一瞬が欲しくて。
苦しくて涙が滲んできた。
もうどうにでもなれ………大泉のくそったれ。
早く………早く俺を解放してくれ!

声を出す間もなく、今まで散々嬲られては放置され続けていたモノに長くていやらしい指が触れた。
くちゅくちゅと音をたてながら今にも破裂しちまいそうな俺の息子をするするとなぞったかと思うと、すっぽり包み隠すように絡み付いて、今までとは比べものにならないような速度で扱き出す。
びくびくと身体が痙攣し、もの凄い早さで昇り詰めていく。きつく閉じた目の裏にチカチカと火花が浮かび、意識を保つのがやっとの状態だ。
同時に大泉の腰も動きを早め、信じられないくらいでかく硬く屹立したモノが乱暴に俺を犯し続ける。
あまりの苦しさと快楽に呻き声を上げたが、大泉は更に腰を使って口の中を掻き回しながら俺のモノの先っぽを口に含んだ。
掌と指で激しく扱かれながら割れ目に舌をねじ込まれては溢れ出す先走りの液を吸い上げられ、声にならない悲鳴をあげながら……溜め込んでいたものを一気に吐き出していた。
どろりと濃いものが大泉の口の中に迸り、続いて出てくるものも綺麗に吸い上げられて意識が白濁していく。
気が狂いそうなほど恥ずかしくて……だけど気持ちが良い。
途切れかけの意識の中で、口から引き抜かれたものから降り注ぐ熱い液体の存在を顔に感じていた。


 気を失っていたのはほんの一瞬だったらしい。
慌てて手の甲で顔を拭うと、思った通りねっとりとまとわりつく白い液体。
「…………うっ……………わ……………」
小さく呟くと、目だけで辺りを見回してティッシュを探したが見当たらない。
「―――――大泉さん、俺にティッシュを下さい。」
妙に気恥ずかしくてやっぱり小さな声で言ってみた。
「………ん。」
足元に座っていたらしい大泉がのそっと動いてのし掛かってきた。
「いや………ティッシュ取ってって。」
覆い被さってきたので長い腕の下敷きになったが、俺が要求してるのはそういう事じゃない。
「大泉?」
痺れを切らして起き上がろうとした俺を、長い腕が上から抑え込んできた。これじゃあ俺は無様な醜態を晒したままで、非常に情けない。
「退け馬鹿。誰のせいでこんな事になってると思ってんのよ!」
思わず顔を背けると、頬の辺りにぶちまけられていたらしい液体が反対側の頬に向かってゆっくりと垂れていく。
「…………うわ…………佐藤さん、やーらしい…。なんかエロビデオに出したい感じ………」
「ざけんな!」
慌てて拭おうとしても咄嗟に両手首を押さえられて、身動きすら取れない。
「………お前…っ……………顔に………………気持ち悪ぃんだからやめれ…ッ………………」
額や顎にかかっていたものも頬のものと同じようにゆっくりと重力に従って垂れていく。
「何よ、綺麗にしたいんだべ……」
そう言ったかと思うと、大泉は顔を近付けてきてべろりと顔を舐め上げた。
「い…っ……!?」
丁寧に舐め取っていく。
って、お前………何やってんのよッ!?
「お……大……泉………!?」
愕然としている俺をよそに、大泉はそれはもう懇切丁寧にひとの顔を舐め続ける。
「お前それ、気持ち悪くないのか……?」
「別に。ま、要は慣れだな、慣れ。あれだけ毎回しげの出したもん飲んでりゃ、こんなん思いっきり余裕だっつの。」
そんなことを言いながら綺麗に綺麗に全部舐め取ってから、口付けされた。口移しに大泉のものが流れ込んでくる。
それは苦くて青臭いのに……どこか幸せな味がした。

 さっきのキスからそのまま抱き合って再び肌を弄ぐり合う。
ついさっきまでの痴態でうっすらとかいた汗がようやく冷めたところだったのに、いやらしく触れられるとじんわりと熱くなってくる。
「………日焼け、少し色戻ってきたんじゃねえの? しげ。」
首筋に舌を這わされながらそっと囁かれた。
「あんだけ焼いたわりにはね。でもまた少し焼きに行かないと………まだまだ撮影あるし。」
身体と違ってまだ少し濡れている癖毛に指を差し入れて頭を撫でながら、素っ気なく答える。
撮影初日の二日前に日焼けサロンで焼いた肌は、馬鹿みたいに真っ赤に腫れ上がった後、その反動でしわしわに萎んだ。
折角の全国ドラマだってのに俺はメイクでも微妙に誤魔化しきれないような状態で撮影に挑み、そしてあっという間に脱皮するかの如く皮膚がぽろぽろと剥けた。
剥けた下から出てきた新しい皮膚は、あれだけ苦労させられたわりには僅か一ヶ月でもう早普段に近い色になってしまっている。
「勿体ないねぇ………しげの肌、白くて綺麗なのに。何もわざわざ黒くしなくてもいいんと違う?」
さわさわと掌で撫で回しながら、ちゅっと唇を押し付けてきた。
「白くて綺麗とか言われたくねーんだよ、俺は。大体男が色白って褒められて嬉しいかよ……」
きゅっと髪を引っ張ると小さく大泉が呻いた。
「ってーな、何するんじゃボケぇ! 俺様の大事な髪の毛に何するんじゃ!」
言うが早いか、鎖骨のすぐ下にちりっと小さな痛みが走る。どうやらキスマークをつけやがったらしい。
「おっま…………跡つけんなっていっつもいっつも口酸っぱくして言ってるべや!」
「うるせー、仕返しじゃ! ちょっとくらい平気じゃボケぇ!!」
こうなってくるともう売られた喧嘩は余さず綺麗に買いまくりの状態で、お互いにボケボケ言い合いながら噛み付いたりキスマークを付け合ったりした。
勿論どっちも本気じゃないから、なるべく見つけられにくい部分を狙って軽く付けてるだけなんだけどさ。
何だか久し振りにこうやって時間や人目も気にせずに、ただ馬鹿みたいにじゃれ合えるのが嬉しくて仕方がなかった。
結局そのままやっぱり肌を弄ぐり合ってるうちに、どっちの下半身も臨戦状態になっちまうわけだけど。
荒い息の中で噛み付くような口付けを交わし、足を絡め合って抱きつく。何だかもの凄く充足感に満たされるようで、快楽とはまた違った気持ちよさが込み上げてきた。
今まで長いこと色んな女と肌を合わせてきたけど……こんなに何も彼も心を許して安心出来る事って全然感じられなかったのに。
好きだって気持ちが何年経っても変わることが無い。一緒にいて、こんなにウキウキしたり悲しくなったり振り回されて……でもやっぱり求めずに入られない。
こんな風に女扱いされて肌を合わせるなんて……他の奴が相手じゃまず絶対にありえねーな。
最初に押し倒された時点でぶん殴って殺しちゃってるかもしれない……こいつ以外の男相手なら。
…………そう考えると、やっぱすげえ不思議。
なーんて一人で悦に入っていたら、いつの間にか本格的にのし掛かられて舐め回されていた。
柔らかな舌先がぬめぬめと鎖骨の辺りを這い回っていたかと思うと、あっという間に胸元に辿り着いて敏感な突起を舐り出す。
くすぐったくて逃げ出したいのに…でも気持ちが良くて動けなくなる。
ぴくん…と身体が跳ねそうになるのを堪えながら大泉をぼんやりと眺めた。いやらしい舌使いで左の乳首をつついたり舐めたりしながら時々音をたてて吸い、その度に下から挑発的な顔をして見上げてくる。
腹が立つほどに勝ち誇ったツラで、口許には満足そうな笑みを湛えている。
途端に恥ずかしさと屈辱感に襲われ、さっと顔を背けた。

左を存分に嬲られたあとに右も同じように舐め回され、僅かな刺激にも敏感になってきた頃、俯せにされて今度は背中のあちこちに唇を押し当てられた。
小さな音をたてて吸い付かれるだけで、ぴくん…と反応してしまう。
大きな掌でゆっくりと撫で回されながら口付けの雨が降り注ぐ中、そっと腰を掴まれて上に持ち上げられた。
四つん這いになれ…と言うことらしい。
促されるままに渋々従い、シーツの上に四つん這いになった。
何回されてもこの格好は顔から火が出るほど恥ずかしくていつまでたっても慣れないってのに、そんな事はいつもお構いなしだ、この男は。
いかにも『さあ何かして下さい!』的なポーズだって事、ちっとも解ってないんだ、こいつは!
情けなくてシーツに顔を埋めながら、それでも素直に大泉を待つ。
我ながらここまで我慢できるようになった事を褒めてやりたいよ………。
 大泉はその長い指でするすると俺の尻を撫で回し始めた。
今まで殆ど触られていなかったせいか、一際びくっと身体が震えてしまう。この後に待っているとてつもなく淫らな快楽が頭に過ぎり、俺はさっと身を固くした。
指の腹が音もなく俺の一番深くて敏感な部分に近付いては、まるで逃げるようにするりと遠ざかる。何度も繰り返されるその行為に俺は声を殺しながら耐え続ける。
いつしか息が荒くなり、焦れったさに身悶えしているのに………大泉は一向にその先に進もうとはしてこない。
「…………大…泉……?」
とうとう我慢出来なくて声を出した。奴はそれを待ち構えていたかのように、俺の身体の一番奥まったところに唇を押し当ててから囁いた。
「ごめんごめん……あんまりにも良い眺めなもんだから、ちょっと楽しんでたわ。ごめんなーしげちゃん。」
そう言ってべろりと舐めてくる。
「……ぁ…ッ………!」
突然のことに背中を反らせて小さく悲鳴をあげた俺にはお構いなしで、大泉はそのまま唾液で湿らせた舌で粘膜を弄ぶ。
ぐちゅ…くちゅ……と、いやらしい水音を響かせて俺の中に舌を差し入れてくる。唾液がたっぷり絡んでいるせいか、内股に一筋…また一筋と唾液が滴り落ちる感触がぞくりと肌を粟立たせた。
執拗に入り口を舐られ続けて解された後に、ずぶりと何かが中に入ってきた。
「……う…っ………くッ…………」
頭では理解しているのに、身体の中に押し入ってくる異物感にはいつも声を出してしまう。もうすっかり慣れちまってるから、さほど痛いわけでもないのに。
じわじわと何かが自分の中に入ってくる感覚を懸命に堪えながら、ゆっくりと息を吐いた。全て吐き切る頃、中に収まった指が妖しげに蠢き出す。
最初は遠慮がちに、次第に傍若無人に動いては俺を煽り立てた。
「…………ん………っ……………ぅ…っ……………」
内壁を擦られるたび、自分でも信じられないような甘い声が漏れ出た。
今でこんなんだから、本格的にやってる最中なんて俺、一体どんな喘ぎ声出してんだろ………いつも。
「痛くない? しげ。」
身体の奥から響いてくるような声にどきっとしながら、小さな声で大丈夫、と返事をする。
痛くはないよ―――――ただ、疼くだけ。
もっともっと刺激が欲しくて、身体の奥から飢えているだけだよ……大泉。
そう、素直に言えたらどんなに楽だろう…………勿論、死んだって言うわけねーけど。

 そうこうしているうちに指の数が増えている。最初は慣らすようにゆっくりと侵入してきて、そのうち我が物顔で俺の中を掻き回す。
そうやって解されながらほんの僅かな瞬間、俺の奥の一番気持ちの良いところに触れられるたび、悲鳴を上げて身体を仰け反らせた。
爪先から頭のてっぺんまで電気が走り抜けるようなもの凄い衝撃。そんなものがその部分を弄くられる度に俺を苛む。
一気に達してしまいそうな強い快楽。なのにほんの一瞬で指先ははそこから離れてしまう。
これは涙が出そうなほど、辛かった。
「……しげ、お前涎垂らしてるみたいだわ、ここ………」
別の指先で放置されっぱなしの息子を握り締められて、また悲鳴を上げる。
俺のそこは勃ち上がって下を向いたまま先走りの液をだらだらと零し続け、シーツに染みを作っているらしかった。
爪の先で先端の割れ目つつかれては、ぬるぬると液を絡め取られながら別の指先が俺の奥底を擦り上げる。
大きすぎる快感にもう悲鳴すら上げられなくて、ただ突っ伏してシーツを握り締めながら硬く目を閉じた。
口からは声にならない喘ぎ声が漏れ続ける。
「――――やべえ、俺もう我慢出来ねえ……………」
そんな声が聞こえたような気がしたが、どこか遠くから響いてくるような感じがする。
途端に今まで盛んに蠢いていた大泉の長い指がぴたりと動きを止めていた。
「………ひ…っ……あ…っ…………」
内蔵が引きずり出されるような気持ちの悪い感覚と共に指が引き抜かれ、思わず呻く。
間髪入れずに俺の入り口に押し当てられたモノは今まで中に収まっていたものよりも断然大きく、そして硬く張り詰めていた。
ひやりとする何かをたっぷりと塗りたくられたらしいソレが入り口の辺りをぬるぬると蠢いたかと思うと、突然中へと押し入ってくる。
「……ん…っ………う………………ぁ…ッ………………」
今までとは比べものにならない圧迫感とぴりぴりとした痛みに喘ぎながら、虚しくシーツを掴んだ。
「しげ…………大丈夫だから…………………もう少し力、抜け…………」
全国ツアーやお互いドラマ撮影で会えなかったせいでここのところご無沙汰だったせいか、かなり力んでいたらしい。……って、いつもこの瞬間は反射的に身体を強張らせてしまうんだけどさ。
「大丈夫………ゆっくり息吐け。……………そう、ゆっくりな、しげ。」
大泉の声がいつもよりも柔らかくて――――――甘い。
身体よりも先に脳髄から蕩けてしまいそうだ。
言われたとおりに息を吐き、ゆっくり呼吸を整える。そんな事を数度繰り返しながら、少しずつ俺の奥へと埋め込まれる異物を受け入れていった。
次第に水音が響き始める。
繋がった部分から響くその音は何よりも淫らな響きで俺の耳を冒し始める。
くちゅ…ぐちゅっ…… 静かな室内に響き渡る水音。そしてその音と共に俺の中に収まっていく大泉の雄。
いつしかひりつくような痛みも消えかけ、俺の敏感な粘膜が異物を包み込むように迎え入れていた。
突き上げられては引き抜かれ、また奥まで押し込まれる怒張したモノは、容赦なく俺の感覚を研ぎ澄まさせる。
粘膜同士が擦れ合う度に、言い様のない喜悦が俺を蝕んでいく。
全身が張り詰めたように敏感になり、俺の息子も止めどなく液を垂らし続けていた。
気持ちが良くて――――――気が狂いそうだ。
もう息をしているのか喘ぎ声を出しているのかすら解らない程、啼き喚きながら尻を突き出している。
そんな俺の腰を強く掴んでは強弱をつけて肌を打ち付けてくる大泉も荒い息遣いだ。
どんどん追い詰められて意識が吹っ飛びそうになる中、大泉が最後の仕上げとばかりに俺の中の一番弱いところを狙って突き上げてきた。
指でほんの少し触れられるだけでイってしまいそうになる敏感なそこを大泉のモノで擦り上げられ、俺は声にならない悲鳴を上げながら背中を反らせた。
強い射精感が背筋を駆け昇り、今にも暴発しそうになる。
頭の中では既にイきっぱなしに感覚に近いのに、身体はギリギリで達せずにいる。
このアンバランスな感覚に身悶えしながら、俺は必死に声を振り絞って大泉の名を呼んだ。
「………いいよ、しげ………………我慢しなくていいから……………イっちまえよ……………」
腰を掴んでいた両手が離れたかと思うと、後ろからするりと巻き付いてきて強い力で抱き締めながら耳元でそう囁いてきた。
「……お…………おい……ず………………ッ……………………………」
何度も何度も丁寧に突き上げられ、きつく抱き締められながら、びくびくと身体を震わせて俺はシーツの上に今のありったけをぶちまける。
身体の奥に吐き出された熱いものの存在を確かに感じながら。
その途端に身体の全ての部分からふわっと力が抜けていく。まるでスローモーションの映像のようにゆっくりとシーツの上に崩れる中、俺の上にどさりと覆い被さる身体のリアルな重みと熱。
色んな液体や体に付いていた水分でぐっしょりと湿ってしまったベッドの上に、まるで親亀子亀のように重なったまま、肩で大きく息をする。
荒い息の下、身体の中からまだ異物感が出ていかない事に気付いて首を捻る。いつもならさっさと抜き出されるはずの大泉のアレが、しっかりとその存在感を維持したまま俺の中に残されている。
「……………重ぇよ………………」
何とか動いてこの身体の下から脱出したいのに………まだ俺は楔を打ち込まれたまま、身動き一つ取ることが出来やしない。
「………早く…退け…っ…………」
息も整わないまま、どうにかそれだけの言葉を絞り出した。
「―――――――もっかい、するべ。」
またもや耳元で囁いてくる。反則だよお前………そんなに甘い声で耳元を擽られたら……ぞくっとするべや。
「しげ〜ぇ………」
背中にちゅっと音をたてて口付けをしてから身体を起こし、挿れっぱなしだったモノをようやく抜き出す。
「……ひ…っ…………」
体液に塗れてずるりと抜けた途端、俺の身体の奥から温かいものが溢れ出てきた。
「………中からいっぱい出てきちゃったわ。すげーこれ、な〜まらエロい………」
気持ち悪さに身を竦ませている俺なんて気にしてないのか、後ろではしゃいだ声を響かせている。
流石に抗議してやろうと上半身を少し起こして顔を見上げた。大泉は予想通りのツラでにやけていた。
「お前っ………いい加減に…………」
言いかけたところで突然肩を掴まれたかと思うとあっという間にシーツの上に背中を押し付けられてのし掛かられていた。いきなり、しかもかなり強引に捻られたので身体が痛みに悲鳴を上げる。
「いってえ! 何を突然…………」
この言葉も遮られる。当然ながら唇で塞がれていた。
暫く執拗に貪られてから糸を引いて離れると、もう一度ゆっくり顔が近付いてきて額に口付けされる。
汗で額に張り付いていた前髪を指先で弄ぶように掻き上げながら、確認するように何度か唇を押し当てられた。
「………髪、少し伸びたんだな。」
そう言って微笑んだ大泉の顔はさっき居酒屋で見たような何とも言えない寂しさを含んでいて、胸の奥がぎゅっと締め付けられる。
――――淋しかったのは、俺だけじゃないんだよな……大泉。
額の上にかかっていた掌にそっと手を伸ばして指を絡め、口許に持っていく。長くて骨張った指を口に含んでわざと音をたてながら舐めた。
くちくちと卑猥な音をさせて舌を使い、時々軽く歯を立てる。
大泉の長い指もまた優しく口の中を掻き回したり舌を爪先でなぞったりしてくる。
………身体が燃えそうな程に熱かった。
もう一度、今度はもっと無茶苦茶に抱き締められながら快楽に溺れたくて、身体が震えた。
「…………もっかい、すっか……………大泉。」
俺の口を掻き回しては唾液を絡めていた長い指が引き抜かれ、透明に光る糸がすうっと消えていくのを見ながら、耳元にそう告げた。
大泉の悪戯な目がすっと細くなり、さっきとは全然違う嬉しそうな笑みを口許に浮かべる。
俺の腹の上には、いつでも来い!な臨戦態勢で天を仰いでいる大泉の雄が、薄暗がりの中でぬらりとした輝きを放っていた。
 両膝を大きく開かされ、そのまま膝の裏を持ち上げられて肩の上にかけられる。
この時ばかりは格好の情けなさと恥ずかしくて正視していられなくて、俺はいつも固く目を閉じてしまう。
今日もしっかりと目を瞑って身構える。今入り口の辺りでぬるぬると先走りの液を塗りつけながら動いているモノが、もうすぐ俺の中に入ってくるから。
「ばっか、お前ちゃんと目ぇ開けれや……」
そんなこと言われたって、恥ずかしいんだからしょうがないべや。
それでも仕方なくうっすらと目を開ける。何度見てもこれ程凄い光景って………ないよな。
丁度今、アレが中に入ろうとしているところだった。
勘弁して欲しい程恥ずかしくて耳まで赤くなりそうなのに、でも目が離せなかった。今まさに繋がる瞬間をじっと見ながら、それでもどこかでこの行為を喜んで受け入れている俺がいる。
「今…………挿れたるわ、しげ。」
言い終わるやいなや、ぐいっと異物が身体の中に押し入ってくる。でも最初と違って違和感は殆ど無い。
いや………………………なまら………気持ち良い。
中に残っていた大泉のものが潤滑油みたいになっているせいか簡単に奥まで突き上げられ、俺はあまりの快楽に喘ぎ声を上げっぱなしだ。
白い液に塗れたソレが俺の中に出入りする様子を見ながら、次々と襲いかかってくる悦楽にもう早意識が吹っ飛びそうになる。
「………お………いず…み……っ…………」
何度も何度もその名を呼んだ。愛しくてたまらなくて、呼び続けた。
身体の両脇で血管を浮かせながら体重を支えている二本の腕に縋り付いて、いつしか俺も動きに合わせて腰を振る。
もっともっと、突き上げて欲しくて。
貪欲な快楽への欲求に突き動かされて昇り詰めるその瞬間を一心に目指しながら、でもこのままずっと繋がったまま永遠の快楽を貪ってもいたくて……気が狂いそうだ。
「……おおいず……っ……………」
気が付いたら目の前の映像の全てが、水の底にでも沈んでしまったかのように歪みながら煌めいている。
瞼が熱くなり、今にも雫のかけらが頬を伝い落ちそうなその時、大泉の顔が近付いてきた。
柔らかな唇が静かに瞼に押し当てられ、滴り落ちた雫を舌先で丁寧に舐め取ってくれた。
「…………ばぁか……………泣くなや。」
今度は小さな音をたてて涙のしずくを吸い取ると、そのまま唇に口付けをされた。
「―――――泣いてなんか………っ………………」
必死に言葉を絞り出すと、大泉が目の前で微笑んだ。
「…………意地っ張りのしげ、大好き。」
「う……るせ…っ…………」
口ではそんなことを言いながらも両手を天に伸ばして大泉の頭を抱きかかえ、胸元に引き寄せた。指先に絡む癖毛の中を指でかき分けるように彷徨わせながら抱き締めると、鎖骨のすぐ下にずきりと痛みが走った。
分かり易い場所に一つだけ、鮮やかな赤い印を刻みつけて見上げるとぺろりと舌なめずりしている大泉の顔が俺を見上げていた。
「……………毎日鏡見る度にちゃーんと俺のこと思い出すようにしておいたから。」
そう言って、したり顔で笑っていた。

 強弱をつけながら深く貫かれ続ける。粘膜同士を狂ったように擦り合わせ、汗だくになりながら抱き合い続ける。
止めどなく口から溢れていた喘ぎ声や悲鳴ももはや枯れ果て、掠れた吐息だけがそれでもひっきりなしに漏れ続けていた。
猛った雄で中を抉られては突き上げられるたび、俺の奥に潜んでいる最も敏感で最も貪欲な部分が喜悦に戦慄きながら更なる快楽を求めて悲鳴を上げる。一瞬にして昇り詰める感覚が否応なしに俺を蝕み、今すぐにでも全てを解放してしまいたくて気が狂いそうになる。
さっきから俺の息子はもの凄い量の透明な液を先端から垂れ流しては腹の上をじっとりと濡らしていた。
びくびくと震えながら先走りを滴らせ続ける様子は、ずっとイきっぱなしの状態に近い。
いや、本当はもう何度か達してしまっているかもしれない…………そんな錯覚さえ覚える程に気持ちが良くて、大泉の背中にしがみついては更に奥まで犯され続ける。
大泉もそろそろ限界が近そうだ。荒々しい息遣いの中に小さな呻き声が混じり始めている。
汗をあまりかかない体質の大泉が、ほんの少し額に汗を滲ませながら最後の仕上げとばかりに腰を打ち付けてくる。
皮膚同士があたる時の乾いた音と、粘膜の擦れ合う湿った音が渾然一体となって寝室に響いていた。
そしてベッドの軋む音と掠れた喘ぎ声。
回した背中にしがみつきながら昇り詰め、全てのものから解放される一瞬……それら一切の音が俺の耳から消え去る。
真っ白な静寂に包まれながら、強烈な浮遊感と共に俺はまた白い欲望をぶちまけた。
ほんの少し前に注ぎ込まれた大泉のものが…………体の奥底で滾っているかのように、熱かった。



 『おいっす! しげ、これから暇ー?』
撮りが終わってすぐの夕方、電車を待っていたホームで携帯が鳴って出た途端の第一声。
「おいっす先生お疲れー! 丁度今帰るとこ。」
シャツの下に隠れている鎖骨の辺りに手をやりながら答える。ほんの少し前、着替える時に鏡を見たらまだ綺麗な赤い痣が残っていた。
『よっしゃ、お前今からオリーブオイル買って、こっち来い!』
――――――オリーブオイル? っと思ってピンときた。
「今夜は何パスタですか? 先生。」
「何のパスタでもいいべや、つべこべ言わずに大至急じゃ! 昨日買いに行ったらコンビニにもデパートにもうちの近所にゃひとっつも置いとらん…………仕方がねえからサラダ油で作ったら激マズだったわバーカ! 解ったらとっとと買ってきやがれ。」
俺はお前のパシリかよ………なんて思いつつ、顔には何故か笑みが浮かぶ。
「へいへい………待ってて下せえ兄貴゛〜。」
猪八戒の物真似で答えたら、すぐ近くで電車を待っていたおばさんになまら怪訝な顔で見られていた。
『んじゃ待ってるからなー。』
あっという間に一方的に電話をられる。相変わらずだな、あいつは。
そんな事を思いながらも鼻歌を歌いたい気分で、ホームに滑り込んで来た電車に意気揚々と乗り込んだ。
もう一度シャツの上からこの前の名残の跡に手をやりながら、一人で微かに笑みを浮かべた。
鏡に映った俺の右肩。鎖骨のすぐ下辺りに刻まれている鬱血の跡は、よく見ると小さな赤い薔薇のように見える。
あちこちに付けられた跡の殆どは消えてしまっていたが、これだけは相当きつく吸い上げられたのかしっかり俺の肌に息づきながら、鮮やかに咲き誇っていた。
この小さな薔薇が色褪せて消えてしまわないうちに今度は俺から連絡をしよう……なんて思ってたのに、またもや先手を打たれた感じだ。
苦笑しながら窓の外を流れていく景色を見つめると、夕暮れ時の空はこちらも綺麗な薔薇色に輝いていた。

俺はいつもと違う駅で降りてすぐ近くのスーパーに入る。幾つかあるメーカーの中からどっしりとした四角いボトルのオイルと一緒に日本酒なんかも買いこみ、リュックに詰めて今度は違う電車にいそいそと乗り込んだ。
オリーブオイルを今や遅しと待ちかねている、パスタ好きなモジャ毛の男の部屋を目指して…………。


Fin

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え〜。。。大変長らくお待たせいたしました(汗)
ようやくキリリクの小説をアップすることが出来ました。
キリ50000を獲得されたKASUMI様からのリクエストは
東京出張中の43話で御座います。
大変お待たせして申し訳御座いませんでした〜(汗)




しかし今回も思いっ切りタイトルがストレート過ぎですな(泣)
しかも東京砂漠って。。。わっはっは(汗)

元歌を覚えてる人、いる?




















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