Hit&Run
なーんか、何悩んでたんだろ、って感じ。 三蔵に言われて演ってみたものって…これ、間に合わせで 覚えてろっつったお経じゃんかよ! 「はんにゃしんぎょ−」だったっけ? 罰当たりなのはとっくに知ってるからさー、俺より馬鹿な 真似してどうすんだよ!って、思ってた。 でもさ、何か不思議なんだよ。 リズムに合せて歌ってんのは、確かに俺。俺一人の筈なん だよな。其れが二人になり、三人になりしてんの。言っとく けど、さんぞー達は声、重ねてないぜ?ミキサーだって市場 のあやしー店から買ったオンボロのインチキ臭い奴だしさ。 あ、途中で変な坊さんが乱入して来た。何か、俺と競争する みて−にリズムを畳み掛けてきやがんの。もう俺だってノって るしさ、で、負けずに畳み返す。そしたら今度は俺のラップに 合いの手入れてきやがる。 変な合いの手だったらさ、俺も無視してる。でも其れが凄く 良いタイミングで入って来るんだよな。そしたら今度は悟浄が アドリブを入れてくる。…おいおいリズム大丈夫かよ、と 思ったら、さんぞーも一緒になってアドリブ入れてくるんだぜ? …さんぞー、ひょっとしたら笑ってねぇ? で、八戒は冷静なままか。…そんな訳ねぇよな?ジープも 一緒になってノってやがんの。ショルダーキーボード弾いて 踊る八戒って…想像出来る?笑えるどころが凄くかっけーの! そーすっとさ、判んなかった言葉がスッと頭の中に入って くんの。お経の文句とか…訳判んなくて嫌だったけど。 うん。 俺は俺でいーんだ、って。生きてる内は悩むのが当然って 言われちゃあなぁ…グデッと来るけどさ。続けて「あんた 馬鹿だしさ」って言われると、なーんだ、って感じ。 客席に居たのは半分が爺ちゃん婆ちゃんで、最初凄く 面喰ってた。其れがさ、最後には踊ってるんだぜ? 渋々付いて来たみたいな連中と一緒にさ。 そっか。さんぞーもこんな感じで教わってたんか。 何か凄ェ気持ちがスッキリしてる。 「アレ、お前の差し金?」 「ちゃうよ。あいつがお調子者なだけ。今まで色んな ステージに乱入してるから」 「俺も確か乱入されたよな?」 「ああ、ン回目の誕生日オンステージ?ありゃ合いの手だ」 編物をしながら地蔵菩薩がやんわりと返した。 「今更だけど、光明三蔵も良い弟子を持ったよな。全く、 良い師弟だよ、あいつらは。他の連中に見習わせたいね」 地蔵菩薩は苦い口調で言い捨てる。あの不慮の事故さえ なければ光明三蔵を次期後継者に指名するつもりだった。 打診をした事も在ったが、やんわりと断られたのだ。 『私は、人間ですから』と。 「良い台詞だねぇ。天界人のドタマに叩き込んでやりたいよ」 「特に李塔天?」 「あいつには言うだけ無駄だと思う」 「慈悲の欠片も、」 「在るさ。それ程価値の無い馬鹿だって言ってやってる んだから」 そして、鏡を愛しげに見つめる。 「瞑々からさっき報告があった。ま、悩んで止まるよりも 大事な事が有る、って判っただけでも進歩じゃ無いか? 特にあの坊やは」 「贔屓だ贔屓だ」 「子供に慈悲深いのが、吾の立場だ」 尚も愛しげに見つめている。 (2001.1.8)
《コメント》 終りましたね。とりあえず。 竜頭蛇尾の感も随分あって…いつかリベンジするつもり。 『瞑々』さんって言うのは地蔵菩薩の36人の分身の 内の一人です。性格は極めてお調子者。且つ、隠れ理論派。 流石に般若心経をまんま引用する訳には行かなかったので、 アレンジを加えてみました。仏教関係各位様、 他意はありませんので。