cc-sky1/再会

               彼は指定されたスタジオ目指して余裕を持って歩いていた。肩からは愛用の
              レスポールを下げ、他にはそう大した荷物も持たず。
               彼に誘いの声を掛けたのは同年代でしかもプロミュージシャンとしても               成功を収めている《PINY-GATE》。何でもインディーズで新しく手がける               バンドのメンバーを集めて廻っているらしい。
               「話が逆なんじゃねぇの?普通はバンドごと青田買いしてメンバー               チェンジ強要でしょ?」
               「今回は先ずボーカリストが居ったからね。彼のソロ、ッて考えとったんが、               バンド形式のんがいいかと言う話になったもんやから。自分かてそれだけの               腕持ちながら何でバンド組んでないのよ?今まで会った時はいつもエキストラ               ばっかりやん」
               「人間不信なんだ、俺。煩わしいし」
               「其処を敢えて頼むわ。一寸デモ聴いてみて」
               テープを聞いて、彼は考えを変える。成る程、これだけいい声の後ろで               ギターを弾けるなら、少しの苦痛には目を瞑っていい。寧ろ自分の為には               信念を曲げてでも参加するべきだろう。

               「今日は、いよいよギタリストが来る筈やねん。やー、苦労したなー」
               PINY-GATE…佐々木国松がキーボードの前に陣取ってホクホク顔で口を開く。
               「腕は充分保証できる。今までグループに居らんかったのが不思議な               程やわ。取っ付きはブッキラボウやけど、話し込んでみると結構ええ奴やねん。               根は相当明るいと見たな」
               「でも紹介資料は無い訳ね。宣伝文句だけで」
               鋭く突っ込むのはazure+こと薬師寺香澄…我等が蒼である。今日は               履修していた講義がどんな巡り合せか次々と休講になったので予定より               早くスタジオ入りしたのだ。他のメンバー候補とはもう既に先週までに               顔合わせを済ませ、後はギタリストという段になったが…これが中々決まらない。
              「同年代の連中と付き合い少ないしなー。年上の人引っ張って来ても              ギクシャクするし…。何とか探してみるわ」
              プロデューサー自らのスカウト出馬である。そして今日に至った訳だ。
              「昨日の今日やしね。今まで本人プロフィール公開してへんねん。来てから              話していったらええやん」
              「それもそうか」
              そしてドアはノックされた。
              「どうぞ、お入り」
              ギタリストの入室。そして、ギタリストとボーカリストは凍りつく。
              「…ヒロ…?」
              「カズミ…か?」
              ギタリストの名は、坂本広尾といった。
              「…今、W大の1文だって?良い所入ったじゃん」
              「ま、ね。ヒロは、どうしてたの?」
              「俺?今の調子だと卒業はカズミと一緒程かな。親は泣くだろうけど」
              「そう」
              どうしてもぎこちなくなっちゃうな。だって、まさかこんな形で再会する              なんて思っていなかった。もう2度と会わないものだと思っていた。会えば、              お互いに哀しい思い出が目覚めてしまうから。
              「…」
              ヒロは、何か言いたそうにして、それでも躊躇って何も言えずに居る。              ぼくには多分何もしてあげられない。あの時と同じ様に、全てが終わった              後にしか。其れが、物凄く悔しい。
              「カズミ」
              「何?」
              「あれから…、鷺沼と連絡、取ったか?」
              ヒロの口調は愕くほどに冷静。でも心からそうじゃない事は汗ばんで              震えている掌が物語っている。それでも搾り出した言葉だったら…              ぼくには応える義務がある。
              「会ったよ、あの場所で」
              「3月18日に、か?」
              「知ってたの?」
              「メールが来たんだ。多分、カズミと会った後、だよな」
              遺言でも送ったのだろうか。何も言えず、目で促す。
              「文面、はっきり覚えてるよ。『君の友達のお陰で、やっと決心がついた。              有難う。サヨナラ』。…馬鹿が!自殺は敗北だ、ッてEmiが訓えてくれたんじゃ              なかったのかよ!」
              「エ…ミ…?」
              驚いて、やっと言葉を返したぼくに、ヒロは昔のように微笑みかける。
              「あのさ、カズミ。誤解しないでくれな。俺に取っちゃ戸籍がどうだった              としても、EmiはEmiだったんだ。俺が好きになった女の子、だろ?」
              「忘れてなかったんだ」
              「見くびるなよ?結局あれから今日まで彼女、居ねぇもん。Emiと比べちまう              んだよ。…初恋の威力って、凄いのな」
              わ、照れてる。あの頃はぼくの目の前でさえ照れの素振りさえ見せなかった              ヒロが、思い切り照れてる。
              「友達にしたってそうな。俺、あれから人間不信気味だったけど、              音楽やってる時は他人を信用できた。いい音は裏切らねぇもん」
              そう言って下げてきたレスポール、じゃ無くてソファーにおいて在った              アコースティックギターを手に取った。
              「顔合わせっちゃなんだけど、リクエスト、いーか?」
              「どの曲?」
              ぼくの返事を待たずにギターを爪弾く。まるでピチカートのように。あ、              「 」か。思い至って急いで言葉を思い出して、歌う。何度も、繰り返して。
              「やっぱ、生で聴いてもいい声してんのな、カズミ」
              「アリガト」
              「Emi、こーゆー音、好きだったんだよな。今隣に居たら、絶対俺に              惚れ直してると思う。…あ、そん時は手、出すなよ」
              「何言ってんだよ。…変な奴」
              どちらとも無く吹き出して、笑い転げる。
              有難う、Emi。ぼく達をこういう形で再会させてくれて。
              変わらないものも、あったんだね…。
              さあ、これで面子は揃ったし。いいライブ遣って、燃え尽きようか!
 
                                                  (続く)
              《コメント》                  蒼メインになって衣替えですv^^v 「Y」からのゲスト二人目ですね(一人は『LAST』主役です)                  このゲスト君、とうとう裏にも出演しました。さあお探しください!                  この続き、ホント早く書こう^^;ネタはありますので。



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