紅蓮の死神
 





僕は久しぶりに都会の真ん中、オフィス街にやってきた。
まわりは自分のことなど見向きもしない、この時期だからシャツ姿の人で溢れかえっていた。
今日は土曜日だというのに。
働く人たちには、ある意味で時間感覚があまりないのかもしれない、とふと思った。
その中で、ある建物に入ると予想通りの人が出迎えてくれた。
「お久しぶりです」
「ひさしぶりだね、カイくん」
赤い眼に金髪の彼が、困ったように微笑んでいた。
「すぐに連絡を頂くとは、思ってませんでしたよ」
その笑みを見て、僕は薄く笑うしかなかった。
「ロストブルーの正体を聞かされたときに、これは持ってるべきだ、って思ったんだ」
「では…」
僕は彼にケースを差し出した。丁寧にケースに包まれた中には、1つの装置。そして、ソニックの記憶が眠っている。
ロストブルーの正体を知った後。
すぐにソニックのGPチップを取り寄せた。理由なんてなかった。ただ"もってなくちゃ"という衝動に突き動かされた結果だった。
それから今まで、いつかこういう時が来るんじゃないかと。
「君に託すよ、力を使えるようにしてくれるんだよね」
「ええ…、必ず。貴方が今まで共に歩んできたソニックです、きっと力を貸してくれるはず」
笑顔でいうカイに僕はすぐに返事を返せなかった。
「…どう、だろうね」
「え?」
「ソニックが眼を覚ますまで…僕はいろいろとやりすぎた。今の僕は、あの頃みたいに純粋でもないよ」
「けれど、星馬豪を助けたい、という思いだけは純粋だったと、思いますけどね。やり方が見も蓋もないことであっても」
「ありがとう、カイくん」
「いえ、こちらこそ。ロストブルーに接触していただけましたし、見返りは十分、頂いてます」
「……」

”そうか…まぁ、いいや……今は大人しく鈴をつけておいてやるか”

そういったマグロク。おそらく鈴とは、カイの監視下、という意味であっているはずだ。
「じゃあ、ソニックはしばらく預かります。今度ログインした時までには、GPチップ"Sonic"のデータを、紅蓮の死神に埋め込んでおきます」
「いつ、その力は使えるようになるの?」
「それは…GPチップ"Sonic"次第、でしょうね…一番目覚めさせやすいのは、ディオスパーダに会った時かと」
「……」
「それと、もう1つ。これはたぶん、あなたなら大丈夫かとおもいますが」
「何?」
「GPチップと持ち主の意識が繋がるとき…一時的に"ミニ四駆の記憶"を脳に叩き込まれることになります。電気信号としての情報ですから…、精神的ショックがあるかもしれません」
「僕の場合は…ソニックの?」
「ええ。持ち主の性格まで読み取るGPチップです。僕たちにとっては…それは過去に他ならない。受け止められてはじめて、彼らは力を貸してくれる」
「わかった…ありがとう、カイくん…僕は、戻るよ」
踵を返して、歩き出す。
「戻る、というのは…あの世界に?」
カイが後ろ向きの僕に尋ねる。

「豪のいる病院だよ」

僕は振り向かずに答えた。



Act9. This World is My World(後編)


黎明城は、空中に浮かぶ城。
かつて、友情を失った者が最後の牙城として構えた黎明城は、悲しみの中で世界を憎んだ。
対抗するは神。
それでも、彼は歩みを止めなかった。
止まれば敗北。歩めど煉獄。

絆という重い鎖を引きずりながら、彼はただ前へ。
そして、黎明城から姿を消した。


フィールド:謳われし流転の黎明城


天空城、という設定のせいか、すべての世界が霧のような雲がかかっている。
視界はあまりよくなかった。
黎明城の中庭に降り立つと、まるで静寂に水を打ったように、鳥が飛び去った。
烈はゆっくりとあたりを見渡した。プレイヤーらしい気配は、ないらしい。
白銀の空に、白い壁の城。蔦で覆われた、古代の城。
寒々しい雰囲気は、ここがもう主のいない城だということを否が応でも感じさせる。
烈の肩には、マグロクが乗っていた。ペットと登録されてしまった以上、どこでもついてくる。
マグロクもあたりを伺うように尾を立てた。
「…何か、変だ」
マグロクが呟く。
「…変、っていうと?」
「ディオスパーダの気配がする。それと、あと何か…変なもの…」
「変なもの?」
「retsuと似てる、けど、違う…、わからない」
金色の体毛を逆立てて、空を見た。白銀の空が、渦を巻いている。
「行こう、こうしていても何も始まらない。剣は、どこに?」
すっ、とマグロクは上を見上げた。
「城の、最上階」
「なるほど」
烈を手を掲げる。

「バスターソニック、展開」

呟くと、銀の鎌が姿を現した。心なしか、刃がいつもより研ぎ澄まされているような気がした。
マグロクが驚いたような声を出す。
「…宿したんだ。兄貴を」
兄貴、というのはソニックのGPチップを指す。宿した、という曖昧な表現だったが、たぶん正しいのだろう。
PC"retsu"の中にいるのだから。
「ああ…、今どうしてるのかは、僕にはわからないけど…」
「……寝てる。というか、知っている最中ってところかな…」
マグロクはたとえが難しいというように首を振った。
「視界、という認識は俺たちにははじめてのことだったからな…最初は戸惑うんだ」
「ミニ四駆に、カメラはついてないからね」
苦笑すると、マグロクはそっぽを向いた。
「兄貴はお前の中にいる。だけどまだ目覚めるには早い。兄貴はあれで物事は考えるタイプだしな…retsuの様子見の後でも遅くない、って考えてるんだろ」
「お前は、ソニックの性格を知ってるんだな」
「あたりまえだろ」
兄貴なんだから、とマグロクは言った。
「兄貴、か」
どうやら、ソニックの性格とやらは一緒にいたマグナムだけあり、把握しているようだ。
こうして、ミニ四駆の中の声を聞くというのも不思議さを感じた。
来訪者を迎えるように、霧が、深くなる。

「……retsu、構えろ」

低い声色で、マグロクが言った。
「マグロク?」
「…どうやら、感づかれたな。来るぞ」
「…!」
ぞわりとした、濃い色の風が吹いた。
そこかしこにあふれ出す。もやのような黒い影。
「羽根だな」
「ディオスパーダの?」
「ああ…」
あの鋼鉄の羽根を思い出す。アレに一度刺されたんだから。
今度は、形を持って敵として現れた。
「こっちに来ようとしている。けど、正規版サーバーだとまだ形を保てていないから、くずデータみたいになるんだ」
「ここが目当てってことは…」
「奴も、剣が目当てだな」
「なるほど」
くるりとソニックを振り回した。
「…一気に最上階へ行くよ、マグナム」
「追いかけっこってわけか」
「相手が羽根で、倒しても相手になんらダメージがないのなら…」
ぶん、とソニックを凪いだ。
一瞬遅れて、城の門が炎上する。炎に焼かれて、黒いもやは霧散していく。
ソニックを後ろ手に構える。

「容赦も、遠慮もいらないね」

炙られて照らされた表情は、少し悲しげに、それでも目は笑っていなかった。
「行くよ、振り落とされないでね、マグナム!」
「おう!」
いっきに扉を焼き払い、上を見上げた。


ぐるおおおお…。と声にすらならない音。


「…お出迎え、かな?」
まるで汚物でも吐くかのように、黒い泡を吐き出した。
それを飛んで避ける。
着地した瞬間、後ろから別の黒い影が、体当たりしようと襲いかかる。
「ちっ…!」
マグロクは尻尾を振ると尾の先から星型の光を飛ばして、黒い影を吹っ飛ばした。
「ありがとな」
「礼は、ゴーを取り戻してからいうんだな」
「そうする」
ちゃき、とソニックを持ち直す。

「フェニックス・バーン!」

城の三階の窓から、炎が噴出して、すぐに消えた。
階段を見つけ、そこを一気に駆け上る。
「retsu、ここレアアイテム結構あるんだが?」
マグロクが茶化すように言う。
「それを、取ってる暇ある?」
「あるわけ、ないよな!」
自分の左右で真紅の炎と金色の光がはじけた。
爆炎を避け、階段に着地する。
ふと、黒い影が伸びた。
「っ、上か!」
不意を突かれた。これじゃ動けない。
黒い剣が、眼前に迫る。

「…兄貴、悪い、ちょっとretsu借りるな」
ぼそりとマグロクが呟く。そして、僕の右肩に飛び乗った。
「マグロク?」
そして、信じられないような言葉を呟く。

『PC"retsu"のコード解析……コンプリート。限定強化…範囲設定完了…強制接続!』

マグロクが、金色の光を放つ。
「っあ…!」
どくん、と心臓が鳴った。
鳥の声だ。さっきの。しかし、どうして今こんなときに。

『貸しにしておいてやるよ』

苦笑しながら、そういう声が聞こえた。
マグロクでもなく、豪でもなく。けれど、それが誰だか、僕は知っている。
視界が炎に包まれる。
この感覚を知っている。逃げたくない。助けたい。そう願う強い意志を。

力強い風が、炎を纏った。

「ぎゃああ…」
階段下へ、黒い影が落ちていった。
「…はぁ、はぁ……」
右肩にいたはずのマグロクはそこにはいない。
代わりに、握り締めていた鎌の形状が変わり、右腕からは装甲が生えている。
あのときと、同じ格好だ。

「やっぱり、これはお前がやっていたんだな、けれどどうして僕にシンクロとやらができる?」

呟くと、一気に上に駆け上がった。
眼前に来る敵を次々薙ぎ倒し、時には飛んで、ひたすら上へ。

『理論としては、誰でもできるんだ』

ぶっきらぼうにチャットウィンドウの文章のみが表示された。
『ただし、GPチップの記憶を受け入れられるだけの、受けいれる人間の器があるのならば』
「僕が、お前を受け入れるだけの器がある、と?」
『…まぁ、そんなところだ。かつて、お前の監督が俺と兄貴に妙なことをさせたせいだろう。他じゃこうはいかない』
「変なこと?」
『"俺"を兄貴のボディに埋め込んで走らせただろう。そのときのことだ』
「なるほど、あのときか」
WGPの対ブーメランのレース。
レースで勝つために、ソニックとマグナムのGPチップを交換して走らせたことが。

『変な感じだった、コーナー早く走れるし。兄貴に直線で勝てないし』

あのときの感覚は、GPチップたちにとっても経験がないことで、戸惑うことだったのだろう。
だが、そのおかげでここを切り抜けられそうだ。
「じゃあ、豪もソニックとできるのか?」
『兄貴にその気があれば』
「…なるほど、少しわかってきた」
目の前に、黒いもやが固まって巨人の姿になる。
うなり声を上げ、巨大な塊が叩き潰すように目の前に迫る。
剣を振り下ろすのを待って、剣の上に駆けあがった。
「なっ…!」
巨人が形を崩した。
一瞬にしてもやが蝙蝠のように霧散する。
足元が一瞬にして消えていく。
「こうなったら…!」
足元が消える瞬間、思いっきり高く飛び上がった。
まるで感覚があるのかないのかわからない。
最上階まであと少しだ。このまま足場を見つけて、逃げてもおそらくいける。だけど。
「なぁ、マグナム」
『なんだ?』

「俺がトルネードやったら、怒るか?」

言うと、マグナムが頭の中で笑った気がした。
『いや。retsuがかっ飛ぶなんて見たらきっとゴーと兄貴が驚くぜ。兄貴には必殺技なんてなかったからな』
「まぁね。じゃ、遠慮なく!」
ソニックの刃に、炎が灯る。
その炎に、風を発生させて竜巻を起こす。
意識を集中させて、炎を集める。ぐっと、刃を頭上へ掲げた。
そして、一気に振り下ろす!

「バスター…フェニックス・ハリケーン!」

紅い竜巻が巨人を包み込む。
轟音を立てて、蝙蝠と巨人が炎上した。
ぼろぼろと音を立てて、巨人が地面へ落ちていく。
『今のうちだな』
「ああ」
『トルネードでもなく、ハリケーンなのは、兄貴のためか?』
ふと出た質問に、烈は笑って答えた。

「僕が好きだからだよ」
『へぇ、兄貴も愛されてるな』
「っ…マグナム…今そんなことは…」

いきなりマグナムから「愛されてる」なんて言葉を聞いて、自分のほうがびっくりしてしまった。
『retsu、最上階だ』
言われて、はっと上を向く、確かに扉があった。
「ああ!」
扉を突き破り、外に出た。

「ここ、は……」

おそらく、最上階だろう。最上階はどうやらまた空中庭園のようだった。
霧が立ち込めていて、周りがよくわからない。

『retsu、動くな』
突然、メッセージが表示される。
「…マグナム?」
『さっきの変な奴、ここにいる…』
「なんだって…?」
『この霧、吹き飛ばせるか?』
いつになく、マグナムは真摯な雰囲気で問いかける。

「わかった」

バスターソニックを構え、目を閉じる。
「マジックスキル展開、ウィンドブラスト」
足場から風が起こり、周囲の霧を吹き飛ばした。
視界がクリアになる。
そして、眼前には1つの影があった。
「なっ…!」
『これ、は…」
「……」

彼は、にこりと笑って刃を握った。

黒い髪に、黒い眼。
黒と灰色のターバンを頭に巻き、何物も寄せ付けない。その眼。
わかる、これは俺だ。
豪の手がかりを探していた、過去そのもの…けれど、どうしてここに?

『紅蓮の死神ならぬ、漆黒の死神か…最後の番人としては、うってつけか』
ぼそりと、マグナムは呟いた。
「どういう、こと?」
『…大方、ディオスパーダがコピーしたんだろう。お前を』
「……」
……じっ、とそいつを見つめる。
片手には、大鎌を、そしてもう片方の手には、青い柄の剣があった。
それには、見覚えがある。
「マグナムセイバー…」

ちっ、マグナムが舌打ちをした感覚があった。
漆黒の死神は、それを手に持ったまま、動く気配を見せない。
「…おかしい……」
『retsu?』

「どうして、逃げない?」

それは、自分に向けての問いであり、相手に向けての問いだった。
「……」
相手、漆黒の死神は答えない。
ただ、不敵に笑うのみ。

「とにかく…マグナムセイバー…奪わせてもらうよ!」

地を蹴り、漆黒の死神に向かっていく。
「……!」
ひらりと、かわされた。
まるで実体がない。いや、実態はあるはずなのに。
漆黒の死神は、にこりと笑った。

そして、マグナムセイバーを自らの胸に刺した。

「えっ…」
刺された剣は、刺し貫くこともないまま、漆黒の死神の中に埋まっていく。
マグナムも僕も、その光景を呆然と見ているしかなかった。
完全に、剣が死神の胸に埋まる。
黒い眼が、僕の顔を見て笑う。ゆっくりと、声を発する。

「…シニ、ガミに……アタエルモノハ……ヒトツ、ダケ」

放たれた言葉に、全身が総毛だった。

「…!」
『retsu、何してるんだ、retsu!!』
マグナムが呼びかけても、足が震える。
ゆらりと立ち上がる漆黒の死神。
その姿は…、まちがいなく自分自身。なら…、自分の手で結局をつけなければ。
けれど、何故だろう。動けない。でも、動かないと。

『retsu…?』
マグナムが不安そうな言葉をかける。
言葉を発した後、漆黒の死神は、仕掛けるのを待っているようだった。

「大丈夫…大丈夫だよ」
『……わかった…』

何かを察したマグナムは、何かを察したかのように、答えた。

『…強制接続範囲、変更。出力範囲、"バスターソニック"』

肩から指先まで伸びていた装甲がはじけ飛ぶ。
けれど、武器の鎌はそのままで残っていた。

『時間がないから、とっとと決着を付けろよ』

「ありがとう…」
シンクロ状態というのはやはりこちらの思考も伝わってしまうらしい。
自分の力で決着を付けることと、手を貸すことの判断に迷った結果、マグナムはこの決断をした。
「たぶん、だと思うけど…彼、容赦しないと思うから、危険だと思ったら、迷わず逃げて」
『どうしてだよ』

「もし、僕の思うとおりの性格なら…彼は……破壊することを"楽しむ"はずだから」

それは、自分に向けての苦笑だった。

「…壊したくない、って思ってるはずなんだけどね。結果的に、壊してしまうんだ。WGPでもそうだった」
『何言ってるんだよ、retsuはバトルレースを否定してたじゃないか』

マグナムは全力で自分の言うことを否定する。けれど、僕はそうじゃない。
「そう、バトルレースは嫌いだ。否定する…だけど…結果的に僕の勝利は……何かを壊してきた」
『壊してきたって…』

「記憶力のいいマグナムなら、わかるだろう?僕が勝利したとき、"相手のミニ四駆がどうなっていた"か」
『retsu…』

「気づきたくなかったことだけど…今の彼は、僕の感情に正直だよ」

だから、危険になったら逃げてね



ディスプレイ上で、僕は薄く笑みを浮かべた。
死神の笑みを。



+ + + + + + + + + + + + + + + + + + + +




『コピーが、紅蓮の死神と接触した』
「そうか…」
ブレットは立ち上がった。
その周囲は宇宙そのものに似て、限りなく遠い。
0と1で構成された果て無き世界だ。

「レツ・セイバがソニックの力を得るのに、そう、時間はかからないだろう」

そこにいるものに呼びかけるが、眠っているのか揺らめいているのか、ブレットにはわからなかった。
わかるのは、そこにいて、声が聞こえるということだけだ。
声というのも奇妙な感覚だったが、脳に直接言葉が伝わる。それだけのことだった。
「スターゲイザーのメンバーは全て指定位置に揃えた」
『なるほど、それがサンプルか』
「お前が好きそうな奴ばかり揃えたつもりだ、気に入るだろう」
『それはそれは…』
にやりと笑う感覚が、頭に中に木霊する。

「サンプルは揃えた。あとは…」
『鍵が開くのを待つだけだ』
「そうだな」

緑の眼が、バイザー越しに輝く。
野望、という大げさなものではないが…おそらくこれは、敵側、ということなのだろう。とブレットは笑う。
少なくとも、レツ・セイバにとって、自分は敵なのだから。
相手はこの世界を破壊しようとして混乱していると思い込んでいるだろう。
だが、奴もれっきとした1つの意識である、と仮定するのならば、対話は容易い。
目的があり、それが自分の目的と合致しているものならば。
そこに、協力関係が生まれても、おかしくはない。

『This World is My World…』
ぼそりと、奴が言葉を発する。
「どうした?」

『マグナムのログを漁っていたときに出ていた言葉だ』
「……」
『これはマグナムのことを指し、同時に奴のことも指すんだろうな』

この世界が自分の世界そのもの。
少なくと、
『しかし、俺は違う』

「…というと?」

『This World is Mine…全ては、俺のものだ』
「なるほど、お前らしい意見だ」
ブレットはくすりと笑みを見せ、闇の向こうを見やる。

ここは果てしない電子の世界。
それはずっと行きたかった宇宙にも似ている。
しかしそれは人間が作り出した新たな世界。

「さて、目覚めてもらおうか、ゴーセイバ。鍵が開いたとき、お前に正規版サーバーを 支配してもらおう」


「…わかった」


白い樹木の中で、青い瞳が開いた。







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