change my mind 2 scarlet voice!






奏でる音色、会場の全てと一つになる感覚。
その15分は、永遠に続くような気がした。
イントロ部分で流れるメロディに、豪が一瞬だけ横を向いたのを、烈だけが気づいた。

視界に入る青はあまりにも眩しくて
息が出来ないような気がした

もう戻れない望んだままに生きたのに
立ち止まる雫雨
手を差し出してくれたならそれだけ

風よ吹いて涙を浚え
まだ友達と言ってくれるのならば
会いたい人ががいるから
廻るその時まで
どうか笑顔でいて
僕が泣くその分まで

言葉に出来ない思いはあまりにも多くて
重なっても伝わりきれるのかわからない

目を閉じて鳥の羽音を聞く
走り抜く面影
一緒に強く握り締めたこの指で

風よ吹いて霧を払え
迷うのは一人でいいのだから
青い空君に一番似合う色
仰ぎ見てそれだけを思うよ
廻るその時まで
どうか笑顔でいて
僕が泣くその分まで


最後の曲にしては、スローな曲。
声を重ねることも無く、ボーカルただ一人だけで歌い上げる。
ここまで歌えることができたのは、みんなのおかげ。
いろいろあったけど、また元の生活に戻る。
けれど、きっと忘れない。
格好はバスターだけど、今は星馬烈なのだから。
豪も、ビートじゃなくて豪。
もう変える必要も無くて、ありのままでいけばいい。
それが、自分のなのだから。

「……ありがとうございましたっ!」

躊躇いがちに手を上げると、一層歓声が上がった。
1歩、2歩後ろに下がると、左右から幕が迫ってくる。
これで、本当に最後。
学校の規定で、アンコールはない。
幕が全部閉まっても、声は向こうから聞こえてきた。
「…ふぅ」
完全に閉まったのを確認して、烈は息を吐いた。
手を見ると、少し震えてるのがわかる。
知らないうちに相当緊張していたようだ。
「烈兄貴、大丈夫かよ?」
藍色の瞳のまま、豪が顔を覗き込んでいた。
「…うん、大丈夫…ちょっと疲れただけ」
「すごかったもんなー、俺も楽しかった」
満面の笑みを見せた豪に烈もふと笑顔で返した。
「それじゃ、さっさと元に戻ろうぜ。俺売店行ってないんだ、案内してよ」
「お前な…」
豪は学校に来て直行で仕度をしていたため、確かに他のクラスの売店には言っていない。
しかし、それに烈はすぐにうんとはいえなかった。
「今行ったら大騒ぎになるのはわかってるだろ、今度何か奢ってやるから諦めろ」
「あっ、そか…じゃあ約束な、じゃあ、俺何処にいけばいい?」
烈はふと考えた。
豪は飛び入り参加だ。学校内で見つかれば大騒ぎになる。もちろん、自分もそうだが。
こっちは後片付けやらいろいろと残っていた。
「…迎えに来てやるから、しばらく目立たないところにいろ」


◆    ◆    ◆


「風よ吹いて 霧を払え 迷うのは一人でいいのだから……」
烈の言われたとおり、豪は大人しくしていることにした。その場所は校舎の屋上。
校舎の屋上にわざわざ来る人はいない。幸いなことに、飾り付けで解放されていたため、すんなりと入ることが出来た。
烈からおやつ代わりのたこやき、クレープ、ジュースを手に入れ、それも食べ終わった豪は、一人でアコースティックギターを弾いていた。
(持ってきて正解だったなぁ…)
重かったけど何時も持ってきていたから、なんとなく今日も持ってきていたのだ。
歌うのは、さっき烈が歌っていた曲だ。
悲しげな曲なのかはわからないのだが、そのメロディーは好きだった。
らら、と1分ほど歌い続ける部分があるのだが、その部分が特に。
「…やっぱ、兄貴みたいにいかないか」
キー高すぎて届かない。
この歌は、誰も聞かせないほうがいいかな、と思う。そんなに上手くもなかった。
最後の弦を弾いて、ため息をついた。
「兄貴、まだかなぁ…」
空は夕暮れとも呼べる時間帯になっていた。
頭上一杯に広がる青は、雲の陰となり、橙の光が染めていく。
合間を、鳥の群れが飛んでいく。
「…豪」
呼ばれて、振り向いた。
「ジュン」
何か決意した表情で、こちらを見ていたジュンがいる。
そのただならない雰囲気に、眉をひそめた。
「どうしたんだよ、なんか変だぞお前」
「……あ、あのね」
どもりながらも、前に歩き。座っている豪のすぐ後ろに立った。
「隣いい?」
「おう」
座ると、頭一つ分豪が高く、どこか遠くを見るような目で、ジュンをみていた。
「豪…」
「なんだよ」
「かっこよかったよ、すっごく」
突然の言い出しにきょとんとした表情をした。
「ありがとな。ジュンに言われると嬉しいよ」
「そ、そう…?」
おう、と
無防備な笑顔を見せた。そして、ふっと影が出来る。
「…なぁ、ジュン、俺なにかした?ずっと何にも言わないしよ。気になるんだけど」
「…えっと、ね………」
しどろもどろになる、豪は首をかしげた。

「…豪が、好きなの……」

掠れるような声だったが、近距離にいる豪にははっきりと聞こえた。
「…俺が、好き?……ビートじゃなくて?」
もう勘違いするような歳でもなく。
確認するようにジュンに聞くと、ジュンはこくりと頷く。
「…そっか…」
涙目のジュンを見て、豪は困ったように笑った。



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