雪が融解する温度7




朝目を覚ましたら、白い珠を1粒飲みこむ。
昨日1粒飲んだから、あと1つ。
「……」
後ろを振り向くと窓がある。首を回して空を眺める。
雪は、止んでいた。けれど今すぐ降りそうなはどに曇った天気だった。
ガラスに頬を当てるだけで、外が寒いことがすぐにわかった。
「これなら…走れるかもな」
雪が止んだばかりの道路は、白で埋め尽くされていた。訳も無く、楽しい気分になる。
ここで一本、直線を引きたい。マグナムでまっすぐに。


「ね、兄貴」
「お前は…考えたらすぐ実行するんだな」
「そういう性格だからな」
朝早く、誰もいない道。冷え冷えとした空気が気持ちいい。
「今日の天気がこうなるのわかってたのか?」
「いや。天気なら兄貴のほうがよっぽど詳しいんじゃねーの」
「ま、まぁ…」
やはり、天気を把握してたな。雪道用のパーツは昨日買った。俺と兄貴の分もある。
マグナムに触れるのは8年ぶりだったけれど、身体に染み付いた感覚は、パーツも
「悪いな、勝手に買って」
「気にするな」
「それじゃ、行くぜ」

雪道をまっすぐに。
白い世界に2本の線を引こう。
ずっと途切れることはないと思いたいけれど、その線には果てがある。

「兄貴、ちょっと遅くなった?」
「まさか、お前になんか負けるかよ」
「俺だって、負けるつもりは無いからな」

悲しくなんか無い。そう思い続ける。
これは俺が望んだ結末。俺が望んだ未来。ずっと走り続けていく。
それが太陽に向かうことであっても。
「なぁ、烈兄貴!」
「なんだよ!」
「ずーっと、こうしていられたら、いいな」
「そうだな、俺もこうしていたい」
2人で走っていく。白く雪が残るコースを何度も何度も。
風を切って駆け抜けていく。その感覚は雪山でも何度か走ったから経験があるけれど、烈兄貴を2人だから、また感覚が違う。
「豪…」
「ほら兄貴、置いていっちまうぞ!」
何度も何度も走っていく。一生分を全て使い切ってしまうまで。

泣いてることなんか、俺は気づいてない。

「…あ」
見上げると、太陽の光が雲間から伸びていた。
灰色の雲から白い光が伸びる様は、こっちで見るのははじめてだったような気がする。
「豪!大丈夫か?」
慌てて兄貴が駆け寄ってくる。そっか、ついさっきまで太陽光で倒れそうだったからな。
「…ああ、平気。薬が効いてるみたいだ」
「薬?」
「…うん、もう、無いけどな」

彼女から冷たさを維持する薬を貰ったことを話すと兄貴はほっとした表情で俺を見てくれた。
「まったく、無茶するなよ」
「俺に無茶するって言うほうが無茶なんだよ」
「あはは、そりゃそうかもな」

もう、帰ろうと兄貴は俺の手を引いた。いくら薬があると言っても、また倒れてほしくない、と。
手を取って、そして歩き出そうとする。
「烈」
思わず、だった。
「豪?」
兄貴の腕を引っ張って、自分で抱きしめた。いつも抱きしめられてばかりだった。
ずっと、怖かった。
こんなに冷たかったら、きっと兄貴は震えてしまうんだろうな、って。
「豪…どうして…」
振りほどこうとはしなかった。代わりに、腕を伸ばして背中を掴む。

「大好き、兄貴のこと、大好き…愛してる」

一緒に居たい、とは何度も言ったけど。この言葉を言うのははじめてだ。
気恥ずかしいとか考えてる時間も、俺にはもうない。
だったら、言うべき言葉は伝えたい。思いの全てを。
「豪…俺、もだよ」
戸惑いながらも、兄貴は応えてくれた。

腕を解くと、少し俯いて、俺を見上げる。
「豪にとっては、俺が初恋?」
「そうだな、きっと初恋だ」
「初恋で、燃え尽きて死ぬのか。お前は…もっといい人も、いるかもしれないのに」
真面目な目で、俺に突きつけた。けれど、笑顔で答える。

「”これ以上”はありえないぜ。俺がそういうんだから間違いない」

「…そうか」
烈兄貴は、何かを決意したように、目を閉じた。
何をすべきかは、もうわかっていた。
雪女なら、口づけをした瞬間に相手を凍らせるけど…俺の場合はそうじゃなかったみたいだ。

ひどく、熱い。けれど心地いい熱さだった。

凍らせてしまわないように、目を閉じて感覚を追う。指に烈兄貴の髪の感触が伝わる。
冷たさがないと維持が出来ないのに、こんなに熱さを求めてる。

唇を離すと、烈兄貴は、少しだけ震えてた。
「大丈夫か?」
「ああ。ちょっと冷たかったからな…紫になってたりしてないか?」
「なってない」
「ならいい」
すごく、幸せそうな笑顔を見せてくれた。これ以上は、ないってくらいに。

「ね、兄貴…1つ教えて」
「なんだ?」

「俺がいなくなったら、兄貴はどうするんだよ」

「……」
その質問に、兄貴は応えてくれなかった。
そして、首を振る。
「お前は知らなくていいんだよ。お前は安心して、俺の中で解けてしまえばいいんだ」
「兄貴…」
「ほら、帰るぞ」

前を歩いていく烈兄貴。
最後まで、意地を貫き通すつもりなんだろう。ぎゅっと握られたこの手を、兄貴は離さないでいてくれる。
嬉しいのに、泣きたくて、たまらなかった。俺は兄貴の本心すらも見られないで、その未来を知らないで解けるしかない。
一緒にいたい。消えたくなんか無い。
誰に憎まれても、烈がいればそれでいいと、そのために。烈になにもかもを失わせても。
激情は、止められなかった。

「…って」

「豪?」
かすれて、声にならなかった。
「…って、言って」
その言葉を言いたい。けれど、言ったら兄貴の全てを奪うだろう。
兄貴にまつわる全ての人間を悲しみに落とすだろう。

そこまでして、自分の欲望のままにするのがどんなことになるのか、十分分かっているはずだった。
それなのに。

「俺のために死ぬ、って言ってくれ」

この言葉がどんなに残酷なことなのか。頭がぐるぐる回って、それ以上考えることさえ出来ない。
兄貴が俺だけを思ってきた8年間の苦しみを、今度は兄貴を思う誰かに背負わせるんだ。

その後、頭の中はからっぽだった。
烈兄貴が何を言ったのかさえ、覚えてない。ただ手を引かれるままだった。
いや、聞きたくなかったんだと思う。
言ったことを忘れてしまいたかった。無かったことにしてしまいたかった。
この思いは確かで、本物だ。その事実も無かったことにしてしまいたかった。
だけど、もう出来ない。
頭に中に思い浮かぶのは、母ちゃんや、ジュンや。みんなのこと。
罪悪感で頭が割れそうだった。

最後の白い薬が、ポケットの中で揺れる。

夜になって空気が冷えると、ようやく正気に返った気がした。
「…ごう」
顔を上げると、静かな表情でじっと兄貴が俺を見つめていた。
「あに、き」
「大丈夫か?」
ただ優しく、心配そうに見つめる眼。少し頷くと、今度は眼を細めて笑った。
「よかった」
それ以上、何も言わなかった。ただ、俺を見ていた。
「俺…」
「もう11時過ぎだ。寝てろ」
11時過ぎ、そこまでぼんやりしてたんだ。何をしてたかももうぼんやりしている。
兄貴もいつの間にかジャージだ。最後だったのに、無駄なことに時間使っちまった。

「なぁ、豪」
「なに?」
「ありがとな、お前のおかげで、少し吹っ切れた」
「…え?」
そっと髪の毛に触れて、眼を閉じた。
「ずっと考えてたんだ。もしお前がいなくなって、俺が後を追う運命を選んだら、お前はどうするだろうって」
「兄貴…!」

「でも、今日の言葉を聞いて、わかったよ」

そんなことを望んでるわけじゃない。けれど、嬉しいと思った。
「でもな。豪、この選択は俺の意思だ。誰を悲しませても、傷つけても、おまえと一緒にいたい」
言葉がするりと流れ込む。ずっと聞きたかった。その言葉を。
「だから、お前のせいじゃない。この未来は、俺の意思だ」

「ごめん、ごめんな…烈兄貴……」

その未来を選ばせてしまったこと。俺のために全てを投げ出させてしまったこと。
「好きだよ、豪」
「烈」
そこから先は、求めてるのか求められるのか、もうわからなかった。

ただ、ずっと一緒にいたかった。
そこにあるから、抱きしめたいと思った。
兄貴のベッドはずっと部屋の中でも兄貴だけの領域で、あれだけ苦しかった時でさえ行かなかったところだった。
そこに招かれる。
どうすればいいのかわからなくても、巡る感情だけで身体が動いた。
烈兄貴の指が伸びて、髪を解いた。
こっちは服を脱がせていく。その間、俺も烈兄貴も何も言わなかった。
お互いの裸体を見るのは当然初めてで、兄貴と比べて、自分の肌がずいぶん白くなっていたことに吃驚した。

「俺、結構細いのかな」
茶化して言うと、そうかもな。と苦笑しただけだった。
軽く胸を押すと、兄貴はされるがままに仰向けになった。赤い瞳に、ぼんやりと俺の姿が見えるような気がする。
兄貴は、軽く笑った。包み込むように腕を伸ばして、冷たい身体をためらうことなく抱きしめた。
「…教えろ、豪」
「何を」

「お前の考えてることと、お前の願いを。叶えてやる」

最上の、告白だと思った。その命令口調で囁く、最上の優しさに。
全部欲しい、兄貴の全部を、その思いも。体温さえも。
「兄貴が、ほしいな」
「それでいいのか?」
「うん」
最後だと、兄貴は思っているだろう。たぶん、それは正解だ。
きっとこんな温かい体温を兄貴が持つことはもうない。
「お前の、好きにしろ」
「兄貴…?」
微笑んだまま、緩く身体をくねらせた。
「なんだろうな…、お前に死すら望まれたら。怖いものが何も無くなった」
長時間触れた冷たさを震わせて、息が白くなっていた。
「たぶんさ…こういうことしたら痛いんだろうとか、プライドとかあったんだと思うんだけどな…」
まるで他人事のように烈は言う。それでも、どこか嬉しそうに言った。
「お前がいれば、それでいい」
「うん、俺も」
深い抱きしめから、口付けへ。
烈の体温で、解けることは決してないのだけれど、自分の体温が上がっていくみたいだった。
赤い髪に顔を埋めて、そこにいることの感覚を確かめる。
貫かなくたっていい。ただ、一番近い場所に烈がいればいい。
眼を開けると、少しだけ烈の体温が低くなっていた。
「寒く、ないのか?」
「冷たい」
一言だけ、兄貴は眉を寄せて言った。
「…ごめん」
「そういうな」
指に口付けた。温かさが指から伝わってくる。
「元は熱いんだから、もうちょっと体温上げろ」
「……わかった、頑張る」

やり方なんて、わからないけれど。兄貴と、一緒なら。
そうして、夜明けまで俺は兄貴を求めた。
すごく不器用な方法だったけれど、俺の気持ちを全部伝えた。
こんなにも冷たいのに、心だけは燃えるように熱かった。自らの熱で解けそうだなんて、はじめての感覚。
「あつ、い…」
虚ろな声で言えば、兄貴は微笑んだ。
「豪、もっと…」
ねだるような、囁くような不思議な声。
でも、兄貴の貫くことだけはしなかった。そこまで冷たくさせたくなかった。
「どうしてだ?」
「せっかく、兄貴の体温があるのに、もったいない気がする」
「構わないのに」
「それだけ言うなら、もっとキスしてくれ」
言うと、兄貴は舌を出して唇を合わせた。目を閉じれば、口内の感覚が胸を満たしていく。
「…気持ちいい」
「俺も」
俺の体温が兄貴の身体に馴染んでいく。
最も感じる中心に触れて、肌を重ねて、指を絡めて。「好き」だと何度も告げた。
求めて、貪りあって、感じて、満たされて。やがて、言葉も必要がなくなっていた。

これはセックスとか、そんな生易しいものじゃないんだろう。
自らの恋のために、自らを生贄に捧げる儀式だ。

この夜が終われば、兄貴は、自らを殺す。

「れつ」
「なんだ?」

「…寒い?」
「いや、まったく」
「なら、いいんだ」

…だけど、兄貴に罪は背負わせない。
そのために、全ての気持ちを伝えたうえで1つだけ嘘をついたのだから。



◇     ◇     ◇



何かができるわけでもない。時間が過ぎていくばかりだった。
豪を求め、そして触れる。冷たくも温かい。不思議な感覚。
激しい快楽すら陶酔に変える豪の指は、とても心地良かった。

この夜が終われば、全てが終わり。
俺は自分を殺す。
いろんなことが頭を駆け巡った。もう二度と会えない人たちのことを。
それでも、その先に豪がいるのなら、構わないと思った。

耳元で不安そうに豪が囁いてくる。
「伝わってるか?」
ああ、十分伝わってくる。お前が俺を求めてくれてる。
同じ気持ちでいてくれている。

身体を冷たい重みでつぶされそうでも、心臓がどくどくと脈打って、どうしようもない思いが身体を内側から熱していく
冷たい、熱い。外と内で真逆の温度が苛む。
がくがくと身体が震える。豪は心配そうに離そうとした。
「…っ」
豪の背中を引っかいてしがみついた。
「あに、き…」
お願いだ、離さないでくれ。俺にはもうお前しか見えてない。
これで最後だというのなら、これがお前の気持ちの全部だって言うんなら、冷たさだって平気だ。
人間の身体は、求めれば求め合うほど、熱が生まれるように設計されている。
それでも豪の冷たさが俺の負担になるならむしろいっそ。

お前に、体も心も凍らせてもらって。ずっと傍にいられたら。

「はぁ、あ……」
胸の飾りを噛み解されて、溢れそうなほどの快楽が生まれる。
刺激されるたびにに熱は生まれて巡っていく。それでもこの熱は巡るばかりで豪に与えることすら出来ない。
泣きそうに濡れた眼を、豪の唇が拭っていた。
自分の欲望は全部出した。これが俺の持つ気持ちだ。浅ましい。
狂いそうなほどに愛しい。自らを破壊するほどに。

なぁ、豪。どうして俺たちは、こんな道しか選べなかったんだろうな。
過去を振り返れば、たぶんあのときこうすればよかった、なんて考えは一杯出てくるだろう。
それでもな、俺は後悔してないんだ。俺たちはきっと、離れては生きていけない。

お前が太陽の光で解けるなら、俺は太陽の下で無様に壊れてしまう。

そのときになれば、お前は今度こそ笑って。俺を貫いてくれるだろうか?
「…泣かないでくれよ」
「ああ」
お前が解けたあとで、たくさん泣くから。今は、まだ。



そして、朝が来た。
朝の光が、ゆっくりとベッドの上を満たす。
「兄貴…」
何かがあったわけでもなく、日に置いておけば、雪が解けて水になってしまうように。
それを留める冷たさを、俺は持ち合わせてはいなかった。
「豪…」
腕に触れると、しっとりと水に濡れていた。汗でもなく、ただの水。
「はぁ……」
大きく息を吸うと、力を失い、胸に倒れこんだ。
朝の光に解けていく、その身体を包むように抱きしめた。
「苦しく、ないのか?」
「平気。だけど…、やっぱ、ちょっと怖いな」
「……」
「なぁ、兄貴」
「何だ?」
「…ありがとな、俺のために死ぬって、言ってくれて」
優しく笑う。そして俺の手を取った。
「兄貴、俺の服のポケットに、白い珠があるから。出してくれないか」
「わかった」
ベッド脇に放り出されていた豪の服を片手で引っ張る。
言われるがまま、豪のポケットから小さく白い塊のようなものを出した。雪のように白く、ひんやりとしたそれを。
「もしかして、これ…」
「彼女から、もらった薬だよ」
最後の1粒。もうないって言っていたのに。どうしてここに。
豪が、嘘をついていた?この状況で?
「なにやってるんだ豪、早く飲め。お前、あと1日だけ生きられるんだろう?」
「そうじゃない、んだ」

豪は、ゆっくりと、身体を起こした。
そして、その一粒を手に取る。なにか思いつめたような、辛そうな。そんな目をしながら。
「豪…?」
決意を固めた表情でその一粒を目の前で口に入れた。そして。
俺に、腕を伸ばした。顎に触れ、唇を軽くあけさせられると。そのまま口付けをされた。
冷たく、蕩けるような陶酔がふと襲う。
「…っ…んっ……!」
舌を入れられた、と思った時、何かがころんと口の中へ入った。
さっきの豪の飲んだ白い珠だ。
「っふ…うん……」
眼を薄く開ける。豪は「飲みこめ」と眼で訴えていた。
豪の冷たさを維持する薬を俺が飲み込んだとき、何が起こるのか。
そして、8年前の音だけの記憶が蘇る。

豪はあの瞬間、雪女に口付けを受け、氷漬けにされた。
どうして口付けだったのか。
豪が雪女のハーフという奇妙な存在になったのは、キスがきっかけではなく。
「これ」を飲まされたからなのか。

最後の選択肢。
それは、俺自身が豪と同じ存在になること。

たぶん、それは死に等しいことだ。星馬烈の存在を、俺は捨てることになる。
母さんも、この町もなにもかも。
死に近く、それでも突然失われ、本当に失ってしまったかどうかが定かでないこと。
それを豪は、自分の手でやった。自分がやるつもりだったそれを。

口付けは、長いようで短かった。
豪は泣きそうな顔で微笑む。こんな表情を、見たことがなかった。

「兄貴は、背負わなくていいよ」
「お前……」
「その殺しの罪は、俺が受ける」

星馬烈を殺すこと。その罪は自分が受けると。豪は優しく言った。
夜に僅かに望んだことが、今叶う。

ふわりと、冷気が身体を包んだ。
凍りついてしまうような寒さが、身体の中から生まれてくる。今まで熱しか生み出すことをしかしなかったこの身体が。
「豪…」
手を触れる。濡れていた豪の髪が一瞬にして凍りついた。
解ける水も、俺が触れればそれを止める。
「…きっと、一生後悔するんだろうな」
「いい、んだ」
これで、よかったんだ。
身体の端から、凍りついて動かなくなる。指を伸ばすけれど、豪の頬に触れたまま動かない。
豪の崩壊を俺が止めることができる。これでもう、自分の体温で豪を溶かすことはない。
ずっとずっと、二人きりだ。

「ごめんな、兄貴」
もうそれに、首を振ってそうじゃない、と答えることもできなかった。
眠るように、暗闇へ沈む。

眼が覚めたらきっと、その先には何もない。きっと何もない。
誰かを守るためでもなく、自分自身のエゴだけでなにもかも置いて行って。
こんな結末になるのなら、豪がこうなった意味はなかったんだって、誰かが責めるかもしれない。

それでいい。罰も甘んじて受ける。
それでも、この手を離さない。

「おやすみ、烈兄貴」

暗闇の中で声が聞こえた。
心地よい冷たさに包まれて、とくとくと音がした。

意識が堕ちる寸前、とくん、と何が止まる音がして。

それきりだった。




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