豪が泣いてる。
僕を見ながら、それしか表現できないから、ただ泣き続けてる。
怒りと悲しみと、全てごちゃまぜにして、その身体が震えていた。
その声をはおぼろげな意識の中でも、はっきりと見えた。
視界はもう、開けていても見えているのかいないのか、自分でさえもわからなかったのに。
「ん…く、あっ…」
絶叫は脳髄を揺さぶるものの、心の中まで届かない。
身体の中の水分はバランスを崩して、涙腺から、口から、見たくも無いところから、不必要なまでに吐き出されていた。

ごめん、豪。

お前を傷つける事なんだってことはわかってる。
けど、お前を助けたいんだ。
言い訳でもなんでもない。本当なんだ。これで、お前が助かるなら、構わない。
それが、僕に残された最後の希望だから。

「――――!」
口を塞がれて叫び声をあげることさえできない豪に、大丈夫だからと、心の中で呟いた。


PARANOIA


お前の弟を預かっている。
そう言われてれば、行かないわけにはいかなかった。
突然の電話に1人で来るように呼び出された。それがどんな意味を持っているか、うすうす分かっていたつもりでもだ。
たとえ、学年が離れてしまってそばにいることが少なくなってしまっても、家で話すことが少なくなってしまっても。
それでも、たったひとりの大切な弟だから。
少なくなっただけ、まだ、離れてしまったわけではないと、お互い知っていたから。
豪は、最近その手の連中と否応なしに目をつけられてしまっていた。
どんなに注意したって、向こうがついてくるのだから、豪にしてみればはた迷惑な話だったんだろう。
しばらくして、その話すらしなくなっていた。まだ、つながりがあったなんて、思ってもみなかった。
心配してくれてサンキュ、とそれだけ言って、終わってしまったからだ。
なんで、もっと早く気づかなかったんだろう。
「……はぁ…はぁ…」
「よう、着たな」
呼び出されたのは、その手の溜まり場であるだろう、倉庫。
豪がどうしてそこにいたのかは分からない。そこまで、豪の行動を把握できてはいなかった。
ただ、最近そこに近づくことが多くなった、ということだけしか。
とにかく、豪を助けたかった。
「豪!」
「……れ、つ……あにき……?」
途切れ途切れの、小さな声で豪は答えた。
その瞬間、全身に旋律が走った。
豪は、身動きもろくに出来ない状態でそこにいた。酷い状態だった。
服が一部破れている、顔は何回か殴られたのか、痛々しく腫れ上がっていた。
「豪に何をしたんだ」
「……何って、見ればわかるだろう」
怒気を含んだ目で見てもまったく気にせず、ふん、と高校生らしき少年が嫌味に嘲笑った。
「…お前、豪より年上なんだろう、なんでこんなこと」
「年上だからさ、先輩のルールが守れない奴には、戒めを与えるのは当然だろう?」
「……」
豪は、何も答えなかった。答えることができないのか、答えないのかは、こちらからはわからないが。
息をするだけでも痛むのか、時折、顔をしかめている。
「で、そのその最後にすることっていうのが…」
ぐい、と胸倉を掴み、その顔を近づけさせた。
「や、やめろ!」
「おっと、そうはいかないぜ」
周りの部下らしき少年達が、押さえつける。
「今から何をするのか、教えてやろうか」
「……え?」

「お前の目の前で、この弟、犯そうと思ってな」

一瞬、頭を殴られたような衝撃を受けた。
こいつらが、豪を……犯す?だって、豪は男だろ?
そんな考えも無く、当たり前のように、リーダー格の男が豪を見て笑った。
「たぶん、一番見られたくない光景だろうぜ、こいつにとってもな」
「な、なん……あに、きには……かんけい……ない」
「そうだろうな”関係ない”だから俺達はお前の兄貴を殴ったりはしないさ」
怒りを含んだ視線と共に呟く豪を目を細めて見ると、ぞっとするような顔で、豪に囁いた。

「その代わり、お前が俺達に犯されるのを、その目でずっと見続けてもらうことになるがな」

「……」
何を言っているのか、わからない。いや、わかっているのにわかりたくない。
今から、豪が何をされて、僕がなにをされるのか。
僕がここにいる理由はただひとつ。
見続けていること、豪にさらなる絶望を与えること。それこそが、こいつらの目的。
「じゃ、はじめるか。お前達はあとで混ぜてやるからそこの兄貴抑えてろよ」
ぼろ雑巾のように豪の身体を地面に放り出した。
「豪!」
「……」
何も言わずに転がった豪は、じっと僕を見つめていた。
「やめろ、豪に何をするんだ!」
3人の高校生と思える男が取り囲んで、豪の服を破くがごとく脱がそうとしている。
豪は抵抗するそぶりも見せない。地面の上に顔を付け、起き上がろうとして、腕に力を入れたが、それすら抑えられて顔だけをこちらに向けた。
瑠璃色をした深い色の目は、呑み込みそうなほどに静寂の色を湛えている。
覚悟なのか、服従なのか。今までになく、感情を表に出さずにじっと訴えかけるように、僕を見ていた。
「……め……」
やがて、その唇が何か話しかけるようにして動いた。
「豪?」
声もだせない状態なのに、何かを伝えたいのか、ぱくぱくと口を開いていた。
自分だけに見えるように。
(何が言いたいんだ、豪)
一文字ずつ、語るように、言葉を聞いていくと。

「め とじてろ」

それだけだった。
閉じていれば、それで終わるから、と豪は言いたいのだ。
見続けているだけなら、閉じてしまっていれば済む話だ、と。
「なんでだよ……」
苦し紛れにいった僕に、意味が伝わったと判断したのか、薄く笑った。
豪のこんな、諦めた笑みを、はじめてみた。
抵抗すれば、自分が巻き添えになる。だから、一切抵抗しない気なんだ。
ふっとその目を閉じた。同じように目を閉じろと、言いたげに。
「やめろ…」
ぐい、と豪の身体が起こされる。
「やめてくれ!」
芯からの叫びに、一瞬周りが凍りついたように固まった。
豪をを含め、全員がこちらを見ている。
やがて、リーダー格の高校生が口を開いた。
「ほう、じゃあ代わりにお前がヤられてみるか?」
「……」
こいつらに、犯される。
豪の代わりに、自分が。
犯されるといっても、想像すら出来ない。何をされるのか、どんな思いをするのか、わからない。
それでも、このまま豪を放っておくなんて、できない。できるはずがない。
「……それで、豪を解放してくれるなら」
「ほう?」
「豪を、解放しろ。その条件なら、僕はなんでもする」
豪の目を驚いたように見開かれた。
「あ、兄貴は……関係ない!何……いってるんだ!」
叫ぶ豪の言葉を無視して、豪の横にいる、リーダー格の高校生をにらみつけた。
「豪を、解放しろ」
そいつは、豪と僕を交互に値踏みするように見ると、感心したように言った。
「……ふうん、たいした兄弟愛だな」
兄弟愛、そうかもしれない。
少なくとも、自分を犠牲にして、豪を助けたいと思うのは、兄弟愛と呼ぶし、それ以上なのかもしれない。
そんなことはどうでもいい。
ただ、このまま黙ってみてるなんて、できなかった。
「いいぜ、お前のほうが豪よりも抱きやすそうだしな」
「へへ…」
下卑た笑みを作った男に反吐が出そうになる。
「豪……」
信じられないような顔と、怒りと、悲しみと。
自分を責める後悔。
「…れつ、あにき……」
「大丈夫だ。お前は、大人しくしていろ、傷に響く」
「そう…じゃ…ない……」
幼い頃のように、頭を撫でてやるその動作はこれから犯されようとしている僕にとっては、不思議なことだった。
泣きそうな顔で僕を見つめてくれる。まるでかつての自分達を思い出すようだ。
豪は、見てしまうのだろうか。それとも、閉じていてくれるのだろうか。
どちらでもよかった。
ただ、豪がこれ以上痛い思いをしなくていいのならば、なんでもよかったのだ。



これは、兄弟愛なのだろうか。浮かんだ問いに、答えるものは誰もいなかった。




◇    ◇    ◇



「なんでもする、っていうのは言葉どおりでいいんだよな。お兄さんよ」
確認というより、宣告のようなその言葉に。
「ああ……そうだ」
至極冷静な自分をなんとか装って、目の前のそれを見つめていた。
というか、よくそんなもの普通に出していて恥ずかしくないな、とも思ったが。自分の姿も似たようなものだった。
上半身はシャツだけボタンを外した状態で纏い、下半身はいろいろと外れた状態だ。
今の状態の僕は誰から見ても、滑稽なんだろう。
「手始めに、しゃぶってもらおうか。歯を立てるなよ。弟がどうなってもいいんだったらな」
「……」
気持ち悪い。すごく、気持ち悪い。
こみあげる嫌悪感を無理矢理押さえつけ、それに舌を這わせた。
別のことを、考えよう。ただの木の棒を舐めてるイメージとか。飴とかだと味を思い出してしまう。
「くふ……ん……」
苦い味が口の中に広がっていく。
「ああ…いいぜこいつ。丁寧だな」
「マジ?」
そんなことで褒められてもな。さっさと終わって欲しいと心底思いつつ、それだけならまだよかった。
この程度で終わってほしいと思っていた僕の内心の願望はあっさり打ち砕かれた。
「んん…ぴちゃ…ん……」
舐めていくたびに大きく、咥えにくくなっていく。どんどん、熱くなってくる。
それでも歯を当てないように注意しながら、先走りを我慢して呑み込む。
そのうち自分の唾液は飲みきれずに、口の外からあふれ出していく。撫でるように舌を這わせると、その男からは微かなうめき声が漏れた。
「いい、ぜ…だが…それだけではダメ…だな。弟と違って抵抗がねーってのは……」
「……」
このとき、この言葉の意味をもっと考えるべきだったんだろう。
「よし、お前ら、やっていいぜ」
その言葉が発せられた瞬間だった。
「んんっ――!!」
背筋に手を当てられ、ゆっくりと下へなぞられた。
神経がそこへ一気に集中し、びくん、と勝手に身体が跳ねる。
思わず口の中のものを噛みそうになる。それでもそれだけはなんとかこらえた。
どくどくと脈打つ肉棒が、震えだしているのもわかる。
腰から指が這う。そこへ、自分のものを服の上からぎゅっと握られた。
「んっ――うぁあっ……!」
やっと出た声は、それが出る直前に口から引き抜かれたために出たものだった。
白濁の液が、顔にかかっている。
それが何なのか、認識するまでに時間はそう掛からなかった。
叫んでしまったために、口へもそれが入ってしまう。
「う……あ……はあっ…はあっ……」
うるさいくらいに響く、自分の呼吸。
「へへ…これはこれでいいか、次は後ろだな」
いきなり前へと倒された。
「…な、なにを……」
「いよいよ本番、だな。おい、あれもってこい」
くい、と指で合図を送ると、眼の前の男が小さな瓶を持っている。
「弟のほうには若干薄めたが…お前ならナマでいいだろ」
「うわー、鬼畜だ」
「やかましい!」
囃し立てる男どもの声、聞こえてはいるのだが、意味がよくわからない。
見上げた先の、瓶。
何に使うのか。茶色の小瓶の中には、黄色っぽい液体がなみなみとたゆたっていた。
見つめる前で放り投げられた瓶は、別の男の手に渡った。
「へへ、今までのようにはいかないだろうな」
「よがって苦しませてやるよ」
降りかかる言葉にも、反応ができなくなっている。
それほど、ショックだったんだろう。
「あ、うう……」
ひざを無理やりに立たされて、あられもない姿になる。
なのに、頭を押さえつけて、あげることを許さない。
「やれ」
呼吸が一瞬止まった気がした。
「いや、いやだっ……ああっ!!」
中に、嫌な感触がする。
さっきの中身が、身体の中に、入っていく。
そんな、無理やりに広げられるのが若干だとしても、その感触は違和感であり、苦痛でしかない。
排泄するためだけにある箇所に、そんなものを入れられてしまっては。
「う、あああっ…」
「いい声じゃないか」
「これからもっといい声で鳴くことになるだろうがな」
不規則な呼吸の喘ぎの中、全部の液体を僕は飲み込んだらしく、ようやくその瓶は外れた。
「あ、ああ……」
がくがくと身体が震える。自分で止められない。
残った液が、逆さまになって溢れてくる。
「さて、どうなる、かな……?」
毒を飲み込んだような痙攣と共に、身体に熱が灯り始める。
あの液体によって、無理やりに。発火でもしそうなほどに、熱い。苦しい。
「どうだ?俺たちが欲しいだろ?」
「ん……」
答えられたかどうかなど、わかるはずもない。
考えることを頭が拒否し始めている。
「たすけ、て……」
かすれた声で、それだけを言った。
まぶたの下に、自分の涙が零れ落ちるのを知る。
「よし、そろそろいいな」
首筋に男の指が伝い、足を掴む。
うつ伏せになる。それから何が始まるのか、確信はあったが、ぼやけてわからない。
ぐっ、と圧迫感が襲う。
「っつ…!」
めり、とした音。
「ああああっ!!」
痛い、痛い、痛い!引き裂かれる!
そんなもの、いきなり入れたって許容量の限界を越している。はいるはずなんてないのに。
「薬入れてるから、時期に慣れるさ」
そういう、下卑た男の声。
ぐいっ、ぐい、とした鈍痛と共に襲う、痛み。
「ああ、うう、うああっ!」
進むたびに自分のかどうかさえわからない声が溢れ出す。
ぐい、とその突きがきたとたん、再び身体が跳ねた。
「う、あああっ!いや、あああ!」
腹の中の肉をこね回して、粘液の嫌らしい感触がする。
その中に、痛みとは別の感覚がある。
直接脳を叩くような、電流で貫かれるような、この感覚は?
これが快楽?
痛みが鈍痛に変わり、押し込まれる圧迫感が何もかもを支配する。
「はっ、はっ……」
もう、自分の意思では指一本くらいしか動かせそうもない。
拘束されているわけでもないのに。
「どうだ?」
「最高。まぁ、弟ほどしまってはないがな。こっちのほうが痩せてるし」
「すっかり溺れてるな」
「原液入れたなら当然だろ」
ひく、とのどが震える。
「ふ、あ……」
豪、豪……。
塗りつぶされてそうな思考の隅で、ただそれだけを思った。
言葉だけを、繰り返し続けた。
この姿は、きっと醜いんだろう。だけど…
「っつ!」
ずるりと抜かれたあとに、ひくひくとそこを蠢いていくのがわかった。
「欲しがっているようだな」
もう、早く終わってくれ。
どう表現していいかすらわからなくなった感情が、涙となって堕ちていく。
「ん…」
濡れた穴に押し込まれた。
さきほどとは少し違う。痛みが鈍った。
進められていくうちに、また、あの感覚がする。
「あ…かは、あ……」
もう、どうなってるか、なんて知りたくもない。
「全部入ったようだな」
首筋に吸い付けられ、髪をなでられる。
「すっげーな、ホントにしっかり食い込んでやんの」
「んんっ!」
結合部をゆっくりと伝う指。
それすらにも感じ入る。
「おい、豪。しっかり見ておけ。お前の兄貴が、女みたいに喘いで、泣き叫ぶ姿をな」
豪。
そうだ、豪は…
だめだ、見えない。ここからじゃ、見えない。
「お前が弟に抱かれて喜ぶところを、精一杯見せ付けてやれ」
「ん、あ、あ…ああ…く…」
杭を打ち込まれる。身体の中に、どすどすと突き上げる。
血なのか、液体なのか、精液なのか、もう僕にはわからない。
僕は思い切り泣いた。
誰のために、何のために泣くのかもわからずに。
飲みきれない唾液を垂らして、ただ、襲い来る奔流に声を荒げて。

僕は、誰?
なにもかもがわからなくなっていく。
頭に、ぐちゃぐちゃとした液体の音がする。
打ち込まれるリズムに合わせて身体が揺れ、跳ねる。
口に、何かくわえられてる。
「すっげーな、そんなに欲しいのか?」
「……ほ、しい?」
鸚鵡返しに返しただけだ。
身体が、熱い。どろどろになってしまいそうなほどに。
息をしていることだけが、僕がいま、人間であることのすべてのような気がした。
あとはもう、わからない。
中を誰かに蹂躙され、ぐちゃぐちゃにされて、感情が磨耗していく。
これ以上、何がある?
熱い。
中心に熱が集まっていく。こぼれていくものが何かくらい、僕にもわかった。
しかし、気を止めている余裕はすでに僕にはなかった。
「い、あ……」
達してしまう。
「いいぜ、いってしまえよ」
濡れてしまったそれを、びちゃびちゃ音を立てて扱かれる。
「ああああっ!」
絶叫も、快楽も、なにもかもが上り詰めてる。
身体が、もう追いつかない。
仰向けに寝かされた状態で、足だけを上に向けられてる。
あとはもう知りたくもない。
「……」
ぼんやりと横を見る。
涙でにじんだ向こうに、青い髪が見えた。
豪…
泣いてる、のか……
ごめん、な…

少しだけ、笑えたような気がした。
「う、っ……」
中に入ったいた杭が、大きさをまして、ぶるっと震えた。
「い、いあ……いく……ああああっ!!」
腹にかけられた、白濁の嘔吐。
びくびくと伸びた脚が震えていた。
「は、はぁ……はぁ……」

「…おまえ、すごいよかったじゃねぇか。女でないのが惜しいくらいだ」
知るか。
そう思いながらも、身体は動こうとする僕の命令など聞きはしなかった。
「…さて、じゃあ次はどうしようかな」
「オレもヤらせてくれよ」
「オレもオレも」
はしゃぐような声が遠くに聞こえる。

これが終わったら、また、一緒に帰ろう。
首も動かせなかったが、豪にそれだけ心の中でつぶやいて、重くなった瞼を閉じていった。

 


                →おまけ

      やっちゃったぜ。的なノリ。おまけはhealing vision 気づいた方はあれです。
      DDRのボス曲、好きですか?
      なおおまけはゴーレツ、ラストにレツゴーが入ります。もちろんR18だよ!

 

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