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Autumn Night (ver. P)

〜2〜

賊が侵入に失敗して落下し、命を落とした。表向きには、そういう話になった。
でも噂というのは簡単に広まるもの。一週間もすると、知らない人の方が少なかった。
賊が落ちた原因は、自らの過失ではなく、首に刺さっていた針である可能性が高い、と。
針――特殊な武器だ。正々堂々が信条の騎士は、まず使わない。
つまり、得体の知れない何者かが、何らかの理由で賊の凶行を妨害し、そのまま姿をくらましたことになる。
そしてあの騒ぎの中、脱獄を果たした者がいる――こちらは、事実を知っている人間が必死で否定してまわっている噂だ。
私はあの晩の出来事を、誰にも話していない。口外したら、二度と会えなくなる気がするから――悲しげな一言を残して立ち去った彼に。
身辺にはくれぐれも注意するよう、行く先々で釘を刺される。
でも私はあれ以来、一人で歩きまわることが増えた。役目の合間を縫って、ふらりふらりと。
彼の部屋があった廊下。
彼と踊った大広間。
彼の笛の音が聞こえてきた木陰。
彼が人目を忍んで訪れていた、神殿脇の林。
まるで建国祭直後の自分に戻ってしまったかのようだった。
簡単に見つけられるわけがないことくらい、わかっている。王宮内にはいないかもしれないことも。それでも、探さずにはいられなかった。
夜になればバルコニーに出た。
夜更けまで木々のざわめきを聞き、冷たい月を見上げた。
部屋に戻ってもなかなか寝つけず、窓際の長椅子で朝を迎えたこともあった。
私には補佐としての責務があるというのに、体調を崩しかけてなお、寒空の下で彼を待ってしまう。――今夜も。
もう金曜日。明日こそ部屋でしっかり休まなくては。明後日は視察。来週は……。
なんで私、座りこんでいるんだろう。それとも寝転がっている? 石の床、冷たい……。
……もう一度、会って、謝らなきゃ……皮肉を言ったつもりなんてなかったって……そばにいてほしかっただけだって……。
ちゃんと言わなきゃ……無事でいてくれて嬉しかったって……助けてくれたのなら、ありがとうって……。
――いったいいつまで、こんな無茶を続けるおつもりですか?
いつまでって……会えるまで……ちゃんと話せるまで……。
――そんな必要ありませんよ。君は僕のことなど、考えなくていい。
だめよ……会うの……会いたいの……。
――姫。
……会いたかったのよ……リオウ……。


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捏造の旋律

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