サモンナイト3“剣製の魔術師”第二十九話
「ちょっと、メイメイさんのところに寄ってもいいですか?」
歩いている最中に、俺に言うアティさん。
「何か用事でも?」
「ええ、そろそろ私の武具も買い換えようと思いますし、ラトリクスの人にもお見舞いの物を買っていこうかと。」
なるほど、行くついでですし。
と言う訳で、進路を変更してメイメイさんの店に行く。
「あらまあ、先生、シロウいらしゃーい♪」
あいも変わらず、人を食った感じのメイメイさん。
悪い人ではないと思うんだが・・・、何処か油断できない人だ。
早速俺たちは、アティさんの装備や消耗品(傷薬やサモナイト石)を買い込む。
それと、患者用の果物セット(・・・・こんな物もあるのか、この店・・・)それとアルディラさんにも、お土産を持っていくことにした。
たしか・・・アルディラさんってコーヒーとかお茶とか好きだったよな?
と言う訳で、俺はお茶の葉を買った。
あれ?
アティさんと、メイメイさんが何か相談している。
「・・・・なるほどねぇ、家庭教師の仕事ってどんなものかと思っていたけど、勉強だけじゃなくて、戦い方まで教えてあげちゃうのねぇ。」
とメイメイさん。
結構真面目な話のようだ。
「ただ、どうやっても訓練試合の形にしかならないのが、悩みの種なんです。」
「やっぱ、実践とは勝手が違うもの?」
「人間相手の戦いはまだ良いとしても、はぐれ召還獣たちと戦う事になったりした時に、チョット心配ですね。」
曇った顔のアティさん。
なるほど・・・、そう言えば、次の戦いから、ベルちゃん、リゼちゃんも戦う事になったんだっけ・・・。
・・・確かに心配だ。
しかし、こればっかりは実践を積むしかないからなあ・・・。
「・・・とは言え、さすがに島の皆に相手をしてもらうわけにもいかないですし。」
と苦笑いのアティさん。
「ふぅーん・・・。」
メイメイさん?
「ねえ、だったらおあつらえ向きの場所、特別に教えてあげよっか?」
は?
「いーから、いーから、メイメイさんに任せちゃいなさいよ、うふふふっ♪」
と言って、メイメイさんに連れてこられたのは、「集いの泉」だった。
不思議そうにする俺とアティさんに説明を始めるメイメイさん。
「護人さんたちはどうやら知らずにいたみたいだけど・・・、名前通り、この泉は四つの世界の魔力が集まる場所なのよね、これが。」
?
どう言う事だ?
よく分からない俺とは違い、唖然とするアティさん。
「それって!?」
「まあ、聖王家が保有している「至源の泉」に比べたら、たわいも無い程度だけど・・・、「エルゴの王の遺産」に変わりは無いもの。」
「エルゴの王」って確か、はるか昔にリィンバウムに現れた「4つの属性」(機、霊、獣、妖)全てを持ち、エルゴ、すなわち世界から祝福を受けた神に匹敵する人間の事だよな?
この「集いの泉」って、その「エルゴの王」の遺産?
「やり方を知っていれば、こういう物だって呼び出せちゃうのよ!」
と言って、メイメイさんは泉に向って、両手を掲げ、膨大な魔力を放出する。
一瞬泉が光り輝き、光が消えた後には。
「泉の中に、門が!?」
アティさんが叫ぶ。
そう、其処には一寸前まで存在していなかった、門が存在した。
「にゃははははっ「無限回廊」の門よ。」
・・・・・・・・・メイメイさんって何者なんだ?
目が点になる俺とアティさん。
「その門はねぇ、世界の狭間にある特別な空間に繋がっているのよ。
ロレイラルにぃ、サプレスでしょお、シルターンにぃ、メイトルパぁ・・・。
ありとあらゆる世界で、様々な戦いを試練として受けられるのよねぇ。
あ、もちろん戦う相手も、その事は承知済みだから、思いっきり、ガンガン遣り合っても、全然にだいじょーぶ♪
・・・・・ってゆーか、遠慮してると、逆にやられちゃうし。」
はあ・・・・。
つまり、此処はひたすら戦闘しまくる場所ですか?
しかし・・・、奥まで行くと戻ってこれないんじゃ?
「大丈夫よぉ、戦闘が一息つく時に止めとけば、何時でも帰ってこれるようにしとくから。」
へえ・・・・。
「メイメイさん?」
「んーー?」
「こんなすごい事、いったい何処で覚えたんですか?」
とメイメイさんに質問するアティさん。
俺も聞きたい。
もうこれは魔法の領域だからな。
「それはぁ・・・・。」
「それは・・・・?」
「乙女のヒミツってことで♪にゃははははははっ♪」
・・・・乙女って・・・・、メイメイさんの年っていくつなんだ?
「ん?なんか変なこと考えてるでしょ?」
ギク!?
「変なこと考えちゃ、だめよぉ、にゃははははっ♪」
・・・・降参。
「なるほど・・・、乙女の秘密ですか。」
頷くアティさん。
・・・・・アティさんって・・・・(汗)
「じゃあ、皆でメイメイさんの店にいらっしゃいなぁ、何時でも開けてあげるからぁ。」
確かに、このまま「無限回廊」に入ると時間が掛かりすぎるからなあ。
「はい、メイメイさんありがとうございます。」
と感謝するアティさん。
「いーえ、気にしなくていいのよぉ、それに貴方達が勝ってくれないと、沢山困った事になるしぃ・・・。」
はい?
「それじゃあねぇ、にゃはははははっ♪」
と笑いつつ、メイメイさんは自分の店に帰っていった。
それと同時に門も消える。
「まあ、実戦経験が積める場所が確保できて、良かったです。」
そうですね。
それじゃ、ラトリクスに行きますか。
俺とアティさんは、気を取り直して、ラトリクスに向った。
(続く)
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