サモンナイト3“剣製の魔術師”第三十話
さてと、「ラトリクス」に到着っと。
中央のリペアセンターに行くと、クノンが待っていた。
「お待ちしておりました、アティ様、シロウ様。」
俺たちは、アルディラのために買ってきた紅茶の葉と、患者用の果物セットをクノンに渡す。
「ありがとうございます、アルディラ様もお喜びになります。」
表情には出ないんだけど、結構嬉しそうだな。
「所で、男の人の意識が戻ったそうですけど。」
「はい、今し方・・・、ただ少し問題が発生しまして。」
アティさんの問に答えるクノン。
彼女が言うには記憶の混乱が見られると・・・。
・・・・・・・・は?
「記憶の混乱ってどういうことです?」
と更に質問をするアティさん。
俺も分からないので、ぜひ聞きたい。
「肉体的な異常は、再検査でも見受けられませんでした。
推測される可能性はおそらく・・・・。」
「心因性の物・・・、そう言いたいのねクノン?」
其処にリペアセンターの入り口に入って来つつ、クノンに話しかけるアルディラさん。
「はい・・・。」
アルディラさんの問いに答えるクノン。
・・・記憶喪失か?
「そうだとしたら、ここからは私達の手に負えないわね。」
眉を寄せながら、俺たちに話すアルディラさん。
何でです?
「機界の者は、情報を論理的に計算しつつ思考を構築しているわ。
状況把握に狂いは生じにくい、でもその反面として曖昧な揺らぎには対応しにくいのよ。
そう、こんな風に感情にまつわる出来事とかにはね・・・。」
なるほど・・・・。
・・・・なんか、アルディラさん達、融機人って遠坂から聞いた「錬金術師」に似ている様な気がする。
「だから、私達をここに?」
納得する俺とアティさん。
「ええ、会話によるリハビリが、あの患者を感知させる最良の方法なのは分かっています。
ですが・・・・、私には・・・、それを達成するだけの機能がありません。」
無表情ながら、クノンが悲しそうに呟く。
やっぱり、クノンには感情があるんだ・・・。
励ましてやりたいな・・・。
「貴方達の力を借りるのが、最良と判断したのです。」
そうか・・・。
「だけどな、クノン?」
「はい?」
「俺達も、できるだけ此処に来る様にするけど、やっぱりクノンとの会話もその患者には必要だと思うよ。」
う・・・、上手く言えない・・・・。
「だから、頑張ろう?」
アティさんも俺の言葉に頷きながら、話す。
「はい・・・・。」
では、此方ですっと、俺とアティさんはクノンの案内で、病室に案内される。
!?
俺が病室に入ると其処には「赤いケン」が!?
「シロウさん、如何したんです?」
・・・・・・・
アティさんの言葉に目を瞬いた瞬間、そこは普通の病室だった。
・・・何だ?
厳格だったのか?
心配しているアティさんに、何でも無いですっと言っておく。
「・・・・・・。」
病室の中には、ベットに横たわってボーーーとしている男の人がいる。
年のころは10代後半くらいで、やっぱり女顔で端正な顔立ちだ。
「具合はどうですか?」
「あ・・・、君達は?」
「アティです、貴方を見つけたのは私で。」
「俺は衛宮士郎、俺が君を担いで此処に連れてきた。」
「君達が僕を・・・。」
眉をひそめながら俺とアティさんを眺める、青年。
「そうか・・・、ここの人たちから説明してもらっていたけれど・・・ありがとうございます、僕の名前はイスラと言います。
・・・君達は僕の命の恩人ですね。」
「そんなに、大げさに感謝されると、困っちゃいますよ。
困っている時は、お互い様ってことで・・・。」
そうだな、人が倒れていたんだ、助けるのは当たり前だよな。
イスラさんの言葉に、答える俺とアティさん。
「・・・・僕は、どうしてそんな所に倒れていたんだろう・・・?」
やっぱり、記憶喪失か?
「分からないんですか?」
「はい・・・、イスラと言うのが自分の名前であるとか、小さな頃の思い出や昔の事は大体思い出せるのですが、肝心のここ最近の事だけが、ぽっかり抜けてしまっていて・・・・。
すいません。」
アティさんの質問に、すまなさそうにするイスラさん。
・・・・・困った。
「・・・そうです!イスラさん、私達と外に出かけませんか?」
・・・そう言えばクノンは、肉体的には問題なしって言っていたな。
「そうだな、少なくとも、室内にいるより気晴らしにもなるし、行きましょうイスラさん。」
と俺も彼を外に出そうと、発言する。
「え?あっ、一寸・・・・。」
と言う訳で、俺とアティさんは、あちこちイスラさんを案内した。
一寸暴走してしまったけど(海賊船に連れて行って、風雷の郷のミスミ様に合わせて、最後にユクレス村・・・・、病み上がりに連れまわしすぎかな?(汗))
・・・・散々引っ張りまわしてしまった。
やっぱり疲れちゃったよなあ・・・。
心配する俺とアティさん。
「いいえ、久しぶりにしっかりと歩いて、外の日差しを浴びてとっても気分がいいです、本当に・・・・。」
ニッコリと微笑んで答えるイスラさん。
ホッとする俺とアティさん。
「あ、でもそろそろ夕方ですし、戻りましょうか?」
「そうですね。」
アティさんの言葉に答えるイスラさん。
(続く)
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