■□■ ミラクル6デイズ □■□






 ディーノは悩んでいた。
 実の孫のように可愛がっている愛弟子の雲雀の誕生日が近いというのに、未だプレゼントが決まらないのだ。まだ若いくせに十歳も違わない相手を孫と認識するような奇矯な男は、正真正銘真剣だった。
 これまで雲雀の誕生日には、ディーノはそれこそ山ほどのプレゼントをしてきた。群れを嫌う雲雀であるから、パーティーを開くわけにはいかず、そのかわり真心こめて選んだ品々を贈り続けてきたのだ。
 服や靴はもちろん、カフスやネクタイ、腕時計、花やアンティークの家具、美術品や貴重な古書、その他車やサッカーボールまで、それこそ何でも贈ってきた。しかし気難しい雲雀は、それらをことごとく無視し、破棄し、場合によってはその場で破壊さえしてくれた。それならせめて誰かにあげてくれよと言ったところ、もったいないお化けがどうのと呟きつつ何故か納得したらしく、昨年送った品々はボンゴレ経由でチャリティーバザーに出品された。
 こうなると最早ディーノはどうしたら雲雀が喜んでくれるのか、皆目わからなかった。しかし彼にプレゼントをしないという選択肢はない。ボンゴレと並び称されるお祝い好きのキャバッローネファミリーのボスは、筋金入りのお祭り気質なのである。
 さんざん悩んだ末、毎年恒例となりつつある山本の誕生日を祝うボンゴレとキャバッローネ対抗野球試合の日に、ディーノは思い切って山本に訊いてみることにした。

「ヒバリの誕生日プレゼントっすか?」

 快投快打で久々の野球を満喫した山本は、ディーノの悩みを真剣に聞いてくれた。首に掛けたスポーツタオルで乱暴に頭を拭きつつ、

「んー、確か去年のプレゼントのレンコンはすげー喜んでたと思うけど」

 眉根を寄せて中空を見上げた山本は、空に浮かんだ記憶のイメージを見つめるようだ。

「そうなのか?」

 思わず山本の視線の先を追いながら、決して板にはつかない野球のユニフォーム姿のディーノは小首を傾げた。確かに昨年の誕生日にプレゼントのおまけとしてレンコンを贈った。数日前にたまたま中国へ行く用事があり、そのとき視察に行った市場で何気なく購入したものだ。確かに雲雀はこよなくジャポニズムを愛する男だが、その後いつもどおり何の音沙汰もなかったので、全部気に入らなかったのだとばかり思っていたのに。

「そうか、レンコンか……」

 秀麗な眉目を曇らせて考え込んでしまったディーノに、気のいい山本は助け船を出した。

「ヒバリって食い意地だけは張ってるんすよ。特にイタリアっつーか、ヨーロッパは日本の根菜類が手に入りにくいし、ごぼうとかさつまいもとか喜ぶんじゃないっすかね」

「さつまいもか。そうか、あれは確かやせた土地でも育てやすくて、繁殖力も高いんだよな」

 しかももともとが南アメリカ原産であるため、暑い地方での栽培に適している。ここイタリアでも作れないことはないだろう。それならいっそ、種イモを入手してどーんと作ってしまってはどうだろうか。
 土地やら耕運機やらトラクターやら人件費やら、最早商業レベルでさつまいもの栽培を検討し始めたディーノに、のんきな様子で山本は笑いかけた。

「でもさすがに畑一杯とかはなしなのな。オレもそこまでさつまいも料理のレパートリーはねーし」

 図星を指されてギクリとしながらも、さすがは雲雀専属料理人、とディーノは笑って山本の肩を叩き、素直に感心を表現した。しかし彼は知らない。かつて雲雀に山付き一戸建てをプレゼントしようとして、本気で止めに入った賢明な口ヒゲの部下が、山本に向かって何かを必死に訴えていたことを。





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