RUN! RUN! RUN!






 それは4月のあるうららかな春の日の午後だった。明らかに挙動不審の生徒が一人、謎の一人笑いを浮かべながら、大広間へと向かっていた。彼の名はセブルス・スネイプ。スリザリンの5年生である。キッチリ撫でつけた髪を室内だというのにフードで覆い、周りの誰もが不審の目で見るような足取りで廊下の隅を歩いていた。彼は今日、積年の恨みを晴らすべくついにある秘薬の調合に成功したのである。
 それは俗に『愛の妙薬』として知られる禁じられた薬だった。本来ならば校則違反などをするような彼ではないが、先日突然神が舞い降りて、ある名案を思いついてしまった結果であった。そしてそれを決行するに足りる才能を持ち合わせていたセブルスは、鬼気迫る勢いで薬の調合を始めたのである。

 そしてついに秘薬は完成した。

 セブルスの作った薬はただの『愛の妙薬』などではない。不特定の相手を突然好きになってしまう、いわゆる『一目惚れ薬』だった。え? それでどうやって復讐するのかって? うふふふ、お答えしよう! 実は周知のとおりセブルスは某P氏が大嫌いである。今まで彼が受けた雪辱を晴らすにはいかにしたらよいか? これが大統領ならばセックススキャンダルの一つでもでっちあげれば失脚は確実だが、このホグワーツきってのロクデナシを貶めるには、彼が仲間から疎外されるようなことでなくてはならない。そこでスネちゃま考えた☆ 仲間割れに近い状態を作り出すのはどうだろうかと。もしくは仲間が助けられない状態を作ることが好ましい。そうして彼は、ふと某P氏とお付き合いをしてしまっている不憫な赤毛の少女のことを思い出したのである。
 作戦はこうである。まず某P氏に薬を飲ませ、まんまとひっかかったP氏はどっかの誰かをモーレツに好きになってしまう。その間にセブルスは好意を装ってそのことを注進にゆき、二人の仲は決裂。グリフィンドールのあの少女は真実に目覚め、薬の効果が切れたとき、某P氏(しつこい)は皆に見放されているという寸法であ〜る。
 この作戦を思いついたとき、セブルスは自分の才能に思わず酔いしれてしまったが、例えば薬飲ませて一番初めに自分を見られてしまったらどーすんだとかいう考えは全く無い。何故なら、天才スネちゃまの計略に失敗の二文字は無いからである。……多分。
 彼はそっとローブの隠しの辺りを撫で擦る。通常隠しというのは外からわからないから隠しというのだが、こんもりと壜の形に盛り上がったセブルスのそれは、ちっとも全然隠しになっていなかった。
 しかしそんなことに気をとられるセブルスではない。彼は大広間の扉の前に辿り着くと、一人で更にニヤリと笑って見せた。気味悪いことこの上ない。
 セブルスはそっと扉を開いて中を伺う。土曜日の午後は授業が無いため、必ず昼食をやたらとゆっくり取る一団がいる。その中のある人物がセブルスの狙いだった。目を眇めて様子を窺えば、いるいる、あの黒いツンツン頭。ターゲット☆ロックオン!
 心を決めたセブルスは何気ない風を装って、その実緊張で千鳥足になりつつ大広間へと入る。くっくっく、ポッターめ、今に見ていろとか何とか思いながら。幸い教師はもういない。生徒が30人ほどいるだけだ。
 彼は(セブルスビジョンでは)さりげなく席に着く。すると早くも背後の方で某P氏が立ち上がった気配が伝わってきた。ふふん、来るがいい、貴様がそのパンダ面をしていられる(意味不明)のも今のうちだけだ、などとブツブツ呟きながら傍にあったゴブレットにそっと薬を流し込む。

「これで貴様の天下も……」

「何が?」

 思わず脳内言葉が口をついて漏れてしまっていたセブルスのお隣で、突然笑顔の某P氏……もとい、ジェームズ・ポッターが悪魔のような(セブルスビジョン)笑顔を閃かせていた。

「どわっ!」

 すっかり自分の世界に入り込んでいたセブルスはべっくらこいて身を引いたが、その肩をジェームズはがしっと掴む。

「はっはっは。今日もいい天気だね、セブルスくん。ところで今日の君の任務だが……」

 じたばた暴れるセブルスをがっつり引き寄せながら、ジェームズは懐に手を入れた。そして取り出だしたりますは、ゾンコ印の高級品、炸裂閃光弾!

「うわっ、よせポッター!」

 顔の間近で導火線に点火され、セブルスは益々暴れまくる。しかし布袋さまも真っ青の笑顔でジェームズはカモを放さない。

「何を仰いますかスネイプさん。こんないい天気の日は爆弾の一つも炸裂させないと、頑固な便秘になっちゃうよ?」

 とぼけたことをぬけぬけとほざくジェームズに、セブルスはいよいよ掃除機を前にしたわんこのように暴れまくった。い、いかん、これでは一目惚れ作戦どころではない!
 ところが必死の行動が功を奏したのか、たまたま振り上げた手が今まさにセブルスのフードへと伸びたジェームズの腕をはたいた。

「あっ!」

 その拍子に手にしていた爆弾が宙を飛ぶ。思わず二人して追ったその軌跡は、弧を描いてゴブレットの中に吸い込まれていった。しかし上手い具合に導火線は濡れなかったのか、ジジジジという不吉な音はまるで止まない。そして思わず真っ青になったセブルスが、何か叫ぼうとしたその瞬間、激しい閃光とともに凄まじい爆音が大広間に響き渡ったのだった。





   地を揺さ振るような大音響に、廊下を歩いていたリーマスとピーターの二人は顔を見合わせた。彼らは昼食から戻らないジェームズを迎えに大広間へ向かう途中だったのだ。午後には新しく改造したゾンコの炸裂閃光弾を試してみようと言っていたのに、この分ではすでに試験済みのようだ。大方昼食の間にセブルスにでもちょっかいを出したのだろう。そう検討をつけた二人は急ぐでもなく大広間に向かったのだった。
 しかし事態は思わぬ方向に展開していた。どうやら最も近くにいたのはリーマスとピーターの二人であったらしく、野次馬もいなければ誰も扉を開けた形跡が無い。しかも何故か扉の向こうは静まり返っている。

「?」

 再び顔を見合わせた二人を嫌な予感が捕らえた。しかし何はともあれ扉を開けてみなければ事は始まらない。緊張した面持ちのリーマスがそっと扉を開く。その背後から顔を出しつつピーターも中を覗きこんだ。

「うわっ!?」

 二人は同時にそう叫んで目を見開いた。何と大広間は累々たる屍の山であったのだ。ああ、つはものどもが夢の跡。
 いや、正確には単に皆気絶しているだけなのだろうが、とにかく30人ばかりの生徒が床やテーブルに突っ伏していたのだ、驚かないはずは無い。
 これはおかしいと判断したリーマスは背後で言葉を無くしているピーターを振り返り、

「ピーター、誰か先生を呼んできて!」

 その声にピーターは弾かれたようにリーマスを見た。

「わ、わかった!」

 そう言うとすぐさまピーターは元来た方へ走り出す。どたどたした走り方では非常に遅いが、ここにピーターが残っても事態が改善するとは思えない。リーマスは一先ずこの事態を引き起こした張本人と思われるジェームズを探す。いつもならばグリフィンドールの席にいるはずだが、自寮のテーブルに突っ伏している生徒を全員ひっくり返してもジェームズの姿は無かった。そこで彼は床に倒れた屍を踏み越えて(ひでぇ……)スリザリンのテーブルに向かう。すると案の定見覚えのあるツンツン頭があるでわないか!

「ジェームズ、起きろって!」

 無理矢理引き起こしたジェームズは、ぐるぐる目玉でピヨコが頭上で輪を描いている。その横ではこれまた予想通りセブルスがピヨっていた。

「ジム、何があったんだよ。ほら、起きてってば!」

 ガクガク身体を揺さ振ったが、ジェームズはちっとも正気に戻らない。基本的にこういった仕事はシリウスの仕事なのだが、生憎彼は現在保健室だ。今朝ジェームズに何か妙なものを食べさせられて、顔が緑になってしまったのだ。気分はほとんど超人ハルク。全く、全部何もかもジムの所為じゃないか、と肩で息をするリーマスは、とうとうキレて杖を取り出したのだった。
 先ほどの爆発もかくやという大音響をとどろかせ、リーマスはアフロと化して漸く起きたジムを睨みつけた。

「ほら、寝ぼけてないでこっち見て!」

 何があったんだ、と問うリーマスを寝ぼけ眼のジェームズはじっと見つめた。だめだ、まだ寝とぼけてやがる。困った、とため息をついて顔を上げたリーマスを、同じようにジムの隣からアフロのセブルスが見つめていた。
 ……何かおかしい、とリーマスが気付いたのはそのときだった。振り返れば大広間にいた全員がアフロのまま何故かこっちの方を見つめている。その目という目が全て死んだ煮魚のようで、リーマスは思わず後退さった。





 ピーターがたまたま近くにいた魔法薬学の教師を引き連れて廊下を走っていたとき、二度目の爆発音が轟いた。これは二次爆発か、もしくはリーマスの仕業か。とにかく彼は全速力(100m22秒)で大広間へ駆けつけようとした。

「あ、あれ?」

 ふぅふぅはぁはぁ廊下を走っていたとき、ピーターは前方の角から一目散に駆けて来るリーマスを見つけた。その彼が近づくにつれてだんだん妙な音が聞こえてきた。まだ遠いけれど、象の群れが大移動をしているような感じだ。一体何があったのだろうか。

「リーマスどうし……」

「ピーター!!」

 ピーターが言い終わる前に駆け寄ったリーマスは、何故か自分より小さい友人の背後に回りこんだ。

「ど、どーしたの? 何があったの??」

 驚くピーターと教師にリーマスは無言で自分の来た方を指差す。すると向こうからは、数十人の生徒がこちらに向かって走ってくるでわないか!

「な、何あれ!?」

 ピーターが涙ちょちょ切れそうになって叫んだのも無理は無い。こちらに向かって走ってくる連中は、一様に目をハートマークにしてリーマスリーマス唱えながらやってくるのだ。恐ろしいことこの上ない。しかもよく見れば先頭集団にはジェームズとスネイプの姿まである。しかも全員何故かアフロ! 恐怖のあまりピーターは声も出ない。その彼の横でリーマスは苦い顔で舌打ちをした。

「ピーター、ぼくらは親友だよね?」

「え? う、うんそうだけど」

 このときピーターは凄く嫌な予感がしたという。しかし時すでに遅く、その返事を聞くとリーマスは満面の笑みを浮かべ、ビシリとピーターに向かって杖を向けたのだった。

「うわぁぁぁあああー!!」

 リーマスの追い払いの呪文と共にピーターの身体が宙を飛ぶ。彼は物凄い勢いで先頭を切って走っていたハッフルパフの男子生徒と激突し、一緒になってもんどりうった。顔面激突を果たしたピーターは、可哀相にこの少年が初キッスの相手となったのである。ピーター・ペティグリュー享年15歳。安らかに眠れ……。

「さっ、先生。ピーターが引き止めていてくれる間に!」

 言うなりリーマスは再び廊下を走り出す。え、あの、とか何とか呟いていた教師も一瞬ピーターの方を見たが、結局謎の雄叫びを上げて追いかけてくる生徒たちの気迫に戦慄を感じ、リーマスに並んで逃げ始めたのだった。





 春の陽気は温かく、爽やかな風が眠りを誘う。こんな土曜日の午後に補修を受けるなんて、春の精霊たちを莫迦にしているのと同じことだ、と都合のよいことを考えて、緑の顔から見事復活を遂げたシリウス・ブラックは、大きく伸びをしながら校庭へ向かって歩いていた。3時を過ぎた日差しは暖かだし腹は一杯だし、もう言う事は無い。幸い彼に補修を言いつけたマクゴナガル教授は、午後から校長とお出かけらしい。基本的に授業なんぞ受けなくてもトップクラスの成績を保持しているシリウスは、すっかり昼寝モードに突入していた。あとはお気に入りの湖の近くの木陰で寝転びながら、ジムに対する復讐計画を練るだけだ。さてさて、一体どうしてくれようか。
 そんなことを考えつつ湖への斜面をのんびり下っていたシリウスは、目的地に見慣れた人物を発見して首を傾げた。はて、リーマスのやつ、あんな所で何してるんだ?
 それがシリウスと同じように昼寝をしようとしているのならわかるが、リーマスは何故か何度も何度も辺りを窺うように首をめぐらしていた。それからひょいと手を伸ばし、木の幹を掴んで登り始めたではないか。……何やってんだ?
 首を傾げたままシリウスは今リーマスが登っていった木の下まで来ると、

「おーい、何やってんだ、お前?」

 しかし返ってきた答えはし〜っ! というものだった。リーマスは上の方の太い幹に腹ばいになったまま、シリウスに登ってくるようジェスチャーする。仕方が無いのでシリウスも木に登る。リーマスと違って腕力のあるシリウスなので、あっという間に険しい顔つきの友人の位置まで登ってしまった。

「で、何やってんだお前?」

 リーマスの一つ向こうの幹に腰を下ろしながらシリウスは問う。こいつがこんな表情しているくらいだから、きっと何か面白いことが起こったのだろう。興味津々のシリウスに向かってリーマスはかくかくしかじかと事情を話す。珍しく黙って聞いていたシリウスは、リーマスが話し終えるのを待って口を開いた。

「そらあれだろ、スネイプの野郎の仕業か」

 先ほど魔法薬学の教師と共謀してスリザリンのティム・クローズを生け捕ってみたのだが、その症状からして何らかの薬物の効果だとわかった。一つ幸いなことに、摂取した量が少ないようなので、放っておいても今日中には効果がなくなるらしい。そう教えてくれた教師は、先ほど聞くも涙、語るも涙の無残な最期を遂げたらしい。
 無残な最期、と聞いてシリウスは疑わしそうな目つきでリーマスを見た。大方そのリーマスラブラブ追っかけ隊の中にでも放り込まれたのだろう。恐ろしい男だ。とにかく、それでこうしてリーマスはこそこそと隠れているとゆーわけか。なるほどなぁと所詮他人事だとシリウスが思ったとき、それでね、とリーマスが呟いた。

「シリウス、きみに頼みごとがあるんだ」

 これから寮に戻って、ジェームズの透明マントを取ってきてくれないか、と。初めは折角の面白い事態なのに、とシリウスは嫌がったが、ふとあるアイデアが浮かんで気を取り直した。そうだ、グリフィンドールの影の帝王リーマスのピンチ! こんな機会はもう一生無いだろう。ここは一つ恩を売って何かいい目をみてやろうではないか。

「それじゃあ、交換条件といこう!」

 ええーきみは友達が困っているとゆーのに何か代償がないと動いてくれないのか何て酷い奴だろうきみなんてもう友達でも何でも無いやそれで交換条件って? と言いたい放題なリーマスは真面目な顔つきでシリウスを見つめた。彼はハンサムな顔をニヤリと歪めて、

「俺の言うことを一日何でも聞かせられる権利!」

 名付けて『愛の一日奴隷権』だそうである。物凄く頭の悪そうなネーミングセンス☆
 さてどんな反応をするかとわくわく見守るシリウスに、しかしリーマスは何故かホッとした様子で、

「な〜んだ、そんなことか。枕詞がちょっと気になるけど、いいよ。そのくらいお安い御用さ」

「え、い、いいのか?」

 だって『愛の一日奴隷権』だぞ? と念を押してみてもリーマスはかんらかんらと笑いながらいいよと頷く。彼は胸を撫で下ろしたという風に、

「いや〜、もう僕はてっきりあ〜んなことやそ〜んなことや、あまつさえこ〜んなことをさせられるのかと思っちゃったよ。いいよ、丁度明日は日曜だし、明日はきみの奴隷でいてあげる」

 それでいい? と問われて拍子抜けしたシリウスはお、おうと呟いたのだった。





 何となく釈然としないものを感じながらシリウスは校舎に向かう。リーマスのやつ、よくもまぁあんなあっさりOKしたものだ。でもあいつの気の変わらないうちに行使できるみたいだし、まぁいいか。基本的に物事に拘らないシリウスはグリフィンドールの寮がある塔に向かって渡り廊下を歩き出す。さて、明日になったら何を命令してやろうか。まずは肩揉みだろ、靴磨きだろ、それから宿題もやってもらおうかな。美味い紅茶も煎れさせて、そうだ爪も切ってもらおうかな。ついでに耳掃除もどーだろう。そんでもって風呂で背中を流してもらおう!  そんな自分の妄想にウキウキしながらシリウスは廊下を歩く。どんなに成績が良くっても、所詮シリウスの貧困な想像力ではその程度のことしか思いつかないのである。一体どの辺が『愛の』なんだかさっぱりぽん☆  それにしても、とシリウスが自分の妄想にばかり浸っていられなくなったのは、大広間を過ぎた辺りからだった。なるほど話には聞いていたが、恐ろしい光景である。リーマスリーマス唸りながらゾンビのように歩き回る生徒たちが、あちこちを徘徊している。気分はさながらバイハの世界v
 この中にジェームズやスネイプがいるのかと思うと、できればお会いしたくない。ルーピンルーピン唱えながらすれ違ったレイブンクローの上級生は、どういうわけかボロボロに擦り切れたローブを纏っていた。





 これは予想した事態より深刻だとシリウスがマントを片手に戻ってきたときも、リーマスは木の上から辺りに目を光らせていた。

「ほら、持って来たぞ」

 小声でマントを渡すと、リーマスはぱっと顔を輝かせた。良かった、これで少なくとも木からは下りられる。そろそろ日も暮れるだろうし、春とはいえ夜は冷える。もう少し暗くなったら地面に降りて、様子を見ようということになった。
 そして夕暮れ。マントを頭から被ったリーマスはどこにいるのか見えないが、シリウスは昼寝を装って寝転んだまま適当に声をかけた。

「なぁ、この後どうすんだ?」

 こうしていてもいつ薬が切れるかはわからない。無残にも屍と化した魔法薬学の教師は完全に戦線を離脱している。頼みの綱のマクゴナガルも出張中だし、校長も揃って居ない。しかしだからといってここでじっとしていても風邪を引くだけだろう。すると予想外にすぐ近くで、

「……そうだね、ぼくは校長室に逃げ込もうかと思ってる」

「校長室? でも今は校長もマクゴナガルと出張中だぞ」

 しかしシリウスの疑問を他所にリーマスは大丈夫、と呟いた。

「合言葉はわかってるから、中に入るだけならなんとかなる。こないだ呪文を替えたばかりだから、他の生徒もまだ知らないはずだしね」

 それを何でお前が知ってるんだとか突っ込めるシリウスではない。なるほど! と本気で感心すると、

「じゃあ、もう少ししたら俺も一緒に行ってやるよ。何かあったときに一人でいるよりゃいーだろ」

 何しろ敵にはジェームズがいるのだから。すると何処からともなくリーマスの、

「ありがとう」

 という声と共に、シリウスは自分の胸を誰かがぽんぽんと二回叩くのを感じたのだった。










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