其ノ七 君の瞳が映すもの

 辺りは騒然としていて、燃え盛る炎がアスファルトを照らしていた。
 目の前を何人もの人が駆け抜けて行った。誰かが何かを叫んでいるが、その言葉はよく聞きとれない。
 あぁ、この光景は確か…
 ぼんやりと佇みながら一輝は、覚醒し切れない頭で、これはあの時の夢だ、という事を理解した。
 無造作にとめられた車の影に独りうずくまる少年は、大きな瞳を見開いて、行き交う人々を見つめていた。一輝は引き寄せられるようにして、少年へと近付いた。
 
 同じルートを行くな!とりあえず散るのだ!
 耳許でサガの叫びが聞こえた。サガはすぐに自分の横を走り去り、また静寂に包まれる。まるで自分と少年とを繋ぐ空間だけが、時間が止まっているかのように、暗く静かに伸びていた。
 そういえば、あの時もこうやって姫に近付こうとしたが、出来なかったのだ。
 現実とは違って、思いのほか簡単に少年の前に辿り着いてしまい、一輝は内心焦っていた。あの時自分は一体、姫に何をしたかったのか思い出せず、その場で立ち竦む。
 遠くを見つめていた少年の視点が、自分の前で結ばれたのに気付いて、一輝も彼の瞳を見つめ返した。
 少年がゆっくりと立ち上がる。
 一輝は少年の腕を見た。応急処置をした腕からも、すでに薄く血が滲んでいるのを見つけて一輝は、無意識の内に手を伸ばし、きつく巻かれた布の上から指先だけでそっと触れた。
 少年の瞳が燃え上がる炎を反射して、濡れたように光っている。
 この瞳は、見た事がある。
 そう思った時だった。
 ふいに伸びてきた腕が、自分の首元に巻き付いたので、一輝は息を呑んだ。ふわりと柔らかい髪が肩口に埋まる。
 少年がつま先立ちで、背伸びをしていることに気付いた一輝は、そっと包み込むように腕を廻し、彼の身体を支えてやった。両腕も、身体を支える両足も震え出しそうで、一輝はそれを隠そうと、少年の髪と背中を撫でる素振りをした。自分にしがみつく細い腕の力も、その体温も全てに生々しい現実感があって、そしてその甘い感触に、一輝は確かに憶えがあった。
 顎をずらし、気付かれないようにそっと髪に口付けてみる。
 自分はきっとこうしたかったのだと、満ち足りた気持ちになりながら、でも実際にやらなくて良かったなどとと一輝は考えていた。
「……姫。」
 やっとの思いで、声を絞り出しその名を呼ぶと、少年が顔をあげた。
 だが腕の中の少年はいつもの覆面姿ではなく、そして姫ではなかった。
「にいさん」
 薄桃色の、形の良い唇が、はっきりと自分をそう呼んだ。  


「どあ!」

 朝6時。
 キテレツな叫びが、キッチンに立つ瞬のもとまで、こだました。

     ★

 グラード学院には、男子校舎と女子校舎とが食堂や職員室、ロビーなどがある本校舎と、それぞれ連絡通路で結ばれていた。その中でも中高生共同で使われている、男子校舎の屋上にある用具室の中で、ミロは書類を整理しながらアフロディーテに言った。
「近頃はずいぶん新しいチームが出来てるようだな。」
「ああ……今年でもう十代目か。そろそろ我々が一括して面倒を見れるのも、限界なのかもしれないな。」

 ブラックホールの幹部に籍を置いてから、会計や備品係などの裏方に徹して来たミロは、チーム同士の抗争に顔を出す事は滅多に無かった。だがアフロディーテがそんな言葉をこぼしたのは、最近渋谷での一悶着あったからだろうと、すぐに察しがついた。

「そういえば紅龍会から、そろそろお声が掛かる時期なのではないか?」
 アフロデーテの台詞に、ミロは軽く溜め息を吐く。
「……そのことで俺も頭を悩ませていたとこだ。」
「姫はまだ、あの事件を気にしている様子だった。となると我々の内部で上手くやりくりせねばな。」

 今回浮上してきた問題は、金に関する事だった。といえば、それはミロの管轄になる。
「頼むから俺一人に押し付けるな!」
 ミロは恨めしそうにアフロディーテを見上げる。
「案ずるな、その時は姫も交えて幹部会を開く。」
 最後の試練だ、何とか乗り切ろう、とアフロディーテはミロの背中を叩いた。

 ミロもアフロディーテと同じ、高等部の三年だった。実は二人とも、大学入試に向けて陰ながら勉学に励んでいたりもする。日々の抗争や喧嘩に疲れ、世の暴走族達もこうして引退してゆくに違いない。
 ミロは手にした書類を睨むと、今度は深く溜め息を吐いた。

「……はぁ」
 広い校庭の隅にあるベンチで、一輝が深い溜め息を吐いたのは、文化祭の準備に追われるクラスメイト達に、ゲートの作成を手伝うように指示されたからであった。
 力仕事は一輝にとって苦ではない。退屈な授業を寝ずに受ける苦痛に比べたら、ゲートの骨組みを組み立てている方が、よほど楽だ。
 しかし、問題はその後の作業だった。最後の仕上げとして、無数の造花でそのゲートを埋め尽くすという、デコレーション作業があったのだ。更に面倒なことに、薄っぺらい鼻紙のようなカラフルな紙で、その造花を作らなければならなかった。

 一輝は数人の生徒に囲まれながら、その鼻(花)紙と格闘していた。 中には女生徒の姿もある。くすくすと笑う声に気付いて一輝が顔を挙げると、 少し離れたベンチに座る、三人組みの女生徒の中で、赤い花を手にした少女がこちらを見ていた。その少女の作った造花は、言ってみれば華やかな薔薇のようであって、牡丹の繊細な花弁の様にも見えた。
 一輝は足下に散らばっている、一時間程かけて自分が生み出した、なんだか良く分からない物体と、女生徒の持つ造花とを見比べた後、無言でその場を立ち去った。

     ★

 学級委員として、クラスメイトたちの参加している、合同作業の進行具合を見回る瞬が、ゲート製作班の元に辿り着いたのは、一輝が姿をくらましてから三十分程経った後だった。
 ゲートはもう殆ど完成しており"聖星祭"とペンキで書かれた大きな木製の門に、生徒達が出来上がった色とりどりの造花を貼りつけている。 ゲート製作班が一番大変かも、と感心しながら瞬が見ていると、普段あまり聞き慣れない、女生徒達の声が耳に入った。
「だから、早く見に行けばいいじゃん!」
「もうダメだよー、なんだか怒ってたみたいだし。」
 黄色い声の主は、三人で固まって作業をしている女生徒達だった。
「あんたがあんな声出して笑うから、気を悪くしたんだよ? きっと。」
「だってさ、一輝先輩すごく真剣に花作ってるから……もう可笑しくて。」
「そうそう! しかも花じゃなかったしね、あれ。」
「もう、先輩の悪口言わないでよー。」

――え、兄さん?
 ゲート製作班に一輝の名前は無かったはずだ。
 そもそも学校行事を手伝うような協調性など、あの兄が持ち合わせているとは思えない。その上花を作っていたというのである。瞬は自分の耳を疑いたくもなった。
 だが前方にある、誰もいないベンチの下に、鼻をかんだ後の丸めたゴミのような物が、いくつか落ちているのを発見した瞬は、今度は更に目を疑った。

 その時、三人組みの中の少女が一人、立ち上がって瞬の前を通り過ぎた。少女はその丸まった紙屑の中から、青いものを一つ拾うとそっと制服のポケットに仕舞った。それを見た瞬は、咄嗟にその少女に声を掛けていた。
「あの、ここにいた人……兄がどこに行ったか、知りませんか? 」
 少女は驚いて瞬の方へ振り向き、みるみる頬を赤く染めた。
 瞬は、あまりに子供じみた自分の行動を、自分で情けなく思っていた。

     ★

 不良というものは、大抵トイレや屋上に居場所を求めるものである。
 他には"体育館の裏"というスポットもあるが、残念ながらグラード学院の体育館の壁と、学校を取り囲む塀との間には僅かな隙間しかなく、そこにたむろするのは不可能だった。
 造花づくりに嫌気がさした一輝は、早めの昼食をとる場所を探して、屋上へと足を運んでいた。誰もいないのを確認してから、安心したように弁当を広げていると、どこからか話し声がする。
 屋上の隅にある用具室から現れた、アフロディーテとミロであった。

「一輝じゃないか。もう昼飯か?」
「……お前こそ、なんでそんな所から出てくるんだ。」
 用具室は学期末の大掃除の時にしか使われていなかった。
 一輝はアフロディーテと、その後ろの見なれない人物を訝しむように見比べた。もう一人のほうの少年も、大方ブラックホールに絡んだ人間であろう。彼の見た目華々しい雰囲気から簡単に予想できる事だ。

「ここは校内における、我々の隠れアジトだ。お前にはあまり関係ない事だが。」
「それは知らなかったな。」
 アフロディーテの言葉に適当に相づちを打った後、話を続ける様子もなく弁当の蓋を開けて中身をつつき始めた一輝は、心底興味無さげである。
 この男の社交性は一体どうなっているのかと、アフロディーテは今さらながら呆れたが、しかし、曲がりなりにもここは隠れアジトである。興味本意で顔を出されたりしても却って迷惑だしと、アフロディーテはそのまま立ち去ろうとした。
「……アフロディーテ。」
 ふいに一輝が箸を止めて言った。俯いているため、一輝の表情は分からなかった。
「姫は……、」
「姫がどうした?」
「……いや、いい。」
 少しの沈黙の後、一輝はボソリとそう呟くとまた弁当に手を付け始めた。
 胸の中で、今朝の夢を反芻してみて、一輝は鼻で笑った。夢の中では、瞬が姫だった。体格が似ていると思った事なら、確かに何度かあった。
「だが、そんなはずはない。」
 自分に言い聞かせるように呟いた一輝の姿を、アフロディーテは黙って見つめていたが、やがて踵を返すとミロと共に、屋上を後にした。

「兄さん! こんな所にいたの?! 」
 一人になって落ち着いて昼食をとり始めたのも束の間、勢いよく非常扉を開けて駆け込んで来たのは瞬であった。校内中を探し回ったのか、そうとう息が上がっていた。
「どうした、血相変えて。」
 突然現れた弟の姿に、一輝は箸を落としそうになる程動揺したが、何とか平静を繕って言った。
「ゲートの製作班の人に、途中で居なくなったって聞いたから。……兄さん、いつも屋上で御飯食べてるの?」
 瞬は一輝の横に座ると、コンクリートに広げられている弁当を見つめて言った。その口は、少し歪んでいるようにも見える。
「お前、何を怒っている?」
「……別に。」
 一輝に指摘されて、瞬はますます口を尖らせるとぶっきらぼうに言い放った。
「僕もこれからは屋上でお弁当食べる。」
「は?」
 紛れもなく怒り口調ではあったが、その口調にそぐわぬ台詞に、一輝はすっとんきょうな声を上げて瞬を見た。
 瞬は弁当を見つめたまま、突きだした唇の下に皺を寄せた顎を、体育座りをした両膝の上に載せている。
 こんな顔をする時の瞬は、怒っている時か拗ねている時である。怒っているのではなくて、もしかして拗ねているのだろうか? だとしても瞬が拗ねる理由など、一輝には皆目見当がつかなかった。

「お前は友達と食べてるんだろう。あの…。」
「星矢でしょ? 星矢はいつも大体早弁しちゃうから、昼休みは購買のパンかじりながら、キャッチボールかサッカーしてるよ。」
「そうか。」
 一輝はどうしたものかと考えていた。
 屋上で食べると、瞬はそう言ったが、それは自分と一緒に昼飯を食いたいという事だろうか? だったら自分はいつも屋上で食べている訳ではないし、 だいいち、これから訪れる冬の季節を、こんな場所で過ごすのはご免である。だが、いちいち今日はどこそこで食べるからと打ち合わせるのも面倒に思える。そんな事を考えている時だった。
「兄さん、好きな人っている?」
「……げほっ!」
 またしても唐突な言葉に、一輝は飯粒を思いきり吸い込んで咳込んだ。
「な……何?」
 咳き込みながらもやっとの事でそう答えた一輝に、瞬は更に尋ねた。
「だから、兄さん好きな人いないの? ……女の人とか!」
 瞬は兄の顔を覗き込みながら、さらに詰め寄った。
 一輝は瞬の考えている事も、今度は自分を脅迫するように捲し立て始めた理由も図りかねて、瞬の瞳を見つめ返したまま黙り込んでしまった。
 だがしかし、
 じいっと自分を覗き込んできた瞬の、透き通ったその瞳に、一輝は思い出してはならないものを思い出してしまったのだった。
「………!」
 兄の浅黒く焼けた顔がうっすらと、本当にうっすらとだったが赤みを増したのと、小さな表情の変化を、瞬は見逃さなかった。
 瞬は驚いたように一輝の顔を見つめ返していたが、やがて無言で立ち上がると、パタパタと逃げるように走り去った。
「お、おい……。」
 一輝は立ち上がったが後を追うまでは至らず、再びその場にしゃがみ込んだ。
 瞬の瞳と、あの少年の瞳とが重なって見えたのは、今朝の夢のせいだ。
 最後に見せた弟の表情がどことなく悲しげに、一輝の瞳には映った。

     ★

――好きな人がいるんだ、兄さんに好きな人が!
 頭の中でぐるぐると、その事だけが繰り返し渦を巻いていた。
 鼓動が高鳴り息が詰まって苦しいが、それは全力疾走しているからではなかった。
 兄に好きな人がいるかなんて、昨日まではそんな事考えもしなかった。
 瞬は夢中で走りながら、目の前が真っ暗になるのを感じていた。
 一輝が女生徒の間で、あんな風にもてはやされていた事もまたショックだった。あの少女は可愛かったし、他にも兄に好意を抱いている女子だってきっといるだろう。
――兄さん格好良いし、目立つし優しいし!
 アフロディーテあたりが聞いたら「目立つ」以外はまっ先に否定しそうだが、以前から兄のことを真剣にそう思っていた瞬にしてみたら、一輝が女子にもてたとしても、何ら不思議は無かった。むしろ当然だとも思う。
 兄が想いを寄せる相手は、あの少女かもしれないし別の人かもしれない。だが実の弟である自分にその可能性が無い事だけは、悲しすぎる程に、分かり切っていた。

 どこをどう走って来たのか、一年二組の教室がある、一階に辿り着いた頃にはもう走る事にも疲れ、かといって教室に戻って誰かと話す気にもなれず、ましてや学級委員の仕事の続きをこなす気など、全く失せていた。
 文字通りの無気力状態に陥ったまま、瞬は目の前の男子トイレのドアを開けると、その場にしゃがみ込んだ。
――いつから。
 誰もいない薄暗い空間に気が緩んだのか、気付くと目の前が霞んでいた。
 いつからこれ程の想いを、自分は兄に対し抱いていたのだろう。
 膝を抱える両腕と、噛み締めた奥歯とに、力を込めて呻き声を堪えながら、瞬は顔を膝に埋めた。
 両足の上履きの間から覗くタイルに、いくつもいくつも、小さな染みが落ちては広がった。

     ★

 文化祭の当日まで瞬は、遅くまで学校に残る日々が続いた。
 瞬の帰りが遅いので、一輝は数少ない手持ちのメニューから、うどんと炒飯を交互に作り、瞬が帰宅するのを待ってから食べた。
 あれ以来瞬は口数が少なくなっていたし、以前と違って自分に対してよそよそしく振る舞うようになった気がしたが、学級委員ともなれば余程仕事が忙しいのだろうと、余計な詮索はしなかった。
 黙々と食事をしてから、寝床に直行して、翌朝目覚めると弟はすでに登校している。そんな生活が数日間続いた。いい加減身体をこわすのではと、一輝が気を揉み始めた頃に、文化祭当日がやってきた。

 雲一つない秋晴れの空を見上げながら、一輝は屋上で一人寝転んでいた。
 今日が文化祭だろうが何であろうが、一輝はあまり興味がなかった。
 あれから昼時になると一輝の足は屋上に向かうようになっていたが、瞬が姿を見せる事はなかった。
 穏やかな風が、体育館から漏れる吹奏楽部の演奏を屋上まで運ぶと、頬をそっと撫でて通り過ぎる。
 強すぎない日射しと、遠く聞こえる人の声が心地よくて、うとうとと居眠りを始めた頃、閉じた瞼の向こうに人の気配を感じて、一輝は目を開けた。

「文化祭の当日まで、こんな所にいるなんて……。」
 視線を上げると、自分を見下ろして大袈裟な溜め息をついた瞬が、自分の上に影を落としていた。瞬は両手に持ったクレープを一つ、 一輝に差し出すと言った。
「僕のクラスはクレープ屋をやってるんです。兄さん知らないでしょう?」
 一輝は身体を起こしてクレープを受け取ってから、初めて自分が空腹だった事に気付いた。
「これ、僕が作ったんだ。兄さん甘いの苦手だから。」
「お前の作ったものを食うのは、久々だな。」
 こうして会話をかわす事すらしばらく振りで、自然と頬が緩むのを感じる。
 手渡されたクレープは、ツナとレタスを巻いたものだった。
 瞬とのコミニュケーションにも、自分は飢えていたのかもしれない。手に持ったクレープを見つめながら、一輝はここ数日間の乾いた時間を思い出していた。

「一番大切なのは、お前だから。」
 一輝はクレープをかじりながら、足元を見つめてボソリと呟いた。
「兄さん。」
 瞬は一輝の方に顔を向けたが、一輝は俯いて視線を落としたままだったので、つられて瞬も視線を落とした。
 一輝の言いたい事は、分かっている。一番大切。それはたった一人の肉親だから。
 じゃぁ好きな人よりも僕の方が大切なの、という愚問を瞬は飲み込んだ。
「兄さんの……好きな人、ってどんな人?」
「好き、というのか。ただ、気になるヤツなんだが、な。」
 少しでも会話を続けようと思ってか、一輝はぼそぼそと、だがいつになく素直に瞬の質問に答えてゆく。
 瞬は兄の言葉一つ一つが胸に刺さって痛かったが、聞かずにはいられなかった。こんな風に他人の事を話す兄など、本当は見たくないのに。

「どんな人? この学校の人?」
 一輝は屋上の隅にある、用具室を見た。そこに彼がいる筈は無かった。あの少年は、どこの学校に通っているのだろうか?
「いや、どこの誰かは、全く分からないのだが…」
 一輝は初めて瞬を見つめて優しく微笑むと、頭をくしゃり、と撫でた。
 その表情、その一挙一動に胸が痛む。瞬は、広い胸にすがり付きながら、今にも喚いてしまいそうになるのを必死で耐え、代わりに胸の中で叫んだ。
 僕は兄さんが好きなんです!

 だが続けて発せられた一輝の台詞に、瞬は一層打ちのめされた。
「お前に、少し似ている気がする。」
 目を細めて自分を見つめた兄に対して、瞬は力なく微笑み返す事しか出来なかった。
 忙しいだけの最悪な文化祭は、残り半日でやっと終わる。



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