わるもの

 

 久々にわるものと酒を飲んだ。わるものってのは、僕の友達だ。僕だけが彼を呼ぶアダナみたいなもんで、悪意は全然ない。

 わるものとはたまに酒を飲む。みんなはわるものと酒を飲むのを嫌がるけど、不思議と嫌な気分にならない。多分、自分と似たような、どうしようもない、ナルシズムと不器用さを持っているからだと思う。わるものは言い訳をしないように気をつけている。でも、気を使いすぎてはいるが、言い訳したくて仕方ないから、結局言い訳をしてしまっている。
「だからさあ。いいの。もう、いいの、俺」
 わるものはすぐ酒に酔う。けど、酔うとタチが悪い。だって、わるものだもの。わるものの酔っている姿を思い出すたびに、胸が痛い。

 なあ、お前さあ。
「ん?」
 いいの?
「……ああ」
 ……。
「他に言う言葉ないだろ?」
 ……いや、あるけど、ないんだろ?
「……お前、ずるいな」
 ……お互い様だ。

 僕らはこんな嫌らしい会話が大好きだ。

 僕だって同じようなもんだ。人を守るためでも、自分を守るためでもなく。効率良く、自分と人を傷つけるような行動も、取る。結果、自分の望む状況にぐんぐん近づく。けど、気持ちのいい場所にいつも、自分がいない。

 これは綺麗ごとじゃなくて。素直じゃないから。アマノジャクでいい格好したがりの、ナルシストなあほうな性格のせい。

 わるものと二人で、気障な会話をずっとしていると。ああ今日も「俺は馬鹿だ」と思う。
 僕はいつも思う。「ああ、俺は馬鹿野郎だ」って。

 わるものは、いつも誰かのためを考えている。でも、本人は「自分のためだ」って言い張る。本当に素直じゃないヤツだ。はっきり言って、頭が悪すぎる。

 要領よく生きていない自分に酔いすぎている。馬鹿だ、あほうだ。

 でも、大好きだ。
 自分に似ているから。
 くそう。

「ううん、悩むから幸せじゃね?」
「まあ。なぁ」

 わかってんだか、わかってないんだか。わるものと酒を飲んで、気障なクダ巻いて、適当にカッコつけて……。

 悪くない。悪くないと思う。

 なあ、わるもの。
 少なくともお前は、好きなもん、守ろうとしてんじゃん。守れてないけどな。きっと。馬鹿だもん。俺もお前も。

 けどなあ。馬鹿だよ。ほんと。お前、もっと、自分も人も良くすること、考えろよ。自分を傷つけても、人を傷つけても、どっちに転んでも悲しみ人に与えるだけじゃねーか。ばーか。

 ……ばーかって言われて、お前笑うのな。

 ま、お互い様だな。ほんと、俺もばーかだ。

 とりあえず、今日は乾杯。
 毎日に完敗。

 ……駄洒落くらい流してよ。そこでばーかはないだろ、お前。

 ま、挽回しような。ほんと。
 馬鹿でも、できること、しようや。
 失敗したら、また飲もう。

 ほんじゃ、俺、帰るわ。いや、お前も明日仕事だろ?
 酒はそれくらいにしとけや。な?

 俺もあんたもわるものだー。
 けど、わるものタイムはここまでよ。
 な?

 じゃあ、来週くらいに、またわるものになりにくるわ。
 ほいじゃそん時は、お前もわるものから、いま流行りの「チョイわる」にでもなっとけや。

 

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mixiブログに書いたものを修正。
酔って好き勝手言い合うのは楽しいですよね。
(後悔することのが多いけれども)
「ちょいわる」がもはや死語だ……。


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