- 331 名前:テュランの筏5/11:2006/12/21(木) 12:13:04 ID:eZVbIMRX0
- 楊玲の喘ぎ声の合間に、引きあげられるクリフ。
上下する肩はとても、弱弱しい。
咳きこむ声が、だんだんと水気を含んできているようだ。顔は紙のように真っ白い。唇だけは青を通りこして、紫になっている。
馬乗りになったまま、藤吾は右手で、ぺちぺちとクリフの頬をたたいた。
もう、反応する気力もないのか、クリフはされるがままになっている。
そして、僕は見た。藤吾の白いスーツ。
そのスラックスの股間が………たぎり、盛りあがっている事に。
あいつは………あいつは、僕たちを恥辱に陥れただけじゃない。
残酷にだまして、絶望と後悔を与えた。クリフを苦しめ………それだけじゃ済まないで、性的に汚しもするのかっ!?
僕の眼の裏で、赤いものが光った。血が逆流するような感覚を覚え………でもそれは怒りじゃなかったのだろう。
「………う、あああっ!」
股間に起こった激痛。耐えられなかった。間違いなく藤吾まで届く、大音響で叫んでしまった。
音に反応するパブロフの犬のように、藤吾はあっさりとクリフの頭を海に沈めた。
しかし、僕はもうそれに構っていられなかった。
はちきれんばかりの血液がたぎっているペニス。もう大きくなるのは止められない。
革がギチギチと鳴っている。腿と脛を結ぶ革ひもを締めあげても、余裕はできない。
ひもは、今にもちぎれそうに、限界まで張っているのに、それでもふくれあがるそれを解放してはくれなかった。
耐えられない痛みに、頭で火花がとんだ。痛覚の神経は、脳と、僕のペニスだけでつながっていた。
- 332 名前:テュランの筏6/11:2006/12/21(木) 12:14:17 ID:eZVbIMRX0
- 「………っ、お願いっ、解いて、外してっ、外して………っ」
藤吾は振り向きもせず、クリフをさらに沈めただけだった。
海面は静かだった。泡もおきず、波も立たない。
「やめて、お願い、痛いっ………やめてっ」
涙目になりながら訴える。藤吾は時計をチラと見、こう呟いただけだった。
「まだ半分だ、一時間しかすぎていない」
僕の目尻にあつまりふくれあがった涙は、ブワと音をたててあふれた。
痛みと、あまりにも長すぎる絶望の時間に。
誓いをやぶって泣き言を口にする、自分の意志の弱さに。
なににも形容できない、二時間だった。片刃のナイフで、革ひもが切られていく。
楊玲が先に解放され、は、と短く声をあげた後、その場に倒れるようにうずくまった。
彼は残りの時間、ほとんど声をあげていなかった。
それが首輪の圧迫によるものだと、僕は今知った。
僕の声も、それで物理的に抑えてくれればよかったのに………自分の弱さをたなにあげて、調子のよい事を言う自身にまた腹が立った。
藤吾がいましめを解いていく。肩も足もなにもかもこわばってしまっていた。
たった今、黒いトランクは無防備状態である。
楊玲は全身痣だらけでうずくまり、僕も同じような状態だった。
- 333 名前:テュランの筏7/11:2006/12/21(木) 12:15:05 ID:eZVbIMRX0
- クリフは………いかだの端でうつぶせたまま、動かなかった。
あの状態に陥らせてしまったのは、すべて僕のせいだった。
後半の一時間、痛みに耐えかねて何度も上げた声。
一度勃起がおさまっても、快楽の波は何度もやってきた。革ひもは締まりつづけた。
痛みも、敏感な部分への刺激を、強めて。
僕がするのは、クーデターじゃない。
僕が快楽に負けて犠牲になった、クリフを救うために、動かなくてはならない。
目の下の、涙の白いあとをぬぐう。泣いている場合じゃないんだ。
骨がきしきし言うのも構わず、僕は床に置いてあるボトルと箱を抱えて、立ちあがった。
ちょうど、藤吾は黒いトランクに戻り、優雅に腰かけたところだった。
僕は足をひきずって、その前を通りすぎ、クリフの横にかがみこむ。
手首をとる。脈はあった。しかし、腕もほかも氷のように冷たくなっていた。
意識を失っていると、体温の低下が激しいと聞いた事がある。
頬をぺちぺちと叩いてみるが、反応はない。
僕は顔をあげ、藤吾に請求した。
「タオルと、それから気つけの薬か何かを」
藤吾は唇の両端をもちあげる。いやな、笑いだった。
だけど、僕は怯えない。まけない。クリフを救うためなら、何だってやる。
背でトランクの中身が見えないように隠し、藤吾は白いタオルと、茶色い瓶を取り出した。
「いちおう、両方ある」
- 334 名前:テュランの筏8/11:2006/12/21(木) 12:15:52 ID:eZVbIMRX0
- 「僕は、何をすればいい?」
毅然とした態度で問い返す僕に、藤吾は考えこむ様子をした。
顎に手をあて、痣と内出血だらけの僕の身体を見下ろす。
「よし………じゃあ、キスしろ」
僕はぽかんと口をあけた。目も見開いていたと思う。
しめたふたの上で、足を開いて座り、藤吾はにやにやと笑いつづけていた。
「分かった………僕が、あんたに、すればいいんだな?」
怯まない。まけない。こんなの痛くも痒くも、なんともない事。
藤吾はうなづかなかったし、べつに身をかがめもしなかった。
僕は足音をひそめて近づき、トランクに手をつけ、顔を上向けたが、届かない。
両膝をトランクにのせる。それでやっと、顔の高さが同じになった。
どこかつかまる部分はないかと、すでに薄闇がおとずれている中を、探した。
白いスーツの腕らしい部分にふれた瞬間………パシンと、音を立てて振り払われた。藤吾の左腕が、背中の後ろに隠される。
「立て膝でやれ」
僕は命令にしたがった。ちょっと上半身が不安定だが、どうせわずかな時間だ。
顔をこころもち傾け、鼻に鼻で体当たりする気持ちで近づけていく。
ふれた感触は………悔しいが、うるおいだった。
好きなだけ水飲んで、節制と無関係だったら、そのくらい保てるだろうよ!
腹が立ち、すぐ離れようとした頭部は、ものすごい力で抱えこまれた。
- 335 名前:テュランの筏9/11:2006/12/21(木) 12:16:32 ID:eZVbIMRX0
- 「………っん、むっ」
暴れるが、頭を抱える腕はびくともしなかった。うるおった唇が、僕のかさかさの口を、かかえこむかのようにくわえこんだ。
そして入りこんでくる、熱くてぬめぬめした塊。
決して自分の唾液ではない粘着性が、僕の唇と、それから口内を蹂躙する。
思わず両腕が勝手に動いた。
突きとばそうとスーツの胸をめいいっぱい押したが、それは揺るぎもしない。
生き物のようにうごめく熱をおびた舌。
せまい口内でちぢこまっていた僕の舌に、からみつき、なめあげ、引きずりだそうとする。
「ん、んんんっ!」
言葉に出来ない、いやだと頭をふる事も出来ない。
さんざんになぶっていった後、やっと、舌は離れていった。
代わりに唾液をたっぷりと送りこんで。次いで、頭をとらえる腕もとかれた。
僕は息をとめ、飲み込まないで頬にためた分を、床に唾棄してやるつもりだった。
瞳には、強い憎悪がともっていたと思う。
それを感じたのか、くっと笑った藤吾は、すばやく手を伸ばして、僕の鼻をつまむ。
たちまち頭の中に、緑色のもやがかかった。
呼吸をとめていたツケもまわって、心肺停止寸前だった。
たまらず、口の中のものを飲みくだし、かわりに空気を取りいれた。
舌に触れ、喉を通ったその感想など………考えたくもない。
トランクから転がるように、僕は床に降り立った。
- 336 名前:テュランの筏10/11:2006/12/21(木) 12:19:25 ID:eZVbIMRX0
- 肩が上下に震え、息が荒かった。
僕の背中には、あざけるような視線が突き刺さっている。
泣くな、まけるな。クリフを救わなくちゃ。
その一念だけが、僕を動かすすべてだった。
さしだす品を奪いとるようにして、一度戻り、それからもう一度、藤吾の前を通りぬけ、うつぶせたままのクリフをかついだ。
両手はまだ、手錠で背にくくられている。
「手錠を」
「彼自身が、次に命令にしたがうまで、そのままだ」
それが、テュランのさだめたルール、ペナルティなのだろう。
おんぶ出来ればよかったけど、体格も体重も同じくらいで無理だった。
半分引きずる感じで、運ぶ。
クリフのタープをひろげ、横たえた。
身体はあおむけに、頭だけ横をむける。
日暮れが近づいてきていた。日没後は、急激に温度がさがる。
全身をタオルでぬぐい、金髪はわしわしとふき取り、水気をとりさった。
タオルを何度もしぼり、血行をとりもどすように、肌をこすった。
真っ白だった肌に、わずかに赤みがもどった気がする。
僕は自分の手当てに自信を持ち、何度も何度もつづけた。
- 337 名前:テュランの筏11/11:2006/12/21(木) 12:20:03 ID:eZVbIMRX0
- 「トーゴ………」
夜気を渡って、甘ったるい楊玲の声が聞こえてきた。
彼の行動は、僕に何の関連もない。
彼は欲しいものをくれる人のところへ行った、それだけだ。
怒ったように言いきかせ、僕は作業をつづけた。
頬にだいぶん赤みがさした頃、小さな茶色い瓶をとりあげる。ブランデーだ。キャップを開け、クリフの唇にあててみた。
まだ青い唇は、意思を取り戻さないのか、琥珀色の酒を吸いこもうともしなかった。
口に含みかけ、僕は途中で思いとどまった。
今夜だけは、いやだった。汚された唇で、クリフに触れたくはなかった。
さんざん苦労し、床に何度かこぼしながらも、一口分の量をそそぎこんだ。
頭を抱えて持ちあげ、喉を下ったのを確かめる。
「………んっ、う」
クリフの口から小さく声がもれ、僕は安堵した。
まだ氷のように冷たいクリフの両手を胸に抱えこみ、僕はとなりに横たわって、タープをかけた。
- 338 名前:風と木の名無しさん:2006/12/21(木) 16:32:14 ID:UdbrPEjMO
- テュランタンキターwwww
ずっと待ってたGJGJ!!
今までの中で一番よかった
- 339 名前:風と木の名無しさん:2006/12/21(木) 16:41:27 ID:R/PXC4xMO
- ついに接吻キター!
乙です!
- 340 名前:風と木の名無しさん:2006/12/21(木) 18:28:46 ID:nyKlm8mu0
- おお、ティランタン、虐待っぷりがGJです!
主人公、一皮剥けた感じだな。
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