341 名前:風と木の名無しさん:2006/12/21(木) 19:50:53 ID:7fWLdVYZO
テュランタン、キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!
超待ってたよ〜!
相変わらずの藤吾の鬼畜振りに腹腸煮えくりかえりそうだよ。
は…早く…続きを…。

342 名前:風と木の名無しさん:2006/12/21(木) 19:51:41 ID:c6rBphmv0
テュランたん乙!!!
藤吾まじで鬼畜だな。

>>323
自分語り乙。
日記にでも書いてればいいのに。

343 名前:風と木の名無しさん:2006/12/21(木) 20:37:50 ID:bPprW+AW0
>>318に携帯ログも載せといたのでリロよろ

344 名前:風と木の名無しさん:2006/12/21(木) 22:58:35 ID:fdZyN3dOO
乙!ほんとに携帯まとめ、ありがとう!

345 名前:風と木の名無しさん:2006/12/22(金) 01:04:16 ID:KnvK3ZBZO
>>343
おおぉ有り難うございます!

346 名前:テュランの筏1/7:2006/12/22(金) 12:01:28 ID:K6qY2cSY0
八日目

目覚めたのは、昼すぎだった。午前中に何が起こったか、それは知らない。
ただ、目の前にひろがる惨状を見れば、推測はたやすかった。
乱暴に押しひろげられたタープ、足元いちめんにちらばっている空き箱、クッキーのかす。転がっているペットボトル。空っぽのブランデー、一面ただようアルコールの香り。
………そして赤ら顔で前後不覚に陥っている、クリフの姿だった。
彼のタガは、はずれてしまったのだ。
両手を背中に拘束されたまま、酒臭い息をはきだし、べろんべろんにタープにだらしなく寝そべっている。
食べちらかし方がひどいのは、彼がそのままの体勢で、口しかつかえず、それでも乱暴にむさぼったからなのだろう。
歯で封をくいちぎり、犬のように床に置いた食料をがっつく。
想像するだけで、僕は悲しくなった。
ボトルのキャップにも歯型があった。けれど、開かなかったのだろう。
かわりに、指で押すだけで、楽にふたが開くブランデーを飲んだ。
唇にくわえこみ、頭部ごと傾けて。
彼の姿を思い浮かべて、僕は胸がつぶれる気さえしたものだ。

347 名前:テュランの筏2/7:2006/12/22(金) 12:02:27 ID:K6qY2cSY0
だけど、今は酔っ払いの患者を、なんとかしなくては。
ブランデーのアルコール濃度は強い。薄めなくては、中毒をおこしてしまう。
転がっていたボトルを拾う。キャップを開けながら、クリフに近づいた。
「大丈夫? 水、飲んで」
意味不明な単語がクリフの口からもれ、うつろな表情がだらだらと横に振られた。
酒くさい。全身からアルコールがたちのぼり、目は焦点があっていなかった。
僕は強引に飲み口をクリフの唇にあてがった。
舌をしめらすていどに傾け、ゆっくりと含ませていった。クリフの喉が、鳴った。
哺乳瓶をもとめる赤ん坊のように、彼の唇は飲み口に吸いついた。
むせるといけない。僕はボトルの角度を慎重にさだめ、彼の気がすむまで、水を与えつづけた。
三本目を手に取ろうとしたとき、ふいにクリフの瞳に光がともった。
顔色はだいぶん平常に近づいてきていた。全体的に弛緩していた身体に、緊張が戻っている。
とうとつにクリフは身を起こした。
大丈夫かとたずね、手を伸ばす僕をふりはらい、海にむかって上半身を屈めた。
激しく咳きこむ音。それにまじって、ビチャビチャと熱い液体が水面を叩いた。
僕はボトルを横に置き、黙って彼の背中をさすった。

348 名前:テュランの筏3/7:2006/12/22(金) 12:03:15 ID:K6qY2cSY0
白く細く、そして誰よりも孤高なクリフの背は、今はただ苦しみに喘ぎ、罪悪感をせおっているだけの、折れてしまいそうな少年の背中にすぎなかった。

ひととおり、胃の中のものを吐きだしてしまったのだろう。
クリフの顔は青白かったが、呼吸が楽になるにしたがい、顔色ももどってきた。
だが彼は、視線をあわせようとはしなかった。背をむけつづけ、さする僕の手を拒否した。
タープに身体を横にし、頭部だけうつぶせる。一言も、口をきかなかった。
僕はクリフの様子を観察しながら、床を片づけた。固形食品は、全滅だった。
かすをかき集め、あさましい食欲に悩みながらも、それを海に掃き捨てた。
水は、床に置いたボトル一本。中身は半分ほどだ。それだけしか残っていない。
クリフは僕のタープも荒し、まとめてむさぼっていた。
これがどちらの水かなど分からなかったし、僕はそれを知ろうとも思わなかった。
身のまわりの整理をすませ、あまりにもすっきりしすぎた床を見下ろす。
気持ちに空白が生まれたからだろうか。風に乗った楊玲の喘ぎ声が、やけに大きく届いた。
さっきは、藤吾に組み伏せられた体勢だった。
今は、四つんばいになり、尻を突きあげている。
口の端からはたえまなくよだれが流れ、目は恍惚とした色をたたえていた。
藤吾は、用心深くトランクに座ったまま、楊玲を責め立てている。

349 名前:テュランの筏4/7:2006/12/22(金) 12:03:50 ID:K6qY2cSY0
テュランは、反乱分子を見つけてしまった。
彼はこれからずっと、アイデンティティーから遠ざかるまねはするまい。
クリフが言ったとおりだった。チャンスは、ほかになかった。
実行にうつしたのに、テュランは僕たちより、一枚上手だった。
国なのだ。海に浮かぶ十メートル四方の小さな国。
治めるのがたとえ暴君だとしても、国民よりはどこか秀でた部分があるわけだ。
たとえば………残虐な精神とか悪知恵とか。
僕はためいきをついた。楊玲の喘ぎ声が、耳について離れない。
彼のように支配下におさまってしまえば、楽なのだろうか。
少なくとも、毎日は保証される。命令も、快楽だと思ってしたがえば、それほど辛くはないのかもしれない。
『………君は意思が弱そうだから………』
いつか薄笑いとともに、僕を苛んだ藤吾のセリフがよみがえってくる。
僕はぶんぶんと頭を振って、弱い心を追いはらった。

日が沈むころ、クリフは頭を振りながら起きあがった。
口からは不鮮明な呻き声がもれている。
僕はボトルを手に、そばへ寄った。


350 名前:テュランの筏5/7:2006/12/22(金) 12:04:35 ID:K6qY2cSY0
「水、飲んでおいたほうがいいよ」
アルコールが抜けた焦燥感、吐いたときに口内の水分を失い、クリフは渇いているはずだった。
クリフの唇はかたく結ばれていた。
長すぎる間をおいてから、彼はゆっくりうなづいた。
僕は立ちあがり、ボトルの飲み口をあて、そろそろと傾ける。
クリフが首を振り、もういいと意思を示してから、たっぷり二秒置き、僕はあてがうのをやめた。
ボトルの底は、もう小指ほどの水しか残っていなかった。
唇をぬぐおうとしたのか、クリフの背中で手錠が鳴り、
忌々しそうな舌打ちの後、ピンク色の舌が這った。
「手錠は、その………君が次にしたがうまで、そのままだって」
これは僕にもどうにもできない。
ただ、伝えておかなければならなかった。
クリフは反応をみせない。
「ほかに、何か出来る事、ある?」
あまりにも不自由な状態だった。
水も一人では飲めず、痒いところもかけない。
心からの心配をみせたつもりだったが、クリフは顔をそらせただけだった。


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