- 351 名前:テュランの筏6/7:2006/12/22(金) 12:06:25 ID:K6qY2cSY0
- 「じゃ、何かあったら言って」
僕はタープにくるまった。
まだ夜まで間があるが、眠る以外にする事はない。
起きていれば飢えと渇きにさいなまれる。クリフを困惑させる。
早く睡魔がきてくれるよう願いながら、僕は目を閉じる。
「………俺を、罵れよ」
「誰も、そんな事はしない………仕方なかったんだ」
タープの生地を通るか、通らないかの小さな音声で、ささやきが交わされた。
「確かめればよかった。鍵穴がない事なんて、ちょっと見ればすぐに………」
「仕方なかった。誰も、悪くないんだ。
客船が沈没した。海に落ちたとき、コンタクトを失った。
誰のせいでもない。
救いあげられたいかだは、暴君に支配されていた………運が悪かった。
仕方ない事だったんだ」
僕はクリフを説得し、自分にも言い聞かせるように、仕方ないを繰り返した。
………だけど、ほんとうにそうだったんだろうか?
その疑問はいつまでも、僕の胸に残った。
- 352 名前:テュランの筏〜海市7/7:2006/12/22(金) 12:11:28 ID:K6qY2cSY0
- * * *
「先週の土曜から昨日までの事件の顛末を説明します。
私、矢野島とそれから当学園の男子生徒三人が、裏山にある防空壕跡地に、土砂崩れにより閉じ込められました。
昨日、救出が来るまでの間です。
私は生徒らに教育を施しました。性的な。
身体でのつながりは当然、心………も意のものにしました。
私、矢野島は本日を持って教師を辞職させていただきます」
朝の職員会議、昨日まで同僚であった教師らの、ぽかんとした顔は今でも忘れられない。
藤吾は、教職時代の夢からさめた。
背広の内側をあさり、サプリメント―――カフェインの錠剤―――を数錠飲みこんだ。
脳の芯がぼっとしている。
浅い眠りで一週間以上すごしたツケがきていた。
忌々しく舌打ちする。
すぐ横で寝息が聞こえる。赤毛の楊玲。
いかだ端の少年二人は海を見ている。
彼らはまだ教育過程。目を離すわけにはいかなかった。
水を一口あおる。胃で溶けたカフェインが意識を明瞭にした。
* * *
- 353 名前:風と木の名無しさん:2006/12/22(金) 13:01:55 ID:5ZKFzdQ6O
- 新展開キタコレw
テュランタンGJGJ!!
- 354 名前:風と木の名無しさん:2006/12/22(金) 14:34:00 ID:s4n3FH7u0
- 心が折れてしまったクリフたんのみじめさに激萌え!
こういう展開を期待してたんだー!GJ!!!!
- 355 名前:風と木の名無しさん:2006/12/22(金) 17:30:31 ID:Wmzj2hwoO
- うきょー!(゜∀゜)
藤吾の過去ktkr!
こうなると藤吾がここまで用意周到な事情ら辺が気になってくる。
続き超期待!
- 356 名前:風と木の名無しさん:2006/12/22(金) 21:54:45 ID:p+qE7UEe0
- 藤吾!
てめぇ筋金入りのヘンタイ虐待野郎!
続きを早く…!
- 357 名前:風と木の名無しさん:2006/12/22(金) 23:38:48 ID:gMQw7TEs0
- テュランタソGJGJ!
久々通っちゃうよこのスレ!
- 358 名前:テュランの筏1/14:2006/12/23(土) 12:01:30 ID:SX9+qyqW0
- 九日目
日が昇った。藤吾の前に、僕たち三人は顔を並べ、テュランの命令を待っていた。
藤吾政権が確立したわけじゃない。
クリフは、どうしても手錠を外してもらう必要があった。
寝返りもろくにうてず、何もかも僕の手を借りなければならない状態は、いちじるしく彼の誇りを傷つけただろうから。
支配勢力が強まるのを見守る王めいた笑みで、藤吾は口を開いた。
「今日は口淫をしてもらおう。イクまで、やらせる」
日本語万能な僕を含めて、全員がポカンとしていた。
藤吾は不機嫌さを隠さず僕らを見渡し、トランクに腰かけたままの足を広げた。
汚れる事を知らない白いスラックスの、股間を指さし、短く言う。
「しゃぶれ」
尻尾をふらんばかりに身体中で感情を表現し、さっそく顔をうずめたのは楊玲だ。
………つまり、ペニスを口で刺激しろ、って事か。
単語の意味を知ったが、僕は何の感情もわかなかった。
異様な生活の日々で、心がマヒしていたのかもしれない。
と、隣でクリフが青い瞳をきらめかせた。
唇が挑戦的につりあがり、好戦的なオーラが、身体中からたちのぼっている。
- 359 名前:テュランの筏2/14:2006/12/23(土) 12:02:58 ID:SX9+qyqW0
- 「いいのか、日本人のおっさん。そんな大事な部分を、俺にさらしてしまって。
もちろん、もうペナルティはごめんだ。
けど、ついつい力が入りすぎてしまうのは………防げない事故、だよな」
クリフは挑発した。藤吾が眉をひそめた。
いかにも彼らしかった。どうしても命令を受けなければならない今日。
誇りを折ってまで、屈辱的な行為にあまんじるのだ。
せめて、溜飲を下してやりたいと、そう思うのは当然。
藤吾はクリフの脅しで、一瞬だけど急所をさらす恐怖を感じた。
実際、一昨日のペナルティも重く、クリフはそうそう政権転覆はくわだてないだろう。
ただ藤吾を怯えさせる為、自分の矜持を少しでも守る為、クリフはこうして火種を含んだ言葉を投げかけている。
楊玲がみだらな水音を立てて、口内いっぱいにほおばる響きを聞きながら、わずかばかりの沈黙がおりた。
藤吾がいやな光を目に浮べ、口を開いた。
「どうせ二人いっぺんには無理だ。
そこの智士君のを、しゃぶりたまえ。クリフ君」
瞳孔が最大限に開くまでの、間。
「な、っ………俺は、楊玲が終るまで待って、それからでも、っ」
「智士君をイカせるんだ」
命令はくだされた。
- 360 名前:テュランの筏3/14:2006/12/23(土) 12:24:43 ID:SX9+qyqW0
- 僕は考えた。寝起きの頭を働かせて、一生けんめいに考えた。
………どうすれば、クリフの心の負担を少なくしてあげられる?
………ここは国だ。暴君が支配する独裁国だ。命令は強制だ。誰もさからえない。
………仕方なしに、いやいやながらもしたがうのならば、暴君を憎む分、心は痛まない。
「い、いやだっ」
全員に行き渡る大声で、僕は宣告し、逃げるそぶりを見せた。
くっ、と笑った藤吾は、何をするかと思えばネクタイをスルリと抜き、それを楊玲の首に巻いた。
しゃぶる行為に熱中する楊玲は、喉にふれる絹の素材など、まったく気付かず、一心不乱にほおばりつづけていた。
「逃げるな。こっちに来るんだ」
ネクタイの一端が、ひっぱりあげられる。
それでも楊玲は目をトロンとさせ、口から、鼻から、熱い息を吐きだしている。
僕は間を置いてから、しぶしぶと言った表情を作り、歩みよる。
「座れ」
言われたとおりにした僕は、それでも抵抗に正座をした。
「手間をかけさせるな」
ネクタイを引く手に力がこもる。
藤吾はトランクから離れても、十分テュランでいられるだろう。
彼は脅す手段をいくらでも持っている。
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