- 361 名前:テュランの筏4/14:2006/12/23(土) 12:25:25 ID:SX9+qyqW0
- クーデターの時だって、十分僕たちの生命をタテに出来たのだ。
なのに彼は、もっとも残酷な方法で、僕たちの心をうちくだいた。
哀れで、何も持たない、寄り集るしか出来ない国民をいたぶる。
その手段を星の数ほど、手中にかかえて。
………迷った挙句、僕はあぐらの形をとった。
藤吾はネクタイを持つ手をゆるめない。
クリフに見せつけるように高く持ちあげた。
舌を這わせていた楊玲が、熱い吐息の途中で、疑問符いっぱいの呻き声を発する。
それがきっかけになったのだろう。クリフはゆらりと動いた。
僕は藤吾に肩を強くおさえられ、身動きならなかった。
顎のすぐ下で、淡い金髪がふわふわとうごめいている。
かがみ込んだクリフは、横の楊玲をちら、と見てから頭部を下げた。
生唾を飲みこむ音が聞こえるほど、場は静まり返っていた。
開幕を告げる音は、なにもなかった。あっさりとクリフの唇は僕のペニスに触れる。
「………っ、っつ!」
背筋に電流がはしり、僕は声を殺す事も、身を震わせるのも止められなかった。
竿の部分を、ひからび表面が少しささくれているクリフの口唇が這っていく。
- 362 名前:テュランの筏5/14:2006/12/23(土) 12:26:25 ID:SX9+qyqW0
- 今までに一度も感じた事のない、刺激だった。
指でもなく手の平でもなく、あの忌まわしい革でもない、熱をもって独自にうごめく生き物のようだった。
「口内にふくめろ」
短く藤吾の指示がとぶと、クリフは言われたとおりにした。
ふわ、と熱い息が先端にかかったかと思うと、たちまちそれ以上の熱さで包みこまれる。
「ん、んんっ!」
言葉になんて、ならなかった。ピンクの唇が囲んでふれる部分。
口の中で熱い吐息を受ける位置、そして口内でうごめく舌に触れる先端。
なんとも柔らかく、僕をとろかすように包んでいるのだ。
ビクンビクンと、背が二度つづけて跳ねた。
僕の突然の動きに、クリフは含んだまま、頭部の動きを強制された。
ととのった眉がひそめられ、空色の瞳が、苦しげに閉じられる。
………あっ、あ、だめだ。だめだっ、大きくなるなっ。
自分の分身に命令しても、当然ムダだった。
僕の意に反して、ペニスはむくむくと盛り上がりはじめた。
頬の中が張り、唇を押しひらく感覚に、クリフは大きく見開いた。
小さな口で、なんとかほおばりつづけようと、懸命になっている。
息苦しいのか、ふう、っと熱い空気の奔流が囲む内側をなでていく。
- 363 名前:テュランの筏6/14:2006/12/23(土) 12:27:31 ID:SX9+qyqW0
- 「ん、ううっ」
やわらかく表皮をくすぐる息。僕はもう下半身に流れこんでいく血流を止められなかった。
隣で楊玲はピチャピチャと、ねばりつく水音を立てている。
対してクリフは声も粘りも殺し、息に転化している。
熱く、細く、まるで繊細な管楽器をとりあつかうように。
舌がおそるおそるふれ、歯が壊れものを扱うようになでていく。
吐息と絡まりあった刺激に、僕の身体には電流が流れっぱなしだった。
電気のしびれが、頭を満たして、一色に染めあげていく。白。真っ白だ。
視覚を失った僕は、かわりに聴覚がとぎすまされた。
ピチャ、ピチュと水っぽい楊玲の舌の動き。
ん、ふぅっ、と熱いクリフの吐息。
身体中をかけめぐる、快感のしびれ。
震えてとまらず、とうとつに水音も、吐息もかき消えた。
はじけるっ―――。
「だ、だめっ、クリフ………出っ………」
しぼりだす声に反応して、藤吾は僕の肩を押した。残酷に冷酷に、前方へと。
はちきれんばかりの僕のペニスは、いちだんとクリフの口奥を蹂躙した。
ピンクの唇を強引にすべり入る、その刺激は、最後の殻を破りさった。
感度が最大になっていた先端が、柔らかな最奥に当たる感覚とともに………僕はすべてをときはなった。
- 364 名前:テュランの筏7/14:2006/12/23(土) 12:28:01 ID:SX9+qyqW0
- 「ん………ぐ、うっ!?」
えづきかけて、顔をゆがめていたクリフは、口内から喉にかけてほとばしる熱いものに、気管をふさがれ言葉にならない声をあげる。
僕がどうすればいいか分からず、うろたえている間に、藤吾の腕は僕を突き倒した。
温かく柔らかに包まれていたペニスは、白い糸と透明な唾液を引きながら、僕の身体と一緒に、床に倒れこんだ。
藤吾は僕に一べつもくれず、そのままクリフの鼻をつまむ。
「飲め」
命令はくだされ、クリフは頬のあたりに皺をつくりながらも、喉をうごかした。
肩がビクンと震え、僕はハラハラしながら見守ったが、まもなく嚥下する音がやみ、クリフは小さく息を吐き出した。
スッと鼻から手が離れていき、そのまま藤吾は僕を見た。
ペニスがいつもの状態へ戻るまでの間、なにもせず、ぼうぜんとしていただけの僕。
自分自身がとっても悔しくて、なじりたくて、たまらないのに。
追いうちをかけるように、藤吾は笑った。蔑みの表情で。
「意思が弱いと、いい事もある………快楽に、身体がはやく慣れる。
しかし、早漏と言われもする………諸刃のつるぎだな」
僕にそうつぶやいた藤吾は、だいぶんたってから、僕の感覚だと数分から十分というところで、ようやくほとばしる白濁を楊玲の顔に飾った。
その時、藤吾はただわずかに顔をしかめただけだった。
楊玲は力つきはてたと言わんばかりに、床に横たわり、荒い息を吐いている。
顎がつかれて動かないのか、口はあいたまま、端に唾液の白い跡を残している。
- 365 名前:テュランの筏8/14:2006/12/23(土) 12:32:05 ID:SX9+qyqW0
- 僕はそんな風景を見ても、何も感じるところはなかった。
こんなのは、もう日常の事なのだ。それよりも、藤吾が僕につぶやいたセリフ。
それはトゲのように僕の心に食いこみ、思考する時に疼くようになるのだ………
楊玲が起き上がれるようになってから、報酬は手渡されていた。水と、ブロック型食料。
ふと疑問に思うのは、一体どのくらいトランクに詰まっているんだろうか、って事。
さりげなくのぞきこもうとしたが、藤吾のガードは固かった。
………たしか、楊玲が一度見せてもらっていたっけ。
ぼんやり回想していると、手錠を外す金属音の後、乱暴な舌打ちが起こった。クリフだ。
僕は思い出す。そうだ、僕も命令にしたがわなくてはならない。水も食料も、もうない。
それにクリフがあまんじた屈辱を、僕も、国民全員が行う事で、ちょっとでも彼の誇りが守られるならば、僕は喜んでしたがうつもりだった。
「あの、僕も、やります。口淫………」
藤吾のもとへ進み出ようとする僕を、強い力でとどめたのはクリフだった。
僕の胸に、手に入れたばかりのボトルと食料をおしつける。
そして、肩をつかみつづけ、僕が前進するのをはばんでいる。
「これ、クリフのだろ。僕は自分で手に入れるよ」
押し戻して、クリフに返そうとするが、それもはばまれた。
「智士が、する必要はない」
彼の意思が強固で、絶対にひるがえらないと示す、あの頑迷な口調だった。
- 366 名前:テュランの筏9/14:2006/12/23(土) 12:33:02 ID:SX9+qyqW0
- 返す言葉をさがしたが、十日近いつきあいの中で、どんなに最適なセリフが見つかったとしても、彼の態度が変らないのは分かっていた。
それでもしばらく頑張ってみたが、結局はクリフとともに、いつもの端へ戻ってきた。
ほかには何一つ言葉をかわさず、互いのタープにもぐりこみ、やがて日が暮れた。
クリフから渡されたものは、手をつけなかった………つけられなかった。
胃袋は空っぽで、ねじれそうなほどに痛んだ。喉は赤くヒリヒリして、炎症をおこす寸前だった。
前日残った分を全部あおり、それでも足りなかったが、がまんした。
僕は空腹とも渇きとも別れられる、眠りを待った。
………意識がおちこんでから、どのくらいすぎただろうか。僕は揺り起こされた。
クリフが夜空に焦点をあわせながら、生真面目な顔をしている。
「悪い、起こして。この前頼んだ事、やってくれているか?」
「………ごめん、やってない。星座を観察すればいいんだよね」
「ああ、俺は全然、星がまたたいているのかも見えないから」
僕はタープから出た。冷ややかな夜気が、裸の表皮を震わせる。
歯をがちがち鳴らしながら、一面の星空を見上げる。
いかだの端で、ピッと機械的な音が響く。
一日の終わりを示す、藤吾の腕時計の時報なのだろう。
暴君の支配するいかだでの生活は、十日目に入った。
- 367 名前:テュランの筏〜海市10/14:2006/12/23(土) 12:34:11 ID:SX9+qyqW0
- * * *
泥の混じった唾を吐き、藤吾は意識を取り戻した。
うすぐらい。あたりには湿気に満ちた土の匂いがする。
手首を後ろに縛るロープ、首を拘束するものも同じだ。黄色と黒。工事用の縄だ。
身じろぎすると、喉を締め付けられる感覚と、両脚の痛みが同時に生じた。
記憶がつながる。校舎裏の防空壕跡。たまり場にしている生徒がいる。
金曜日の夕方、見回りてがら足を運び………土砂崩れにまきこまれた。
崩れた木材に挟み込まれたのだろう。
外観から曲がった部分は見えないが、スラックスの汚れからすり傷、打ち身、痣は確定だ。
しびれる足首の状態から、ねんざまで覚悟しなければならないかもしれない。
痛みに顔をしかめた時、声がかかった。
「おはよう、おっさん」
顔を上げる。光源が顔を照らした。キャンプなどで使うランプが、机の上で燃えている。
特殊教室の机、本棚などが持ち込まれ、防空壕の土穴は、見事に秘密基地と化していた。
机に腰掛ける黒髪の少年は、にやにやと笑い、手にしたボトルを飲み干した。
黒い液体、はじける泡………赤地に白文字のラベルで有名な炭酸飲料だった。
舌なめずりをする少年に、思わず藤吾は喉が鳴るのを抑えられなかった。
口の中には、まだ砂の残滓が残っていた。
ねんざが熱をもったのか、意識がぼうっとし、舌は腫れ上がっていた。もちろん渇きに。
小さな呻き声がもれた。藤吾自身は質問事項を口にしたつもりであったが、唇がこわばって言葉にならなかった。
「土砂崩れが起こってから五時間だ。おっさん、喉渇いただろ?」
- 368 名前:テュランの筏〜海市11/14:2006/12/23(土) 12:35:17 ID:SX9+qyqW0
- にやつく笑みを崩さず、黒髪の少年はつづけた。
その声に、一人同じ制服の生徒が立ち上がる。
髪を一つに短くしばり、細い目が表情をもたずに藤吾をながめている。
「一本、やるぜ。だけど、おっさんの服と交換だ」
未開封のを手に取り、シャカシャカと振る黒髪の少年は、感極まった様子で吹き出した。
「なんてな、じつはもう、おっさんの上着貰っちまってるが」
言われて藤吾は気付いた。自分の上半身が露出し、土の匂いの中で白く浮き出ている事に。
戸惑い、声も出ない藤吾のところへ、黒髪の少年はボトルをふりふり近づいて来た。
「じゃ、これ。上着の分、な」
縛られ抵抗出来ない藤吾の唇に、飲み口があてられる。
キャップを外すと同時に、口唇を割って、強引に入ってきた。
「んっ、んぐ!?」
二酸化炭素の奔流が口内ではじける。
勢いついた水流が喉の奥につきあたり、泡がちくちくと粘膜を刺した。
藤吾は飲み口が離れると同時に、それらすべてを吐き戻してしまった。
飲み込む準備が出来てなかったせいもあるが、大きな理由は刺激物全般がだめな為だった。
幼い頃喘息を患ってから、ずっと喉頭は弱いままだった。
普段の食生活も辛いものなど避ける必要があった。
「き、っ………きたねーなぁ」
間一髪で吹き戻しを避けたものの、足元の水たまりと、飛沫が掛かった己の胸を見下ろし、黒髪の少年は悪態ついた。
「このやろ、せっかく貴重な水分を。あーあ、三分の一も残ってないぜ、飲まないのか?」
厚意ではなく、むしろ嫌がらせか、復讐をたくらむ顔で、少年は藤吾にボトルを突き出す。
- 369 名前:テュランの筏〜海市12/14:2006/12/23(土) 12:36:17 ID:SX9+qyqW0
- 「………飲、めっ………炭酸………」
首を横に振り、あえぎあえぎながら藤吾は単語を伝える。
舌の裏でじゃりじゃりと砂が動く。唾液は出ず、呼吸するだけで、喉に痛みが走った。
何度か繰り返し、少年は悟ったのだろう。
「何だ炭酸ダメなんだ。おーい、ヨウ。他に飲み物あるか?」
「ない」
ヨウと呼ばれた細目の少年は、ぶっきらぼうにそれだけ答えた。
「だってよ、おっさん。ここにはヨウが自宅からかっぱらってきた、コiーラ二ダースしかないんだよ。どーすんだ?」
肩をすくめる少年に、藤吾は答える言葉もなければ、発するすべもなかった。
どうする、と問われてはじめて藤吾の背に戦慄がはしった。
土砂崩れ。防空壕の出入り口。一箇所しかない。
斜面全体で地くずれが起きたのか、ものすごい泥土の量だった。
唯一光のさす穴が、みるみる塞がれていったのが最後の記憶。
めったに人も通らない裏山で、そして明日の土曜から、祝日の月曜日が終わるまで、誰も通りかかるはずもない………
「なっ………、こ、んな………」
声を絞り出すが、自分でも何を発音しているのか、分からない惨状を呈していた。
ヨウと黒髪の少年は、顔を見合わせて肩をすくめた。
喉をからして藤吾はぜいぜいと喘ぎ、拘束を解こうと身をよじった。
縄の首は上部を這うパイプにつながれているのか、カラカラと乾いた音を立てる。
後ろ手と、それから正座のまま縛られた足首は、もがいても緩むようすを見せなかった。
- 370 名前:テュランの筏〜海市13/14:2006/12/23(土) 12:37:11 ID:SX9+qyqW0
- 「ほどっ、い………外は………」
荒い息を吐き、白い肩が上下する。
熱をもった息が肌にまとわり、つやつやと白さを輝かせた。うすくらい土中でさえも。
ゴクリ、と生唾を飲む音が響いた。
「順番変っちまうけど、まー、仕方ないよな」
黒髪の少年は耳の後ろをかきながら、視線を流している。
その手は、制服のズボンの、たぎりかけた股間のファスナーにかかっていた。
「だって、飲むものないじゃん? おっさん。他に」
藤吾は目をみはった。鼻の先に突き出された少年のペニスは、迷うことなく藤吾の唇に割り入ろうとしている。
信じられなかった。直接ではないにしろ、同じ学び舎ですごす同士。
教える側と教えられる側という圧倒的な位置差もあるというのに。
その段差があっさり埋められ、そしてそこを越えて及ぼうとするのが性的な、それも同性同士のものだとは。
そこまで至った思考の結論、愕然よりは、むしろ目の前に現れた青臭い物体に、嫌悪を示して顔をそらせる生理的反応の方が早かった。
声はその後に、ようやくついてきた。ひび割れて。
「………い、っ………!」
ペニスの前進がやんだのは、藤吾の拒否のせいではなかった。
黒髪の少年の肩をつかんだ、ヨウ少年の行動による。
「お前のイカ臭い後は、ごめん被る」
ヨウは短く言い、黒髪の少年を押しのけ、藤吾の前へ出た。
罵り言葉をいくつかわめいていた黒髪は、チェッと呟きファスナーをあげた。
屈みこみ、藤吾と目の高さを同じにするヨウ。
細い目の奥に好色な光がともり、藤吾は怯えるべきか、教師としての叱咤を顔に出すべきか、一瞬迷った。
その隙に、おとがいを持ち上げられ、こころもち傾いたヨウの唇と舌が、藤吾のそれを割って入っていた。
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