371 名前:テュランの筏〜海市14/14:2006/12/23(土) 12:38:07 ID:SX9+qyqW0
見開き、反射的に身を引こうと思いつくも、首にかかったロープに阻まれ、
またそれを見越したように、ヨウは頭部を前へやり、唇と舌をさらに深く押しつけてくる。
渇いてひび割れた藤吾の唇の表面をなでつけ、腫れあがった舌に、熱くねっとりするものを絡め………最後にクチュクチュと音を立てて多量の唾液が送り込まれた。
「………む、んっ………」
吐き出そうにもおとがいをつかんだ手は、容赦なく藤吾の頭部を上向けにしていた。
重力にしたがい喉を流れようとする熱い液体を防ごうと、藤吾は舌を喉頭の手前で丸めた。
けれども恐ろしいことに、乾ききった細胞と、口内に残った砂は、じわじわとその水分を吸収し、拡散していった。
甘ったるい味が広がるのを、藤吾は鳥肌とともに感じ取った。
舌を元に戻すと、喉がグビと鳴った。
水分が足りないと訴える、身体の反応だった。
ヨウはそれを見、満足そうに藤吾の顎から手を離し、元の場所へ戻っていった。
「ヨウ、もういいのかよ?」
「また、後で楽しませてもらう」
黒髪の少年があっけにとられた感の問いに、ヨウは手を頭の後ろで組み、そう答える。
藤吾がその言葉の意味に背筋を総毛立たせ、問い詰めを発する前に、
黒髪の少年はたぎりかけたペニスを、口唇を割って侵入させていた。
*  *  *

372 名前:風と木の名無しさん:2006/12/23(土) 13:49:13 ID:bjy5VrHdO
藤吾の過去キター! テュランたんgjgj
萌えました(゚∀゚*)

373 名前:風と木の名無しさん:2006/12/23(土) 15:24:00 ID:fS/KdLjo0
藤吾、江戸の仇を長崎で討っていたのか?
にしても、どうも過去に遡って天罰食らってるようにしか思えん!
ぐわー続きが気になる。

374 名前:風と木の名無しさん:2006/12/23(土) 19:36:09 ID:84yVqLbQO
>過去に遡って天罰食らってる
言い得て妙だ
話のためのキャラクターとは分かってるが
3人が不憫だと思ってしまう罠
GJですテュランたん

375 名前:風と木の名無しさん:2006/12/24(日) 11:12:04 ID:bBvd+M6QO
ぬぉぉぁぁ!(゜Д゜)
予想外の展開キタコレ!

藤吾の過去も気になるけど、この後の筏のはどうなるんや〜!
続き超期待!

376 名前:風と木の名無しさん:2006/12/24(日) 12:24:53 ID:iN/jX46n0
そ、そうだったのかートーゴ!
予想外ktkr

377 名前:風と木の名無しさん:2006/12/24(日) 12:42:36 ID:PAG0t5MlO
「白スーツの足を広げ〜」の下りでグッときた。
藤吾カッコヨス

378 名前:柿手:2006/12/25(月) 00:01:03 ID:dryXLowT0
>>309
いつからそこにいたのだろう。
カワホリと共にあの日の男が、開いた扉の前で悠然と佇んでいた。
平太は飛び上がらんばかりの勢いで立ち上がると、彼の元へと駆け寄った。
「ありがとうございます、清一郎を治してくださって、本当にありがとうございます」
彼の前で腰を折り、平太は深々と何度も頭を下げた。
「すみません、俺、あなたがお医者様だったなんてちっとも知らなくて。
 清一郎のことずっと治療してくださっていたのに、人攫いかと疑ってしまって」
ここ数ヶ月の自分の言動を思い出すと、平太は恥ずかしくてたまらなかった。
死に瀕していた清一郎をここまで回復させるのには、並大抵の治療ではなかったはずだ。
なのに、平太の願いを聞き届け、善意で無償の看病をしてくれた人を、
自分はただ西洋人だという謂われ無い理由で、かどわかしだと決め付けていたのだ。
何度謝罪しても足らない罪だ。
平太は己の未熟さが恨めしかった。
「我が医者?」
己を恥じて顔を上げられない平太の頭上から、含み笑いを滲ませた声がかかった。
「セイイチロウが、そう言ったのか?」
「はい、とびきりの名医でいらっしゃるとか。手厚い看護をしていただいたと聞きました」
「我がか?」
「よく効くお薬も飲ませていただいたそうで、大変感謝していると」
「さて、なんのことやら。薬など飲ませた覚えはないが」
傍らに立つカワホリが、苦笑交じりに応じた。
「きっと、マスターが毎晩セイイチロウさまに飲ませていらっしゃる、
 白い濁り液のことございましょう。この国では良い薬ほど苦いと言うようですし」
カワホリの言葉に、男は低く笑った。
「なるほどあれのことか。だが、セイイチロウがあれを飲まされるのを
 感謝していたとはついぞ知らなかった。いつも嫌だ嫌だと抵抗してばかりで」
「清一郎がですか?」
平太は驚いた。
清一郎はこれまでどんな苦い薬だとて飲むのを嫌がったことなどなかったのに。
半信半疑で振り返ると、清一郎は決まり悪げに目を伏せている。
いったいどうしたと言うのだろう。平太は清一郎の態度が理解できなかった。

379 名前:柿手:2006/12/25(月) 00:01:37 ID:dryXLowT0
カワホリに促されて、平太は先ほど座っていた席に戻った。
平太の隣の席に腰掛けたままの清一郎は、男へ挨拶をするでもなく、
不愉快そうに顔をしかめ、彼らと視線を合わそうともしない。
礼儀を重んじる普段の清一郎からは考えられない態度だった。
男はそんな清一郎の非礼を怒るでもなく、平太の正面の長椅子に座した。
西洋人のほりの深い顔を真正面からみると、彫像めいていてなんだか怖い。
初めてあった時と同じく、仕立ての良い服に身を包み、手にはステッキを持っている。
同じ西洋人でも、やはり進駐軍の輩とはまるで印象が違う。
「あの、マスターさんは……」
何処からいらしたんですか、そう続けようとした平太の言葉を、男はぴしゃりと遮った。
「おまえにマスターと呼ばれる謂れはない」
「ですが、カワホリさんはそう呼んで」
「マスターとは主を意味する言葉だ。我の支配下に堕ち、我に全てを奪われ、
 我に絶対服従すべき身となった者だけが、そう呼ぶことができる」
 男は、紫に光る目を眇めてセイイチロウをみやった。
「――そうだな、セイイチロウ?」
清一郎は傍らの平太をちらりと見やった後、悔しげに唇を噛むと、
男の方に向き直り、消え入るような声で呟いた。
「はい、マスター」
清一郎の返答に、平太は耳を疑った。
先ほどの男の説明が事実ならば、どうして清一郎は彼のことをマスターと呼ぶのだろう。
戸惑いの視線を清一郎に向けるが、清一郎は黙して答えない。
(きっと医者と患者の関係だからだ。患者は医者の言葉に逆らえないものだし)
平太は無理矢理にそう納得させようとしたが、どうにも落ち着かなかった。
得体の知れない不安がこみ上げてくる。
何か変だ。
鈍感な平太もここに来てようやく、この屋敷に漂う異質な空気を感じ取り始めていた。
所在無げに目の前の男と、隣に座る清一郎を交互に見比べていると、
徐に男が平太に向かって口を開いた。
「ところで、先ほど、我に何を告げると?」
「それは……あの」
平太は言いよどんだ。

380 名前:柿手:2006/12/25(月) 00:02:23 ID:q+MozTVX0
清一郎が患っている病のことを相談すべきかどうか。
男の放つ圧倒的な威圧感と、上流階級の者特有の堂々たる威厳を目の当たりにすると、
だが、とてもではないが、あんな病のことを言い出す気にはなれない。
どうしよう。
脂汗がじとりと滲む。
告げるべきか、告げざるべきか。
傍らの清一郎をそっと盗み見ると、背筋を凛と伸ばし、
一部の隙もない美しい姿勢で、ソファに湛然と腰掛けている。
先ほど、座るだけで痛みに呻いていた様子など微塵も感じさせない所作だ。
おそらく、男やカワホリに症状を悟らせないように必死で無理をしているのだろう。
(背を伸ばせばそれだけ尻に力がこもる。痔には最悪の姿勢なのに)
そんな平太の懸念どおり、よくよく清一郎を見れば、
心なしか顔は青ざめ、膝の上の手は小刻みに震えている。
(やはり放ってはおけない)
あれだけ痛みを訴えていたのだ。
これ以上やせ我慢を続けさせるのは、清一郎のためにならない。
平太は意を決した。
「あの……清一郎は痔を患っているんです」
「平太!」
遮るように清一郎が叫んだが、平太は構わず続けた。
「とても痛がっていて、かなり酷いみたいなんです。
 あの……もしよければ診てやってもらえないでしょうか」
果たして「痔」という日本語を目の前の男が理解してくれるか、
口にした後に不安になった平太だったが、幸いその心配は杞憂に終わった。
「よかろう」
男はあっさりと頷くと、楽しげに清一郎に視線を移した。
「セイイチロウ、そんな大事なことを我に黙っていては駄目だろう」
「そうですよ、セイイチロウさま。マスターには何もかも包み隠さずお話ししないと」
二人の口調は別段咎める様子も気分を悪くしたふうも無い。平太はほっとした。
「さあ、ちゃんと診てもらえよ」
清一郎の腕をとって、有無を言わせぬ調子で促す。
恥ずかしがらずに医師に診てもらうのが清一郎にとって最善だと思ったからだ。


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