- 501 名前:テュランの筏〜海市4/11:2007/01/16(火) 12:06:18 ID:4SwKWfB10
- * * *
唯一の飲み物であるコiーラ。残りは半分の一ダースになった。日曜の深夜の事だ。
藤吾はほとんど飲めないし、ガブガブと飲み干し消費するのは主に榊少年であった。
だから、彼が最も先に口にしたのだろう。生来の気質、乱暴さと共に。
本来なら藤吾がそれを耳にする事はなかった。
全身白濁液にまみれ、時折、後孔からの出血に痛みを覚え、喉の渇きはずっと傍にあった。
与えられた毛布と、水なしで飲み下せる睡眠薬で、ぐっすり寝込んでいる筈だった。
だが、薬が体質に合わなかったのか。それとも薬の使用条件を越える程に、
喉が乾燥していたからか、しわがれた咳と共に吐き出してしまっていた。
「……大丈夫なのかよ。クニちゃん。
ほんとーに、あのおっさん、完全に落とせるまでここに篭もるのかよ」
「どうせお前らは『友達の家に泊まる』で一週間以上の外泊は可能なんだろ?
俺の所は両親長期不在だし。
矢野島名義で作った休暇届は、金曜日に投函したから、明日には校長の所へ届く
……榊、お前がしゃにむに消費しなければ、十日以上持つ計算だった」
強い調子で諌められ、口答えしていた榊は、鋭い視線に射竦められると、
唇を結んだ後にゴメンと小さく言った。
「国山さん。外からの補充は?」
これは細目のヨウ少年だった。
- 502 名前:テュランの筏〜海市5/11:2007/01/16(火) 12:07:23 ID:4SwKWfB10
- 「基本的には無理だ。土砂崩れの仕掛けが予想以上に大きすぎた。
非常脱出用に作ったルートも塞がれた。外から掘り出してもらうしかない。
ただ連絡用の通信穴は使える。朝決まった時間に俺の部下が、そこを訪れる」
「ほんとーに、おっさん、落ちるかなぁ」
榊少年の視線が向いたので、慌てて藤吾は寝息に沿った肩の動きを作った。
「……落とさなくちゃならない。ここまで来たら。いや、最初にやると決めた時から。
心まで打ち砕いて、俺たちのものにする……持久戦になっても……」
暗く低い声色には、それに相応しい目の色が灯っていただろう。闇の色、漆黒。
聞きとがめた藤吾の身体がピクリと震えた。ヨウは更に目を細め、何か国山に耳打ちした。
「ああ、また、コンタクトつけなくちゃ。面倒だな。痛いし。カラーは体質に合わない」
「しかし、おっさんもまぬけだなぁ。カラコンと作り話で、あっさり信じるんだから」
榊はまた眠る藤吾へ視線を向ける。小さく笑いながら、国山は装填した。
「体質に合わないお陰で……用意した目薬は出番をなくした。
演技じゃない、ほんとうの涙だから……まぁ、信じざるを得ないだろう。
教師として……なぁ、藤吾先生」
声は、あやまたずに藤吾に向けられていた。
肩を揺らし、寝息を立てるその背中へ。
「え、何、何っ? 起きてるの、起きてるのかよ、おっさん!?」
すっとんきょうな声で、榊は二人の仲間と、藤吾の間で顔を動かしている。
「今、目を見開いた」
ヨウが指摘した瞬間、確かに藤吾は瞳孔をめいいっぱいに、開いていた。驚愕で。
- 503 名前:テュランの筏〜海市6/11:2007/01/16(火) 12:10:44 ID:4SwKWfB10
- 「いいんですよ、起きても。先生。聞こえているんでしょう。
狸寝入りなんて、意地が悪いなぁ。
二日と半日分の信頼たしかに頂きました。
それが打ち壊される時が……心を支配するのに丁度いいんだけど。
ちょっと早すぎましたかね。別にこっちは構いませんですけど。
俺たちには、これからもまだまだ耐える時間は沢山……あるんですから。藤吾先生」
挑発口調で投げかける国山に、藤吾は乗らなかった。ただただ寝た振りを続けた。
ガクガク震える手足はどうしようもなく、それに連なり心も乱れていた。
誰もが藤吾の目覚めを確信して、離れた位置から薄い笑いを浮かべていた。
それでも動いたのは榊少年一人であった。毛布を剥ぎ取られ、乱暴に髪を掴みあげられる。
そこで初めて藤吾は覚醒した演技をしたが、誰もそんなものは気にしていなかった。
「では、お目覚めの一杯。いくぜ、おっさん」
たぎりかけたペニスが、騒いで飛び出そうとする藤吾の胸の内を、物理的にふさいだ。
犯される藤吾に、涙を流す者はもう誰も居なかった。藤吾自身も含めて。
身体中のあちこちをなぶられ、押し挿れられ、残酷な言葉を投げかけられながら、
藤吾はどこかでヒビ割れる音を聞いていた。
自分の中の音だと分かると、藤吾は笑い転げたい衝動に駆られた。
ヒビ。ヒビだなど、誰が言ったのだろう。自分の中の何が割れると言うのだろう。
これは卵の殻を破るのと同義。
枷から解き放たれ、飛翔するのは今をおいて他にはないのに。
壊れはしない。そう簡単に、心は打ち砕かれない。
- 504 名前:テュランの筏〜海市7/11:2007/01/16(火) 12:11:45 ID:4SwKWfB10
- ……彼らはそれを知っているのだろうか。若く、まだ社会にも出ていない彼らは。
……教えてやらねばならない。身も心もものにするとはどういう事か。
……自分は、教師だ。師の立場で教えを施す者。別に内容が教科と決まった訳ではない。
……必要だと思った事は、何だって……教えてやらねばならない義務が、権利がある。
それがこの職を選んだ自分の使命なのだと、強く心に刻み込まれる。
どんよりと濁っていた藤吾の瞳に、暗い炎が灯った。
藤吾をもてあそんで笑う少年達は、誰もそれに気付かなかった。
声は出なくとも、身体で十分教育を施せた。最初のターゲットはヨウ少年であった。
細い目の奥で、犯される藤吾にどこか焦がれるような瞳の色があるのを、教師である藤吾が見逃す訳がなかった。
ヨウと一対一になった時、大仰に快楽の顔を作り、喘いで見せた。
彼にはもともとマゾっ気があったのかもしれない。
立場を入れ替えるのに、そう労は費やさなかった。
藤吾のものを受け入れた少年は甲高い悦びの声をあげ、
最初に被っていた、まやかしのSの仮面は粉々に砕けた。
排泄と偽り、出かけ、二人は適当な部屋で身体を交わした。
勘聡い国山が気付く前に、すでに支配する者とされる者の関係にあった二人は、行動を起こしていた。
生活の糧であるコiーラを、全て奪い、支配下に置いた。月曜日の夕方であった。
- 505 名前:テュランの筏〜海市8/11:2007/01/16(火) 12:12:59 ID:4SwKWfB10
- 予想通り、次に脱落したのは榊少年だった。
苛立ちに紛れてスナックを漁り、暇さえあれば、ヨウに「裏切り者」と罵り言葉をかける。
これで、喉が渇かない訳はないのだ。
藤吾にとって幸運だったのは、ヨウが空手の有段者であった事だ。
国山はボディガードをも兼ねて、彼を傍に置いておいたらしい。
それが逆に今は、暴力的解決を選べない窮地に追い込まれているのだから、皮肉なものだ。
榊は渇きを忘れようと、足音高く歩き回っている。視線をコiーラの箱に釘付けに。
国山は腕を組み、藤吾から最も離れた位置で注意深く窺っている。
時折、榊に「無駄な動きはするな」「構うな」など短く檄を飛ばす。
だが、青褪めた顔色は、ついに戻らなかった。
火曜日の早朝、根を上げた榊は、ボトル一本と引き換えに、二人に組み伏せられた。
上も下も同時に犯され、身体中を白濁液にまみらせながら、榊はうつろな目を作った。
それでも交代交代に責めつづけると、少年は割れ鐘のような声で笑い始めた。
早まりすぎたか、と藤吾は少し後悔した。
食への欲望は貪欲でも、性に関しては、それほどではなかったのだろう。
たまに意識が正常に戻る事はあったが、それ以外は幼児のような行動で、
榊はずっとコiーラのボトルをしゃぶりつづけた。
火曜日の深夜の事である。助けはおろか、掘り出しが開始された様子すら、なかった。
- 506 名前:テュランの筏〜海市9/11:2007/01/16(火) 12:14:05 ID:4SwKWfB10
- 水曜日の朝。取引を持ちかけてきたのは国山の方だった。
「降参する。だが、身体はあけ渡さない。交渉だ。
助けを呼ぶ。外へ声が繋がる通信穴は、俺しか知らない。
だけど土砂の量が多く、掘り出すまでに半日はかかるだろう。その間持たせる。
ボトル一本と引き換えに、助けを呼ぶ」
ほんとうに限界だったのだろう。
これだけ紡ぐにも、何度も空気を求めて喘ぎ、ひびわれた唇を手の甲でぬぐっていた。
ダンボールに腰掛けた藤吾は、腕を組んでにやにやと笑う。
「……何故、私が助けを欲しいと、そう、思うのかね?」
「あんたは、炭酸が飲めない。もう、限界だろう。俺は、まだしばらく持つ。
だから、この駆け引きは俺に分がある」
嘘だった。国山の精一杯の虚勢だと、藤吾は見抜いていた。
彼は駆け引きなどに出ず、黙って時刻になったら助けを呼び、半日だけ待てばいいのだ。
その半日も持たない程……国山は限界なのだ。藤吾は唇の端を吊り上げた。
「別に……どうだって、いい。助けなんて」
「……っ!?」
遠い目をして呟く藤吾に危険を感じたのか、見開き、国山は一歩後ずさった。
「君に、きちんと『教え終えた』ならば、助けを、考えてもいい」
ギクリと顔を強張らせた国山は、しかし動揺を押し隠した。震える唇で何とか紡ぐ。
「あんたは……狂ってる」
「そうかね」
- 507 名前:テュランの筏〜海市10/11:2007/01/16(火) 12:15:23 ID:4SwKWfB10
- 短い藤吾の返答を、最後まで待たず、国山は時計にチラと視線を這わせた後、一目散に部屋を飛び出した。
足取りはふらついているが、目的を持った瞳だった。
藤吾はヨウの肩を押した。忠実な猟犬のように彼は駆け出す。
残った藤吾は部屋を見渡し、戸棚にボトルをしまった。鍵をポケットに落とす。
鍵が一本しかないのは、確認済みだった。そして榊を引っ張るようにして、後を追う。
この鍵が数奇な運命を辿り、海に投げ込まれて生涯を終えるなど、まだ誰も知らない。
「助けてっ! 早く、今すぐっ!」
土の廊下に出た途端、その悲痛な声は響き渡った。
出入り口近くの、工事用品などを置く棚から、国山は枯れた喉を震わせていた。
追いついたヨウが間もなく彼の動きを、固めて封じた。
身をよじって抵抗する国山に、藤吾は威厳を持ち、悠々と近づいていく。
青褪めた唇を結ぶ国山の前で、外へ繋がるパイプに、藤吾は握り締めた土塊を押し込んだ。
「無粋なまねを……」
怒りを押し殺した藤吾の口調に、怯む様子もなく、国山は足をばたつかせ「狂人」と罵りつづけた。
何故、教育をやり遂げようとするだけの、熱い教師の魂が分からないのか。
急に怒りに駆られた藤吾は、はがい締めにされている国山の制服を乱暴に剥ぎ取った。
「やめろっ、この変態教師」
狂人よりはマシであったが、それでもありがたくない呼び名に、藤吾は憤慨した。
- 508 名前:テュランの筏〜海市11/11:2007/01/16(火) 12:21:21 ID:4SwKWfB10
- ヨウに言いつけ、国山を押し倒す。はだけた胸を、ひたすら舐め続けるよう、榊に命じた。
「お前らっ……触るなっ……っ、ひ……っ、ひぁっ」
糖分の混じった舌が這い回る感触に、背筋を震わせ国山は悲鳴をあげた。
その間に藤吾は、国山の股間を観察し、卑猥な言葉も浴びせていたが、
果たして聞いていたのかどうか。彼はひたすら暴れて、喚いて、もがくだけだ。
さっさと身体に教え込んだ方がいい。判断した藤吾は、国山の足を広げ、後孔を晒した。
再び激しい罵り言葉が轟くが、ヨウに口への責めを命じると、まもなく止んだ。
ファスナーをおろし、いざ挿入しようという時に、潤滑の代わりが何もないのに気付いた。
取りに行くには遠かった。三人がかりで押さえつけている今、離れる訳にもいかない。
忌々しく藤吾は舌打ちした。ほんとうに、何もかもが足りなさすぎる。
藤吾の心に浮かぶ、いくつかの思考。
(このまま挿入……榊のように壊れるか? だが時間が)
(終らせなくては、教育を。心を支配する……)
(壊れても、支配には代わりない……最終手段だが)
その迷いが運命を分けた。国山と、藤吾の人生を。
「誰か、居るのかっ?」
四人の誰でもない、第三者の声が響いた。懐中電灯の薄い明かりが、差し込んでくる。
背後の出入り口の土砂は、それが透けるほどに薄くなっていた。
誰も返事はしなかったが、まもなく最後の土が取り払われ、外気と陽光が満ちた。
* * *
- 509 名前:風と木の名無しさん:2007/01/16(火) 12:42:05 ID:+jSR9GcK0
- テュランタソ乙!!
この展開激しく萌えた。。。
- 510 名前:風と木の名無しさん:2007/01/16(火) 13:56:30 ID:8Ftj7SgZO
- テュランタソGJ!!!!
藤吾逆転萌え!!!
でもこの後の展開でどうなるのか楽しみ(*´Д`)
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