- 341 :801蛭・湖畔編 4:2007/02/18(日) 19:16:09 ID:HSCKLR/d0
- 遠藤助手が嫌いな仕事の一つが湖での蛭の観察だ。
中藤博士がやり散らかしている研究の一つである
「風土病にかかった蛭の特殊な進化」では、
この地域に固有の蛭を飼育しているのだ。
見るのでさえ気色の悪い大きな蛭を、手に取って、
噛まれないように注意しながら体重と体長を測る。
博士が指定した条件に従って蛭を選び出し、
ケースに収めて研究所に持ち帰ると、
中藤博士が薬だの光線だので何やらを調べるのだ。
寒い日や雨が降る日などは特に、
じめじめした湖畔で蛭をいじる自分が惨めでたまらなくなる。
だが今日はまだましだ。
雨は夜のうちに上がり、夏本番を告げる強い日差しが降り注いでいる。
もっとも、その明るさが自分の人生を照らしてはくれないことに、
遠藤助手はかえって惨めな思いも味わうのであったが。
- 342 :801蛭・湖畔編 5:2007/02/18(日) 19:17:07 ID:HSCKLR/d0
- 近藤教授は歩きながら心が凪いでいくのを感じていた。
思い描いていた通りの、静謐で穏やかな世界がここにあった。
こんな清らかな空気の中では、功なり名を遂げたいなどという望みは、
いかにも卑しいものに思えてくる。
公私にわたり望むままに成し遂げてきた諸々の事柄を、
謙虚な近藤教授は恥じるのだった。
物思いに耽っていたせいか、気付けばいつの間にか
ずいぶん遠くにまで来てしまっていた。
支配人の言葉を思い出して近藤教授の胸がどきんと鳴った。
だが――何が起こると言うのかと、近藤教授は、頭を振った。
自分は、研究オタクの学者馬鹿などではない。
学者としては成功していても人として失敗しているような、
あんな連中とは違うのだ。
現実に対する冷静な判断力を失ってなどいない。
片田舎の宿の亭主の心配性から来る戯れ言を真に受けて
おろおろするような真似はごめんだった。
そうだ、よく見ればここは一休みするのに絶好の場所ではないか。
日は既に高く上がり、歩き続けて肌が汗ばんでいた。
涼しい木陰でのんびりと休み、何もなかったと支配人に告げてやろう。
近藤教授は大きな木の根本に腰を下ろし、木の幹に背中を預けた。
木々の天蓋を通して零れ落ちる日差し。
ちゃぷんちゃぷんと途切れることのない優しい水音。
未だこなれず腹に詰めこまれている朝食。
近藤教授はいつしか夢の世界へと旅立っていた。
- 343 :801蛭・湖畔編 6:2007/02/18(日) 19:17:43 ID:HSCKLR/d0
- 近藤教授が目を覚ましたのは、自分の手が肌を擦る動きのせいだった。
「ん…?」
何か、むず痒いような、もどかしい感覚がそこかしこに感じられる。
それを振り払おうと無意識に動かした手が、目覚めを誘ったらしい。
自然な目覚めではない分、覚醒は不快なものだった。
「なんだ…?」
眉をしかめながら目をパチパチとしばたたかせて、
近藤教授は自分の体を見下ろした。
「………ぎゃああああーーーー!!!」
静寂を切り裂いて金切り声が響き渡った。
- 344 :801蛭・湖畔編 7:2007/02/18(日) 19:18:22 ID:HSCKLR/d0
- 遠藤助手は、耳に届いた不可思議な音に、
のろのろと進めていた脚をぴたりと止めた。
音の聞こえてきた方向から、ざっと鳥が飛び立つ音が続き、
盛りの梢から塊になって小鳥たちが湧き上がった。
不思議な音はその後も続け様に聞こえて来る。
動物の鳴声のようだが、このあたりにはそんな声を出す動物は
棲息していないはずだった。となれば、
――人間?
よく考えたらあれは例の飼育場のある方じゃないか。
遠藤助手は慌てて走り始めた。
- 345 :801蛭・湖畔編 8:2007/02/18(日) 19:19:00 ID:HSCKLR/d0
- 近藤教授は半狂乱で体を払った。
よく太った大きな蛭が何匹も、体中を這い回っていた。
脚と言わず腕と言わず、服の中にまで入りこみ、
喉元まで上がり、頬にまで張り付いて、
蛭が近藤教授の全身を覆っているのだ。
「うわあ! うわあああ!」
言葉を紡ぐこともできずに、近藤教授はひたすら悲鳴を上げて
蛭をはがそうと自分の体を叩き、こすり、引っかいた。
だが蛭は簡単に取れてはくれなかった。
蛭は微妙に体をのたうたせながら近藤教授の肌に吸い付き
リズムを刻むように震えていた。
胸に吸い付いた蛭の動きに近藤教授ははっとなり、
慌ててシャツを体から引きむしった。
「おわあああ!」
ジムで特別にメニューを組んでもらって鍛えた、
幾多の女性たちの目を釘付けにしてきた自慢の大胸筋を、
今は数匹の蛭が味わっている。
乳首に張り付いている蛭をつまんで近藤教授は引っ張った。
だが蛭の胴こそ離れたものの、口は乳首に吸い付いたままだ。
そうしている間に、今度はあろうことか股間でもぞもぞと
動き回るものの気配がある。
近藤教授はシャツを投げ捨てると
ハーフパンツのウエストを引っ張って中を覗き込んだ。
「ひいいいーーー!」
腰にも脚の付け根にも蛭が張り付いている。
下着の中にまで潜りこんでいる蛭もいた。
- 346 :801蛭・湖畔編 9:2007/02/18(日) 19:19:51 ID:HSCKLR/d0
- 遅かったか…。
遠藤助手は低木の蔭からそっと覗いて額を押さえた。
飼育場まで来てみると、1人の男が跳ね回っているところだった。
肌に点々と黒く見えるのは、もしかしなくてもうちの蛭だろう。
助けてやりたいのは山々だが、県のものである湖を勝手に使って
蛭を育てていたとばれた日には、研究所の立場が悪くなる。
一度戻って中藤博士の指示を仰いだ方がいいだろうかと
そこまで遠藤助手が考えた時、男が服を脱ぎ始めた。
理由は簡単に知れたものの、遠藤助手は思わず場違いな動揺を覚えた。
男は自分の胸を撫でさすり、乳首をつまんでいる。
そっちの気はないはずの遠藤助手だが、股間がずくんと疼いた。
人里離れた研究所にこもりきっていると、
インターネットで露骨な画像を見るくらいが関の山なのだ。
同性であろうと、見目麗しい人間が裸を晒して
我が身を撫で回す光景など目の当たりにしてしまっては、
自制が利かなくなるのも仕方ない。
遠藤助手はとりあえずしばらくは様子を見ることにした。
男はシャツに次いでハーフパンツと下着を脱ぎ始めた。
いいじゃん、いいじゃん。どんどん脱げよ。
こんなとこでストリップを拝めるとは思わなかったなあ。
潰された休日の代償に、見るからに勝ち組であろう上品な紳士の
あられもない姿を鑑賞させてもらおう。
痛々しい悲鳴を上げながらタップダンスを踊る紳士の姿に、
遠藤助手の口元が醜く歪んだ。
- 347 :801蛭・湖畔編 10:2007/02/18(日) 19:21:25 ID:HSCKLR/d0
- 近藤教授は軟体生物に生理的嫌悪感を覚えながらも、
それとは異なる何かが自分を支配し始めるのを感じていた。
蛭に吸われた乳首が、首筋が、脇腹が、全身が熱い。
むず痒さに押さえれば、そこから甘い痺れが湧く。
近藤教授とて人の子、世間並みに恋もしたし、
女性たちと付き合って、体の悦びも知っている。
だから、蛭に吸われた跡が残すその痺れが何かくらい、
考えるまでもなくわかってしまう。
「な、なんでっ…なんで…!」
世の中には、触手やスライムの出て来るフィクションに
性的興奮を覚える人間もいると、知識だけはある。
実は自分もその仲間だったのだろうか。
「ああっ…!」
こらえきれない疼きに近藤教授は身をくねらせた。
かすむ目に、股間に群がる蛭が映った。
「いやだ、ああ、誰か…!」
近藤教授は股間を掻きむしった。
今や蛭は性器にまで取り付いて蠢いていた。
擦ろうがも引っ張ろうが蛭は近藤教授にしがみついている。
剥がれない、蛭が…剥がれないっ!
ああ、誰か助けて、蛭を、蛭をどこかにやってくれ!
でないと私は…!
近藤教授の体が地面にくず折れた。
(続きます)
- 348 :風と木の名無しさん:2007/02/18(日) 19:47:20 ID:5Wj0LCCr0
- 蟲がありなら妖怪もアリ。
ぬらえいひょん 帰って来い。
まだ若様もでてないじゃないか。
- 349 :風と木の名無しさん:2007/02/18(日) 19:50:20 ID:C5GK2bN30
- をを、虫だ虫だ蛭だー。
近藤教授、可哀相だけど笑えます。
おっさんが困るさまが良いです。
続き楽しみです。
- 350 :風と木の名無しさん:2007/02/18(日) 22:15:27 ID:Uv1D9NIU0
- …。(._.).。oO(蛭…湖畔…
〃(*´∀`)蛭さん乙!
スバラシイ…!!
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