
(その1)
DISCLAIMER// The characters and situations
of the television program"The X-Files"
are
the creations and property of Chris Carter,Fox
Broadcasting, and Ten-Thirteen Productions.
No copyright infringement is intended.
Mulderは夢を見ていた。もう何度となく見たあの夢だ。子供の頃、部屋でテレビを見ていると突然、
部屋が暗くなり眩しい光が差し込んできた。そして、そばにいたサマンサの身体が宙に浮き、窓の外
に連れ出されてしまう・・・・・?
でも今日の夢はいつもとどこかが違う。Mulderが目をこらして見てみると・・・・・窓の外に連れ出さ
れたのはサマンサではなく、Mulder自身とScullyだったのだ!
(いったい、これは????)とMulderは思わず目を見開く。体中に汗をじっとりとかいているのが
よくわかった。窓に走り寄ろうとしても思うように足が動かない。体中が緊張して、叫ぼうにも喉が
からからに渇いて、うまく声を発する事ができずない。
Mulderはそれでも動こうと必死だった。四肢に力をいれてもがく。手がようやく自由に動くようになった
・・・と思ったと同時に鋭い痛みを感じた。
ゆっくりと目を開いた・・・最初に目に入ったのは・・・
空には月が出ていないせいか、満天に星が輝いていた。耳には寄せては返す波の音しか入らない。
Scullyは砂浜でそっと“彼”の肩に頭を乗せていた。
男 「Dana・・・」
その声にScullyは顔を上げた。すると思ったよりもずっとそばにあった“彼”の顔・・・Scullyはしばしその
顔をみつめた。これからの展開は“彼”の瞳を覗くうちに容易に予測がついた。Scullyはそっと目を閉じる。
彼女の頬に思ったよりしなやかで大きい手が添えられて・・・
“ピシッ、ペチッ!”Scullyは、いきなり痛みを感じた。
Scully 「(痛い!な、なに?どうなったの???)」
ちょっとだけ、がまんしていたScullyだったがだんだんその痛みは大きくなって・・・とうとう耐えきれなく
なって、叫んだ!
Scully 「痛いわね!!!」
Scullyは思いっきりその手を払いのけた。
Mulder 「ご、ごめんよ、Scully。君があんまりにも起きないからすごく心配になって・・・つい、力が入って
しまった。」
満天の星空から、ぎらぎら照り付ける太陽の元へ・・・“夢”?Scullyはまず相棒の顔をじっと見つめた後
に、ゆっくりとまわりを見まわした。ぼうっとなった頭にまるで染み入るように入ってくる眼下に広がった鬱蒼
とした森の緑。どうやら自分はその森から突出した赤土の山の頂上にいるのだということを理解するまでに
、たっぷり1分は掛かった。そして、次に沸き上がってくる疑問・・・
Scully 「ここは・・・どこ???」
Mulder 「それが・・・わからないんだ。」
Scully 「じょ、冗談じゃないわ。何か手がかりは無いの?」
Mulder 「手がかりになりそうな物は・・・・・?」
Mulderは、あたりを見回した。焼きつけるような日射しのせいで頭がくらくらしたがようやく立ち上がって
みると、彼らが倒れていた場所から少し離れた岩の陰に黒いリュックが二つ、投げ出されてあるのをみつ
けた。
Scully 「あれは何かしら。」
Mulderは岩陰に近づき、そのリュックを持ち上げてみた。ひとつはやけに軽く、もうひとつはボーリングの
ボールのようにやたらと重い。
そのうちの軽い方をMulderはScullyに手渡した。
Scully 「何!?」
それを受け取りながら、Scullyは同時に訝しげにMulderを見た。
Mulder 「それ、開けてみて。」
期待を込めてMulderはScullyを見つめた。
(あなたって、いっつもそうよ。イヤな事を先に私にさせようとするんだから!!)
Scully 「いやよ。あなたが先にそれを開けてちょうだい。そしたら私も開けるから。」
Mulder 「何だよ、ただ開けるだけじゃないか!?」
Scully 「そう思うんだったら、あなたが先に持ってるものを開けてよ。」
Mulder 「怖いんだろ?」
Scully 「冗談でしょう??怖がってるのはあなたの方じゃないの!?」
Mulder 「僕はちっとも怖くなんかないよ。」
Scully 「じゃあ、あなたが先に開けてみて。怖くないんでしょ?」
実はScullyはちょっと怖かったのだ。自分に渡されたリュックは、軽かったけれど何か生暖かい
ものが入っているような手触りだったからだ。しかし、そんな感情をMulderに悟られるのが嫌で
わざと平静な口調でしゃべっていた。
Mulder 「よしっ、じゃあ同時に開けてみよう!」
リュックの中から最初にでてきたのはなんとカセットテープレコーダー。
Mulder 「ラジカセ?なんで?」
Scully 「中にテープがはいってるみたい・・・。聞いてみましょうよ。」
そういってScullyがラジカセの再生ボタンを押すと、スターウォーズのダースベイダーのテーマが
ながれだした。
テーマ曲 「ジャ〜ンジャ〜ンジャ〜ンジャ〜ジャジャ〜ンジャ〜ジャジャ〜ン〜〜」
Scully 「えっつ!!なに?なんなの!!」
するとラジカセから男の声がきこえてきた。聞いたことのない声だ。
謎の男 「はじめまして。さぁいま君達のいるところはどこでしょう?っそう、無人島です。そのリュック
の中身はなんでしょう?おう。とりあえず一週間分の食料、それからこれからの生活に必ず
必要になるものばかりです。」
そこまできくとモルダーが中身を確認しはじめた。
Mulder 「ん〜と、カンズメに・・ナイフに・・花火?スケッチブック?マジック?」
謎の男 「さぁ、中にはいっていた花火はとおりすがりの船に助けをもとめるためのものです。スケッチ
ブック、マジックは船のヒッチハイクにつかってください。それで君達にここを脱出してほしいん
です。題して、X−F的無人島脱出!!」
テープの男がそこまでいうと、ラジカセが急に炎を上げてもえだした。
Mulder 「なっつ!!スパイ大作戦かよ、このラジカセは!!」
ふたりが呆然としていると、スカリーのもっているほうのリュックからけたたましい電話の呼出音がながれ
てきた。Scullyはリュックななかからそれを取り出しとりあえず出ることにした。
Scully 「も・・・もしもし?」
謎の男 「では二人に聞きます。この企画X−F的無人島脱出!!、やりますか?それとも、やめますか?」
二人 「やめます!」
二人は同時に叫んだ。
Mulder 「お、Scully珍しく気が合ったじゃないか。」
Scully 「その様ね、Mulder。どうもこの裏に何かありそうな気がするの・・・」
その時、彼女に見えない所でMulderがニヤリと微笑んだ。
Mulder 「Scully?」
Scully 「yeah?」
Mulder 「Run!!!」
MulderはScullyの持っていた軽いリュックの中を探っていたのだ。
彼の掛けた掛け声につい、いつものようにつられたScullyは一人、走り出していた。
Scullyは、また蜂に襲われるのかと両手を振り回しながら走っている。そんなScullyの様子をニヤリ
と眺めて、Mulderはピカリっ!とフラッシュをたいた。
しかし、必死なScullyはそんな事にも気が付かない。Mulderは一人ほくそ笑みながら考えていた。
(「アイスクイーンの霰もない姿」とか題名を付けて、誰かに売りつけるか?)
思いっきり走って森の入り口まで来たScully。ふと気付くと遠くでMulderが笑って手を振っていた。
Scully 「Mulder!だましたわねっ!」
Mulderは二つのリュックを持ってScullyのそばまでやって来た。
Mulder 「ひっかかったな、Scully。パニクった顔してたぞ。」
Scully 「私がパニクったところなんか見たこともないくせにっ。(ん?このセリフどこかで聞いた
ような・・・?)」
Mulder 「さぁ、こんな所にいてもしょうがない。とりあえず下におりてみよう。そしたら誰がこんな悪戯を
仕掛けたのかわかるかもしれない。」
Mulderは軽い方のリュックをScullyに渡し、歩き始めた。鬱蒼とした森の中に一歩足を踏み入れると、
先程までの暑さがうそのようにひんやりとした空気がたちこめていた。




