(その2)



Scully   「ねえ、MUlder。ここは本当に無人島なのかしら。」

Mulder  「さぁ・・・・・でも、この森はかなり大きな森らしいってことだけは言えるな。」

  そう言ったMulderの服の袖をギュっと掴むものがあった。

Mulder   「どうした。Scully??」

Scully    「あっ、ううん....何でもないの。」

  Scullyは森や山にあまりイイ思い出がない事を思い出した。
  そんなScullyの心情が痛いほど分かったMulderは、Scullyの肩を抱き寄せ、おでこに
チュっとKissをした。

Mulder   「大丈夫だ、Scully。僕と君なんだ。絶対に大丈夫!!なにか、気にかかること
       でもあるのかい?」

Scully    「うん....そうよね....大丈夫よね。」

  自分に言い聞かせる様に言ってるけれどもScullyにしては珍しく弱気だった。
  Mulderは自分の服の袖をまだ離そうとしていないScullyの手をギュっと握り返しながら言った。

Mulder   「そう、大丈!!....それじゃあ、君の大スキな海に向かって歩こうか!!」

  二人は歩き始めた・・・と、ふと、Scullyは立ち止まった。

Scully   「ねぇ、Mulder、さっき、携帯があったわよね?海へ歩くよりも、携帯を使って助けを呼んで、
      ここで待っていた方がいいんじゃないの?」

  せっかく君と二人っきりになれたのに、そんな勿体無いことするもんか!と、Mulderは思っていた。

Mulder   「じゃぁ、君の言うとおり、電話をかけてみるよ。」

  MulderはScullyの背中にあるリュックの中を探って携帯を取り出した。が、と同時にバッテリーを
引っこ抜いた。
  携帯をかけるふりをしながら、Mulderは言った。

Mulder   「ダメだ、Scully。ここは電波も届かない所らしい。」

Scully    「そう・・・それじゃあしょうがないわね。さぁ、先を急ぎましょう。こんな所にいつまでも
       いたくないもの。」

  再び二人は歩き始めた。森の中は人のいる気配もなく、ましてや人間の歩く道なんてものは全くといって
いいほどなかった。二人はけもの道をなんとか進んでいった。
  とその時、突然前を歩くScullyの頭上に五メートルほどの老木が倒れてきた。

Mulder   「Scully!危ないっ!!」

  「ギギギギィーーーッ!」頭上の木に気付かないScullyをMulderは思いきり突き飛ばした。Scullyは茂み
の中に突然倒されて何が起こったのかわからなかった。
  一方、Scullyを突き飛ばしたMulderもとっさのことで受け身がとれず、左肩に老木の直撃を受けてしまった。
「ゴンッ」という鈍い音が聞こえたが、あまりの衝撃にMulderは気を失ってしまった。

Scully    「M・・・Mulder・・・どこなの・・・!」

  訳のわからない状況で放り出された森の中で、Scullyは半ば半狂乱になって相棒の名を呼んだ。
  そして、ひととおり叫んだ後にすこしだけ冷静になり、次に倒れてきた老木をみて・・・そのすぐそばで倒れて
いるMulderをやっと発見した。

Scully    「Mulder!」

  Scullyは慌てて駆け寄った。呼びかけてはみるものの、なんの反応も無い。頭を打ったのかとざっと調べて
みたが、どこにもこぶらしきものは発見されず、そのかわりに肩口に木の皮がついていたのを発見した。そこで、
安心して思いっきり頬を叩く。

Scully   「Mulder!しっかりして!!」

  Scullyは倒れているMulderのそばへ膝まづいた。

Mulder   「う、うーん・・・」

Scully    「Mulder、大丈夫?」

Mulder   「あ、あぁ。大丈夫。何が起こるかわからないな、この無人島は。」

  何でもない事のように言うMulderをScullyは心配そうに見つめた。
  Mulderは逆にScullyの方が心配だった。今はいつになく弱気になってるScullyをなんとか安心させてやり
たかった。

Mulder   「Scully、君が居てくれるから僕は怪我しても大丈夫なんだ。だろ、Dr.Scully?」

  Mulderはそう言いながら手を伸ばすと、Scullyの少し乱れた髪を直してやった。

Scully 「そうね...Mulder。私はあなたの主治医だもの....左肩見せてちょうだい。」

  気をとりなおしたような、スカリーの表情を確認してから、モルダーは肩を彼女にむけた。

Mulder 「おいおい、痛くしないでくれよ?」

  その言葉に軽く睨みつつ、それでもきちんとMulderを気遣うScullyの姿をみるうちに、Mulderはちょっとだけ
この状況に無理やり持って行った事に対して少し罪悪感を感じた。
  しかし、そんな思いは一瞬のMulder。やはりせっかくの「バカンス」のような状態を楽しもうとする方が気持ち
に占める割合が大きい。
  とりあえずの食料はあるし、海までも山から見た所はそれほどの遠い距離はないように思われた。しかも懐
には実は通話可能な携帯が入っているということでかなり彼に余裕な気持ちをもたらせていた。

Mulder  「Scully。」

  肩の様子を見ていたScullyの手をそっととって、このうえなく真面目な顔で見つめてみる。

Scully   「え?」

Mulder  「一緒に遭難した相手が君でよかったよ。がんばって脱出しよう。この森にはなにが待ち構えているか
      わからないけれど、君となら切りぬけられると思う。」

  そんなMulderの台詞についまじめな顔になったScullyに対して、Mulderはここぞとばかりににっこりと笑って言った。

Mulder   「大丈夫、僕がついてる。絶対に君を守るよ。」

  ・・・悪魔なMulder誕生か?

Scully   「守ってくれるのはうれしいけど、まず自分の身体の心配をしたら?あなたの左肩、打撲しているみたいよ。
      もしかしたら鎖骨にヒビが入っているかも。」

  Scullyとの二人っきりの時間を楽しんでいたMulderは自分が木に直撃されたことなどすっかり忘れていた。自分の
左肩を見ると赤く腫れ上がってきているのがよくわかる。最初は感じなかった痛みもだんだん出てきたようだ。

Scully 「とにかく患部を冷やさなくっちゃ。どこかに水はないかしら・・・」

  森を怖がっていたScullyだが、今はすっかり医者の顔になっていた。そんな彼女を見てMulderはちょっと情けなく
なってしまった。

  (君を守る、って言いながら結局いつも君に助けられることになるんだよな・・・)

  Mulderは健気なScullyをぎゅっと抱き締めたかった。が、肩がズキズキ痛みだしたので今はこの頼りになる主治医
の指事に素直に従うことにした。

Mulder   「水か・・・リュックの中のミネラルウォーターは飲料水としてとっておかなくちゃならないし・・・まずは、小川
       を探してみよう。」

  とりあえず、座っていても埒があかないので、肩をかばいつつ、Mulderはたち上がった。それにScullyも後に続く。
耳をできるだけ済ませながら、けもの道のような少しだけ歩きやすい道を選んで二人は進んだ。
  何時間ぐらい歩いただろうか・・・二人はようやっと小さな、水の澄んでいる小川にたどり着いた。Scullyは、自分の
タオルをぬらし、Mulderの肩に当てた。

Mulder   「スカリー。前にもあったよな。こんなこと。」

  彼が向き合ってるスカリーの瞳を見ながら言った。

Scully   「これでも十分じゃないわ。明日になれば、この倍は腫れ上がるわね。とにかく、一生懸命冷やして、
      なるべく左肩は使わないように。」

Mulder   「そんなの無理だよ。荷物はどうするんだ?」

Scully    「全ては無理だけど、重いのは私が持つわ。」

Mulder   「へいきだよ、これくらい。」

Scully    「Mulder、何度も言うように、私に気を遣うのは止めて。だいじょうぶよこれくらい。」

  またScullyの足をひっぱてしまったと、Mulderは怪我をした事をとても後悔した。

Mulder   「(なんでいつもこうなるんだ・・・)」

  Mulderはしばらく、肩をScullyに冷やしてもらうにまかせながら、じっと小川をみつめていた。Scullyはそんな彼
の横顔から、Mulderの落ち込みを敏感に感じ取る。

Scully   「(「何か気のきいたことがいえればいいのに・・・。」)」

  二人ともなんとなく気まずくて、黙り込んでいた。と、スカリーがごそごそとリュックの中のものを調べはじめた。

Scully   「モルダー、今回は寝袋があるみたいよ。一つだけだけど・・。」
 
Mulder   「一つだけ・・寝袋が一つだけしかないいぃ!!?」

  なぜか、Mulderの目が輝いた。

Scully    「そろそろ日も暮れかかってきたし、あなたも少し休んだほうがいいわ。どこか横になれるような場所を
       さがしましょう。」

  再び二人は歩き始めた。しかし大人ふたりが横になれるような場所はなかなかみつからない。
  30分ほどたっただろうか。太陽が沈みかけた空にどんよりとした雲が出てきた。と、思うとポツポツと雨が降りだ
してきてしまった。

Mulder   「とうとう降ってきたな、Sully。」

  Mulderは笑顔で語りかけた。Scullyは黙って笑顔を返したが、内心は不安だった。

  (Mulderったら私を心配させまいと平気な顔をしてるけど、肩の傷がかなり痛んでるはずよ。早くどこか休める
場所を探さなくっちゃ。)

  しかし、そんな簡単に都合良く洞窟等がみつかるわけがない。とりあえず、歩き進んだ先にあったまわりよりも
一際大きい大木を見つけて、その陰に入って雨宿りをすることにした。

Mulder   「この程度の雨なら、ここでも充分雨がしのげそうだ。今夜はここで夜を明かそうか?Scully。」

  2人で木の根元にしゃがみこんで、やっと荷物を降ろした。肩にくいこむような重い荷物にScullyは痛みを感じて
いたが、それよりももっとMulderの肩の痛みの方がひどいだろうと思うと、心配でならなかった。すぐさま、様子を
見ようと彼の肩に手をかける。

Scully    「脱いで、Mulder。」

Mulder   「え?ええええええ????」

Scully    「え?じゃないでしょ。脱いでと言ったのが聞こえなかった?」

  なぜ。脱ぐ必要が?

Scully    「だから、キズを診るのよ。」

Mulder   「あ、ああ。キズね。」

  Mulderは何故かホッとしたように、木の幹にもたれようとした。
  すると、その時。
  もたれた木の幹が隠し扉のように突然陥没した。体重をかけたMuderは支え切れず、扉と一緒にぱっくり開いた
穴の中へ・・・。

Mulder   「あ、あー」

Scully    「Mulder!!」

  Scullyは手をのばしたが一瞬遅く、Mulderは闇の中へと消えていった。
  Mulderの消えた先を呆然と見つめながら、Scullyは悩んだ。そして、意を決してそばにあった二つのリュックを掴み
・・・続いて中に飛び込んだ!

Scully   「Mulder!!」



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