
(その1)
DISCLAIMER// The characters and situations
of the television program"The X-Files"
are
the creations and property of Chris Carter,Fox
Broadcasting, and Ten-Thirteen Productions.
No copyright infringement is intended.
今日は10月31日、ハロウィンの日である。Scullyはその日の夜、Mulderの部屋の前に
立っていた。
一瞬の躊躇もあったが、やがて思いきってドアをノックすることにした。
コンコン
Mulder 「やぁ、Scully、いらっしゃい。早いなぁ、まだ誰も来てないよ。」
Scully 「・・・おじゃまします・・・(こんな仮装してるのに、なんで私ってわかったのかし
ら・・・?)」
Scullyはぐるりと部屋を見回し、目を丸くした
そこにはとてつもない大きなカボチャがでんっと置いてあった。
Scully 「Mulder・・・そのカボチャ・・・今日のパーティでなにかに使うの?」
Mulder 「残念ながら馬車じゃないよ。」
Scully 「そうね。王子様はここにはいないもの。」
Mulder 「ひどいな、Scully。僕のこの格好を見てもそんな事を言うのかい?」
Scully 「Mulder、それってナチスの制服じゃない?あなたってそんな趣味があったの?」
Mulder 「言っておくけど僕はナチスの行為を肯定するつもりは全くない。ただScully、
君に思い出してほしかっただけなんだ。」
Scully 「思い出す?私がナチに関していったい何を忘れているっていうの?」
Mulder 「だから、ナチスに関係あるんじゃなくって・・・この制服姿の僕に覚えはないかい?」
Scully 「ないわ。(きっぱり)ますます“王子様”とどこがつながるのかわからないわ・・・」
Mulder 「じゃあさ、僕が海で助けられた時に収容された病室で「I
love you」って言ったのは
覚えててくれてる?」
MulderはずいっとScullyに近づいた。
Scully 「貴方、大変な目にあって錯乱してたのよ。」
Mulder 「確かにず〜っと海に浮いていて、自分でもよく生きていたなぁとは思うけど・・・」
「コン、コン。」誰かのノックする音が二人の会話をさえぎった。
Scully 「そう言えば、まだ他に誰が来るかは聞いてなかったけど・・・誰を呼んだの?」
するとMulderは(にやり)と笑った。Scullyは詰められていた距離を微妙にまた離しながらさらに
目で聞いてみた。
Mulder 「ふふん、誰だと思う?Scully。ずばり当てたら「良いもの」をあげるよ。」
Scully 「良いもの?まさか商品はあの大きなカボチャって言うんじゃないでしょうね。」
するとMulderは大げさに驚いた顔をしてみせた。
Mulder 「僕がそんなものを商品にすると思うのかい?良いものはもっと「良いもの」だよ。
かぼちゃはきちんと使い道があるんだ。」
「良いもの」何故だか嫌な予感がするわ。Scullyはそう思っていた。
Mulderが用意したいわくありげなカボチャ・・・なにかがないわけがないっ!
Scully 「そうねぇ・・・あなたの部屋をたずねてくるのなんて、あの3バカトリオぐらい
しかいないんじゃない?」
Scullyは嫌な予感がしつつも、平静を装って答えた。
Mulder 「では、正解を見てみよう。」
Mulderがドアを開けると、目の前にはライオン、かかし、トトの仮装をしたローンガンメン、
そしてなんと!ドロシーの姿をしたSkinnerが立っていた!
ローンガンメンは楽しそうだが、無理やりひっぱられてきたらしいスキナーは憮然とした顔を
してはいるものの、格好が格好なだけにその表情が妙に笑える。
Scully 「私の勝ちね!」
とScullyはMulderの耳元で囁いた。
しかしMulderは、首を横に振って答える。
Mulder 「スキナーは入ってなかったからね、僕の勝ちだよ、Scully。だから僕の言う事を
聞いてもらうよ」
と、Scullyの耳元で囁くMulderを見てSkinnerが言った。
Skinner 「どうやらScullyはまだ来ていないようだな。ほっとしたよ。でも、こんな姿を見られ
た日には・・・・今のうちに着替えるかな?」
どうやら、Skinnerにはきぐるみに近い仮装をしていたScullyには気付かないらしい。しかも
Scullyがそんなものを着るとは思いもよらなかったのか、完全に違うと思い込んでいる。
(そうよね、普通は気付かないはずなのになぜMulderにはわかったのかしら?)とScullyは思った。
Mulderには、Scullyの考えてる事が分かっていた。そして、瞳で会話する。(君がす・・・)
Mulder 「君が素敵におチビちゃんだからさ」
Scully 「おチビちゃんとは何よっ!」
小声で何やら言い争っているふたりにFrohikeが声をかけた。
Frohike 「Mulder、そちらの方はUFOクラブのお仲間かい?」
Mulder 「あぁ、かわいいだろ?実は僕がアブダクトしてきたんだ!どうやら光が嫌いらしい
んだが・・・」
Frohikeが“UFOクラブの仲間”と思うのは自然なことだったのかもしれない。なぜならScullyは
なんと“グレイ”の格好をしていたのだ!よってSkinnerもそれがScullyだとは思わなかったのは
当然と言えば当然だ。
Langly 「おっと!着替えなんて絶対にさせないからな!」
と、Langly はこそこそと奥の部屋に行こうとしていたSkinnerのスカートの裾をすばやく引っ
張った。Skinnerはぎょっとしてスカートを押さえるがでかい体をした彼のそんな仕草は
すごく笑える。
Byers 「そうそう、そのサイズの服はとうとうみつからなくって結局Frohikeが手縫いした
んだから・・・」
Frohike 「そして、三つ編みヅラを用意したのはLanglyだ。」
Skinner 「私は好きでこんな格好をしているのではないぞ。この3人がMulderに重大な出
来事が起こったから、どうしても一緒に来てほしい、と無理矢理こんな服を着せ
連れてこられたんだ!」
Langly 「でも三つ編みは、ちょっとうれしそうに見えたけどぉ〜。」
「ぷぷっ!」Scullyは笑いをこらえきれず、思わず吹き出してしまった。
Skinner 「はっ!その声は?」
Scullyは焦った。まさか自分がこんな姿をしている事を誰にも知られたくなかったのだ。
Scullyにとっては、普段の自分から考えて、Skinnerのドロシーと同じくらいこの姿は
恥ずかしいものだった。
“グレイ”なだけあって、全身をグレーのぴったりとしたタイツで包んでいる。そして、
頭は当然でっかく、あの特徴的な大きな黒い瞳つきだった・・・まさに、グレイそのもの!
普段から「異星人なんて存在しない」と言い続けたうえのグレイの格好だし、しか
も全身タイツ姿は体のラインもばっちりわかってしまい、恥ずかしさはこの上ない。
当初の予定ではMulderにもばれるはずはないと思っていたのに・・・とスカリーは
思いつつ、でも絶対にTLGとSkinnerにはばれたくない!思ったので、あくまでも他人
のふりを決め込む事にした。
Scully 「@:*&%+$#”・・・・・」
わけのわからない言葉を地声より甲高く機械的にしゃべってみる・・・
(うん、これならばれないはず!)とScullyは確信に満ちていた。
Skinner 「Mulder、君の友達は本格的な仮装だな…しかし…」
Mulder 「そうなんだよ、こいつも皆からSPOOKYって噂されてるんだ。」
MulderもScullyの気持ちがわかったのか、あえて彼女のことは黙っていることにした。
Frohike 「ところでMulder、Miss Scullyは誘ってないのかい?」
Mulder 「あぁ、Scullyなら報告書を仕上げてから、ちょっと遅れて来ると言っていたよ。」
Byers 「それにしても、この間のScullyにはホント驚かされたよな。」
Frohike 「Mulder、Mr.Skinner、君達にも見せたかったよ。彼女、たくさんの男達に
かこまれてすご〜く楽しそうだったぜ。俺はちょっとショックだったけど・・・」
Skinner 「えぇっ?Scullyが男にかこまれて楽しそうだった?そ、そんな事があるわけない。」
Skinnerは、明らかに動揺していた。それにすばやく気付いたMulderは、いつも怒られて
ばかりのこの上司の本音を聞き出すチャンスだ!とばかりに意地悪な質問をしてみた。
Mulder 「何故そういえるんですか、副長官?みんな知らないだろうけど、彼女は周りに
男がいると喜ぶんだ。」
Skinner 「えええええええええええ?」
案の定、Skinnerはさらに動揺したようで、Mulderは吹き出しそうになったが「ここはチャンス」
とばかりにさらに畳み掛ける。
Mulder 「副長官、なぜそんなに真っ赤になってるんです?そんなにScullyの事が気になるの
なら彼女に関するもっとすごい情報を教えてあげまししょうか?」
ScullyはMulderが一体、何を言い出すのかハラハラしていた。
でも、声を出すわけにはいかず、じっとがまんをする。
Mulder 「実はですね・・・」
その先に続くMulderの台詞をその場にいた5人は固唾を飲んで待った。
Mulder 「彼女は特に“マッチョなおかま”に対してすごく興奮するのです!!!」
全員 「(異口同音に)えええええええええええええ!?」
その場に衝撃が走った・・・しかし、実際に走ったのはScullyとSkinnerのうえだけだったかも
しれないが・・・
Langly 「ちゃーんす!(にやり)」
と言ってSkinnerの肩を叩いた。一同はすっかり彼に注目していた。
とんでも無いことを言い出したMulderに少しご立腹だったScullyも、この状態を楽しんでいた。
今後の成り行きがどうなるのか、大福頭の中で彼女は一人ほくそ笑んでいた。
Skinner 「・・・あー・・・ゴホン、とっ、ところで、スカリーは、まだかな」
赤面し、声が裏返りながらも、ソワソワと期待しているようなSkinner
「コン、コン。」誰かがドアをノックする音がした。
Skinner 「はっ!もしやScullyでは?き、きがえなければっ!」
Langly 「着替える??なに言ってるんだい?」
と、慌ててSkinnerを止めに入る。そして口々に言った。
Byers 「あのScullyが興奮する姿なんてめったに見られないですよ!」
Frohike 「そうだよ。頼むからそのままでいてくれ!」
Skinnerだって、実はそれにはおおいに「興味あり!」なのだ。でも、上司としてそれでいい
のか・・・?との葛藤もある。けれど、そんなSkinnerの心の揺れはたった一言で解決できる。
Mulderは得意の仔犬顔でSkinnerに訴えた。
Mulder 「僕達の為に!お願いしますよ、Sir!!!」
“僕達の為に”・・・大義名分!そう、これは自分の興味のためではなく、Mulderたちの為
なのだ!よし、今日はハロウィンだし、粋な上司として部下達のささやかな望みを叶えて
やろうじゃないか!!!
Mulderがドアを開けた。Skinnerは、やはり恥ずかしいのか自分より小さいFrohikeの後ろに
無理矢理かくれて、そーっとのぞきこんだ。
少年 「毎度〜っ!ピザをお届けにきましたーっ!」
ノックをしたのは宅配ピザの少年だった。少年はちょっと太めだが、まだあどけない顔つきを
していた。しかし、Mulderはその少年が笑った時に見えた2本のするどい牙と青く光った瞳を
見逃さなかった。
Mulder 「・・・!き、君は・・・!」
少年はMulderに目で挨拶をした後、部屋の中を見回しギョッとした。それも無理はないだろう。
なぜなら部屋にはエイリアンと変な3人組、おまけに三つ編み姿のマッチョな大男がもじもじして
いたのだから・・・
少年 「あ〜あ、眠いんだからさぁ・・・どうでもいいけど、早くお金払ってよ!あっ、牙はずれそうに
なっちゃった・・・」
Mulder 「おっおもちゃか?」
少年 「あたりまえだろ?!おいおい、いい年こいて何言ってんだよ・・・ハロウィンボケか?」
Skinner 「Mulderいいから早く払ってやれ。いくらだ?」
少年 「12ドルだよ。」
Mulder 「ほら。(お金を渡す。)くれぐれも似たような牙を持ったやつに気を付けろよ。」
少年 「・・・・???」
少年は首をふりふり、まるで悪いものを見た(笑)ことを振り払うかのようにして去って行った。
Langly 「ところでさー、まだScullyは来ないのかい?Mulder。」
その言葉にすっかり状況を笑っていたScullyははたと自分の姿を思い出してわれに返った。
Mulderも当初の目的を思い出し、これは「Scully」をなんとか連れてこなければならないと気付く。
そこで、ぐいっと“グレイ”を引き寄せた。
Mulder 「え?なんだって?もう星へ帰らないといけないのかい?わかったよ。送っていくよ。」
突然のMulderの行動に目を白黒させたScullyだが、確かにこのままじゃらちはあかない。一旦
着替えた方がよさそうだと判断してこくこくと頷いてみる。
Frohike 「え?宴はこれからって時に?残念だな。じゃあせめてその被り物をとって正体だけ
でも教えてくれよ。」
その言葉にMulderとScullyはそろって「ぶんぶん」と首を振った。ここでばれては元も子もない。
Scully 「&%$&'(*`%&%#@!」
Mulder 「ははは、ちょっとシャイなんだ。まあ、ハロウィンに謎が残るのもいいじゃないか。
そのうち紹介するよ!それじゃあ!!!」
とMulderはScullyを抱えるようにしてあわてて廊下に飛び出した。挨拶もそこそこに急いで
エレベーターに乗る。
そんな後姿を見てByersがぼそりと言った。
Byers 「・・・なんだか後姿だけを見ていると、エリア51で捕獲されたエイリアンと政府の
職員みたいだな。」
するとその場にいた全員が大きく頷いた。