「顔を上げよ」
日も暮れかけた天守で、小太郎はうやうやしく頭(こうべ)を垂れる娘に命じた。おずおずと体を
起こした彼女、稲姫は、何か言いたげな瞳で小太郎を見つめているが、喋り出そうとはしない。許さ
れていないからだ。
人の礼儀とは億劫なものだと思いながら、彼は尋ねた。
「直答を許す、何用だ」
直答も何も、今ここには小太郎と稲姫しかいないのだが、また待たれるのも面倒なので断った。
「はい、あの……」
切り出して、稲姫は再び黙りこんでしまった。普段無駄に歯切れのいい話し方をする娘にしては、は
っきりしない。
「私は此度、真田信幸様の元へ嫁ぐことになりました」
「知っておる」
そのために、この間家康の養女になったではないか。
姿は美しいが、中身はじゃじゃ馬そのものの娘を嫁にもらってくれる男はいるのかと、密かに父の本
多忠勝の頭を痛めていた問題が片付いたらしいことは聞いていた。
「……そのことで、お願いしたいことがございます」
脇息に肘をついて、小太郎は眉を寄せた。
「縁談が不服なら、手前でどうにかせよ」
けだるげな顔をする小太郎に、稲姫は慌てて首を振った。
「いいえ! 不服などございません! ……ですが……その……稲は……」
今にも床にのの字を書き出しそうな様子の稲姫は、意を決したように顔を上げた。
「い、稲は、殿方のことを知らずに嫁ぐのが嫌なのです!」
茹で上がらんばかりに真っ赤に染まった頬が、殿方の「こと」とは何かを物語っていた。思わず目
を見開いた小太郎に構わず、稲姫は一気にまくし立てた。
「幼い頃から武芸に励んできた身、女としては恥じいるべきことですが、恋や殿方には全く興味を持
たず生きて参りました。けれど、このまま信幸様の元に行くと考えたら堪らなく心もとなく思え……。
過ぎたお願いは承知ながら、小太郎様に殿方とはどういうものなのか教えて頂きたいのです!」
余りに突拍子もない考えに、小太郎はどこから突っ込むべきか思案した。
「何故、我なのだ。犬や狸に頼めば良かろう」
何故、よりによって候補の最下位に来そうな自分が抜擢されるのか。他に徳川のもっと親しい人間
がいるだろうに。
「殿は仮にも義理の父上、それに、半蔵様は父上の旧友、兄のような方ですから、このようなことはと
ても……。他の方々は、なんと言うか、あまりあてになりそうにありませんので……」
徳川の重臣を控え目にばっさりと切り捨て、稲姫は恥ずかしそうに目を伏せた。興味がないと言い
つつ、娘の直感は働いているらしい。
「忍びには、ね、閨の技も必要だと聞いたことがございます。ならば小太郎様がよくご存知ではないか
と……」
「ふむ」
気のない返事をして、小太郎は黙った。不安げに彼を窺うつぶらな瞳が、潤んで揺れている。本当に、
全く父親には似ていない。
後ろで高くくくられた豊かな黒髪、小さな顔の輪郭はすっきりと繊細で、厚めの唇はふっくらと愛
らしい。鎧の下の膨らみも、充分育っているように見えた。
申し分なく食べ頃である。
舐めるような視線に居心地悪そうな稲姫が、袴をぎゅっと握りしめた。その下の腿はきっと、抜ける
ように白く柔らかな肉がついているのだろう。八割方心持ちを決めていながら、小太郎は迷う素振りを
見せた。
「その願いを聞き届けてやったとして、我に何の益がある?」
稲姫は、はっと気付いたように目を見張った。
「うぬの言うとおり、我は忍び。そして忍びとは、見返りがあってこそ働くもの。うぬは何を代価に
差し出す?」
金子か。いや、姫とはいえ、本多家の金を使うには家のものに事情を話さねばならない。となれば、
到底他には説明できないこの相談事には持ち出せない。報酬に差し出せるほど質のいい着物も、手持ち
にはない。困り果てる稲姫を意地悪そうに笑いながら、小太郎は言った。
「そもそも、話だけで男を知ることができると思うてか。うぬが知りたいのは男女の交わりであろう」
回りくどく言及していたことをすばりと突かれて、稲姫は頬をより一層紅潮させた。それでも素直に
「はい」と答えるあたり、生真面目な性格がうかがえる。
「ならば、その躯(からだ)を質として我に委ねよ、さすれば我が手ずから、うぬを躾けてやる」
ひやり、と熱い頬に冷たい指が触れた。いつの間にか目の前に詰め寄って来ていた小太郎に、稲姫は
息を飲む。南蛮人よりも明るい色をした蒼い目が、否定を許さぬ強さで彼女を見据えていた。
薄く開いた唇を親指で辿られ、ぞくりと恐れのような震えが稲姫の背に走る。恐怖に似た、けれど
それよりもっと甘美で、焦がれるような危うさに満ちた予感がある。頷けば、婿のために守り通して
きた純潔を、この人とも知れぬ男に捧げることになってしまう。
しかし、背筋を這い上がってきた甘い誘惑に、稲姫はとうとう答えてしまった。
「………ど、うぞ……小太郎様の、ご随意に――――――………」
諸肌を脱いでいた着物とその中に着けていた胴丸、そして袴を脱いでしまうと、少女らしさは残しつつ
も豊かに発育した裸身が現れた。
落ちた日の灯りを補う蝋燭の灯に照らされ、稲姫は消え入りたいような思いで小太郎の前に立った。
しかしまだ完全な素裸ではない。胴丸が直に触れないため、胸を覆う薄い肌着と、前垂れはないが男同
様に股を覆う褌が残されている。普通の女ならば一生締めることはないはずだが、戦場を駆けるこの娘
には欠かせぬ下着なのかもしれない。
だが、それも今は不要なものでしかなかった。
「全て脱げと言うたはずだが」
冷ややかな笑みを浮かべ、小太郎が言った。小さく肩を震わせた稲姫は、一瞬ためらった後、己の身を
隠す最後の衣を床に落としていった。
「……これで……よろしいのですか?」
まるで白い蓮の花のようにみずみずしい肌は、先程からずっと薄く色づいたままだ。答えはなく、近く
に寄って膝をつくよう示されただけだったので、稲姫は言われたとおりにかしずいた。
なめらかにくびれた腰と、細い首筋に大きな手が伸ばされ、思ったよりも穏やかに彼女は小太郎に引き寄せ
られる。急に隈取の顔が近づいて、反射的にぎゅっと目を閉じると、ふっと吐息がかかるのを感じた。
「口吸いもしたことがないとはな」
笑われたと気付いて、負けん気で反論しようと開きかけた唇に、ぬるりと生温かいものが滑りこんだ。
「!? んっ……ふぁ……んん……っ」
歯列の内側に納まっていた稲姫の舌を、先で掬い上げて裏と言わず表と言わず舐(ねぶ)り回す。上体
を倒すほど深く唇を重ねられ、上顎まで舐め上げられると、くすぐったいのにざわりと肌が粟立った。思
わず小太郎の両肩に置いてしまった手に、自然と力がこもる。それに気付いたのか、小太郎は集中的に
その辺りや、整った歯の際の肉を舌で嬲った。初めて味わう感覚に翻弄され、稲姫は求められるままに
口腔を開けているだけで精一杯だった。
「っは………ぁ……はぁ……っ」
やっと唇が離れ、息を弾ませながらそっと瞼を上げた稲姫は、陶然とした紫色の瞳で、形の良い二つの
膨らみが包まれるのをぼうっと眺めていた。
「ん……ぁあっ! 何を……っやぁあ…っ」
やわやわと揉みしだかれ、心地よさに身を委ねていたところを、いきなり強い刺激が襲った。緊張と
羞恥ですでに硬くなっていた乳房の先を、両方ともきつく摘まれたのだ。
稲姫は痛みに迫る感触に身をよじるが、すぐに優しく捏ね回す手つきに変えられて、切ない疼きが下腹
の奥にこみあげた。乳房の中心で健気に存在を主張する先端は、そこだけやや濃い桃色に染まっている。
「あぁ…んっ……だめ…ぇ、だめ……です…っ、ああ…っ」
慣れない快感に腰が引けている稲姫を逃がさず、小太郎は片方の腕を彼女の背に回して引き付けた。そ
うして空いた胸には代わりに舌を這わせ、押し付けるように細かく弾いて存分に苛めた。勿論その間も、
指先の愛撫は止まることはない。
「やっ、いやぁっ……歯、を立てな…で…っひぁ、あぅうっ!」
軽く前歯で挟んだまま、表面をちろちろと舐めてやると稲姫の背がしなった。始めから乳首で感じる娘
というのは、小太郎の経験上実はそんなに多くないのだが、稲姫はやけに反応がいい。反対側も同じように
責めてやりながら、唾液に濡れた小さな実を爪で転がしてやれば、がくがくと細い腰が震えて今にも落ち
そうだ。
あることを確信して、小太郎はすっと体を離した。突然止んだ愛撫に、稲姫が無意識で不満そうな視線を
送る。
「脚がもたぬなら、我の膝の上に座るがよい」
逃れる躯を何度も引き寄せられているうちに、稲姫は胡坐(あぐら)をかいた小太郎の膝の片方を跨ぐ
ような体勢で密着していた。だから、そのまま腰を下ろせば、小太郎の膝の上に乗る形になる。しかし、
単なる親切心で彼がそう言っているのでないことは、意地悪く吊りあがった口の端を見ればすぐに解った。
言葉につまった稲姫は、力なくかぶりを振る。
「………できません……そ、そのような………」
遠慮とはまた違った恥じらいが、その声にはあった。一旦白い肌を離れた毒々しい色の指が、つつっと薄
い皮膚を辿る。鳩尾から腹、そして薄い下生えの茂るなだらかな丘まで下りた時、びくりと稲姫が背を波打
たせた。
「や、やめて…………!」
くちゅ、と湿った音がした。
腿の間に忍び込んだ指が、柔い割れ目に沿ってぬるぬると滑った。
初めて他人に秘所を触れられた恥ずかしさと、己のはしたなさに稲姫は両手で顔を覆ってしまった。いつ
もより粘っこい喉笑いをして、小太郎は赤い耳元に囁いた。
「できぬなあ。こんなに濡れていては、座るのにもためらうというものよ」
顔の前で指をつけ、ねと、と糸を引く蜜のしたたりを観察するさまが何ともいやらしい。
「色恋に興味はないが、うぬは己で弄ることは知っておるな?」
そうでなければ、いくら執拗でも前戯でこれだけ感じるはずはない。指の腹で桜色の亀裂の表をなぞって
いるだけで、淫らな水音がきりなく上がってくる。
「ちが……あ、あっ、あ、あんっ、だめ、だめぇっ……!」
最も敏感な女の部分に与えられる刺激に耐え切れず、稲姫は小太郎の頭をぎゅっとかき抱いた。さすがに
息ができず、小太郎は手を止めて柔らかな胸を引き剥がした。くるりとその躯を反転させ、後ろから抱き
かかえると、彼は部屋の奥へ移動する。稲姫は突然の変化に何がなんだか分からず、落ちないようあわてて
後ろに腕を回した。
小太郎が腰を落ち着けたのは、家康が献上した舶来品の前だった。稲姫の身の丈ほどもある大きなそれは
姿見で、金属製ではなくガラスで作られた珍しい物である。面が透明なので、銅鏡などよりはるかに色が
よく見える。
「や………小太郎様……」
巨躯の腕の中の自分から目を逸らし、稲姫はうつむいた。
「男を知りたいのであろう? ならばよく見ておけ、我がうぬをどう侵食するか」
ぐっと顎を掴まれ、鏡に顔を戻された稲姫は、仕方なくおそるおそる己の姿を見た。上気したかんばせ、
とろけた瞳、薄く開いたままの唇、自ら小太郎の首に回した腕――まるで発情した獣のようで、深い羞恥が
とめどなく背徳感を招いた。それと同時に、言いようのない興奮も。
小太郎の手が、稲姫の両膝の裏を持ち上げた。そのまま左右にゆっくりと開かれ、彼女は全てを鏡の前に
さらけ出した。
「きゃ……………っ」
大きな声を上げそうになって、口元を覆う。悲鳴でも上げて、階下の護衛にでも聞かれたら事が露見して
しまう。後ろめたさに苛まれながら、逆らわず自らの痴態を見つめる稲姫を、小太郎が嘲るように笑った。
「手前で慰める時、どんなことを考えている?」
片足を更に大きく脚を広げられ、濡れそぼったそこに再び長い指が伸びた。湧き出たぬめりを塗りつける
ように前後に滑らし、つんと健気に尖ったさねを親指と人差し指でそっと揉みこむ。
「はぅっ……や、ぁん、んっ……あぁあ…っ」
いやいやと首を振りながら、稲姫は必死に小太郎の首にしがみつく。こぼれた愛液が、ひっそりと息づく
後ろの孔にもとろりと伝った。小刻みにさねを擦り上げれば、適度に肉のついた腿がひくひくと痙攣する。
「言わぬと、やめてしまうぞ」
腰まで浅く揺らしている稲姫は、もうすぐ達するのだろう。絶頂の寸前で引き止められるのは、男も女も
辛いものだ。案の定、なすがままに喘いでいた娘は小さな唇を噛みしめて迷っていた。
「ほら」
「ぁ………っ」
指が離れ、稲姫は思わず名残惜しいというように声を漏らした。くすぐるように茂みを這う小太郎の指が
もどかしく、目の前の快楽に負けて彼女は叫ぶように哀願した。
「言います、言いますから、早く……!」
「言えたら弄ってやる、ここをな」
片方の手も伸びてきて、左右から肉の花弁が割り開かれた。触ったことはあっても、初めて自分の目で
見るそこは物欲しげにひくついて、その動きは止めようとしても止まらない。
「あっ、い、稲は…顔も知らぬ敵兵に、捕われたり……その、いけない、ことを……っはぁんっ!」
最後まで言い終わる前に、紫色の指がぬるる、と蜜で満ちた亀裂の奥に沈みこんだ。
「クク、清廉潔白なのは外面ばかりか。他には何を肴にした?」
緩やかな抜き差しを施されながら、耳の貝殻を舌で遊ばれる。もう稲姫に抗う理性など残ってはいなかった。
「ふぁ…あぁ……お、大勢の雑兵に…組み敷かれたり……蔵の中で…はぁっ、弄ばれたり……ああ、お許し
ください……もう、も、ぅ……っ」
浅ましい告白をしている最中から、稲姫の秘所はひどく涎をこぼしていた。溢れた淫水で、小太郎の手の
ひらがあっという間にぐしゃぐしゃに濡れる。独り遊びの妄想の内容といい、勝気な上辺の性格とは裏腹、
この娘は心の奥底で男に嬲られたい欲望を持っているようだ。
別に驚くことではない。清楚ではかない外見の女が、男を踏みつけて隷属させたい本性を持っていることも
ままある。風魔の頭領として多くの女忍を見てきた小太郎は、そのことをよく知っている。
だが、稲姫にはおそらくもう一つ秘密がある。
「まだ隠しておるな」
指をもう一本増やして責めながら、小太郎が囁いた。潤んだ襞を押し上げる速さを上げ、強めに擦ると、
稲姫は乳房を揺らしてのけ反った。開脚した両足を床につき、胸から腿までぴんと張って秘部を突き出す
あられもない格好で、白い肢体をわななかせている。
来る、来てしまう。稲姫の頭の中はその言葉だけでいっぱいだった。
「うぬが本当に犯されたかったのは誰だ――――稲姫」
ひっ、と稲姫の喉が鳴った。かき回される内部に集中していたところへ、再びさねを弾かれて、あまり
にも強い感覚に涙腺がゆるむ。
「あっ、やっ、こ、こたろ、さま、小太郎さま、にっ――――ぁあぁああぁっ!」
弓の弦のように張り詰めた躯が、甘い嬌声とともにびくびくとたわんだ。根元まで差し入れた二本の指が、
達した証の収縮に誘いこまれる。ぱたぱたぱた、と板間の床に、透明な飛沫(しぶき)が飛び散った。
全身から力が抜け、絶頂の余韻にぐったりと崩れ落ちた後も、稲姫は小さく震えていた。今まで経験
したこともない強烈な快感に支配され、まどろんでしまいそうになるが、彼女はふいに今さっき口走った
ことを思い出し、さっと青くなった。
「あ、の、小太郎、様………」
鏡越しに、こわごわと小太郎をうかがうと、相変わらずたち悪く口元を歪めている魔物の顔があった。
「我に嬲られ弄ばれている己を夢想して、今のように気をやるのか」
埋められたままの指が蠢いて、また稲姫が跳ねる。小太郎は的確に弱いところばかりを責め、過敏になっ
ている稲姫の雌をたちまち呼び起こした。
「ふぅっ…あぅ……淫らな娘っ…んっ…だと…お思いです、か……っ?」
殿方を知りたかったのは真実、けれど小太郎に恋焦がれていたのも真実、今日も、心の底ではもしかし
たら…と思っていたのかもしれない。もうすぐ嫁ぐ娘がこんな形で想いを遂げようとしているのを、彼は
は蔑むだろうか。
「人の世の常識などつまらぬ。貞淑だの不貞だの、我の知ったことではないわ」
「ん………あっ」
ずるり、と指が抜き出された。と思ったら、下から躯を持ち上げられ、硬いような柔らかいような、ただ
熱いことだけは確かなものが、濡れた蜜口に押し当てられた。鏡を見る。
くつろげられた袴から覗いたそれは、猛々しく育った小太郎の雄だった。
「あ………………」
どくどくと、稲姫の鼓動が速くなる。幼い頃に見た父のものとは違う、大きく反り返って充血した凶器の
ようなそれが、今から自分を貫くのだと思うと、期待と恐れで稲姫の胸ははち切れそうだった。
「我を恋うなら、存分に乱れて愉しませよ――――いいな?」
声で頭の中を直に愛撫されているようだった。こみ上げてくる欲情のままに頷き、自分から飲みこもうと
雁首の先を陰唇で食む。
「来て……くださいませ……」
ぎこちなく誘う稲姫に応えて、小太郎はその腿を支える力を抜いた。
並の男のものを一回りは上回る怒張が、徐々に肉壁をかき分けて進む。散々弄られたせいか、想像してい
たより苦痛はない。それでも、内側をいっぱいに広げながら貫かれて、すさまじい圧迫感と多少の痛みに、
稲姫は荒い息をついた。
「く……んぅ………ふうぅ……っあぁ!」
半ばを過ぎたところで、急に躯が落ちた。小太郎の手が腿から腰に移ったせいで、稲姫は自重で残りを
一気に迎え入れた。
ぷつ、と奥から何かが破ける音と、弾ける痛みがやってくる。
「ふふ、生娘でなくなった気分はどうだ」
「え………ぁん、ふっ、ぅ……」
横を向かされて、二度目の口吸いをされた。瞑ってしまう瞼の裏に、視線を感じる。
見られている。鏡越しにも直にも、ふしだらなこの姿を余すことなく見られている。そう考えると、
小太郎を咥えた蜜口がきゅっとすぼまった。上の口も下の口も小太郎に塞がれて、まるで串刺しにされて
いるようだった。気付けば、まだ舌が絡まっているのにゆるい律動が始まっている。にちゃ、にちゃ、と
番(つが)う音が途切れることなく響き、二枚の舌が立てる水音がそれに重なる。
潔癖で高潔な戦乙女は、もうそこにはいなかった。
「んく……っは……し、あわせっ…です……こたろ…さま…なか…いっぱいっ……ひぁあんっ!」
急に深く突き上げられ、ぐらついて稲姫は前に手をついた。鏡に向かって身を乗り出す姿勢にさせたまま、
小太郎は彼女を揺さぶる。破瓜の名残には痺れたような感覚だけが残り、段々と穿たれる愉悦に塗り潰され
ていく。こんなに大きなもので中をかき回されているのに、感じるのは狂おしい快感だけだった。
「あっ、あ、あぅっ、ぁあっ、やぁん…っ!」
上体を支える腕が震える。下を向いていると床に崩れてしまいそうで、稲姫は顔を上げるよう努めた。
鏡の中の自分と目が合う。いやらしい、恥ずかしい、そしてどこか満ち足りたような顔の自分が、黒髪を
乱してゆさゆさと前後に揺れていた。鎧を着ける時には邪魔だとしか思わなかった二つの膨らみも、先端を
尖らせて躯と同じ調子で弾んでいる。
「いや、突い、ちゃっ、おかし、く、な、あぁっ、んっ」
くっくっ、と忍び笑う声が後ろから聞こえた。
「さて、おかしくなると言われても、我はもう動いておらぬが?」
え――――――?
言われて初めて、稲姫は自ら腰を振っていることに気付いた。振り返れば、小太郎は両手を後ろについて
見物を決めこんでいる。首元まで桜色に染めて、稲姫は動くのをやめたが、雄の味を覚えたばかりの秘部は
隠しようもなく刺激を欲しがっていた。
すがるように見つめてくる瞳からは、今にも涙が零れ落ちそうだ。
「欲しいか」
同情という言葉は小太郎の中に存在しないらしい。嗜虐的な笑みで尋ねられて、稲姫はこくりと頷いた。
「いいだろう、面白いものを見せてもろうたしな」
言うなり、小太郎は己の怒張を引き抜き、稲姫を床に転がした。仰向けになる前に片脚を捉え、高い位置
で抱えて露わになった蜜口に再度突き入れる。平たく言えば松葉崩しだ。
「ふあぁ……ぁ……っ」
されるがままに身を震わせる稲姫の膝を甘噛みして、小太郎は緩慢に腰を引いた。
「突くとは、こういうことだ」
そして、貫いた。
「っひぃ…ああぁっ! あぁんっ、あんっ、やぁっ…!」
硬い腹と柔らかい腿がぶつかる乾いた音が、水をはね散らかすような響きに加わる。肉壷の口に雁首を
押しつけるほど突いては、ぎりぎりまで抜くことを繰り返し、小太郎は稲姫の最奥まで犯し続けた。
親指を軽くさねに添えてやると、あとは振動で自動的に苛めることができる。前と後ろを同時に責められて、
度を越えた悦楽に稲姫の頬を透明な雫が伝った。
「いや、ぁっ…も…やぅ、あっ、んっ!」
激しく身悶え、結った黒髪がほどけて床に散る。熱く潤った襞(ひだ)に断続的に締めつけられ、小太郎は
稲姫が二度目の絶頂を迎えようとしていることを知った。掲げた脚を腹につくほど折り曲げ、ちょうど丸みを
帯びた茂みの丘の裏を斜めに突き上げると、悲鳴に似た声が上がる。階下に人がいるであろうことなど、
気にする余裕はすでにないようだ。
「やぁあっ! そこ、だ、めぇっ! また……っ」
「うぬが達ったら、注いでやる」
優しく囁かれた言葉で、びくっ、と稲姫の目に一瞬正気が戻った。
「お、許しくださ……っ、それ、だけは、あぁあっ!」
中に子種を注がれてはややができてしまう。懇願する心とは裏腹に、弱い一点を繰り返し擦られて、小太郎
の雄に絡みついた中に燃えるような快楽が広がる。
「ぃ、や、いく、いっ、もぅ――――――ひぁああぁあぁっ!!」
処女の狭さを残した肉壁が、きゅうっと締まりながら痙攣する。ひとかけらも愉悦を逃すまいと貪る蠕動
(ぜんどう)を快く感じ、小太郎も遅れて精を吐き出した。奥へ奥へと注ぎこむように腰を震わせ、まるで
孕めとでも言わんばかりに熱いほとばしりをぶちまける。
乱れた呼吸が整い、昇りつめた余韻が消えた頃、小太郎はようやく己のものを引き抜いた。
それに導かれ、こぽりと受け入れきれなかった白濁が溢れて、稲姫の腿から床へと伝い落ちた。破瓜の朱と
存分に混ぜ合わされたそれは、薄桃色を帯びている。
恍惚としているか、絶望に泣いているか、力を失った肩を掴んで稲姫をうかがった小太郎は、息だけで
笑った。
今さっきまで圧倒的な快楽に翻弄されていたのが嘘のように無垢な顔で、彼女は気を失っていた。
ラストその1
ラストその2