「…………ん」  
 ぷつっと、意識が始まる。本当は連続的に永続的に続く人生は、睡眠によって一日という単位に区切られる。睡眠という行動の一番の利点  
は本当は疲労の回復なんかではなく、永続の人生を断続にする事によって『飽きなく』することだろうとぼくは思う。  
 昨日の事は、昨日の事。  
 今日の事は、今日の事。  
 明日の事は、明日の事。  
 休ませるのは肉体ではなく精神という観念。  
 人は必ずしも生きたくて生きているわけではない──。   
「…………ん。ん、んん」  
 
 大抵の人間が朝目覚めてから取る行動は、時計を見る事だろうと思う。がばりと上体を起こし、目をこすりながら時計を見る。  
「……五時五十分」  
 起動脳味噌がデータを立ち上げていく。五月二十一日、土曜。  
 ん?土曜?土曜、土曜……。  
「……そっか、巫女子ちゃんと買い物に行く日か」  
 約束の時間は確か十時だから、それまで四時間。瞬間的に頭の中でその二百四十分を潰す方法を模索しながら、ぐぐっと伸びをする。  
 さて、巫女子ちゃん、今日はちゃんと時間通りに来るだろうか。  
 
 それからおよそ半日後。  
 買い物を終えて夕食を食べに寄った店で、巫女子ちゃんはこれでもかといわんばかりの勢いでお酒を飲み続けた。結果は言うまでもない。  
 時刻は七時半。ぼくは完膚なきまでに酔い潰れた巫女子ちゃんを背負って店を出た。  
「巫女子ちゃん、家まで送るよ?いいね?」  
「あはは、いっくんの背中気持ちいー」  
「…………」  
「インドネシアの大富豪フロリダで豪遊、但し油田は北九州、みたいなー」  
「…………」  
「巫女子ちゃんだにゃーん。只今いっくんに乗車中ー」  
 最早さっぱりわからなかった。  
 泣いた子供と地頭と酔っぱらいには勝てないというかなんというか、ぼくは巫女子ちゃんとの意思疎通を諦め、前に一度行った堀川御池の  
マンションへ向かう。若い女の子を背負って歩いているというのは中々人目を集めそうだったが、今日の巫女子ちゃんのファッション(幼稚  
園児が被ってそうな黄色い帽子とオーバーオール)と身長から妹か何かだと思われたのだろう、バスに乗って巫女子ちゃんのマンションまで、 
何の問題も支障もなく辿り着いた。  
 
 マンションの前まで来て背中に声をかけてみる。  
「巫女子ちゃん、着いたよ」  
「…………」  
 まあ期待はしていなかったけど、案の定巫女子ちゃんはぐっすり眠り込んだままだった。やむを得ず、巫女子ちゃんを背負ったままマンシ  
ョンの中へ入る。  
「……さて、どうしたものか」  
 まさかドアの前に置いて帰るわけにもいかないし、隣の部屋の人にでも預けて行こうか。と、巫女子ちゃんを荷物のように考えていると、  
背中でもぞもぞ動く気配がした。  
「あ、巫女子ちゃん起きた?」  
「…………」  
 気のせいか。しかし、どうしよう。  
 ……ていうか、よく考えたら巫女子ちゃんが寝てるのが悪いんだよな。結局ベスパもぼくの家に置きっぱなしだし。わざわざ家まで送って  
あげたんだから、叩き起こしたって問題ないはずだ。  
 ぼくは背中を揺すり始める。  
 
「おーい、起きろー」  
 ゆさゆさゆさ  
「おーい、巫女子ー」  
 ゆっさゆっさゆっさ  
「みっ、こっ、こっ、さーん」  
 じゃーんぷ。じゃーんぷ。  
「うきゃ」  
 飛び跳ねたのはさすがに効いたのか(巫女子ちゃんの頬がぼくの肩に激突した感触があったけどそれは無かったことにする)、巫女子ちゃ  
んが身じろぎする。いやいや、やっと起きてくれたか。  
「巫女子ちゃーん」  
「…………、あ、はい?葵井ですけど?」  
「…………」  
「……あっ、いやっ、寝てません、起きてましたっ」  
「…………」  
「……あれ……ここはマンションだ…………?」  
「巫女子ちゃん起きた?」  
 ぼくが尋ねると、巫女子ちゃんはひゃあ、と失礼なリアクションで応えてくれた。  
「あれ、いっくんがいる?なんで……?」  
「酔っ払っちゃったから、ここまで連れて来たんだよ」  
 そう言って巫女子ちゃんのバッグを持ち上げて見せる。ちなみに買った荷物は駅のコインロッカー。  
「うわあ、いっくん、わざわざここまでおぶってきてくれたの?それってちょっと感激だったり……」  
「それは重畳」  
「うんっ。いっくんありがとー」  
 巫女子ちゃん、いまいち酔いが抜けきっていないようで、なんとなくのへーっとしている。頬もほんのり赤いし。  
「巫女子ちゃん、立てる?」  
「あ、うんっ」  
 そう言ってぼくの背から降りる巫女子ちゃん。しかし、地に足をついた途端によたよたと転びかける。慌てて体を支えてあげる。  
「巫女子ちゃん、鍵出して。ベッドまで運んであげるから」  
 言ってから気付いたが、女の子を腕に抱いた状態でこの発言はどうだろう。巫女子ちゃんは顔を逸らして「あ、うん」とか言って、鍵を差  
し出してきた。真っ赤になった顔を隠そうとしているんだろうけど、耳まで真っ赤なのでバレバレだった。  
 巫女子ちゃんから鍵を受け取り、再び巫女子ちゃんを背負う。  
 
「失礼します」  
「お上がり下さーい」  
 巫女子ちゃんが楽しそうに言う。ようやく頭が覚醒してきてテンションがニュートラルに戻ってきたのだろうか。寝起きに元気がないとこ  
ろをみると、意外と低血圧なのかもしれなかった。  
「あはっ、いっくんの背中って結構乗り心地いいよねっ」  
「ぼくの背中は乗り物じゃないぞ……巫女子ちゃん、靴は?」  
「ああ、うん、脱ぐ脱ぐっ」  
 靴がぽてぽてと落ちる。ぼくは両手が塞がっているので直しようがないので、転がった靴を放置して家に上がる。  
「いっくんが家に来るのは二回目だねっ」  
「そうだね……まあ予定にはなかったんだけど」  
「うんっ。巫女子ちゃんも、まさかいっくんが家まで背負って送ってくれるなんて思ってもなかったよっ。≪またもテレビでナウシカ放送、  
但し日本昔ばなしで≫みたいなっ!」  
「…………。ところで巫女子ちゃん、ベッドは?」  
「ん、そっちだよっ」  
 巫女子ちゃんの微妙な比喩を聞き流しつつ、巫女子ちゃんの指差したドアをあける。しかし、ベッドルームまであるのか。一人暮らしの大  
学生にしては余りに豪奢に過ぎる気がする。  
 ぼくはベッド(これもぼくが大の字になれる程広い)の前でくるりと背中を向けてしゃがむ。  
「お客さん、終点ですよ」  
「あ、はいっ、ありがとうございましたっ!」  
 ベッドに腰掛けながら巫女子ちゃん、何故か敬礼付きで言う。なにか色んなキャラが混ざってしまっているらしい。  
 ぼくは立ち上がり、軽く息をついて伸びをして言った。  
 
「それじゃあ、ぼくはこれで」  
「えっ、もう行っちゃうのっ?」  
 信じられない、という表情でぼくを見る巫女子ちゃん。一体ぼくに何を期待してたんだろうか。  
「うん、もう遅いからね。そろそろ帰らなきゃ」  
「でもでもっ。一人暮らしの大学生がそんなこと気にしなくてもいいんじゃないかなっ」  
「うーん、でもなあ……」  
「それにほらっ、送ってくれたお礼もしたいしっ」  
 すべての発言に促音付きの巫女子ちゃん。その表情は今にも泣き出さんばかりに悲壮だ。  
「………………」  
「お願いっ、巫女子ちゃんのためにもっ!」  
「……それじゃ、お茶だけでも貰おうかな」  
「うんっ」  
 ぱあっ、と顔を明るくして、小走りで部屋を出て行く巫女子ちゃん。  
 うん?小走り?巫女子ちゃん、もう歩いても大丈夫なのだろうか。やけに回復が早いな、ひょっとしてさっきは嘘をついていたんだろうか。 
そう言えば前も寝たふりをした事があった気がするけど。巫女子ちゃん、よっぽどものぐさなのか。  
 ……もしくは。  
「………………」  
 与えるか、奪うか。  
 一度決めた事を思い悩むのは、ぼくとしては中々珍しいことだった。  
 
 二分くらいして、巫女子ちゃんが盆に二人分の麦茶をくんで持ってきた。  
「あれっ、いっくんずっと立ってたの?」  
「あ、うん。勝手に座るのもあれかなって」  
「そんな、座ってゆっくりしてってよっ」  
 そう言いながら盆をベッドの脇の台に置く。  
「ほらほらっ」  
「…………」  
 急きたてられてぼくは巫女子ちゃんの隣に腰を下ろす。実は若い女の子のベッドに座るのに躊躇してたなんて口が裂けても言えない。  
 ぼくの隣に巫女子ちゃんが腰掛けて、麦茶の入ったコップをはい、と渡してくれた。氷が入っていかにもおいしそうなそれを、ぼくは一気  
にあおるように飲み干した。  
「……いっくん、今日はありがと」  
「ん」  
 巫女子ちゃんの声のトーンが急に下がる。なんだろう。ぼくはコップを置いて巫女子ちゃんを見る。  
「今日は楽しかったよ。いっくんはどうだったかわからないけど、すっごく、ホントに楽しかった」  
「…………うん」  
「一緒に歩いたお店も、話した言葉も、食べた食事も、全部」  
「…………うん」  
「生きてて良かった、って思えるくらい幸せだった」  
「…………」  
 少し重い沈黙が流れる。智恵ちゃんが命を落とした、その上でのこの発言は、少なくない意味と感情がこもっているように感じた。  
「あたし、智恵ちゃんが殺されてから、ずっと思ってたの。あんなにいい子でも、あんなに急に殺されて、終わっちゃうこと。ぷつって、切  
れちゃうっていうか、途切れるっていうか」  
「…………」  
 何故か、自嘲気味に話す巫女子ちゃん。  
 その顔は、  
 歓喜とか、  
 嫌悪とか、  
 諦念とか、  
 安心とか、  
 色んな感情が、ない交ぜになったような表情だった。  
 
「智恵ちゃんには、心残りとか、あったのかなあ」  
「…………」  
「死んだら、死んじゃったら、もうおしまいなんだよ?どんなに会いたい人がいても、やりたいことがあっても、望むことがあっても、」  
 巫女子ちゃんの言葉が、途切れる。  
 突然のような偶然のような必然で、人は死ぬ。  
 それは殺人鬼の気まぐれだったり、何かの手違いだったり、怨恨の怨念だったり。  
 それは一体どんな最悪か害毒か罪目か災厄か──あるいは、快楽か。  
 ぼくは思い出す。  
 自分は既に致命傷を負っていると言った智恵ちゃん。  
 もし生まれ変われるなら、巫女子ちゃんのように、天真爛漫になりたいと言った智恵ちゃん。  
 彼女は、死を目前に、何を思ったのだろうか。  
 生き詰まっていた人生からの開放か。  
「……あたしは。あたしはやだ。今死ぬのは嫌」  
 下を向いたまま巫女子ちゃんは言う。  
「死ぬことは恐くないけど、思いを残すことが恐いよ。私には、」  
 深い決意の込められた、潤んだ声。  
 巫女子ちゃんの小さな体に詰まった万感の想いが、その言葉にはこもっていた。  
 
「私には、まだ──心残りが、あるから」  
 
 きっぱりと、  
 切れ切れに、自分に確認するように、言う。  
「だからあたしは、やっておきたいって思ったことは、今のうちに早く済ませたいなって、思う」  
「…………」  
「ねえ、いっくん?」  
 巫女子ちゃんが下を向いたままぼくによりかかる。ぼくは視線を返さない。  
「お願いだから、私を、抱いて下さい」  
 
 選択を迫られていた。  
 与えるか、奪うか。  
 圧倒的に選ばないことを選んできたぼくに、突きつけられた二律背反の選択肢。  
 ……いや。ぼくはもう既に選択し、それに順ずる行動を採った。  
 だとすれば、  
 今のこの状況は、一体なんだというのか。  
「…………」  
 ぼくの横には巫女子ちゃんがいる。  
 声を震わせて、  
 肩を震わせて、  
 魂を震わせて、  
 ぼくの横で震えている。  
 この庇護すべき存在を救えなかった──否、圧倒的に救わなかったぼくが、果たしてこれ以上彼女に対して出来ることは。  
「巫女子ちゃん」  
 ビクリと、巫女子ちゃんの肩が震える。  
 首を竦めて、体に力を入れて。まるで防御姿勢だ。巫女子ちゃんは、何から身を守ろうというのか。  
 ……そんなものは決まっている。  
 
 ぼくは巫女子ちゃんを抱き締めた。  
 
「?! …………?!」  
 それに何よりも驚いたのは巫女子ちゃんだった。  
「えっ、えっ!」  
 完全に混乱している。ぼくはそのまま巫女子ちゃんを引き寄せた。  
「うきゃっ!」  
 いい感じの悲鳴をあげて、巫女子ちゃんは完全にぼくに体を預ける格好になる。ぼくはさらに巫女子ちゃんを抱き締める。  
「えっ、ちょっ、えっ、いっくんっ……?!」  
「ん、何?」  
「えっ、あっ、いや、そのっ」  
「?」  
 体を放して見つめあう。巫女子ちゃんは口をぱくぱくさせて、言葉が出てこない。  
「だからっ!変だよっ!いっくんがまさかいっくんがぁっ!」  
 巫女子ちゃん、最早半泣きだった。  
 ……あれ。ぼく、何か間違えたっけ。  
「ちょっと待ってよ、巫女子ちゃんから言ってきたんだろ?ぼくが責められる云われはないよ」  
「違うのっ」  
 巫女子ちゃんがぼくに腕をまわして抱きついてきた。  
「いっくんが……、……いいって言ってくれるなんて、全然思ってなくてっ」  
「……うん」  
「絶対、無視して帰ると思っててっ」  
「…………」  
「私っ、そんなっ、夢みたいでっ……」  
「…………うん」  
 あとはもう言葉にならなかった。  
 ぼくは泣きじゃくる巫女子ちゃんを抱き締めながら、背中をぽんぽんと叩いた。  
 
「さて、そろそろ20分は経つわけですが」  
「う」  
 時計を見ながらぼくは呟く。巫女子ちゃんがぎくりと反応する。  
「泊まるつもりはないから、するなら早くしようよ」  
「うー……」  
 小動物のような唸り声を上げる巫女子ちゃん。  
 ……威嚇?  
「どうしたの巫女子ちゃん?」  
「えっと、えっとねっ……」  
「まさか絶対無視して帰られるかと思ってたから全然心の準備してなかったとか?」  
「どっ、どうしてそれをっ!いっくんすごいっ!探偵みたいっ!≪流行最先端の女性芸能人、但し今年の流行はインフルエンザ≫みたいなっ  
!」  
「…………」  
 素敵な比喩だ。ぼくは心の中でガッツポーズを決めた。  
 やっと平静を取り戻したらしい巫女子ちゃんだったが、それでも事態は展開しなかった。  
「それもこれも、巫女子ちゃんが中途半端な告白をするからですね」  
「痛いっ!それは意地悪な発言だよ、いっくんっ」  
 大袈裟に胸を抑えて痛がる巫女子ちゃん。二人の体が離れる。  
「ということはようやく視線が合うわけで」  
「えっ、あっ」  
 慌てる巫女子ちゃんをじとーっと見つめる。巫女子ちゃんは赤くなり、次いで青くなり、そして視線を逸らした。  
 なおもぼくは視線を突き刺す。  
 じー。  
「…………」  
 じーーー。  
「…………ううう」  
 じーーーーーーーー。  
「う、ううっ、うきゃあっ!」  
 
 視線のいじめに耐えかねたのか、巫女子ちゃんは奇声を上げて布団を頭から被った。  
「…………」  
「ひ、ひどいよいっくんっ!なんでそんないじめるのっ!もう帰ってよっ!あっ、駄目っ、嘘、嘘だから帰っちゃ嫌っ!」  
 どこかで聞いたような巫女子ちゃんの悲鳴。巫女子ちゃん、普段はあんなにあっけらかんとしてるのに、こんなに恐がりだったのか。  
 ……ちょっと面白い。  
「巫女子ちゃん」  
 布団の山がビクリと動く。ぼくはそっと布団の裾をめくり、中を覗く。巫女子ちゃんが涙目でこっちを見ている。ぼくはそのまま布団の中  
へ侵入する。  
「あ、あ……」  
 震えながらぼくを見る巫女子ちゃん。拒否したいが、誘った手前そうすることもできず、どうすればいいかわからないのだろう。  
 自分をリードすることすら出来ていないぼくが、他人をリードなんてできるのだろうか。布団に覆われた暗闇の中、ぼくは疑念のままに巫  
女子ちゃんへと口付けた。  
 
 一応目を閉じるのがマナーだろうと思い目を閉じたが、巫女子ちゃんの意識は既に大気圏まで飛んでいそうな勢いだったのでどっちにして  
も変わらなかったと思う。数秒か数十秒か、決して長くはない(・・筈。正直ぼくも経験が疎い)キスを交わして顔を離す。  
「…………」  
 見ると、巫女子ちゃんの意識はやはり宇宙へ行っているようだった。  
「……えい」  
 だからこっそり胸にたっちしても気付かれないかと思ったのだが、それは間違いだった。  
 巫女子ちゃんの目が自分の胸にいく。  
 そしてぼくの顔へ。  
 見る見る瞳孔が開くのが確認できた。息を吸うために口を開き、  
「んっ……!」  
 そこでぼくは巫女子ちゃんを押し倒してキスをして巫女子ちゃんは反射的に抵抗したけれどぼくは巫女子ちゃんの腕を押さえつけてキスを続けた。  
「ん…………んむぅっ!」  
 ぼくが舌を差し入れると、半ばパニック状態になった巫女子ちゃんは目を見開いて涙を流したが、ぼくは構わず巫女子ちゃんの口内を蹂躙  
した。少しアルコールっぽい味がした  
「んっ、んんっ……」  
 口を塞がれた巫女子ちゃんの荒い息がぼくの顔にかかる。目を開くと、巫女子ちゃんと目が合った。巫女子ちゃんは真っ赤になって目を閉  
じた。抵抗がなくなったので、ぼくはそろそろと胸に手を伸ばした。サロペットパンツの肩紐をずらして上半身を脱がし、薄い生  
地のタンクトップ越しににそっと指を這わせる。  
 
「ん……」  
 巫女子ちゃんの体が緊張する。ぼくは対した刺激を与えないよう、焦らすように胸の上をつつ、となぞる。  
 落ち着いてきたようなので、ようやくぼくは口付けを離す。  
「あ……」  
 名残惜しそうな顔。ぼくは今度は首に口付けて、Tシャツの下に手を差し込む。  
「ん………っ」  
 ピクリと反応する巫女子ちゃん。行為へのあの躊躇いようを見ると、それどころか男性に胸を触られることすら生まれて初めてなのかもし  
れない。巫女子ちゃんは意外と純情なのか奥手なのか。  
 ぼくはなんとなく思いを馳せながら巫女子ちゃんの上着を脱がせる。ついでにオーバーオールも脱がせてしまうことにした。これで巫女子  
ちゃんの着ている衣服はショーツだけになった。ついでにぼくも脱いだ。うん、真っ赤になった巫女子ちゃんもなかなかかわいい。  
「真っ赤になった巫女子ちゃんもかわいいよ」  
 言ってみた。  
「…………」  
 そっぽを向かれた。  
 ……違ったかな。  
 
 巫女子ちゃんは体型の割にはなかなか大きめの胸だった。何カップくらいだろう。  
「巫女子ちゃん、胸大きいね」  
 言ってみた。  
「…………」  
「何カップくらい?」  
 訊いてみた。  
「…………Cです」  
 やっと答えてくれた。  
 ていうかぼく、いつの間にかかなり愉しんでるし。  
「Cカップかあ。へぇ、なるほど」  
「やだっ、あんまり見ないでよっ」  
「隠すことないよ、巫女子ちゃん。綺麗なんだからもっと見せてよ」  
「うぅ……」  
 巫女子ちゃんは目端に水滴を溜めながらも、胸を隠す腕をどかしてくれた。ぼくはその頂に口付けた。  
「ひゃんっ」  
「感度もいいんだ」  
「や、やだっ……あん!」  
 一方を舌で舐めながら、一方を手で満遍なく揉みほぐす。指の間で蕾を刺激してあげると、巫女子ちゃんは手をぼくの頭に置いて可愛い声  
で鳴いた。  
 空いた手が手持ち無沙汰なので、ぼくはいよいよ下へと手を伸ばす。内腿をつつーっとなぞると、巫女子ちゃんの手に力がこもった。  
「あっ、ちょっとっ、いっ……ああっ!」  
 下着の上からそっとそこをなぞる。少し湿っていた。  
「巫女子ちゃん、ちょっと濡れてる?」  
「やあっ!言わないでよっ!いっくんのばかっ!」  
 巫女子ちゃん、手で顔を覆って泣きだした。  
 ……ぼくの嗜虐心に火がつく。  
 ぼくは胸をいじるのをやめて体をずらす。巫女子ちゃんは足を閉じて必死に抵抗するが、ぼくは力尽くで陣取った。  
「巫女子ちゃん、初めてなんでしょ?下着こんなにしちゃって、えっちすぎじゃない?」  
「そんなっ、そんなことっ」  
「違うって言うの?でもほら、ちょっと触ったら」  
 ぼくは下着の布地を脱がせてその部分を強く刺激する。  
「やあんっ!」  
 
「ほら、えっちじゃん。巫女子ちゃん、自分がえっちな子だって知らなかったの?」  
「違、そんなっ、私っ……」  
「わかんないの?ほら」  
 今度は陰核を指で挟んで弄んだ。  
「ふああっっ?! あああああっ!!」  
 体を反らせて大きく鳴いて、そのままぐったりしてしまう。その姿は物凄く扇情的だったが、ぼくは込み上げる感情をぐっと堪える。  
「イっちゃったの?」  
「はぁ……はぁ……」  
「びっくりしたなぁ。巫女子ちゃんがそんなにえっちだったとは知らなかったよ」  
「あ……」  
 びくりと体を強張らせる巫女子ちゃん。何かとてつもない悪事がばれてしまった子供のような表情。  
「ほら見てよ。もうびしょびしょになってるよ」  
「いや……」  
 そう言って指先を巫女子ちゃんの目の前に晒す。巫女子ちゃんは愕然とした表情で、目をそむけた。  
「気持ちいいんでしょ?気持ちいいの、好きなんでしょ?巫女子ちゃん」  
「う、ふぇっ、……ううぅっ」  
 遂に巫女子ちゃんがマジ泣きする。  
「ふぇっ……ぇっ、ご、ごめんなさ、わ、私っ、あやま、謝るからっ、謝るからっ」  
 泣きじゃくりながら弁解する。  
「だか、だからっ、嫌いに、ならないでっ、私、あやまるからあっ」  
 あとはもう言葉にならなかった。ぼくはそれを見て、まあそろそろ勘弁してやろうかな、と考える。  
「……わかったよ」  
「っ、ほんと……?ほんとに……?」  
「うん。巫女子ちゃん、いじわるしてごめんね」  
「……、うん、いいの。だから嫌いにならないでね……?」  
「わかったよ、巫女子ちゃん」  
 そう言って軽く口付けて、再び陰部を刺激する。イった後なので、巫女子ちゃんはさっき以上に敏感に反応した。  
「ふぁっ、ああん……」  
 
 ぼくはいよいよ自分のモノを取り出し、巫女子ちゃんにあてがう。  
「それじゃいくよ」  
「ぅ、うん……。うんっ」  
 ずずっ!  
 一気に突き入れる。巫女子ちゃんは案の定処女だったようで、何かを突き破る感触があった。  
「痛い?」  
「ううん……ちょっと痛いけど、思ってたほどじゃなかったかなっ」  
 ラッキーだねっ、と言って巫女子ちゃんが微笑む。その邪気のない微笑みを見て、様々な思いがぼくの脳裏をよぎる。  
「…………」  
「……いっくん、どうしたのかなっ?」  
「ん、ああ、いや別に」  
「そ……っ、あぁんっ」  
 巫女子ちゃんがなおも何か言おうとしたので、ぼくは腰を突いて黙らせた。  
「巫女子ちゃん、気持ちいい?」  
「ああっ……うんっ……!気持ちっ、……いいよぉっ」  
「こことか?」  
 そう言ってぼくは陰核を強めに摘む。  
「ふああっ!」  
 膣内がきゅうっと締まる。一瞬そのまま果てそうになり、慌てて推し留める。  
 息も絶え絶えになっている巫女子ちゃんを犯して侵して冒して犯した。  
「あっ、はぁっ」  
「巫女子ちゃん、そろそろいこうか」  
「はあっ、うんっ、いっくんっ、いっくんいっくんいっくんいっくんっ!」  
「う…………くっ!」  
「ふああぁあぁああっ!!」  
 どくん!  
 巫女子ちゃんの中で、ぼくは果てた。  
 
 次の日。  
 ぼくへ巫女子ちゃんにベスパを返すために巫女子ちゃんのマンションに向かっていた。  
 ぼくのアパートを出て10分程度で到着。歩くとそれなりにかかる道も、原付だとあっという間だった。  
 自分も原付を買おうかとちょっと真剣に考えたりしながら巫女子ちゃんの部屋に向かう。  
 しかし、部屋の前まで来て、昨日のことがフラッシュバックのように脳裏に蘇り、ぼくは固まってしまった。一体どんな顔をして会えばい  
いのだろうか。  
 10分ほど悩んだが、こんなものどんなにぼくが悩んだところでどうなるかはわかったものではないと考え、諦めてチャイムを押した。  
 
 → Bad End  
 → Happy End  

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