「う…」
フィルシスが目覚めた時、気味の悪い部屋が目に入った。
天井から、グロテスクで太く長い植物が、何十本も垂れ下がっている。
自分の服は全て脱がされて、仰向けにされ、その植物で手足を固定され、吊されていた。
側には誰か立っていた。
「気がついたのかい?
君が噂に名高い聖騎士…想像と全然違うかったからびっくりしたよ」
「…ここは…?お前は何者だ…!」
「イグデュール…四天王の幻術師、と言った方がピンと来るかい?」
そう名乗った男は、金で癖の無い短髪で、緑色の目をしていた。
見た目は、自分と同じぐらいに見える。
背丈も体格もあまり変わらなさそうだった。
だが、鋭く細い目つきと、唇を歪ませた微笑は、心の底に何か潜んでいるような、そんな印象だった。
もっとも暗黒神側の人間の見た目の年齢なんてあてにはならないけど。
「そんなに怖い幻覚を見た?随分ひどくうなされていたようだけど」
「幻…?」
この人が、四天王の幻術師…
「そうだよ、幻。
さっき見せたのは、”その人が最も恐ろしいと思うこと”の幻覚だよ」
幻術は暗黒神官も使ってきた。
でも、それは分身を見せたり、幻の炎や氷柱を見せるものだった。
見せる相手の心の奥まで探られる幻術…そんな幻術もあったんだ…
暗黒神官は、幻術も召喚術も暗黒魔術も万遍無く使えるのだろうけど、
個々でみると精度は、四天王の方が高いようだ。
「襲い来る猛獣だったり、大事な人が死ぬ光景だったり、人それぞれだけど」
ああ…だから……
みんないなくなって、独りになることが怖いとずっと思っていた…
でも、一番最後に見た幻は…
「ねえ、聖騎士君。君が視た”最も恐ろしいと思うこと”は、幻術で終わるのかな?」
そう…
どの幻も、十分有り得るような気がする…
「それにしてもおもしろいことをするな、あいつは」
「……!」
急に耳に触れられて、フィルシスは我に返った。
「あいつらしいよ、人間と獣を合体させるなんて。
こういう体でよく通り抜けられたね、あの森を」
「…私を…どうする気だ…」
「最初はすぐに君を殺そうと思ってたんだよ。君がここで死ねば暗黒神様は甦る。
君は可愛いよ、とても聖騎士とは思えない。
ああ、やっとわかったよ。
なんであいつがあんなに必死だったか…さぞいたぶりがいがあるんだろうね。
でも、あいつが君に飽きて殺すまでなんて待てない…」
びくっと、フィルシスは体を強張らせた。
飽きて殺す…
シャーレンは、自分の知らない所でそう思っているのだろうか?
やっぱりいつか自分を殺して、暗黒神を蘇らせて、暗黒神官の代わりにこの世界を支配しようと思っているんだろうか?
「あいつが気に入ってる君を、僕が先に壊したら、あいつはどんな顔をするかな」
イグデュールの手が額の上に置かれるのを感じた。
「………!」
「もう一度、幻術の世界に連れて行ってあげる。今度は何にしようか…
…そうだね、君が”見たくないもの”なんて、面白そうだね…
今度は何が視えるかな…」
視界が白くぼやけていく。
これから幻術を見せられるとわかっているのに、いつの間にか、現実は消えていく。
夢を見ている時、それが夢だとわからないように。
街の中に立っていた。
青く晴れた空。
―どうしてこんな所に立っていたんだっけ?
白い石畳で舗装された道の真ん中を歩いていた。
―あらあら、お坊っちゃま。綺麗なお花を持って。お母様にあげるのかい?
街のおばさんが笑いかけてくれる。
―そうだ、家に帰ろうと思っていたんだ。何でそんなことを忘れていたんだろう、早く帰ろう…
家に帰って、ドアを開ける。
―ただいま
笑顔で迎えてくれるお母様とお父様。
それが、次の瞬間、恐怖に歪んだ。
突然、街中に悲鳴が溢れた。
黒い獣が街を襲っている。
暗黒神の世界の手下達。
家が壊されていく、街の人が食われていく。
あちこちに飛び散る見知った人達の肉片。
白い街並みが、獣の色と、血の色で、赤黒く染まっていく。
―フィルシス、どうかあなただけでも生き延びて……!
身を呈して僕を庇ってくれた両親。
獣達に引き裂かれて、肉塊になって、瓦礫の海に沈んでいく。
ただ、泣き叫ぶしかできなかった。
逃げることしかできなかった。
公爵家の第一子…
そんな肩書きがあるだけで、何一つ守れやしない。
「泣いているの?」
イグデュールの部屋の風景に戻っていた。
気づいたら、頬を涙が伝っていた。
「……優しいご両親だね」
イグデュールの暗い声が落ちてくる。
歪んだ形相をしていた。
「…僕も…僕も、欲しかった、そんな”家庭”が!」
何かを思い出すように、ヒステリックな声が続く。
「僕の親は、僕を暗黒神様への生贄のために、殺そうとしたんだよ…
非道いでしょう…あまりにも、むかついたから、僕が逆に彼らを生贄に殺してやったよ……」
この人には…
誰も手を差し伸べてくれる人がいなかったんだ…
「僕はそんなのはもうごめんだ…
……だから、あっち世界…君の世界に行きたい…君の世界が欲しい……!」
手に入れられなかった時間に、ずっと縛られたままの人。
同情はするけれど、だからと言って、故郷を侵略されるわけにはいかない。
「違う…暗黒神官は、あの平和を、君が望んでいるような優しい世界を壊そうとしていた…
君がそのやり方を繰り返すなら、同じように、壊れてしまう」
「黙れ!」
「ぐ…ぅ……!」
今度は首に手をかけられる。
首輪にイグデュールの手が当たる。
「僕はね、君のご主人様が大っ嫌いなんだよ」
果てしなく暗い瞳。
「やっと神が復活するはずだったのに…
あいつは僕も、暗黒神官様も裏切った…
何故…
優秀な両親もいたし…向こうの世界にも行かせてもらって…
これ以上何を望むというのか…
暗黒神様は僕が蘇らせる!あいつなんかにその権利は渡さない!」
激昂して叫んだ後、イグデュールは我に返って、呼吸を整えた。
「はは…っそろそろあいつらをこらしめに行かなくちゃ」
イグデュールの視線は、首にはめられた奴隷の印から、性器の方へ移った。
指でそっと触れられる。
「ぁうっ…」
不意に襲う快感に、甘い声が洩れた。
魔法がかかっていて、シャーレンにしかはずせない拘束具を、羨ましそうに眺めて。
「可愛い声で鳴くんだね」
そう言うと、彼は触手を動かして、フィルシスを、足を大きく開き尻をあげた格好にさせる。
秘所が顕になる。
「な…やめ…」
「待っている間、退屈だろうから、遊び相手を置いていってあげるよ」
歪に笑うと、イグデュールは天井から垂れ下がっている触手を一本手にとった。
植物の先端からは液体がしたたっている。
ぬらついたそれを空気に反応してひくついたフィルシスの後孔に入れる。
「やっ…!」
くちゅくちゅと音をたてながら、奥まで差し込まれていく。
「あぅ…あぁっ…」
触手の表面を覆っていた液体が、後孔内の粘膜にすれて、
痒みと快感を生み出していく。
フィルシスの右手をつかむと、胸の突起をつまめるような位置において触手を巻きつけて固定する。
「はっ…ぁあん…」
すぐに自分の胸を弄くりだす。
尻に入れられた植物の液体がもたらす催淫作用のせいで、快楽に支配されていた。
フィルシスの手でいじらせてない方の突起には、蠢く触手にいじらせる。
左手の指は膨らんだ性器の中に入れさせて、また別の触手で固定する。
自慰をさせるように。
「やだ…ぁ…こんな…」
それでも自分の手の動きをとめることができなかった。
「はぁ…はぁ…」
「ここも、もっといいのをあげようね」
言いながら、尻から触手を抜くと、ひくつくそこに今度は違う触手を突っ込んだ。
その先端から、何個か球状のものがだされた。
「ひっ…ぃ……!」
いくつもの球が後孔の中で暴れる。一つ一つが内襞をかき回す。
「今のは種子だよ。少しずつ膨らんでいく。君はきっと気に入るよ」
「ぁっ…やあっ…!」
喘ぐ口にも触手を突っ込んで、満足そうにほほえむ。
他にも、口のようなものを持った何本もの触手に、フィルシスの肌を吸わせた。
その触手が分泌する粘液に、白い体は濡れた。
「ん…んぁ…」
乳首や睾丸を強く弄くって刺激を与えていく触手に、フィルシスはくぐもった喘ぎを漏らして呻いた。
「んっ…んぅっ…」
口の中を満たされて無意識にフィルシスが植物を舐めると、甘い液がでてきて乾いた喉を潤した。
それにも催淫作用があるとは知らずに、何度も舐めては飲み込む。赤い瞳が焦点を失う。
イグデュールは何度も上下する喉をおもしろがりながら確認した。
「また後で来る。その時はその性器の拘束具の外し方を研究するよ。シャーレンの魔法がかかっていて、僕にははずせないからね」
そう言って性器をひとなでして、びくんと仰け反った淫乱な聖騎士を眺めると、部屋を後にした。
「んぁ…んんっ…」
快感に悶えるフィルシスは気づかなかったが、イグデュールが部屋を出た後、すぐに部屋にシャーレンが入ってきた。
自分の手で自分の性器を愛撫し、数本の触手に乳首や内股を愛撫している。
腰を振って触手を後孔にすりつけている体を面白そうにじっと眺める。
「そんなに気持ちいいのですか?フィルシス様」
そう言いながら、飼い犬の反り返った性器に触れる。
「ん…んぅ…っ!?」
本当に驚いたフィルシスはくぐもった悲鳴をあげる。
「何をそんなに驚いているのです?飼い主は自分のペットの居場所ぐらいわかりますよ」
シャーレンはまだ手や腰の動きを止められないでいる、自分の獣の淫乱な姿をじっと見つめた。
「あなたはここも好きでしたっけ?」
今度は足の裏の肉球に触れる。
「…んッ!」
体が大きく揺れた。
催淫作用のせいで、体のどこに触れられても快感が体を走る。
シャーレンはしばらくの間、触手に弄くられて粘液にまみれた、飼い犬の白い体の至る所を愛撫した。
「んぅ…ッ!んうう!」
足の裏の肉球から、内股の太ももまで順に、強く触れたかと思うと、肌に触れるか触れないかぐらいの動きを交互にして、まさぐっていく。
シャーレンが触れる指と、乳首に吸い付いたり離れたりする触手に、フィルシスは悶えて涎をだらだらと流した。
単調ではない動きが、もどかしすぎる疼きをもたらした。
「………ッ!」
足の付け根までたどり着くと、すでに吸い付いている触手と共に、股間の間の袋を揉んだ。
「全身が性器になったみたいですね」
どこを触ってもくぐもった喘ぎを発し、びくんと背を反らす体を見て意地悪く言う。
「太股も、その間も、お尻も、胸も、全部物欲しそうにひくひくさせて。こんな事をされているのに」
股間の間からは、さらにへそから上へ、胸の飾りまで、緩急をつけて指を滑らした。
固く尖った胸の先を、強くつまんでひっぱった後、優しく押さえる。
そうかと思えば、爪の先で軽くつつくだけになる。
どう刺激すれば、体はどんな反応を見せるか、試すように。
そんな風に焦らして執拗になぶっている間中、身動きの取れない体が、シャーレンの指と触手が与える苦しさと快感で波打っていた。
「んんうーッ!」
快感に限界まで追い詰められて、首を振り、赤い瞳を潤ませる。
苦しい程の羞恥で涙が頬を伝った。それでも快感を求める腰の動きが止められない。
「あなたは誰でも、いえ、こんなグロテスクな植物にさえも、勃つんですね。
ここでずっと一人でよがらせといてあげましょうか?」
ずっと一人…それを聞いて、フィルシスはあの幻覚を思い出して、一瞬怯えた表情を見せた。
シャーレンは何か怯えたのに気づき、冗談だと、安心させてやろうと思ったが、もう少し愉しむことにした。
体中をまさぐった後は、飼い犬の体の至る所につけられて、ずっと吸い付いていた触手をはずしはじめた。
尻の穴の中の触手を取ろうとした時、後孔が締め付けて来たのを感じて意地悪く微笑んだ。
「これが好きなんですか?こんな気持ちの悪いものが、そんなに気持ちいい?」
淫乱な体だと認識させるのが、自分を悦ばせる。
「ん…っ!」
目に涙をためて、違うと言うように首を振った。
触手はあらかたはずしたが、足は開かせたままだし、尻の中の種子もそのままだった。
「尻の中に入っているのは自分でだしなさい」
「…頼む…取って…」
拒んだフィルシスに、意地悪く微笑んで答える。
「嫌なら別にいいんですよ。芽がでてきて寄生されてもいいならね。急いでいるのです。
早くしないと私一人で行きますよ。しようと思えば私一人でも勝てますし」
そう言われて、またあの幻覚を思い出したフィルシスは、仕方なく肛門に力を入れた。
「う…んう…ッ!」
種子が後孔の中で動くたび、快感が襲う。
ごろごろと不規則に内襞を擦って動くのが感じられる。
堅い種子の動きが、弱点をすった時、フィルシスは一際大きく背を反らせて喘いだ。
「あっ…ふ……んあっ……」
「ふふ、大きな種が一つ、あなたのお尻の入り口から見え始めましたよ」
そう言われると、恥ずかしさにフィルシスは一瞬動きを止めた。
だが、シャーレンが足を一歩後ろに踏み出そうとするのを見ると、慌てて尻の動きを再開した。
「ん……ッや……!」
腰を振り、白い尾を振って、何度も力んで、くちゅくちゅと卑猥な音をたてながら、一粒一粒、肛門に入れられた植物の種を出していく。
それはさながら産卵のようだった。
何粒も入れられた固い種子が、中で転がって、前立腺を擦っていく。
「や…あぁ…!あ…っ」
後孔に力がこもって、内部で種子が動く度、汗ばんだ胸が上下した。
半開きの口からは、肛門の収縮にあわせて息が出る。
「ふふ、また気持ちよさそうにして。本当に恥ずかしい体ですね」
シャーレンの深い青の瞳がじっと見ていた。
恥ずかしさに涙が止まらない。
「…っはぁ…はぁっ!」
くちゅと、また音をたてて、最後の一粒を出し終えた。
粘液に濡れ光ったグロテスクな球体が床に何粒も落ちていた。
「くうっ…!」
種子を出し終えたフィルシスの肛門から、今度は茶色く柔らかな固形物が頭をのぞかせた。
「おやおや、お漏らしですか」
「あ…っいや……見ないで……っ!」
収縮を続ける後孔から、途切れ途切れにぼとぼとと、床に垂れていく。
ずっと肛門に力を入れていたので、一緒に排泄物まで出してしまった。
「あなたはもうこんなに大きいのに、赤ちゃんみたいですね」
面白そうに言うシャーレンの声と、破裂音が響いた。
びしゃりと醜い音をたてて吐き出され、床に落ちた。
「はあ…ぁん…っ!や…!」
敏感になっていた後孔を通る便が与える快感に、喘ぎが漏れた。
いきむ尻と、ぶしゅりと排出される便の感触に悶えながら、フィルシスは羞恥に涙を流して、きゅっと目を閉じた。
「うっ…」
泣いているフィルシスの頭を優しくなでながら、シャーレンは微笑んだ。
「私も仲間に入れて欲しいな」
耳をびくっとさせたフィルシスの頭を、そっと下げる。
下着を下げてそこに跨り、すでに涎まみれのその口に自分の性器を咥えさせた。
「ん…ッ!く…ぅ……」
口の中に流し込まれる迸りを感じて、フィルシスの白い喉が上下に動いた。
「いい子だ」
初めての日に教え込んだ通り、排泄物を飲み干したフィルシスの頭を優しくなでた。
羞恥と屈辱に閉ざしたフィルシスの瞳から、涙が零れる。
「く、ふ……ッ」
だが、嫌悪と苦痛でしかないはずなのに、勃起したままのフィルシスの性器が再びびくびくと震え、新たな先走りがそっと漏れだした。
「こっちも自分でやりなさい。さっきまでそうしてたようにね」
膨らんだ性器の、尿道口と根元を塞ぐ拘束具をゆるめてやる。
フィルシスは羞恥を感じたが、今はそれよりも早く達したかった。
両手で自分の陰茎をしごいてすぐに射精した。
催淫作用がもたらす快感が、聖騎士の理性を失わせていた。
「んあぁぁっ…あッ…!」
しかし一回射精しても性器からその手を放せなかった。もう一度すきはじめる。
「一回じゃ、足りないのですか?」
催淫作用が抜けるまで何度も射精し、最後には放尿までしたフィルシスの姿をシャーレンは面白そうに眺めていた。
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