フィルシスは恐ろしい部屋を出て、暗い階段を上がりきった時、何か声が聞こえた。
呼ぶような声が。
「…!」
「どうかしたんですか?」
フィルシスが突然立ち止まって、狼の耳をぴくつかせたのを見て尋ねた。
「何か聞こえるよ…来いって…」
あれから拗ねて、ずっと黙っていたが、不思議に思って仕方なく聞いた。
「どこから?」
低いけれどはっきりと頭に響く、轟くような声なのに、シャーレンには聞こえていないようだ。
それは前にもあった、思い出したくないことを思い出させた。
「わからないけど…多分向こうの方…」
廊下の端の宿舎の出口を見た。暗がりの向こうの闇の溜まり場。
「まさか…幽霊…?暗黒騎士の墓場があるんですよ、あっちに」
驚きながらも、少し面白そうに、シャーレンが言った。
「嫌だ…!早く戻ろうよ…」
あのおぞましい森を思い出して、その出口とは逆の、部屋に戻ろうとした。
だがそうすると、その声が怒った様に執拗に呼ぶ。
思わず戻る足を止めた。
「どうしたんですか」
怯えたような自分の様子を見て、側に来たシャーレンに柔らかく抱かれた。
「ずっと呼んでる…」
その声が恐ろしすぎて、そっとシャーレンに抱きつき返した。
そうすると、黙って耳をなでられた。
瞬間、胸に安堵が広がる。
「……」
そのまましばらく、甘えるようにしがみついていた。
気味の悪い声はまだ途切れない。
「まだ聞こえるんですか」
優しくなでる手を止めないまま、聞かれる。
腕の中で小さく頷いた。
「来るまで呼び続けそうですね」
自分の耳をなでたまま、シャーレンがそっとそう言った。
その不気味な声はもう聞きたくなかった。
恐ろしいけど、行くしかない、呼び続けられるのも恐ろしかった。
「…一緒に来てくれる?」
抱きついたまま、小さな声で、そっと聞いた。
いつもシャーレンなんかと思っても、一人では行きたくなかった…。
「もちろんですよ」
優しく答えられた。昔のように。
きっとそう答えてくれるとわかっていた。少し卑怯かもしれない。
さっきまで、もう口なんか聞かないと思っていても、結局シャーレンに頼ることになるのだ…。

廊下を進んでいくと、宿舎の裏側に出た。
空に赤い月が昇る中、墓石が静かに眠っていた。
切れ切れの雲の隙間からあふれる月明かりに、幾本もの黒い十字架が照らし出される。
その真ん中で、一つの影が佇んでいた。
そこだけ何か異質だった。
黒い騎士の霊がこっちを見ているのだ。奈落の底のような目で。
「暗黒騎士の……霊が…!」
思わずシャーレンにしがみついた。
「騎士の霊?」
シャーレンは、すがりついてきて強張った体を落ち着かせるように背中をなでた。
自分には何も見えなかった。ただ、異質な感じがするだけだ。
イグデュールの森で、彼だけ霊が見えたり、触れられたりしたように、やはり人間の霊でも同じようだ。
「生前の姿を残したままの霊はほとんどいないそうです。本当に主君に忠実な騎士だったのでしょうね。
それとも余程の恨みがあったのかな。例えば聖騎士に」
フィルシスをなでたまま、意地悪くそう言った。
「嫌だ…こっちに来るよ…やっぱり戻ろうよ…」
まだシャーレンにすがりついたまま、弱々しくつぶやく。
だが、霊は次の瞬間すぐ目の前に来ていた。
『やはり私が見えるのだな、聖騎士団長』
その暗黒騎士は戦場でも見たことがない。
今確かに聖騎士の制服を着ているが、上着は脱いでいるので団長の印はついていない。
「何で…知ってるんだ」
『死んだら色々なことがわかるんだ。残念ながらそれらを生きている者に伝えることはほとんどできないが。』
暗黒騎士の霊は、我を忘れてまだ黒いローブにしがみついているフィルシスをしばらく眺めた。
『お前はその魔術師に飼われているのか。こんなものをつけられて、犬のように。』
嘲笑う霊の冷たい透き通った手が、黒い首輪に触れた。
違うと言い返そうと思ったが、その気味の悪い感触に上手く声が出なかった。
『全く、まさかあのシャーレンが神官様を裏切るなんてな。
どうせもう、シャーレンに教え込まれたのだろう?こんな可愛らしい顔なのだから。
私はお前も知っている先代聖騎士団長に殺されたのだ。無念だった…。
せめてお前に報復してやろう。
さて、仇敵に屈辱を味合わされるのはどんな気分になるかな?』
「やっ…あ…ッ!」
霊の不気味な感触の指が、服を透けて後孔に入ってくる。
「…私だけじゃ足りないんですか?」
シャーレンはフィルシスの淫らな声を聞いて、霊に何をされたか感づいた。
「違…!や…嫌だ…!何とかして…!」
「でも私には見えないんですから、どうしようもありませんね」
頬を赤く染めて、慌てて必死に縋り付いてくるフィルシスに、シャーレンはわざとらしくそう答えた。
「…この前…あの森では…ひぁっ…!」
丁度良い所を擦られて、フィルシスは言葉が続けることができなかった。
「んぅう…」
「何言ってるのかわからないですよ」
シャーレンはもちろんわかったが、面白くなりそうだったので、呪文は唱えてやらずに様子を見た。
「…あぁッ!」
立っていられなくなって、フィルシスは地面に座り込んだ。
下肢がざわつく。
「幽霊でも気持ちいいのですか?」
シャーレンは自分もしゃがみ、フィルシスが地に手をつきそうになったところを膝の上に抱き抱えて、その手をこちらにまわさせた。
フィルシスは支えがほしいのか、ぎゅっとすがりついてきた。
片手を震える背中に回してさすり、もう一方の手で頭をなでてやった。
『随分感度がいいな。お前、相当仕込まれたのだな、淫売め』
霊の肉体のない指が、締め付けてくる内側を広げてかき回す。
その淫らな後孔を霊が冷たい目で嘲笑った。
「あ…ぅ…!」
人間のものとは違う指が肉壁を探って押してくる感触が、いつもと違う感触が、体に暗い悦びを与えた。
そんな気味の悪い感触にまで股間のものは反応した。
前立腺を執拗になぶられて、赤い瞳が潤む。
『早いな。そろそろいいか』
霊の冷たい指の感触が抜け、それとは比べ物にならないほどの、感触が襲った。
「嫌だ…!あ…あぁ…ッ!」
すがりつく手に力が入った。
「挿れられたんですか?」
面白そうに、シャーレンが微笑む。
「んぅ…ッ…はぁ…っ」
返事ができなくても、堪えられずに漏れる甘い喘ぎがその代わりだった。
「そんなに声出したら暗黒騎士達が起きて来ますよ?」
だが、下肢に与えられ続ける強烈な快感に動く力が出ず、口を押さえようとしてもローブにしがみつく手が離せなかった。
しがみついたまま、快感でほとんど何も考えられない頭を反射的に黒いローブの胸に埋めて声を消した。
「今日は積極的なんですね」
埋めてきた頭をなでて、銀の髪をすく。
『今日は?では毎日しているのか。』
「…っ」
恥辱的な嘲りをうけて、嫌がるように無意識のうちに首を振った。
『答えずともこの体を見ていればわかる』
冷酷な声が響く。
「や…ぁ…」
霊がわざと突かずにいても、下肢は誘う様に貪る様に腰をくねらせていた。
「随分と気持ちよさそうですね。本当にあなたは淫乱だ、どんな男でも咥えこむ程に」
シャーレンには霊は見えず、フィルシスが一人で腰を振って喘いでいるようにしか思えない。
淫らなその動きは、まるで自慰をしているようにも見える。
「違…んぁ…!」
シャーレンが股間に手を当てると、すでに膨らんでいた。
強く揉むと、手の中の性器が震え、フィルシスはびくんと背をそらせて顔をあげた。
荒い息をついて蕩けた目で、頬が赤く染まり、口の端から涎が垂れている淫らな可愛い顔。
『いい顔だ』
「や…嫌だぁ…もう…あ…ッ!」
それでも白い尾の動きが、体の悦びを表している。
「何が相手でも、そんなに尻尾を振って可愛いね」
堕ちた体を見て、暗い悦びと同じぐらいの愛しさが心を満たした。
いつか、他の男に抱かれていても、自分に一番感じるようになれば、自分だけを思い出すようになればいい。
「うっ…うぅ…」
二人に焦らされ続けて、同時に言葉でもなぶられて、フィルシスは小さく泣き始めた。
「おやおや。もうだめ?」
膝の上の頭をなでた。
体がきゅっと強張った。
「いかせてほしいですか?」
「あ…ぅ…」
ふきかかる息にも反応してしまう。
快感に焦らされて声がでない。
だらしなく開いたままの口から垂れる涎にまみれた顎をがくがくさせて頷いた。
「じゃあ見せてあげなさい、自分でする所をね」
股間を揉む力がさらに強くなった。
いつもこんな断れるわけない状態の時に無理矢理何かをさせられる。
「や…っ」
シャーレンが服を脱がせ始めると、霊が自慰を見たいという風に、後孔から自身を抜いたのを感じた。
下肢を全て晒し、胸をはだけられて膝の上に乗せられた。
『そんなものまでつけられて、念入りだな』
霊が性器の戒めを見て嘲った。
「やめて…いやだ…!」
後ろから、拘束をゆるめ、足を外側から抱えあげて、限界まで開かせた。
局部を全て、見えない相手に見せるように。
蜜に濡れそそり立つ男根も、空気にさらされて、もの欲しそうにひくひくとしている後孔も、全てさらけ出された。
「いつもしてることでしょう?」
耳をゆるく噛んで、抱えた膝の裏から手をまわして固くなった胸の突起を直に揉んだ。
「あぁ…ッ!」
そうしてやると、耐えられなくなったらしく、左手をびくびく震える前にあて、右手の人差し指を慣らされた尻の入り口にあて始めた。
「…あぅ…はぁ…」
一度触れると、淫らな体は、静止できないようだった。
卑猥な水音をたてて、自分の手を動かす。
先端に触れて体を反らせ、後孔の奥を探って秘所を押しては波打った。
『すごいな。いつもこんなことをしているのか』
「違…っ!」
痴態をさらされて、涙があふれた。
それでも自分の手を止められない。
シャーレンの指使いを思い出した。
くちゅくちゅと体液が絡んで響く水音、先端をくりくりと揉まれる感触、全体を包み込んでしごく手の温もり。
屈辱と快感と罪悪感にせめぎながら。
瞳が焦点を失い始めた。
「はぁ…あ…あぁ…ッ」
快楽に没頭して、声が抑えられない。
後孔から指を出し入れして、内壁をすって与えられる快感に、腰が跳ねた。
口を大きく開けて喘ぐ。
「聞こえますよ?そんなに淫らな声を出して」
「ん…うぅ…ッ!」
わかっていても、快感に手が離せず口を抑える術がなく、涙を流して首をふった。
「ちゃんと教えた通りに返して来るんですよ?」
その様子に満足気な笑みを浮かべて、涎まみれのあごを持ち上げて、こちらを向かせた。
声を洩らしそうになった所に口付けてやる。
「ん…」
舌の付け根まで深くこちらの舌を絡めてやると、言われたとおりに絡め返してきた。
そのまま貪るように口の中を犯す。
頬の内側、歯の裏側…たまってきた二人分の唾液を飲み込ませた。
乳首をなぶる手も止めない。
指で摘んでこねてやると、体がはね上がった。
「ん…んぅ…!」
乱れた聖騎士の様子を、霊が暗い瞳に欲望をたぎらせて眺めていた。
はだけられた白い胸に汗がにじむ。
無理矢理広げられずとも、自ら開くようになった足の間で、獣の尾が揺れた。
どろどろと蜜を流す中心を自分の手で淫らに弄って、三本の指が後孔に食い込んでうごめいているのがよく見える。
『もう1度味わいたくなった』
抱かれる腕の中でびくりと痙攣した。
その理由は霊が見えない者にはわからない。
「ぅ…!」
自分の指を入れたままの後孔に、再び霊が自身を入れた。
押し広げられた内側に、その瞬間に狂いそうなぐらいの快感が襲った。
「ん…んんっ…んぅーッ!」
大きく仰け反って、性感帯を全て同時に刺激されて絶頂を迎えた。
「あ…あ…ッ!」
白い飛沫を出した後も、まだびくびくと震えている。
『そんなに良かったのか?』
暗黒騎士の霊が、魔術師の腕の中に崩れてもなお、まだしばらく痙攣している体を面白そうに見つめていた。
「自分できれいにしなさい」
精液がべとりとまとわりついた左手をつかんで口にやり、自分で舐めとらせた。
疲れて反抗する気力がないのか、素直に舐め始めた。
腹に飛び散った分もすくい上げて、その指を唇にあてると舌を伸ばして従順に舐めとりはじめた。
ぴちゃぴちゃとたてる音を聞いて、霊が上から見下して嘲った。
『先代の聖騎士団長が見ればどう思うだろうな?』
くすりと嘲笑ってそう言われて、瞳から再び涙があふれた。
「何か言われたんですか?」
すすり泣くフィルシスの頭をなでて、服を着せて整えてやった。
『お前、今の団長にもやられたのか?』
「………」
何も答えられなかった。
無理矢理犯されたことや、あの森で屈辱的な言葉を口にしたことや、それでも感じてしまったことを思い出した。
『返事が無いのは肯定とみなされるのだぞ』
鋭くそう言われると、また涙が出てきた。
「さっきから何回泣いてるんですか。泣き虫ですね」
意地悪く言っても、あやすようにフィルシスの頭をなでた。
こんなに泣く姿を見せるのは自分がいる時だけとわかっている。

「もう幽霊はいないんですか?」
なでていた膝の上の頭が、力なく首を横にふった。
「どんな騎士の霊がいるんですか?」
その容姿を説明しようと、霊の姿を眺めていると霊が宣言した。
『私は先代の暗黒騎士団長だ』
余程自分に怨みがあっただろう。
その騎士は、先代の聖騎士団長が倒したと聞いていた。
「先代の暗黒騎士団長と…言ってる…」
「……シザイア様?」
自分をなでるシャーレンの手が止まった。
この騎士の霊はシャーレンを知っている…暗黒神官を裏切ったことも…
本当に、自分も怨まれかねないのに、世界まで捨てて、そこまでして…。
『リュシアンの失踪はハウゼンのせいだと伝えてくれ』
こんな霊の頼みを聞きたくなかったが、急に霊の口調は真剣になった。
「霊が…リュシアンという人の失踪はハウゼンという人のせいだって…」
顔をあげてそう言うと、シャーレンが今まで見たことの無いような表情になった。
困ったような、少し嫌そうな、でもどこか哀しそうな…複雑な表情。
「シャーレン…?」
本当にそんな表情を見たことがなく、思わずじっと見ていると、また微笑みに戻って耳をなでられた。
「本当にいるんですね…。あなたがその名を知ってるはずないものね」
考えてみれば自分は、シャーレンのことをほとんど知らない。
女性らしき名前…恋人の一人や二人、いてもおかしくはない。
自分にもいるのだから…。
男性らしき名前…それに失踪…?
そこまで考えて、何故か浮かない気持ちになった自分に気づいた。
シャーレンに恋人がいようと、自分には全く関係ないのに。
物思いに耽って、そこに霊がいることを忘れていた。
『シャーレンはお前のことが好きなのか?』
さっきからずっとフィルシスをなでているシャーレンを見て、霊が不思議そうに尋ねた。
「………」
それはこちらが聞きたかった。
あんなに残酷なことをするのに、どうしてこんなに優しくするんだ…
こんなに優しくするのに、どうしてあんなに残酷なことをするんだ…。
返事せずにいると、また聞かれた。
『お前はシャーレンのことが好きなのか?』
「………」
自分でもわからなかった。
でも好きだとしても嫌いだとしても…そこにどれ程の違いがあるんだろう…。
どのみち自分には、こんな世界で考えるのはシャーレンしかいないのに。
返事をしないままでいると、霊がぽつりと呟いた。
『私はシャーレンがそんなに誰かに優しくしているのを初めて見た。』
あんなことをして…どこが優しいんだ…。
話す気力が出ずに、ぐったりしていると、霊がぼそりと呟いた。
『お前のせいでここは再び閉じられたのに、お前がいなければここは内側から崩れることになるのかもしれない。』
「…?」
意味深な言葉をささやかれる。
だが聞き返す前に、霊が今度ははっきり話した。
『ラークに伝えてくれ。』
そう言った時、低い声と暗い瞳が一瞬、驚くほど柔らかくなった。
遠い昔にそれと同じ眼差しを見たことがあったような気がしたけれど、すぐに思い出せなかった。
ただ懐かしく温かいということ以外は。
先代の団長と今の団長の関係が想像されて、少し胸が痛くなった。
『召喚術師に気をつけろと』
そう残して霊は消えた。
「…消えた…」
夢だったように。
「昔書物で、余程強い未練や思いがあれば、魂がとどまるというような記述は読んだことはありましたが、
でもほとんどの場合は、その未練の内容は忘れて、恨みや哀しみといったただの感情だけが残るのです。
あの騎士のような、それだけ生前の姿や言葉を残せるような霊魂は、呪いで魂を縛られているか、
本当に強い思いを持っている場合だけです。
何か言われたのですか?」
「…召喚術師に気をつけろと…あいつに伝えろって…。召喚術師って…」
そう言えば暗黒神官の四天王の召喚術師だけ話を聞いたことがない。
「あの人は私がここに戻る前に、暗黒神官を裏切ってどこかに去って、それ以来見ていません。
でも、わざわざ先代団長様が言いに来たぐらいだから、そろそろ何か動き出したのかもしれません」
「……」
本当に強い思い…それだけ今の暗黒騎士団長の身を案じていたのだろうか。
自分を大切にしてくれた、先代の聖騎士団長のように。
もしも先代の暗黒騎士団長のことを話したら、ラークは自分への恨みを思い出すだろうか。

霊が消えると、先程までの緊張と疲れが一気にのしかかってきた。
東の空の下方が、少しだけ明るいような気がした。
「こんな所で寝たら風邪をひきますよ」
あんなことをさせられた後なのに、ずっと自分を優しくなでている手が気持ちよくて、
いつの間にか目を閉じてシャーレンの膝の上で眠りそうになっていた。
それが悔しく、すぐに身を起こそうとしたが疲れすぎていて力が入らなかった。
頭上で小さな笑みを洩らすのが聞こえて、抱き上げられた。
身をよじって逃れようとしても、自分をしっかり抱く腕の感触を感じて力が入らなかった。
部屋に戻る途中、その腕の中で、あの霊のことを思い出していると、恐ろしい考えが頭をよぎった。
「…シャーレン…」
「何ですか?」
「暗黒騎士の霊がいるなら、暗黒神官の霊も…」
「聖剣のこと知らないんですか?彼の魂は昇華されてしまったんですよ。
慈悲深い神の剣でね。だから大丈夫ですよ」
「…うん…」
いつもあんなに残酷なことをする相手にすがるのが悔しいのに、気がついたら柔らかな黒いローブにもたれていた。
このまま抱いていてほしいと願う自分も確かにいる。
部屋に戻ると、湯で濡らしたタオルで体をふかれて寝着を着せられた。
「さあ寝ましょうね。もうすぐ夜明けだけど」
「ん…」
そっとシャーレンの体に寄り添った。
いつものように、自分が眠るまでずっと耳をなでられる。
そのやさしさの中で、今だけはもう忘れていたかった。
霊の言った意味深なことも、
ラークに先代の暗黒騎士団長のことを切り出さなければならないことも、
シャーレンが自分を本当はどう思っているのかも。
同じ布団の中で自分を抱くシャーレンのぬくもりが、夜の空気に晒されて冷えた体には心地よく感じられた。

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