「朝ですよ」
昨日と違って耳をなでられて起こされる。
「…ん…」
すぐ横に寝転んでいるシャーレンに安堵した。
「昨日はどこに行ってたの…」
シャーレンの服にしがみついて、何となく尋ねた。
自分を放っておくためだけに、あんな朝から夜まで外にいるのはさすがにないはずだ。
「…前、あなたは暗黒騎士の霊に、召喚術師に気をつけろって、言われたのでしょう?」
少し考えるような間が空いて、答えられた。
「うん…」
真剣そうな返事。
「その召喚術師…ハウゼンが何か企んでいるようです。」
以前も一度、その名を聞いた。あの霊が言っていた。
しかしあの時のシャーレンの表情を考えると、あまり聞いてはいけないことなのかもしれない。
「町の人がいきなり行方不明になった。それを昨日調べに行きました。他の町も全部調べないといけません」
「…じゃあ、寝てる場合じゃ…!」
「…はー」
真剣に言ったのに、シャーレンがやる気のないため息で遮った。
「もう全部放っといて、このままがいい」
そう呟いたシャーレンにぬいぐるみを抱くように、抱きしめられる。
温かくて、気持ちいい…きゅっと服を握ってフィルシスは抱きつき返した。
折角早く起きたのに、そのまましばらく布団の中だった。
重大そうなことに急かすと、面倒そうに身を起こす。
「騎士団の服装はちょっとあんまりですね」
やっと起き上がって、僧侶や神官が着るようなフード付きの貫頭衣を渡される。
服の上から着れば、狼の耳も尻尾も隠せる。
「剣はどうしようかな…まあ、一応普通の剣を持っていきなさい」
「うん…」
「召喚術師に感づかれないように、目立たないようにしなければいけません」
シャーレンも今日はフード付きの黒ローブを着ていた。
「それに、暗黒騎士達は直接参戦したから隠し通せなかったけれど、
街の人の間では、あなたは暗黒神官を倒した後、逃亡中ってことになっているのです」
「シャーレンは恨まれてないの…?」
「あなたが暗黒神官をただ一人で倒したことは事実ですからね。それに、どうせゲートを使いこなせるのはあの人だけだった。
どうしても文句を言う人は力づくで黙らせましたけど」
「……」
昔、宮廷の図書室で、シャーレンが民主制について語ってくれたことを思い出した。
「…やっぱりつまらないな…」
準備は整ったが、またため息混じりにぼそっとシャーレンが独り言を呟く。
つまらない、と言ったことにフィルシスは嫌な予感がした。
「じゃあ、早く行って早く終わらせればいいじゃないか…」
「それはそうですけどね」
いきなりシャーレンに腕をつかまれる。
ベッドの側の小物棚の所までひっぱられた。
嫌な予感が強まる。
「何を…」
引き出しを引いて出した、太い張形を見せられる。
こっちがため息が出そうだ。
「嫌だ…!」
それを入れられて歩く事を想像して、一瞬体の奥が甘く疼いた。
「昨日のようにして待ってる方がいいですか?」
「嫌だ…」
意地悪な笑顔、いつもそうだ。
選べるわけないのに。
「大丈夫です、またすぐ気持ちよくなるんでしょう」
ベッドに押し倒される。
「やだ…っ!」
「どっちなんですか」
抱き寄せられて、耳をなでられる。
こんな風に抱きしめられたら、もう何でもいいという気になってしまう自分を呪った。
「今度は一日で帰って来ません」
とどめの一言だった。
「…一緒に行く…」
昨日みたいにされなくても、何日も一人は嫌だと思った。
「いい子ですね」
背をなでおろすようにして、下着を下げられた。
シャーレンが張形に潤滑油をつける。
「あ…っ!」
後孔にそれを挿入されて、押さえるように下着を上げられる。
「ん…あ…」
浅ましい体に、快感が走る。
「ほら、もう気持ちいいんでしょう?」
楽しそうにそう言いながら、シャーレンがゆるく張形を動かす。
「ちがう…」
それでもびくりと震えてしまう体を起こされて、腕をひかれる。
「あ…っ」
一歩足を踏み出すだけで、後孔がきゅっと締まって、中の張形をくわえこんでしまう。
シャーレンに支えられて、快感に耐えながらフィルシスは屋敷の外に出た。
馬の背の、前に乗せられる。
「ふ…ぁ……んう…っ」
鞍の縁を握って、後孔の快感に耐えた。
シャーレンが後ろから手綱を握り、馬が進みだした。
しかし速度が徒歩の時と変わらない。むしろ歩いた方が恐らく速い。
早く終わってほしいのに。
「シャーレン……」
声を絞り出す。
馬の振動が、張形に伝わって、快感で喋るのもままならない。
荒い息を吐く。自分でも恥ずかしい音。
「何ですか」
「遅い……」
「気のせいですよ」
自分が何度馬に乗ったと思ってるんだ。
だが、こんなことをして平然と言うのに、後ろからもたれかかるように抱きしめられて、胸がどきりとした。
「…あっ…!」
服の上から乳首をまさぐられる。
「や…だ!」
危うく馬の横腹を蹴ってしまいそうになった。
「馬から落ちたくなかったら、暴れてはいけませんよ」
「……っ!」
なら、その手を止めろと言いたかった。だが、与えられる快感で、声が言葉にならない。
胸と股間を交互に弄くられる。服が局部に擦れる。
「上も下も、硬くなっていますね。服の上からでもわかるぐらいにね…」
「く…ふ……あっ…ん……」
体が震える。悶えて動きそうになる足を、必死に抑える。
施される愛撫に耐えた。
「やだ…もう…や……」
もうすでに、股間は熱くなって疼いている。
それでもせき止められる欲望。
「まだ進み始めたばかりでしょう。町はまだまだですよ」
後ろから、胸をなでられる。びくんと、敏感に体が反応した。
「やぁだ……あつ……ッ!」
性器の脈打つ感触が分かる。
草原や森林の景色が見えたような気がしたが、眺めるどころではなかった。
乳首や亀頭の部分をくりくりと弄くられ、その度に足が馬を蹴りそうになる。
「ひ…やあ…っ!…」
こんなにも意地悪くされているのに、背中を抱くように感じる体温が、
昨日の今頃は冷たい金属の感触だったことを思い出すと、ただ温かい。
「く…ん…っ」
そんな調子で、ずっと苦しい快感に耐えさせられて、やっと町らしきものが見えた。
「あれが町ですよ。小さいですけどね。」
説明されても、体の奥の疼きが翻弄して耳に入らない。
「あ…っ」
入り口の少し手前で馬を止めて、馬から降ろされた。
シャーレンが荷物の中から、何かを取り出してこちらに見せる。
「この石に残った人間の匂いは、この町からしますか?」
そう言って、布に包んだ石を見せられる。
「……っ」
だが後ろに与えられる快感で、もうそれどころではなかった。
「はあ…っは…ッ…ゃあ……」
しかし、荒い呼吸だけついて押し黙っていると、前をさすられる。
「ちゃんと嗅がないと、イかせてあげませんよ?」
そう言われて仕方なく、座り込んでしまいそうな体を支える。
「…ッしない」
「そうですか。ではちょっと待っててくださいね」
道端の茂みの木の側に座らされた。
何か呪文を唱える声が聞こえた後、シャーレンがこちらに戻ってきた。
「イきたいですか?」
脱がされる下着に、イかせてもらえると、期待が高まった。
「はあ…っ」
「こんなに濡らして」
下着は、せき止められていてもあふれ出る先走りでぐっしょりと湿っていた。
頬が熱く、荒い息が止まらない。
「あぅ…ッ!」
顕わになったそそり立つ性器をなでられる。とろりと、白濁液が漏れ出している。
「ん…ぁ…ッ」
びくびくと、期待に震える。
しばらく弄ぶように、触れられる。
性器の先端の割れ目に、はめられた拘束具の上から指を立てられてくりくりと動かされ、睾丸をゆるく握られたり、強く握られたりする。
「あ…は、やく…やぁ…!」
解放されたくてたまらなかった。
気がつけば誘うように腰と尾を揺らしていた。
「まだ我慢しなさいね」
なのにシャーレンは意地悪く微笑んで、性器から手を離す。
「やあ…っ!」
少しはみ出てきた張形を、また奥まで押し込まれ、下着を上げられる。
町に入るので、馬には乗らない。
「さあ行きましょう」
腕をひかれて立ち上がれても、下肢が快感に反応し、歩けない。ふらついて、抱きとめられる。
「や…」
「随分気持ち良さそうですね?」
面白そうに言われた。抱く腕にすがって首を振る。
「仕方ないですね。では、あなたは馬に乗ってていいですよ」
「そうじゃなくて…」
抗議しようと思ったが、与え続けられる快感のせいで、上手く声が出ない。
もう一度鞍に乗せられて、シャーレンが手綱を引いて馬を連れていく。
「はあ…ぁ……」
鞍に擦りつけそうになる股間を必死に抑えた。
「あんまり喘いでいると、すれ違う人に聞こえますよ?」
入り口付近に差し掛かった時、隣で面白そうに言われる。
こちらを眺める視線に、息が詰まる程緊張した。
「く、ふ……ん…っ」
揺れそうになる腰、漏れそうになる喘ぎを必死にこらえる。
俯いて顔を見られないようにしていたけれど、それでもすぐ隣を通った人には聞かれたかもしれない。
快感に崩れそうになる体を必死に支える。
そんなに長くなかったはずだが、長く長く感じられる時間の中、町を通り過ぎた。
町を出ると、シャーレンが鞍の後ろにまたがった。
片手で手綱を引いて、片手をこちらに回して抱かれる。
「次の街に行きましょうね」
またそんな風に後ろから抱かれると、自分で支えていた緊張が解けて、後ろにもたれかかった。
「ふ…ッやぁ…もう……」
こらえていた分、呼吸が荒くなった。
「まだ我慢できるでしょう?」
「ひあ…ッ!」
後ろから下腹部をさすられる。
それだけで、体が震える。身をよじらせて喘ぐ。
「お願、い…っ…もう…はずして…」
「やだ」
それっきりシャーレンは何も言わない。
ただ震える胸や股間をなでられる。
「んあ…っ!」
相変わらずゆっくり進む馬の速度に、気が遠くなった。

陽がくれ始めた頃、次の街が見えてきた。
「もうだめですか?」
後ろから胸の先端を服越しにつまんだまま、シャーレンが面白そうに言う。
「ん…っ」
フィルシスは当たり前だと言おうと思ったが声が掠れた。
ずっと強すぎる快感を与え続けられて、もう限界だった。
「降りてください」
馬を止められる。
震える体を押さえて、フィルシスは馬から下りた。
立っているのも辛くて座り込みそうになる。
抱かれて支えられた。
「ここで、いかせてほしいですか?」
「や…」
別に周りに誰もいないけど、街の入り口との障害物は全くない。
左側に森があるだけだ。
日が暮れかけていても、まだ少しは明るい空の下の、こんな広い空間では嫌だった。
「我侭ですね」
「……っ」
後孔の刺激がもう苦しくて、無茶苦茶な言葉に言い返す気力もなかった。
支えられて、道の片側に隣接する森の、茂みの中に連れて行かれる。
大きな木の側に座らされて、下着を下ろされる。
垂れ続ける先走りが、尻の周辺まで汚していた。
「あ…あ…っ」
表情がよく見えるようにと、フードもはずされた。
「こんなにしっかり咥え込んで」
はまっている張形を動かされて、フィルシスは身悶えた。
「やあ…!」
シャーレンが体液を垂れ流すフィルシスの前を突付く。
「あ…っ」
「いきたいんでしょう?早く頼んで…」
性器を弄くるシャーレンの手が止まった。
頭上を見上げて、立ち上がった。
「こんな所にいいものが」
そう言って詠唱する。対象を意のままに操る呪文。
「…なっ!」
何かぼとりと上から落ちてきた。
今まで見たことないような長い体の大蛇だった。
「この舌で舐めてもらってくださいね」
「や…!」
シャーレンが黒い鱗に覆われた蛇の首をつかんで、蛇の頭をこちらに向ける。
黄色くぎらぎら輝く瞳と目が合った。
かぱっと開いた口から尖った牙と、真っ赤な舌が動いている。
「………!」
あまりの恐怖に声も出ない悲鳴になった。
体の熱も、一気に冷めた気分だ。
「いや…嫌だ…!」
「折角森の中に入ったんですから、たまにはいいでしょう」
「やだ…絶対やだ…!」
快感で力の入らない体で、フィルシスは必死に後ずさる。
背が木に当たった。
「では、そのまま我慢しますか?」
木々の陰になった微笑みが、とても冷たかった。
「やだ…」
どうしようもなくて涙が出てきた。
「本当に泣き虫ですね、男でしょう」
耳をなでられた。蛇は持ったまま。
「じゃあシャーレンが舐めてもらえ!やだ…!近づけるな!」
錯乱して無我夢中で口走る。
「私も嫌です」
「や…やめろ…!ばか…っ!」
押さえつけられて、張形をはずされ、結局服を全部脱がされた。
乳首は固く尖っていた。
「そんなに大きな声出して暴れたら、他の動物も来ますよ?動物にまで輪姦されたいんですか?」
「………」
「そうそう、そのまま大人しくしてなさいね」
無理矢理足を開かされて、腕を後ろ手に回された。
「ひあ…っ!」
黒光りする蛇が絡み付いてきた。
長い体が腕に絡まって縛り、開かされた足にまとわりついて固定する。
「……っ!」
恐怖と不快感に唇をかみ締めて、涙が伝った。
なのに肌を這うものに、敏感になった体が反応する。
「や…ン…!」
冷たい蛇の体が適度に胸の飾りを擦れて、体を締め付けて、快感を与える。
「ふ、あ…っ」
尻の谷間と、股の間を蛇の体が滑る。
その刺激に仰け反った。
「ん…あ…っ」
蛇の口が、ひくつく性器の先端をゆるくはさみ、ちろちろと出し入れされる舌が突付く様に舐める。
その口から垂れて落ちた唾液にさえ、先端がびくっと震えた。
「ちゃんと感じているじゃないですか」
面白そうな声も、快感に遠くなっていく。
「やあ…っ!」
太い尾の先が、先程まで張形で拡げられていた後孔の中に侵入してくる。
ゆっくりとかきまわすような動きに、全身に快感が走る。
「く…ふ…!あ…ぁ…ッ」
「全部同時に弄くってあげましょうか?」
股間を刺激していた蛇が、頭をもたげて、今度は胸の飾りをつつく。
乳首を刺激するその頭が上下に動く度に、股の間の体が動いてすれる。
「ああん…ッ!」
その度に先端がぴくぴくと震え、後孔の中の尾をしめつけて、蛇が驚いて後孔の中で、かき回すように尾を揺らす。
「はあっ…はぁ…」
喘ぎを洩らす口から、涎がこぼれ始める。
「もうイきたいですか?」
「ン…っ」
薄れていく理性で頷くと、性器の拘束が緩められた。
「では、蛇にいかせてもらいなさいね」
胸を舐めていた蛇の頭が、もう一度、そそり立つ性器の先端を刺激し出す。
長い舌で先を突付き、口がゆるく咬む。
「ああ…ッ!」
先程からずっと快感を与えられて止められていて、すぐに吐精してしまった。
蛇の口に出したものがかかり、黒光りする頭を白く汚す。
「どういう始末をすればいいか、わかりますよね?」
大きな蛇の頭が目の前まで来た。ぎょろっとした目で睨まれる。
「あ…っ」
内股をぬるい液体が、ゆっくり伝うのを感じる。
「そんなに怖いですか?お漏らしなんかして。あなたは本当に、どこででも漏らしてしまうんですね」
面白そうに、じっと見られた。
やっと緩められた性器の拘束に安堵して、気づいたら放尿してしまっていた。
「うぅ…」
情けなさと悲しさに涙が止まらない。
「そのままだと蛇が可哀想でしょう?早くしないと、咬ませますよ?」
冷たく笑うような声が急かす。
「く…ん…っ」
ただ体を締め付ける生き物から解放されたくて仕方がなく、蛇の頭にべとりとついた自分の体液を舐め取った。
「んう…」
舐めて飲み込み終えると、蛇が離れていくのを感じたが、頭がぼんやりして何も考えられなかった。
気づいた時には、元通りに服を着せられて、膝の上に寝かされていた。
「シャーレンなんかやっぱり嫌いだ…もう知らない、もう口なんか聞かない…!」
膝の上ですすり泣く。力が入らなくて、起き上がれない。
「そんなことを言うんだったら今度は、木と一緒にあの蛇をもう一度巻きつかせてここに置いていきます」
顔は微笑んでいるけれど、淡々と言われる。
「……嫌だ」
昨日のことを思い出して、きゅっと黒いローブを握った。
「冗談ですよ」
抱き寄せられて、背をなでられた。
もたれかかってしばらく身を預ける。
「でも、気持ちよさそうでとても可愛かったですよ?また今度してあげましょうか」
「やだ…もうやだ…」
泣きながら、弱々しく言う。
「嘘ですよ、あなたは可愛いね。そんなに何でも信じられたら、からかうのも一苦労だ」
「……」
いつも冗談も本気も結局することは同じだとフィルシスは思ったが、言い返す気力が出なかった。

森を出ると日はほとんど暮れていた。
すぐに街で、馬は引くだけで乗らなかった。
次の街はとても大きかった。白と灰のレンガ造りの街並みもきれいで、整備されている。
入り口に見張りのような人が立っている。
「この街はあの匂い、しますか?」
立ち止まって入り口の少し手前で聞かれる。
「しない…」
「そうですか」
そう言うと、シャーレンはまた何かの呪文を唱えた。
「ここはこちら側で一番大きな街です。だからここには検問があるんです」
「検問…?」
入り口に立っている人がそうらしい。
「問題はあなたのことを聞かれたらどうするかです。奴隷ってことでいいですよね?」
フードの隙間から少し見える首輪に触れられる。
「嫌だ…」
また意地悪なことを言う。良いと思うわけないのに。
知らない人でも、嘘でも、そんな風に思われたくなかった。
「でも、弟子だなんて言って、私が弟子をとるなんて噂が広がっても困るな……」
「シャーレンみたいな師匠、誰でも嫌だと思うよ、きっと…」
昔は勉学の師匠のようなものだったけど…
「今日は随分ひどいこと言うんですね?じゃあ、やっぱり奴隷でいいんですね」
「嫌だ…」
そんなことしている内に、もう入り口に着いた。
検問官が姿勢を正した。
「私だ」
フードを脱いで、シャーレンが顔を見せる。
「失礼ですが…身分証明をお願いします…」
検問官が恐る恐る話しかける。
差し出された透明な水晶玉に触れて、シャーレンが面倒そうに何か唱えると、水晶が黒く輝いた。
「はい、確かに、暗黒の魔術師様…」
そんなに慌てなくてもいいのにと思うぐらい素早く、検問官が道の横に退けた。
「…そちらの方はどなたですか?」
恐る恐るそう聞く声で、先ほどのやり取りを思い出して、哀しくなった。
無意識のうちに少し俯いていたけど、実際のシャーレンの返事に思わず顔をあげた。
「隠し子」
びしりとそれだけ言ってシャーレンはさっさと進みだす。
何も言えずにそのまま止まった検問官に会釈して、フィルシスは慌てて後を追った。
「シャーレン…」
照れるような、嬉しいような、胸を締め付ける気持ちが心を埋める。
さっきは自分をあんなに哀しくさせたのに、今はどうしてこんな気持ちにさせることもできるんだろう。
「奴隷の方が良かったんですか?」
立ち止まってシャーレンが振り向く。
「違うよ…」
小さくそう答えて、そっと寄り添う。
フードの上から頭をなでるシャーレンの手を感じた。
下を向いて、自分でも知らない内に少しだけ笑みが浮かんだ。



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