そっとベッドの上に、寝かせられた。
首輪に繋がれたままの鎖で、持ち上げられた腕を頭の上で縛られる。
その鎖の端をベッドの支柱にくくりつけられた。
「もうやだ……」
襲い続ける波のような快感に体が泣いていた。
「この状態で、止めてほしいということですか?」
穏やかな声でそう言って、勃起して、入り口に棒を差し込まれたままの陰茎を、意地悪な指でなぞられる。
それにまだ、後孔が刺激を求めてひくついていた。
「んう…」
涙目で首をふる。
辛そうな表情を見て、シャーレンがベッドサイドの引き出しから、ナイフを出して指を切った。
深紅の血が、細い筋となって流れ出す。
自分だけには特別な、その血の匂いに体が悦んだ。喉を鳴らした。
血の流れる指を口に当てられる。
「んん…っ」
くちゅくちゅと音をたてて、とろけそうな程、甘く感じるその血に、赤ん坊のように吸い付いた。
口に広がる甘い血をすする。
「美味しい?」
もう片方の手で、耳をなでられる。
酔い痴れそうな香に、癖になるような味に、涙がにじんだ。
逃げられない証だから。
「ん…」
抜かれた指から涎が糸をひいた。
「んや…っ」
顔を近付けられて、耳元でまた何か呪文を囁かれた。
そっと吹きかかる吐息に、頬が熱くなる。
「あ…っ」
媚薬を使われた時のような激しく焼くような、苦しい程の快感ではなかった。
じわじわと、体の芯からとかされるような静かで柔らかな快感が、内側からあふれ出た。
「あぁ…ッ」
後孔や胸の突起が焦れるような疼きがない。
ただ体中が甘い快感だけに包まれる。
「どうです?気分は。」
そっと耳をなでられる。
「んあぁ…気持ちいい…」
自分でも信じられないような甘い声がでた。
本当にそれしか考えられない。
「はあ…ぁ…っ」
敏感な乳首の根元をつままれ、先端をなでるように揉まれる。
「…っ!あぁ…あ…ん…ッ」
舌で乳首をそっと吸われる。
歯や爪をたてられたり、指できつくつままれるのではない。
胸をくすぐっていくような、ただひたすら優しい舌の動きに、気持ち良くてとろけそうになる。
体がぴくぴく震える度、首輪に繋がれた鎖が、腕を縛る鎖が、かちゃりと鳴った。
「ん…く…っあ…っ」
指が優しく局部に触れる。
指の腹でそそりたった性器をなでていく。
触れる指が下方に移動していく。
催促するように、尻の下に手を入れられて、なでられる。
ひくついたままの後孔への微弱な刺激に耐えかねて、細い足を開いた。
震える白い内股と、そこを汚す、性器から垂れた蜜が顕わになる。
「いい子ですね」
後孔の入り口を優しく押さえられる。
「んうぅ…!」
中でかき回される指に反応して、耳や乳首、蜜を流す性器がぴくぴくと震える。
気持ち良すぎて涙が出た。
「はあ…ぁ…っシャーレン…もう…」
上気して、汗ばむ胸が、荒い呼吸に上下した。
「もう?」
続きを促すように、指で後孔の中をかきまわされる。
その指を、後孔がきゅうっと、締め付けた。
「シャーレンの…ほしい…」
甘い声でねだった。
淫らな後孔は指では満足できなかった。
「どこにですか?」
「んあ…っ!」
促すように、もう片方の手で、そそりたつ性器に差し込まれたままの棒を出し入れされる。
「あ…ッ後ろ……」
「今、指を入れてるでしょう?」
ゆっくりと、感じさせるように、指を出し入れした。
中心からあふれ出して、指に絡められていた白い蜜が、くちゅくちゅと音を立てた。
「や…ッ!」
不意に後孔の中で、指を曲げられる。
弱い場所を刺激するように。
「ちが…っぁ…あぅ…ッ!」
弱点を指で押され、涎を垂らして、身をよじって身悶えた。
手首にすれる鎖の痛みも、快感に変わる。
「どうして、指ではだめなんですか?」
そのまま弱点を押しながら、前の棒をゆらされる。
「はぁ…あ…っ!」
意地の悪い問い掛けに涙が出た。
指だけでは足りない体になる程、犯して抱いた当人が知らないわけない。
「ほら」
促すように首輪の鎖をひかれる。
かちゃかちゃと音をたてられた。
「…優しくするって、さっき言った…じゃないか…」
息を乱れさせながら、涙目で呟いた。
「してるでしょう?」
鎖をひいたまま、耳をなでられる。
優しくない優しさに、ただ涙があふれた。
違うと否定するように、首を振った。
鎖なんかつけて、腕を縛って、言いたくないとわかってるくせに、恥ずかしいことばかり言わせようとする。
「あ…っ」
腕を縛る鎖をほどかれた。
シャーレンが服を脱ぎ捨てて、いきなりのしかかった。
「私が言ったことが嘘になっても、今更でしょう?今まで何度、嘘をついたと思ってるんです?」
そんなことを言って微笑む。
服を脱いで現れた裸の体が、間近にあるシャーレンの顔が、気恥ずかしくて目を伏せた。
見た目で人を判断する気はないけれど、それでもシャーレンが、もっといかにも危険そうな風貌なら、きっと少しは疑えた。
きっと今もこんなに胸は鳴らない。
「シャーレン……」
気恥ずかしさをやり過ごすように、名前を呼んだ。
「優しくするなら、どんなに抱いてもいいんですか?」
耳をなでられて、抱き締められる。
服越しではない体温に、鼓動が速くなる。
「やだ…」
細い腰に手を回して、自分よりも長身の体を抱き返した。
シャーレンの胸や太股が当たる。なめらかな肌だった。
直接触れる熱い肌に、どきりとした。震える唇から濡れた喘ぎが漏れた。
自分の鼓動も、シャーレンの鼓動も、高鳴ってるのがわかるから。
「…ん…っ」
無意識の内に、自分を抱く体に陰部をすりつけていた。
「我慢できないんですか?」
耳元で意地悪く囁かれる。
「や…もう…」
きっとまた、卑猥な言葉を言わされて、ねだらされる。
「では、キスしなさい」
「キス……?」
恥ずかしい言葉を言わされるのではないけれど、自分から口付けたことは今までない。
「そうですよ、知らないわけないでしょう?」
それだけ言って、待つようにじっと見られた。
もう二度と見れない向こうの世界の、美しい海と同じ色の目と、その瞳の中に映りこむ自分が見えた。
暗い海の底に自分が囚われたようだった。
ただ、嫌なのではなくて、恥ずかしがっている自分がいた。
仕方なく、気持ちの良さに震える腕で、シャーレンの首に手をまわす。
そうしないと届かない。
顔を近づけた。
「シャーレン…」
胸の鼓動が耳に響きそうだ。
フィルシス様、と自分の名前を呼んで返すシャーレンの形の良い唇の動きがわかる。
吐息が肌をなでていく。
その感触も気持ちよく感じた。
息を止めて、シャーレンの口元に近づけるように顎をあげた。
顔を見るのが恥ずかしくて、目を閉じた。
「…っ」
だが、唇をほんの一瞬あわせるだけで精一杯だった。
シャーレンがするように、唇を割って、舌を中に入れるなんて、とてもできなかった。
自分からキスをしたことだけで、恥ずかしくて、目を伏せた。
「それで終わりですか」
シャーレンが苦笑した。
「……」
目を伏せたまま、頷いた。
きっと真っ赤になっている自分の顔を見て、シャーレンはくすっと笑って、顔を持ち上げるように頭の下に、片腕をまわした。
もう片方で、ようやく尿道を塞いでいた棒をはずされた。
「あ…ッ」
びくんと跳ねた腰を、そっとつかまれる。
ひくつく後孔の入り口に、すでに少し硬く、太いものが当てられた。
内襞を拡げるように、侵入してくるそれに、体中に快感が走った。
「ん…っあぁ…ッ!あ…!」
物欲しそうな後孔を優しく満たされて、喘ぎが漏れた。
後孔が勝手に、きゅっと締め付けてしまう。
「キスはこうするんですよ、何度されたらわかるんですか?」
「ん…っ!」
抑えられない喘ぎも、塞がれた口にかき消される。
後ろを激しく貫かれたまま、口付けられて、抱き締められる。
「……ッ!」
背中に手をまわして、抱き返した。
後孔の内側に、中に挿入された熱いものを擦り付けるように、思わず腰が動いた。
「ん…っ…ん…ッ!」
シャーレンの肌に、色づいて尖った乳首と、そそり立つ自分のものをすりよせていた。
口内を貪られ、舌を絡ませられながら、体中を包むような気持ちのよさに、身を震わせて射精した。
自分が出した後、自分の中にも出されたのを感じる。
「あ…っ…!ふ…ッ…」
中に感じる体液の感触に、新しい涎がこぼれた。
体の最奥まで探られて、満たされる快感。
だが、シャーレンは、中に出した後、突くのをやめて静止した。
「ん…ッ!いや……」
動いてくれないシャーレンに、フィルシスはたまらなくなって腰を振って自分ですりつける。
射精直後の敏感な体には、後孔の刺激が強すぎて、思わず背を反らせた。
「はあ…っぁ…ッ!」
シャーレンは微笑んで、フィルシスをじっと眺めた。
後孔の中で、きゅうっと自分のものを締め付けながら、腰をくねらせて、自分の腹部に再び勃起しはじめた陰茎をすりよせている様子を。
「や…」
それにはっと気づいたフィルシスは恥ずかしくなって、腰の動きを止めると、目に涙をにじませた。
「どうして…意地悪するの…」
「意地悪?何もしてないでしょう?」
羞恥に、しゅんと下がった耳をなでた。
「………」
フィルシスは何も言えずに、目を潤ませたまま黙り込んだ。
だが、すりつけるのを我慢している腰は、震えていた。
「では、私にどうして欲しいんですか?」
そう聞かれても、フィルシスは黙りこんだ。
だが、シャーレンも黙ったまま、微笑んで見返すだけだった。
仕方なく、フィルシスは震える唇を開いた。
「……後ろ…突いて…」
顔を真っ赤にして、シャーレンの胸に顔を埋めるようにして呟いた。
「入れるだけじゃ、足りないんですね」
可愛らしい姿に、耳を軽くなでた。
フィルシスの細い足をすくうように抱え上げて、蠢く後孔を深く突く。
先ほど中に入れた精液が、くちゅくちゅと湿った音を立てた。
ぷっくりと尖った乳首を、一緒に舐め上げると、フィルシスは体をびくびくと波打たせて嬌声をあげた。
「んあ…あぁ…んッ!」
内壁をかき回して、前立腺を突いて、中で熱く脈打つそれと、奥に注がれる迸りを感じて、フィルシスも同時に射精した。
シャーレンが離れても、射精の余韻と中に感じる熱に、フィルシスはしばらく火照った体をひくひくと震わせて、身悶えていた。
「はあ…っはぁ…」
乱れた呼吸に、汗ばんだ体を震わせる。後孔から、中に出された精液が流れ出した。
額にかかった銀の髪を払われて、耳をなでられた。
「お風呂にしましょうね」
口から、後孔から、二人分の体液を垂れ流す力尽きた体を、そっと抱き上げられて、浴場に連れていかれた。
「ひどい…シャーレンなんか…」
ベッドの中で弱々しく呟いた。
「いつもあんなに気持ち良さそうにしているのに?」
優しく耳をなでられる。
「もうやだ…ひどいことばかり…」
そう言う通り、どんな酷いことにも、体は確かに感じてしまうから、そんな自分を見るのが嫌だった。
それでも、何もされないでいると、疼いてしまう自分の体を知るのが嫌だった。
「では、賭けをしましょう」
「賭け…?」
「そうです。あなたが勝てば、もう金輪際、あなたの口が嫌と言うことはしません。
私が勝てば今まで通り、あなたの体が悦ぶことをしてあげます。」
「嫌だ…」
絶対自分が勝てないようなことをするに決まっている。
それに良く考えてみると、これでもしも自分が勝って、なのにそれでも体が疼いてしまったら、
きっと今まで以上に焦らされて、恥ずかしくねだらせられるに決まってる。
「……」
だが、そんなことに怯える自分を情けなく思った。
「しないんですか?自分から淫乱だと認めるんですね。ではもっと、たくさんしてあげましょうね」
耳をなでていた手が、股間に移動した。
「や…っシャーレンのばか…」
意地悪ばかりする。
どんなに泣いても、怒っても、全部、可愛いで済ませて、眺められる。
「では、どうせそんな風に思われてるのなら、一人で寝ます」
ベッドから、シャーレンが抜け出そうとした。
「……寝るのは別に一緒でもいいよ」
俯いたまま、ぽつりと呟いた。
そう言わないと、きっと本当に違う部屋に行ってしまう。
故郷とは、何もかも変わってしまったこの世界で、ただ一つ変わっていないのは、シャーレンが側にいることだけなのに。
「素直になりましたね。可愛いね…」
抱き寄せられて、また耳を優しくなでられる。
布団の中で、隣にいるシャーレンにくっついた。
次の朝、起きた時、聖騎士団の制服と聖剣ではないが、剣を渡された。
「今日はこれを着なさい」
「どこかに行くの…?」
「賭けをしに行くんですよ」
そう言って、見慣れた道を歩いて、連れて来られたのは暗黒騎士団の宿舎だった。
シャーレンと一緒にそこに入るのは、あまり気が進まない。
彼らの目には、自分はシャーレンの奴隷のように映る。
それに、暗黒騎士達が談笑している所を見ると、ほんの少し、寂しさを感じてしまう。
自分には、もうできないから。
「やだ…」
宿舎の入り口のだいぶ手前で立ち止まった。
「また、一々言わせるんですか?言うことを聞かないなら、どうなるか」
振り向いたシャーレンに抱きしめられて、あやすように優しく耳をなでられた。
「……」
仕方なく、足を進めた。
宿舎を通ると、シャーレンの後ろを歩く自分を、暗黒騎士達が好奇の目で見た。
団長室と表記された部屋の前に連れて行かれた。
シャーレンが扉を叩くと、ラークが中から返事をした。
「どうしたんだ?」
部屋の奥で、机の前の椅子に座っていたラークが振り向いた。
「お前、そいつはここじゃなくて…」
しかし、ラークが言おうとした事を、遮るようにシャーレンが言った。
「日頃の礼に抱かせてやる」
「え…!」
突拍子もない言葉に、フィルシスの悲鳴とラークの歓声が重なった。
「な…何を…」
シャーレンに背中を押されて、ラークの前に立たされる。
「これで前に触れられずに、後ろだけでいったら、あなたの負けです」
シャーレンが悪戯をするように、後ろから囁いた。
「やだ…!そんなの…!」
振り向いて、叫んだ。
ひどい、あんまりだ。
「何だ、そういうことか。よし、任せろ」
ラークに腕をつかまれて、正面から抱かれる。
「何がだ…!ちょっと待て、放せ!」
その手が、聖騎士団の制服のベルトをはずして、下着を脱がせ始める。
「いいだろ、たまには」
たまにでも、無理矢理犯されるなんて、誰だって嫌に決まっている。
「嫌だ…!」
初めてラークに犯された時のことを思い出した。
賭けは負けるに決まっていた。
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