「嫌だ、やめろ…!」
叫ぶ声も虚しく響く中、シャーレンが、しっかり持ってきていたらしき香油の入った瓶の蓋を開けて、ラークに差し出す。
「これを使え」
その瓶から垂らされた油を指につけて、ラークは、抱いたままフィルシスの白い尻に触れた。
「やめ…やだ…!あ…ッ!」
ほぐすように、慣らすように、ラークに指を出し入れされる。
曲げたり、抜き差しする指の、その刺激だけで、股間のものは立ち上がり始めた。
白い内股が興奮に赤く染まり出し、快感に震えた。
「や…!」
後孔を拡げようとする指の動きに耐えられない。
弱点を突く指に、擦り付けそうになる腰を必死に止めた。
座り込みそうになる所を、無意識の内にラークにしがみついて体を支えた。
「気が早いなあ、フィルシスちゃんは」
くくっと笑って、ラークは自分の下着を下ろしてベッドの上に座った。
膝の上にフィルシスを乗せて、その尻の肉を左右に押し広げた。
「嫌だ…っ!」
硬くなっている先端が入り口に当たる。
後孔の中に侵入してくるものから逃げるように、腰をあげた。
しかし、しっかり押さえつけられて、それはできなかった。
「んう…!やあ…っ!」
後孔を押し広げてくるものを、拒めずに、受け入れた。
「はあ…っ」
尻の中を満たされて、甘い声が漏れた。
腕を後手に、ラークが体で押さえるように抱いて、喘ぎの漏れる口を押さえることができない。
全て収めると、ラークは後ろから、フィルシスの足を片方ずつ抱えて、局部が見えるように両側に開いた。
「やだ…ッ!」
震える白い内股が、ぴくぴくしている中心が、男のものを咥え込んでいる後孔が、シャーレンの前にさらされた。
「もう気持ちよさそうにしていますよ?」
すでに頭をもたげて震え、蜜を流している中心を、冷たく輝く青い目で眺められた。
「や…」
目をきゅっと閉じて、フィルシスは嫌々と首を振った。
例え他の人に抱かれていても、体は何度も抱かれたシャーレンのことを思い出す。
だがシャーレンは、今は自分をじっと眺めている。
淫乱な体は、そんな状況が生み出す異様な興奮に襲われた。
頬が赤くなっているであろうことがわかる。
「んく…!」
乳首が尖って、脱がされていない上の服に擦れているのがわかった。
それがさらに、体に快感を与える。
「……ッ」
視線の刺激と、激しい突き上げにも、せめてもの抵抗に、
揺れそうになる腰と、漏れそうになる喘ぎと、あふれそうになる涙は必死にこらえた。
「ご主人様に見てもらえるのは、嬉しいか?」
ラークが意地悪く囁く。
その吐息に、犬のような耳が、ぴくっと動いた。
シャーレンが言葉で、フィルシスを見ていることを認識させる度に、
後孔が締まり、中のものを締め付けて、蜜を垂れ流す前は、ぴくぴくと震えた。
「んん…っ!」
唇を噛んで喘ぎ声を堪える。
「声、聞かせろよ」
後ろからラークに、耳元に息を吹き掛けるように囁かれる。
刺激が体全体に伝わるようだった。
「…っ!」
それでも必死に、口を閉ざしていると、後孔の突き上げが激しくなった。
「やだ…っシャーレン…!」
喘ぎをこらえられなくなりそうになって、思わず叫んだ。
「俺のことはいいのか?ひどいなぁ、お前」
犯している本人と違う名前を呼んだフィルシスに、ラークが面白そうに囁いた。
「本当に好きですね、こんなに漏らして」
びくびくと震えている体を、シャーレンは面白そうにじっと見た。
陰惨な喜びを感じて微笑んだ。
他の男に抱かれている最中でも、その心と体が思い出すのは自分だと、フィルシスにわからせることができたから。
「私の勝ちのようですね」
意地悪く微笑んでシャーレンは、だらしなく蜜を流す性器を戒める拘束具に、手をかけた。
「あ…ッ!」
堪えていた喘ぎが漏れた。
「や…ああ…っ」
息を詰めて、シャーレンの手の中に射精してしまった。
涙が一筋頬を伝った。
「お前の体は正直だな」
射精したことを強く感じさせるように、ラークの動きが静まった。
「あ…っ」
乱れた息を整えるように、ぐったりと後ろにある体にもたれてしまった。
「きれいにするんですよ」
射精の余韻にひたっていると、白い液で汚れた手を、涎を垂らす口に突きつけられる。
「ん…ん…っ」
苦しくて抵抗することもできず、舌を出して舐めとった。
舐め終えると、静まっていたラークの貫きが、再び激しくなった。
「やあぁ…ッ!」
いきなりの突き上げに、思わず声が出た。
「声、押さえられないんですか?あんまり喘いでいると、他の騎士が聞きつけてきますよ?」
「ん…く…っ」
必死に唇を噛み締めるのを見て、シャーレンがラークに目配せした。
ラークは、後孔に自身を入れたまま、フィルシスを床に降ろした。
「や…ッ!」
床に膝と手をついた所を、シャーレンのものを咥えさせられた。
「声、消すのを手伝ってあげましょうね」
耐え切れずに涙ぐんで、見上げる自分の耳をなでて、微笑まれる。
「ん…!」
後孔を突く動きも止まらない。
腰を捕まれて、打ち付けられる。
揺らしてしまいそうになる尻を必死に抑えた。
内股ががくがくと震える。
犬のように四つん這いで、前でも後ろでも奉仕する。
「舐めるのも嬉しいか?さっきより、締め付けてきてるぞ」
口を満たすものの舌触りと刺激の興奮に、後孔は、そこを満たすものをしっかり咥えた。
あちこちに連鎖するような快感が止まらない。
「ん…んぅ…」
くぐもった呻きを漏らして、二度目の射精を迎えようとした時、ラークが指で輪を作るようにして根元を握った。
その刺激に、後孔はまた中のものを締め付けた。
内側で感じる脈動に、また体中に快感が走った。
「んんー…ッ!」
「意地悪されてしまいましたねえ」
達せなくて、辛そうなフィルシスを見て、シャーレンが面白そうに微笑んだ。
「お前が言うことじゃないけどな」
その声の後、震える太ももに後孔の中に出された精液が伝った。
「んぐ…!」
「残してはだめですよ」
後孔に流し込まれた液の感触に身震いすると、前でも出される。
「んっ…ん…」
口の中に出されたそれを飲み込んだ。
「はあ…ッああ…っ!」
口から抜き出されて、舌に涎が糸を引いた時、指の戒めを解かれた。
ラークの手と、床に、白い体液が飛び散った。
「んう…う…!」
出し終えると、前も後ろも解放されて、床に崩れた。
自分がだしたものと、ラークが後孔に出したものがあふれて、床を白く汚した。
ぼんやりとした意識の中、優しく後始末をされて、ベッドの上に抱き上げられる感触がした。
「よく頑張りましたね」
耳をなでられて、寝かしつけられる。
昨日一日中、縛られて抱かれて、また今日も犯されて、文句を言う前に、疲れ切ってすぐに寝てしまった。
眠りに落ちる前に、シャーレンがラークに何か言っていたが、聞き取れなかった。
「ん…」
どのくらい眠っていたのかわからないが、フィルシスは起こされるのではなくて、自然に目が覚めた。
「よう、起きたのか」
ラークはベッドの、フィルシスの隣に腰かけていた。
「お前なんかやっぱり嫌いだ…」
顔を背けたまま、ぼそっと呟いた。
こぼれそうになる涙を、必死にこらえた。
「じゃあ前は好きだったのかよ」
「違う…」
「どっちなんだよ」
軽く耳をなでた。
「というか、最初にシャーレンが抱いていいって言ったんだ。
俺はあいつの好意を無駄にしないようにしただけだ…痛っ!」
シャーレンに対する思いも込めて、フィルシスがラークの背を蹴った。
「お前、結構乱暴だな」
「口で言ってもわからない馬鹿にだけだ…っ」
そこで、ふと気がついた。
「シャーレンは…?」
「帰った」
「帰った…っ?何で…」
思わずベッドの上で上体を起こした。
「拗ねたんじゃねえの?お前が誰にでも尻尾振るから」
にやっと笑って、ラークが言った。
言いながら、ふわりとした感触を楽しむように尻尾をなでた。
嫌がるように、白い尾がするりとラークの手から離れた。
「ご主人様しか、触るなって?」
「……」
フィルシスは拗ねるようにもう一度、ベッドに寝転んだ。
次から次へと、意地悪ばかりするシャーレンなのに、先に帰られるのは寂しく思った。
「お前、シャーレンのどこが好きなんだよ」
「…シャーレンなんか嫌いだ…」
シーツを握り締める。
昨日あんなにひどいことをしておいて、まだ他の人にまで犯させる。
それに、自分が寂しく思うのを、わかっているくせに、昨日だって正直に頷いたのに、
どうして放っていったりするんだ。
「なあ…」
そんな様子に苦笑しながらラークが聞いた。
「何だ…」
「お前の国にいた時のシャーレンって、どうだったんだ?」
「どうって…」
「だってお前、子供の時からあいつといたんだろ?
まさかその時から、あんなんだったんじゃないだろ?」
「ああ…」
「だったら、気になるのもわかるだろ?」
そういうラークに、ため息をついて、口を開いた。
「……優しくて…頼りになって…辛い時はすぐに助けてくれた…それに誠実だった…」
幼い自分に勉学を教えてくれたシャーレン…
ペンの使い方をまだ習っていなかった自分の手を、そっと一緒に握って持たせてくれた。
手を繋いで色々な所に連れて行ってくれたシャーレン…
初めて異国を訪れた時は、眼前に広がる青い世界を、海だと教えてくれた。
道で売られるその国の菓子を買って、二人で食べた。
本当に楽しいと思っていたんだよ?
騎乗訓練で落馬しそうになった時は、後ろから抱き留めてくれた。
あの頃を思い出していると、にじみ出した涙で、目の前の現実が霞みそうになった。
「お前にだけ?」
「違う…他のみんなにも信頼されていたし…仕事熱心だったし…」
あれは何だったんだろう。
「本当かよ」
笑いながらラークが言った。
「想像できないな」
「でも本当だ…」
十年前の自分に、今のシャーレンの事を語ったらどんな顔をするだろう。
「じゃあ…密偵に来る前のシャーレンはどうだったんだ…それに、お前とはどうして、仲が良いんだ…」
イグデュールも、ヴァイン達も、あの暗黒騎士の霊も、
街に行った時に見た検問官や他の魔術師も、驚いていたり、怖がっていたのを思い出した。
だが、ラークとだけは、仲が良さそうだ。
「知りたいのか?」
「別に、無理に教えて欲しいとは思わないけど…」
何か、一人、取り残されているような感じがする気がしたからだ。
「お前が知ったら、もっとシャーレンを叱り飛ばしたくなるぞ、きっと」
「わかってる…それに今更とやかく言うつもりはない…」
「そうだなあ…最初は俺もあいつも、暗黒神官の護衛だった。
反逆者の処刑が主な仕事だったが、あいつは魔法でわざわざ惨い殺し方をしていた。
暗黒の魔法は肉体そのものを操ることができるんだ、だからどんな酷い状態にだってできるからな」
「…知ってる…」
自分の体をこういう風にしたように。
「でも、どうして…」
「じゃあ、まず、どうやってシャーレンと知り合ったか教えてやるよ。
昔、暗黒神官の元で働き始めたばかりの頃ぐらいからだな。
あの時は、俺もあいつも、家族が有名だった。俺の家系は貴族の家柄だった…」
「シャーレンに聞いた…」
「ああ、そうか、街に行ったんだったな。神経質そうな家だっただろ?」
そこで見た屋敷の優雅さとはかけ離れた無骨さで、耳をなでられる。
「うん…」
「俺は無理矢理、暗黒騎士団に入団させられた。
もう勘当されているのに、俺を見る度に、あの家の子だとか言われるのが嫌だった。
その気持ちを共有できたのがシャーレンだけだった…。
シャーレンは貴族ってわけじゃなかったが、あいつの親がまた、変わった意味で有名なやつらだったからなあ…」
「……」
フィルシスは、ラークの話を黙って聞いた。
自分はそんな経験をしたことはないけれど、それがどんなに辛いことかは想像できた。
「ただ、あいつの両親は、優秀だったから名は知れていた。父親の方は昔の四天王の一人だったしな」
「それは教えてくれなかった…」
無意識の内に、声に寂しさが混ざった。
「あいつの場合は、勘当されるとか以前に、全く相手にされなかったらしいからな。
家に対して何も思っていないって言ってたから、教えることも何もないんだろ。
だからあいつも、家族とは呼べるようなものじゃないのに、自分を見て両親を思い出されるのが嫌だ、と言っていた」
「…そうか」
以前シャーレンが、本当の家族より好きだと言ってくれたことを思い出した。
「そこで終わっていれば、可哀想なやつ、で済んだんだけどな」
しかし、ラークのその言葉で色々なこと、例えば先程のことを思い出した。
「そもそもあいつが、自分自身の噂の方が広まれば、誰も家の噂はしなくなるとか変なこと言うから、
二人で色々している内に、悪名高くなったというか…」
「…なら、どうせなら、良いことをすれば良かったじゃないか…悪名じゃなくて」
聞くだけ無駄になりそうなことを、一応言ってみた。
「仕方ないだろ、お前が、どうして悪さをするのかと、自然と思ってしまうのと同じで、
あいつは良いことをするという発想が、自然と浮かばなかったようなやつなんだよ。
恐怖は一番人の印象に残る、反逆者達の瞳に自分だけがしっかり映るのがいいって言ってたな、確か。
でもそう考えれば、シャーレンはそんなにお前に気にかけて欲しい程、お前に酷いことしてるってことじゃないか。
良かったな」
「良くない…」
ぼそっとそう言うと、耳をなでられた。
「それに、女だって愛したこともなく、取っ替え引き替えだった。
素直に騙されている方が悪いとか言ってなあ…」
「……」
心の中で、シャーレンのばかと呟いた。
「どうだ?お前の神が許すことじゃないだろ?本当は、聖騎士として裁くことだろ?」
今度は試すように、意地悪くラークが言った。
「……」
予想外の言葉に、思わず黙り込んだ。
不実の者を裁くのは聖騎士の務めだ。
人をむやみに苦しめることも、神の創造物を操作することになる暗黒魔法も、虚偽も裏切りも、背徳の行為なのだから、戒律で禁止されている。
この世界には、そんな戒律はないけれど、もしもレンドラント国でなら、聖騎士団長が直々に教会で罪を問うことになる。
「……」
「わかった、俺が悪かった。ちょっと言ってみただけだって。そんな真剣に悩むことないだろ?
お前だって、今更とやかく言わないって、さっき言ってただろ?」
黙りこくったフィルシスを慰めるように、ラークがそう言った。
「じゃあ、最後に一つ、良い事を教えてやるよ」
ラークに軽く肩を叩かれた。
「良い事…?」
「最初はお前を囮にしようという話だった」
「囮…?何の…?」
ベッドから起き上がった。
驚いて聞き返す。
昨日、シャーレンが出かけた時にした話だろうか。
「そのうちわかるさ。あんまり言ったら、シャーレンが怒るからな。
とにかく、お前に一人になってもらおうという話だった。これからお前は一人で帰るから、結果的に一人になるけどな」
「…それは、ここに連れてこられた意味はなかったということか」
結果的に一人になるという表現が気になった。
「そういう事だ」
ラークがにやりとして頷いた。
「…シャーレンなんか嫌いだ…」
いつもそうだ。
全然関係ないことなのに、わざわざ意地悪をする。
「早く会って、直接言ってやるんだな」
ラークに連れられて、団長室を出た。
宿舎の門まで見送られた。
「じゃあな、気をつけろよ」
「うん…」
来た時は昼だったが、今はもう、陽が傾く頃だった。
思えば、初めて一人で歩くこの地に、一抹の不安を覚えながら、騎士団の宿舎を後にした。
フィルシスの背を見送って、ラークは昔のことを思い出した。
何で仲がいいのか?
もう一度、思い出すフィルシスの質問。
きちんと答えはしなかった。
あの頃のシャーレンは、自分にだけは純粋な笑顔を見せて、側に来た。
今のように、皮肉なんか、自分にだけは言ってこなかった。
だが、ある日突然、自分を避け始めた。
やっとの思いで問い詰めると、
―これ以上ラークのことを好きになったら、独占してしまいたくなる。
―ラークの他の友達を消してしまいそうになる。
―でもそんなのは嫌だから、ラークの笑顔が曇って行くのは嫌だから、離れさせて
きっとたくさん悩んだんだろう、でも、自分には何も言ってやれなかった。
だから、本当は知ってる、
その日からしばらくして、皮肉しか言わなくなったのは、そうやって自分の気持ちをごまかそうとしていたことを。
![]()
![]()
![]()