次にフィルシスが目覚めた時、もうあの魔物はいなかった。
汗や体液にまみれていた体も、きれいに拭われていた。
だが、首輪に鎖は繋がれたままで、服は脱がされたままで、全裸の体に毛布が一枚かけられていただけだった。
「………」
毛布にくるまって、一人ですすり泣く。
悲哀だけが胸を満たしていた。
シャーレンもラークもどうなったかわからない事…
痴態をさらした事、獣にまで犯された事…
「……シャーレン…」
そっと呟いた。
その時、ぎいっと、また扉の開く音がした。
慌てて涙を拭った。涙を流している所を見られたくはなかった。
「元気にしているか?」
見下すようにこちらを見ているヴァインがいた。
後ろには、彼の他にも複数の男達がいた。
ヴァインと同じ、暗黒騎士の制服を着た男達の他にも、魔術師や幻術師、召喚術師達が着るような服装の者がいる。
どうやら、考えてみれば当たり前だが、騎士以外にも、ハウゼンについた者はいるようだ。
その男達は皆、ぎらついた目で自分を眺めて、にやにやと笑っていた。
背中を、悪寒が走った。
「オレだけで、終わると思っていたのか?お前と遊びたいやつは、たくさんいるんだ」
思わず凝視してしまっていた自分に、ヴァインがからかうように言った。
彼と、周りの男達が、嫌な笑みを浮かべて近づいてくる。
「嫌だ…っ」
一枚羽織っていた毛布をはぎとられて、足や腕をつかまれて、四つ這いにさせられる。
かちゃかちゃと鎖が鳴った。
「こうして見ると、本当に犬みたいだ」
「…う……」
集まった男達がくすくすと笑う。
我先にと下着を下ろし始める。
「俺が一番乗りだな」
やがて、一人の暗黒騎士の、大きくて骨張った手に、髪をつかまれた。
「嫌…はなせ…っ」
「きれいな髪…細くてさらさらだな。女みたいだ」
そう言う男の髪は、真っ黒で短く切った剛毛だった。
そのまましばらく、じっと眺める。
「ほら、舐めろ」
その男がくっと笑ったかと思うと、閉じていた口をこじ開けられて、含まされた。
「ぐ…う…ッ……ん…ッ」
「この場の全員を口でイかせるんだぞ」
フィルシスに向かってそう言いながらヴァインが、十人はいる男達に目を向けた。
「ほら、ちゃんと舐めろよ」
舌を動かさないでいると、痛みを与えるために、耳を強く引っ張られる。
いつの間にか、囲われていた。
丸裸の無防備な状態で、大勢の男達に足や腕を押さえられ、肌触りを確かめるように触れられると、不安と恐怖が湧いてきた。
催促するように、後ろにいる別の男に尻尾も引っ張られる。
力がこもっていて、痛い。
仕方なく、口に差し入れられたものを舐め始めた。
「ん…っんぅ…ッ」
ぴちゃぴちゃと淫らな水音を立てながら、陰茎を咥え込むフィルシスを、男達は食い入るように見つめた。
「ん…っ」
頬をすぼめて、先端に吸いつく。裏の筋を、くびれを、舌でぴちゃぴちゃと撫でさすった。尿道口を舌で突付く。
男を悦ばせるための、ためらいの無い動きを見せた。
口の奥に吐き出されたものも、むせながらもきちんと飲み干した。
「すげ…ちゃんと飲んだぞ…娼館の女みたいだ」
みじめとしか言い様がなかった。
この男達の目には、自分は、性奴隷としか映らないのだ。
「んう…っ」
息をつく間もなく、興奮した荒っぽい手つきで髪をつかまれた。
「次は俺だ」
また違う男に、彼のものを咥えさせられる。
「ふ…ッん…」
今度の男は、服装から見て騎士ではなく、魔術師や幻術師のようだった。
騎士のような逞しさはなかったが、口に突っ込まれたものは、興奮からかすでに硬くなり、十分に大きさを増していた。
「本当だ、こいつ上手いな」
醜悪な笑みを浮かべて、一心に自分の股間を舐めるフィルシスを見下ろした。
頭を押さえたまま、くちゅくちゅと響く音を聞く。
「お、後ろもよく仕込まれているんだな。舐めてるだけなのに、この中、ひくひくしてる」
背後で嘲る声が聞こえた。
フィルシスの下肢がゆるく揺れ始めていた事に気付いた、また別の男が、左右の尻の肉をつかむ。
その間で収縮している後孔をじっと観察する。
「肌、白くてすべすべだ」
ごつごつした男の手が、尻から背中へのラインをなぞるように、伝っていく。
フィルシスの細い腰がびくりと一跳ねする。
「体もきれいだな」
「ん…っ!」
体中を、じっくりと見られ、フィルシスは羞恥に呻いた。
「前も、たってるのか?」
その声と共に、後ろから股の間に手を入れられて、手の平でまさぐられる。
「んん…ッ…っ」
しかしその刺激は、達する事ができる程の刺激ではなかった。
もどかしくて、思わずその手にすりつけそうになる腰の動きを、必死に止めた。
「勃ってる」
くすくすと、小さく笑う声が聞こえた。
性器を舐めさせられた後の快感を、しっかり教え込まされた浅ましい体を嘲るように。
「でもよく見えないな。体勢、変えさせようぜ」
フィルシスの後ろにいる男達が、細い足をつかむ。
「ちょっと待て、こいつにかけてからだ」
口に突っ込まれているものの持ち主が叫んだ。
彼のものは、もう、今にも弾けそうに育ちきっている。
「んう…っ!」
男の股の間で大きく膨らんだそれを、涎の糸を引いたまま、口の中から出される。
「や…っ!」
びしゃりと顔中に、勢い良く体液が飛び散った。
男の白濁液が、フィルシスの乱れた銀髪や、犬のような耳、美しい顔を淫らに汚していく。
「あ…っ」
半開きの口の中にも、それは入ってきた。
口の端から、涎とともに、垂れる。
「見ろよ、エロい顔してる」
荒い息をつく半開きの唇の、その端から垂れた涎と白い精液の筋が、あごまで伝う。
「エロいのは顔だけじゃないだろ?」
ヴァインがくっと笑うと、先ほど後ろでフィルシスの足を掴んでいた男達が、今度は腰を掴む。
「ん…ぁ…ッ!」
そのまま仰向けに転がされた。
両側から足をつかまれて、大きく開かせられる。
「ホントだ、もう漏らしてる」
くすくすと笑って、先走りをすくわれる。
「は…ッぁ……っ!」
汗ばむ胸の先端のものも、色付きはじめ、硬く尖っていた。
「ここも、硬くなってる。こんなとこ、男でも感じるもんなのか?」
また別の男が、ぷっくりと尖った乳首を、指で摘んで弄くる。
根元から先端へ、きゅっと吸い上げるような動きだった。
「あ…っい…や…ッ」
くにくにと、つままれる度にフィルシスの体は、ひくりと波打った。
「入れる前からこれじゃ、入れたらどうなるんだろな」
フィルシス自身の先走りを指に絡ませて、蠢く後孔に指を浅く埋める。
「やめ…く…ぅ…!」
快感にびくんと跳ねた体を見て、男達は唇を舐めた。
もっと奥に指を進めて、嬲っていった。
その指を、ひくつく内壁がしっかり咥え込む。
「締め付けてくるぞ、こいつ」
「ん…あぁ…ッ!」
紅く染まり出し、びくびくと震える体を見て、男達が嘲笑う。
「指だけで、とろとろだぜ、ここ」
ねちねちと、二本に増やした指で後孔の中をいじくると、開かされている足の間で、フィルシスのものは先端から再びとろりと蜜を流し始めた。
「や…はあぁ…ッ」
びくりと、大きく腰がくねる。押さえつけられている足が、震えている。
体の変化を見たヴァインがくっと笑った。
「おい、あんまりいじるとイくぞ。まだイかせるなよ。イく寸前で中に入れる方が、締まりもいいしな」
そう言って、立ったまま見下ろしていたヴァインがかがみ、首輪に繋がれた鎖で、フィルシスの陰茎の根元を縛った。
「ん…あッ!」
止められる刺激に、またひくんと腰が跳ねる。
「じゃ、そろそろ頂こうか」
後孔をいじっていた男が、今度はベルトをはずして下着を降ろし始める。
「あっ、ずるいぞ」
「早いもの勝ちだって」
「嫌…っやめ…」
足をばたつかせたが、また別の男達に両足をしっかり押さえつけられる。
僅かな抵抗も無駄に終わり、入り口に怒張をあてられる。
「あ…っ!」
くびれた部分が浅く埋まった瞬間、体を走った快感に腰がくねった。
「んあぁ……ッ!」
ずぶずぶと深く入り込んでくるそれを、咥え込んで締め付ける。
「中も淫乱だ…っ」
快楽に呻く男に、遠慮なく突き上げられて、フィルシスの体がびくびくと波打った。
荒い呼吸を繰り返し、汗のにじむ胸が上下した。
その痴態が、どれ程男達の欲望を駆り立てるか知らずに。
「はあ…ぁ…っ!」
涎がこぼれ、先程顔にかけられた精液と混じる。
「こいつ、本当にケツで感じてる」
くすくすと、あちこちから嘲笑が響く。
足を大きく開かされたまま、腰に打ち付けるように何度も突き上げられる。
「い…や…ッ!あ…っん…!く…ッ」
唇を噛んで必死に声を殺そうとしたが、激しい突き上げと、
乳首や股間を弄り出す、別の男の手が与えてくる快感に、たまらずに嬌声を洩らした。
「さて、こっちも続きだ」
半開きのままのフィルシスの唇を見て、また別の声が言った。
まだ全員の、性器を舐め終えていなかった。
肩付近にまたがられ、口に突っ込まれる。
「ん…んん…ッ!」
口と後ろで猛る肉棒をくわえさせられながら、骨張った別の男達の手が、胸の先端を弄り回す。
「んんー…!」
くちくちと鈴口を、誰かの指がいじる。
「こんなになるまで、何度やられたのかな?」
街中で一瞬すれ違ったきれいな女が、すでに抱かれているか、または、抱かれている様を想像する時のように、男達は痴態をさらし続けるフィルシスをじっと眺めた。
「ん…ッふ……っ!」
後孔の中で、咥えていた男のものが弾けた。
体の奥に、たっぷりと注ぎ込まれる。
「今度は俺にさせろ」
引き抜かれると、すぐに違う声が聞こえる。
「んんッ!」
精液を垂れ流す後孔に、違う男のものが挿入される。
前の男が出した体液が中で押されて、ぐちゅぐちゅと淫らな水音がした。
フィルシスは、何人もの男に代わる代わる下と上の口を嬲られて、悩ましげに髪の色と同じ眉をよせていた。
赤い瞳の奥に淫靡な光が宿り始めた。
くちゅっ、ぴちゃっと湿った音が、前でも後ろでも響く。
「んんぅー…ッ!」
男達は好きなだけ、自分の中に吐き出していくのに、自分の性器は鎖で縛られたままなのが、辛い。
もどかしそうに揺れる腰を、男達がにたにたと嘲笑しながら、面白そうに眺めていた。
「ん…っんん…」
どれ程の間、舌を使っていただろうか。
朦朧とする意識の中、最後の一人の性器から出されるものを飲み干す。
「さあて、今度は思う存分、声、聞かせてもらうか」
「ん…ッ」
口から性器をひきぬかれた。
もう口を塞ぐものはない。
「ゃ…ッ!あっ…あっ…!」
延々と繰り返される激しい突き上げに、声が枯れる程喘がされる。
拷問のような快感を絶え間なく与え続けられるのに、それでもまだ、自分のそそり立つ性器は鎖で戒められたままだ。
白い腹の上に、とろとろと漏れている先走りが溜まっている。
「く…ふ…っ…!んうぅ……ッ…あぁ…ッ!」
フィルシスの甘い嬌声と、後孔の中でくちゅりと、精液のかき混ぜられる淫らな音と、男達の嘲笑の声が、長い間、響いていた。
宙に浮いた後孔から滴る、何人もの男達の体液が、床に白く溜まっていた。
「こいつ、二人分ぐらい、いけそうじゃないか?」
不意に囁かれる恐ろしい企み。
「いけるだろ。昨日は魔獣のもの、つっこまれて喘いでたんだからな」
ヴァインの嘲りを聞いた男達が、目を輝かせる。
「試してやろうぜ」
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